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第二十九話 神の還る場所
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魔物は国中を攻めてきて、騎士や聖騎士が対応する。
魔物の駆除に尽力をそそぐも一向にどうにもできない。
アシュが大けがをしたと聞いた。
意識を取り戻した妾の最初に聞いた話は、アシュが大きな怪我をしたという話。
リーゼルグ先生が必死に戦っているけれど、まだ魔物も消えず。
殿下も奔走し、サリスは国のために回復役をつくり配っては作っているとのこと。
オズたちも必死だとのこと。
妾は慌ててベッドから降りて。街の中へ向かう。
リーゼルグ先生が襲われ駆けていて、妾は必死に声を張り上げる。
「アシュ×リーゼルグ先生の触手責め!!」
回復魔法がリーゼルグ先生を癒やすけれど、どんどん簡単に妄想のネタなんて思いつかないの。回復の癒しの明かりは長くは続かない。
妾は先生のもとに駆けつけ、どうしようと先生を見上げる。
泣きそうだった。この国が終わりそうで怖かったの。
「大丈夫。大丈夫ですよ、聖女なんです胸を張って」
「駄目よ、きっともう終わるのよ。逃げて先生!」
「貴方が最初に諦めてはいけないでしょう? 聖女様、しっかりして」
「聖女じゃない、妾は聖女なんかじゃない! もうだって、その妄想が浮かばないのこんなときだから!」
「それでも。貴方は、ずっと俺を癒やし続けてくれていた。昔から」
「先生……」
「お前なら、できるよ」
リーゼルグ先生の言葉に、眺めていただけのロス様がきらきらと輝きだし、目を細めた。
妾にだけにしか見えなかったはずのロス様は、他の人にも見え始め、皆が眩しそうにする。
「ローズ、彼は??」
「……彼は、」
神様なんだけど。様子が違う。
ロス様はにこやかに微笑み、ぽろぽろと泣き出した。閃光の中で涙が落ちていく。
「もういいよ、ローズ。今までありがとう」
「ロス様?」
「違う、違うんだ。思い出した、僕は彼の物だ」
「なあにそれ、どういう意味!? 昔の恋仲!?」
「ふふ、君は相変わらずだね。違う、僕は――彼の魔力だ。君との短い付き合いは、とっても暖かくて、好きだった。ありがとう」
ロス様はふおんと浮かぶと、リーゼルグ先生に吸収されていく。
リーゼルグ先生のなかにロス様が吸収されていけば、先生はきらきらと砂金を引き連れ、試しに魔法を詠唱する。
「烈火詠唱・コルク」
最上位とされる炎の魔法の詠唱の仕方だった。すると業火が魔物だけを包んでいく。この国中の魔物を全てだ。
かつての偉大な魔法使いが、戻ってきたのだ。
一斉に当たりも先生が願えば、国中を癒やしていく。
たちどころに災害は消え、やってきた殿下が笑った。
「勇者の片腕のご帰還だ」
「どういうこと?」
「昔、リーゼルグは勇者の相棒で、先の魔王との戦いで魔力を失っていたんだよ。
その魔力は勇者以上だった。今まであの魔力どこにいってたんだろう」
妾はリーゼルグ先生と目が合う。
先生の笑みの中にロス様を見つけ、ロス様はリーゼルグ先生の分身だったんだと理解すると、散々妄想を聞かれたのを思い出す。
「黒歴史よ」
妾は頭を抱えた。
*
リーゼルグ先生は称えられ、王様に宮廷魔術師を願われたが辞退した。
隠居暮らししたいとのことだった。
妾はあれから癒やしの力が使えなくなって、聖女もお役御免になるかと思ったけれど。
あのとき先生の眼差しに、勇気がわいて。
聖女も悪くないな、なんて思って、癒やしの力を習おうと勉強中。
「ローズ、居眠りしてますよ」
「はっ、難しすぎてつい」
「もう、妄想も使えませんものね」
「先生の魔法はどうやって使っているの」
「最近はこの魔力は、オレのなかのとある妄想をお気に入りのようなんです」
「どんな妄想?」
「俺と貴方が夫婦になる妄想や、貴方の痴態ですかね」
「……? せんせえ?」
「……伝わらないですか? 貴方を気に入ってるんですよローズ。歌を聴いたときから、ずっとずっと。昔あの歌を聴いたときから、ずっと貴方が好きでした」
リーゼルグ先生は大笑いして、いつもの鼻歌を真似する。
「魔力を失ったときに、貴方が通りかかって。この歌を歌っていた。染みたんです、とても。救われたんです」
「適当なその場限りの歌詞で!?」
「その時そんなこと知らなかったんですよ、だから貴方が覚えてないなんてショックでしたよ。それで、告白のお返事は?」
にこやかにリーゼルグ先生は妾に手を差し出すけれど、妾は笑って告げた。
「サリスがいるから、駄目よ」
