婚約者様と私は世界一のずっ友~公爵様はゲイですが腐女子にはたまりません~

かぎのえみずる

文字の大きさ
7 / 30

第七話 癒やしの力を徹底コントロールの授業です!

しおりを挟む
「近い近い近い!」
「近いのは嫌いか?」
「お嬢の頼みじゃなかったら嫌いにきまってんだろ!」

 たまたま休日を味わうアシュに、居合わせたサリスへ頼み込む、二人の絡み合うデッサンをしようとしたの。
 サリスを押し倒すアシュ、女王受けっぽくしてほしくてお願いしてみた。
 やっぱり美形っていいわ、美形と美形が重なることで妄想が高まって、このあと二人はどうなっちゃうの!? なんておもうし。
 アシュも楽しそうだし。

 デッサンをとっていると、後ろであぐらをかいて調度品に座っているロス様が不思議そうに笑った。

「ローズは恋愛概念が壊れてるね」
「どういうこと?」
「普通はあんなことまでしてくれるなら、自分のこと好きなんじゃって思うよ」
「アシュ?」
「ううん、もう一人の人。騎士のほうは楽しんでやってるでしょ?」
「サリスは慈愛に満ちているの」
「あんな真っ青な顔で鳥肌たてながら、押し倒されていて慈愛、かあ……」
 
 微苦笑めいた声でロス様は時計を見やる。

「そろそろ時間じゃないかな」
「ああ、それもそうね。行かないと。アシュ、サリス、今日はもうこのへんでいいわ! ありがとうね、素敵なの描けた」
「お嬢! うおお、早く退きやがれ貴様あ、俺のお嬢がもう勘弁してくれるっつってるんだ!」
「まあまあ、そう焦るなよ。折角だ、ゆっくりこうしてみてはどうだ」
「ふざけんな、どけー! いやー! 襲われるー! お嬢、助けてー!!」
「ふふ、仲良しね。それじゃあ妾、ちょっと授業があるから」


 聖女候補にはしっかりと祈りの力が定着するように、魔法を学ばないといけないらしく。
 個別授業を受けるようにと仰せつかったので、妾は今度から町の方にある学び舎へ行かなければならなくなった。
 サリスとアシュを置いて部屋を出ればサリスの悲鳴が響き渡る、楽しそうで何より。

 馬車に乗って、絹のドレスを揺らしながら毛皮のファーを背負う。
 とても可愛いのに、みんなこの格好をあまり気に入ってくれないの。
 最近は絹のドレスだけは認めてくれたのだけれど。日常的に着ちゃ駄目だって。

 憂鬱な気持ちを飛ばしたいなと思って、歌ってみる。
 メロディは適当に、言葉の羅列は適当に思いついたものを。
 そうだ、今日のサリスとアシュのカップリングを歌にしてみよう。

「か細い腰の君、赤い髪は誘うように。麗しの瞳は涙を堪え、劣情を訴える。
 一体何を望むのか、手塩に掛けて捧げようとする蒼の君」

 適当な思いつきの割にはイイリズムになりそう。ご機嫌で歌い続けていると一緒に乗っているメイドがにこやかに微笑んだ。

「素敵な愛の歌ですね! 赤い髪の姫君かあ、きっと可愛い人なのですね!」
「ええ……きっと、愛され体質よ」

 あれだけ愛想が良かったら、きっとどんな殿方も落とせるに違いない。
 そういった物語もいいなあ、ふふふ。
 沢山の人に愛されるサリスの話は書いていて楽しそうだな、と考えてる辺りで馬車が止まる。
 歌っている間にあっという間に学び舎へついたみたいだ。

 



 ある教室に案内されて、そこには机一つと、巨大な黒板がある。
 席に座れば、ふおんと側にあった青い球体の道具から、男が現れた。
 テレポート装置となっている様子だ。今まで男は自室にいて、この教室を監視していたのだろう。
 
「お初お目にかかります聖女様、リーゼルグ・プロキオといいます」
「イデアローズでおねがいします、妾はその、聖女って呼ばれると気まずいんです」
「どうして?」
「ちょっと訳ありでね」

 まさか妄想を気に入られてるなんて言いづらいじゃない。
 言い淀むと、目の前の眼鏡をかけた教師はにやりと笑った。
 黒髪はすこしべったりとしていて、艶めいている。紺色の目は神経質そうなつり目なのに、何処か自堕落な表情にも見える。
 碧色の衣服を身に纏い、眼鏡をかけなおしながら、講師であるリーゼルグ先生は笑った。

「君の悪癖は知っていますよ、ローズ姫」
「えっ……」
「マダムレイティはうちの親戚でね、あの叔母様の行動についていける貴方の悪癖を、僕はご存じだ」
「うぐっ……」

 白状しろとの笑顔に見える。
 満面の笑みで迫力のある笑みに負けて、事情を説明しようと決めた。

「実は……」

 妄想を気に入られた事実、ロス神が目に見えるお話をしたところ、大笑いして腹を抱えて目に涙まで浮かべてるリーゼルグ先生。
 あまりの反応の酷さに膨れれば、リーゼルグ先生はすまない、と謝ってくれたので許す。

