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第三章 アレクサンドル編
第五十七話 諦めないために
しおりを挟むつくづくごめんな、アッシュ。
意識ないからいいかって、部屋勝手にまだまだ使って。
でももしかしたらアンタも起きるかもしれないじゃん!? そしたら色々容態わかるじゃん?!
アッシュの部屋で、ヴァスティの身体の具合を診てみる。
様々な診察を試したが、やはりディスタードから貰った薬の治癒法が一番のようであった。
「五生宝、何としてでも手に入れるしかないよ、今のところ。それと、俺自身が医学ともっと付き合わないと、治らない。俺のは邪法で、俺の知るヴァスティの病を治す方法は正統な医学だ」
「邪法だとどうなる?」
「今回の場合は一か八かみたいになる、正統なほうは確実に治る。だから邪法のほうは、手に入らなかった場合にしか使わない、それまでに俺も邪法の材料を集めておく。きっとそこは、あいつらにとっては盲点だろうから集めやすい」
「判った、……キャロに、本当に言わないと駄目か? 力を使うなって」
「それが俺からの条件だよ。キャロラインに惚れてるなら、キャロラインに誠実であってほしい、なんて俺から言えた言葉じゃあないんだけどさ。それでも、あの子はイイコだから」
ヴァスティは、項垂れて「判った」と告げるなり、げほげほと咳き込み、また吐血する。
ぜいぜいと息が荒くなっている、取りあえずの応急処置として、月華蜜を取るときについでに採った、月華の花弁を使った薬を飲ませる。
少しはヴァスティの病に対してなら咳止めになるだろうから。
「いつの間にこれ作ったんだ?」
「俺、新しく使える薬とか知ると作ってみたくなるのよ。俺の学習度でも、作れたから」
「そうか……先取りがうまいやつだ、オレなんかより、何にせよさっきより落ち着いた、礼を言う」
「御礼とかよりも、キャロラインを諦めないって誓ってくれ。あのお姫様、頑固でお前の気持ち認めないかもしれないから」
「約束しよう。……アルデバラン殿下がもし、闇の魔法へ傾きそうであれば教えてくれ。ピュアクリスタルを取られると、どうにも闇属性になりやすいんだ。魔道師を派遣する、出来るだけオレではなく精霊を信仰する魔道師を」
「火風土水とかの信仰?」
「よく知っているな、それだ。魔道師に向いてる者が多く使うんだ。いきなり光魔法の加護よりは、馴染みやすいだろう。闇属性のリーチェの言葉なら届きやすいかもしれん」
「あー……」
毒医者っつーと、闇属性だな、確かに。
ってことはあいつの力借りながらあいつに対抗しようとしてるとか、マジ笑う。
メビウス自身は病っぽくはなかったが、ヴァスティの一部ということならば、少し心配になった。
何にせよ、ヴァスティルートがこれで確定だ、ヴァスティ自身で、キャロラインを選んだのだから。
あとはキャロライン次第ってことかな、あとはオレの好感度をさげていくだけだ。
「イミテちゃん」
「嫌われ役なら任せろ、何とも思わん。私は黒き龍であるぞ、お前様の神は私だ、メビウスになぞやらぬ。だから安心して頼るとイイ。躊躇いもせず、いちゃつける機会であるしな?」
お見通しなあたり、イミテちゃんたら鋭いわ。
俺の恋人役を演じて欲しい、と言わなくても通じてるんだから。
演技で、俺とイミテは結ばれてるのだと、諦めるしかないのだと、キャロラインに伝われ。
直接告白されたわけでもないのに、ごめんね、ってするのは何だか違うしな。
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