――教室の外で、サリスと殿下が聞いてるなんて、思わなかった。
二人が子供のように取っ組み合って喧嘩してるなんてことも。
魔物の駆除に尽力をそそぐも一向にどうにもできない。
アシュが大けがをしたと聞いた。
意識を取り戻した妾の最初に聞いた話は、アシュが大きな怪我をしたという話。
リーゼルグ先生が必死に戦っているけれど、まだ魔物も消えず。
殿下も奔走し、サリスは国のために回復役をつくり配っては作っているとのこと。
オズたちも必死だとのこと。
妾は慌ててベッドから降りて。街の中へ向かう。
リーゼルグ先生が襲われ駆けていて、妾は必死に声を張り上げる。
「アシュ×リーゼルグ先生の触手責め!!」
回復魔法がリーゼルグ先生を癒やすけれど、どんどん簡単に妄想のネタなんて思いつかないの。回復の癒しの明かりは長くは続かない。
妾は先生のもとに駆けつけ、どうしようと先生を見上げる。
泣きそうだった。この国が終わりそうで怖かったの。
「大丈夫。大丈夫ですよ、聖女なんです胸を張って」
「駄目よ、きっともう終わるのよ。逃げて先生!」
「貴方が最初に諦めてはいけないでしょう? 聖女様、しっかりして」
「聖女じゃない、妾は聖女なんかじゃない! もうだって、その妄想が浮かばないのこんなときだから!」
「それでも。貴方は、ずっと俺を癒やし続けてくれていた。昔から」
「先生……」
「お前なら、できるよ」
リーゼルグ先生の言葉に、眺めていただけのロス様がきらきらと輝きだし、目を細めた。
妾にだけにしか見えなかったはずのロス様は、他の人にも見え始め、皆が眩しそうにする。
「ローズ、彼は??」
「……彼は、」
神様なんだけど。様子が違う。
ロス様はにこやかに微笑み、ぽろぽろと泣き出した。閃光の中で涙が落ちていく。
「もういいよ、ローズ。今までありがとう」
「ロス様?」
「違う、違うんだ。思い出した、僕は彼の物だ」
「なあにそれ、どういう意味!? 昔の恋仲!?」
「ふふ、君は相変わらずだね。違う、僕は――彼の魔力だ。君との短い付き合いは、とっても暖かくて、好きだった。ありがとう」
ロス様はふおんと浮かぶと、リーゼルグ先生に吸収されていく。
リーゼルグ先生のなかにロス様が吸収されていけば、先生はきらきらと砂金を引き連れ、試しに魔法を詠唱する。
「烈火詠唱・コルク」
最上位とされる炎の魔法の詠唱の仕方だった。すると業火が魔物だけを包んでいく。この国中の魔物を全てだ。
かつての偉大な魔法使いが、戻ってきたのだ。
一斉に当たりも先生が願えば、国中を癒やしていく。
たちどころに災害は消え、やってきた殿下が笑った。
「勇者の片腕のご帰還だ」
「どういうこと?」
「昔、リーゼルグは勇者の相棒で、先の魔王との戦いで魔力を失っていたんだよ。
その魔力は勇者以上だった。今まであの魔力どこにいってたんだろう」
妾はリーゼルグ先生と目が合う。
先生の笑みの中にロス様を見つけ、ロス様はリーゼルグ先生の分身だったんだと理解すると、散々妄想を聞かれたのを思い出す。
「黒歴史よ」
妾は頭を抱えた。
*
リーゼルグ先生は称えられ、王様に宮廷魔術師を願われたが辞退した。
隠居暮らししたいとのことだった。
妾はあれから癒やしの力が使えなくなって、聖女もお役御免になるかと思ったけれど。
あのとき先生の眼差しに、勇気がわいて。
聖女も悪くないな、なんて思って、癒やしの力を習おうと勉強中。
「ローズ、居眠りしてますよ」
「はっ、難しすぎてつい」
「もう、妄想も使えませんものね」
「先生の魔法はどうやって使っているの」
「最近はこの魔力は、オレのなかのとある妄想をお気に入りのようなんです」
「どんな妄想?」
「俺と貴方が夫婦になる妄想や、貴方の痴態ですかね」
「……? せんせえ?」
「……伝わらないですか? 貴方を気に入ってるんですよローズ。歌を聴いたときから、ずっとずっと。昔あの歌を聴いたときから、ずっと貴方が好きでした」
リーゼルグ先生は大笑いして、いつもの鼻歌を真似する。
「魔力を失ったときに、貴方が通りかかって。この歌を歌っていた。染みたんです、とても。救われたんです」
「適当なその場限りの歌詞で!?」
「その時そんなこと知らなかったんですよ、だから貴方が覚えてないなんてショックでしたよ。それで、告白のお返事は?」
にこやかにリーゼルグ先生は妾に手を差し出すけれど、妾は笑って告げた。
「サリスがいるから、駄目よ」
――教室の外で、サリスと殿下が聞いてるなんて、思わなかった。
二人が子供のように取っ組み合って喧嘩してるなんてことも。
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