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絶対支配領主『バハムート』人類衰退度A+
第24話 vs神竜バハムート
しおりを挟む「グォオオオオオオオオオオオオオオオオ――――ッ!!」
誰よりも間近でバハムートと対面するタイガは、突き刺すようなプレッシャーを一身に浴びていた。相手が変身した際に下がっていなければ踏み潰されていただろう。
漆黒の鱗に覆われた巨躯に刺々しさを放つ尻尾。ほぼ真下にいるタイガの位置からでは、バハムートの全身を眺めることはできなかった。
(これまでにも人外に転生した奴らを何人か見てきたが……これはあまりに規格外過ぎる。神代の怪物にもここまでのサイズはいなかった)
タイガの異世界漂流してきた記憶を辿っても、おそらく三指に入る強さを誇っているはずだ。【調和】という特性のため、あらゆる物体を分析することに長けているタイガはそう推定した。
これまで触れてきた強さには、様々な種類があった。単にチート能力を振るってくる転生者。研鑽を重ね、技術を以て肉薄してくる達人。真正面からでは勝てないと、搦め手を用いる知恵者まで。
しかしこのバハムートは、そのいずれとも違う。ただデカいから強い。単純明快にして絶対の理である。
戦う前から怖じ気付きたくなるスペック差だが、ここで退くわけにはいかない。タイガは早々に覚悟を決め、戦闘態勢を整える。
(必要以上に敵をデカくしても仕方ない。まずは直に手合せしてみないとな!)
直後、タイガは激しく地を蹴った。それだけで彼の身体が砲弾のような加速を得る。
瞬く間に敵へと肉薄し、右前脚目掛けて斬りかかる。手に持つはドラゴンスレイヴ――竜殺しの剣。別世界で直に触れ、その特性を【調和】によって再現しているのだ。数多の竜を葬った剣には、竜殺しの概念そのものが染みついているため、ドラゴン相手に倍以上の効果を発揮する――――のだが。
「ぐ……っ!」
斬撃音ではなく打撃音が響く。それとともに剣を握る両手に鈍い痛みが広がる。バハムートの鱗に対し、ドラゴンスレイヴはまるで刃が通らず、為すすべなく弾かれてしまったのだ。
(強靭で肉厚、というだけじゃない。やはりこれは――――)
一瞬怯んだタイガへバハムートの尻尾が伸びてくる。鋭利な先端が容赦なく彼の腹を抉る。
ぐ、と衝撃を直に受けた胃から、急激に吐き気がこみ上げてくる。しかし尻尾の勢いは止まらず、そのままタイガの身体ごと崖へと叩き付けた。
背中をしたたか打ち、強制的に肺から空気が吐き出される。血も少し混じっているようだった。口内に苦い味が広がる。
ダメージにより機能が一瞬麻痺してしまう。その隙を逃さず、バハムートは左前脚を持ち上げ、タイガを押し潰そうと踏み付ける。彼は間一髪避けることができたが、踏み付けを食らった絶壁は音を立てて一部崩壊した。
あれをもらっていれば、とゾッとする。つまりバハムートにとっては、地団駄一つが極大魔法級の破壊力を秘めているということ。
加えて、それが物理攻撃だということも拙い。何故ならタイガの【調和】能力は魔法であれば相殺できるものの、物理相手ではそれもできない。相性は非常に悪いと言える。
(何より、奴の攻撃は俺の『神性』をぶち抜いてきた。想像していたが、やはりバハムートはこの世界において、神の如き権能を手にしているんだ……!)