「いや衝撃的すぎるだろう、神様がそんな快楽主義みたいな楽しみ方をするなんて」
「神様じゃないみたいよねえ」
「事実神様かどうかは置いておこう。問題は貴方の力だ、ローズ姫。実際貴方がほもの妄想で癒やしている内訳は置いといても、聖女になったのは事実だし。
 それで得ている力も優秀ではあるんですよ。この草木に癒やしを与えてみてください、そうだな、お題は僕とその神様でどうです?」

 流石先生、テーマがあるほうが滾ると判っている。この先生は人の心に機敏なのねと気付いた。
 リーゼルグ先生から手渡された植木鉢の双葉を机の上に置く。
 すっと手をあて、妄想を巡らせる。

(そうね、リーゼルグ先生はきっと攻めよ。この威圧感は絶対的な攻めで、腹黒ね。腹黒受けも美味しいけれど、ロス様相手なら攻めがイイわ。
 いっそのことアラビアンな世界観もいいかもしれない。それで大金持ちのロス様に買われたリーゼルグ先生が、夜な夜なロス様を身体で慰めるの。
 ロス様はいずれ、リーゼルグ先生に抱かれないと生きていけない身体になってリーゼルグ先生が家を乗っ取って……)

 妄想をめぐらせていれば、妄想を気に入ったのかやたらと手が輝き、手の中の双葉は一気に大きく育ち教室中に根や蔓を張り巡らせた。
 教室は一気に森林に近いような碧色。あたりに花がぽんぽぽんっと咲き乱れた。

「ストップ。戻ってこい、現実に戻ってこいローズ姫、おい。ローズ、おい! ひいさん!」
「家を乗っ取ったリーゼルグ様がアシュを侍らせて、さらに三角関係に……」
「おい聞かないと、アンタの悪癖を国にばらすぞ!」
「はっ! な、なあに、先生。って、わあ、すごい! こんなことになるなんて……」
「ったく、世話がかかる。これで判っただろう、規格外の力を与えられるほど気に入られてる妄想力だ。飽きられないうちには、利用価値がある」
「ええと、それはつまり……」
「正式に聖女となってもいい。神に飽きられるまではな。それまでに僕が出来るのは、君に魔法の使い方を徹底的に指導するだけです。
 毎回これだけ大規模な力を使うのも問題すぎるんですよ」
「どうしてですか」
「あんたは読書しながら飲み物のむときに、一口ずつじゃなく全部飲み干してわざわざ毎回くみに行くタイプか?」
「……温存して加減した方がいいってこと?」
「困ったときに魔力が空っぽでしたなんて、許されないんですよ大人の世界じゃ。さて。それで。今日からしっかり指導していくので、妄想のバリエーション増やすために……。
 まずは貴方の思いつくシチュエーションを聞いておきましょう」
「なんの生き地獄ですか……やだあ、そんなのやだあ!」
「つべこべいわない! ご褒美も用意しますよ」
「何ですか、リーゼルグ先生絵のモデルになってくれるんですか!」
「うるせえ俺をほもにするな。そうじゃなくて、とびっきりの美味しい御菓子でも毎回用意しておきますから」

 ね、いいでしょ、とリーゼルグ先生は妾を子供扱いし、頭を丁寧に撫でた。
 いつもなら気恥ずかしいし、嫌だけど。その暖かな手はどこか滅多にない優しさや、甘えてイイという感覚になり。
 いつもならそれだけじゃ頷かないのに、妾はしっかりしごかれることとなった。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。 腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。 お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。 うんうんと頭を悩ませた結果、 この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。 聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。 だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。 早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ――――――――――――――――――――――――― ※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。 ※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。 ※基本21時更新(50話完結)

王宮追放された没落令嬢は、竜神に聖女へ勝手にジョブチェンジさせられました~なぜか再就職先の辺境で、王太子が溺愛してくるんですが!?~

結田龍
恋愛
「小娘を、ひっ捕らえよ!」 没落令嬢イシュカ・セレーネはランドリック王国の王宮術師団に所属する水術師だが、宰相オズウェン公爵によって、自身の娘・公爵令嬢シャーロットの誘拐罪で王宮追放されてしまう。それはシャーロットとイシュカを敵視する同僚の水術師ヘンリエッタによる、退屈しのぎのための陰湿な嫌がらせだった。 あっという間に王都から追い出されたイシュカだが、なぜか王太子ローク・ランドリックによって助けられ、「今度は俺が君を助けると決めていたんだ」と甘く告げられる。 ロークとは二年前の戦争終結時に野戦病院で出会っていて、そこで聖女だとうわさになっていたイシュカは、彼の体の傷だけではなく心の傷も癒したらしい。そんなイシュカに対し、ロークは甘い微笑みを絶やさない。 あわあわと戸惑うイシュカだが、ロークからの提案で竜神伝説のある辺境の地・カスタリアへ向かう。そこは宰相から実権を取り返すために、ロークが領主として領地経営をしている場所だった。 王宮追放で職を失ったイシュカはロークの領主経営を手伝うが、ひょんなことから少年の姿をした竜神スクルドと出会い、さらには勝手に聖女と認定されてしまったのだった。 毎日更新、ハッピーエンドです。完結まで執筆済み。 恋愛小説大賞にエントリーしました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...