『神性』持ちにダメージを与えるには、同様に『神性』持ちでなければならない。だが『神性』で劣っていれば、その差に比例してダメージは減衰されてしまう。
そして先の攻防を鑑みて、バハムートの攻撃はタイガの『神性』を破りダメージを与えた。一方で彼の一振りは弾かれ、まるで通っていない。つまりバハムートの『神性』がタイガのそれを上回っているということだ。異世界転生者としての『神性』の度合いは同等のはずなのに、である。
(バハムートは長らくこの異世界を支配してきた。十年や二十年じゃなく百年単位で、生殺与奪を握ってきたんだ。要するに奴は、その過程で支配者特権――――疑似神性を得るにまで至った)
たとえば日本でも天皇陛下は神として崇め奉られているし、外国でもトップを神として崇拝する文化もある。この世界ではバハムートが絶対的支配者として君臨しているのだから、『神性』に届いていても不思議ではない。
彼我の差は即ち、単純な足し算による戦力差である。神様にチート能力を与えられるとともに付随した『神性』に加え、バハムートだけは支配者特権を有している。その差が覆せないものとなっているのだ。
(これじゃあ俺の攻撃は奴には通じず、向こうだけが一方的に攻勢に出られるってわけだ……。はっ、不利なんてもんじゃねえな)
なるほど、バハムートがこれまで何人もの異世界転生者を屠ってこれたわけだ。チート能力を放つしか能のない転生者など、『神性』で上回っているバハムートには通用しないのだから。言わばバハムートは転生者キラーである。
尻尾が上下に叩き付けられる。あたかも蠅叩きのように、タイガはそれから逃げるしかない。為すすべなく叩き潰されるのを引き延ばすしか手立てがなかった。
(こういう時、自分の火力不足が恨めしいな……。剣一本でどうにかなる次元を超えている。だったら――――)
と、タイガは自身の周囲に数十の剣を作り出し、展開させた。切っ先は無論、全てバハムートへと向けている。
タイガが手を振り下ろし合図を送ると、それらは一斉に様々な角度からバハムートへと飛びかかった。通常なら避けきれず串刺しにされるはずだが、強大な『神性』を持つバハムートには微塵も通じない。剣先が当たるや否や、悉く粉々になってしまう。
そうなることは容易に想像が付いた。故にタイガは、相手が僅かに気を取られた隙に乗じて、バハムートの背を全速力で駆け上がっていた。ちょっとした山登りである。
生物共通の弱点と言えば、やはり首から上の部位になる。今回タイガが狙うは首筋。胴体と頭が離れて生きていられる生物はいない。
懸念は途中で振り落とされないか、ということだが、それは気にしなくて良いと思っていた。
(少し考えてみれば分かる。これだけの図体を浮かそうとすると、かなりの筋力を必要とするだろう。こちらを軽んじて飛ばないのではなく、きっと飛べないんだ)
おおよその分析によると、魔力を結集させれば斬れないことはない。いつもとは違って大気中の魔力だけでは賄い切れず、自らの魔力炉心もフル稼働させた文字通り渾身の一撃となるが、『神性』の壁を突破することができる。
バハムートも危機を感じ取ったのだろう、乱暴に全身を動かしてタイガを何とか振り落とそうとする。物凄い揺れのせいで足場が不安定になるものの、着実に進めば落とされることはない。
首筋まで残り百メートル、という所まで辿り着いて、バハムートの動きがふと緩慢になった。タイガは全力で踏ん張っていたせいもあって、呆気に取られてよろめいてしまう。
抵抗を無駄と悟ったのか、と思ったのも束の間、バハムートの体内から膨大な魔力の移動を感知した。そしてそれは喉元までせり上がり、一つに凝縮されている。
「っ……まさか!」
彼は振り落とされないよう踏ん張っていた分の脚力を、全て速度へと変換させる。百メートルなど、それこそ一秒程度で縮められる距離。
しかし、それでも間に合わない。
――――バハムートはアイシャたちのいる洞窟へと、今まさにブレスを放とうとしていたからだ。
彼女たちはまだそう遠くまで離れられていないはずだ。このままだとブレスの直撃によって跡形もなく消滅するか、外れたとしても洞窟の倒壊は避けられず生き埋めになってしまう。どのみちアイシャの存命は望めない。
しかしその代償として、バハムートの命を刈り取ることはできる。ブレスを放ち、その直後に首を落とすことができる。
突きつけられた二者択一に、タイガは瞬時の選択を迫られる。バハムートに理性なんて残っていないと思っていたが、よもや本能的に狡猾な手段を取ったのだろうか。
殺すか救うか。どちらにせよ考え込むだけの猶予はない。彼は自らの良心に基づき、即座に行動へと移す――――
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