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第七話 お決まりの監禁

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 昼寝をしていると布団に蹴りを入れられ、起きると昼過ぎだった。
 蹴ったのは若頭である奏さん。奏さん相手なら文句も言えず、オレはぶつくさ言いながら起き上がる。

「なーに、気持ちよく寝てたんだけど」
「概ね好評で、いい働きをしてくれるな、お前の旦那」
「旦那じゃないよ、ただのペット」
「ペットだとしてもいい働きだ、お前の手綱は見込んだとおり。ゴミどもの掃除をしっかりとしてくれたよ」
「それならそろそろお払い箱?」
「そうなれたらいいんだけどな~第二段階なんだな~」
「だよな~? ここで終われば皆ハッピーエンドだったのにな~?」
「そろそろ旋風の“持病”が発生する頃合いだ。とりあえず皆には近づくなって声かけたが、雛ちゃんも自分で自衛よろ」
「そこは奏兄さんが、“僕が守ってあげる”とか言うところじゃないんですか」
「うーん、命は一つしかないからな。スペアがないから、投げ捨て出来ないんだよな」
「つまりオレの命は、組より軽いと」
「かたぎの人よりは重いから安心してな。だからこその忠告だぞ、今までと同じあいつだと見るな。舐めてかかるな、本気で生き残りたきゃ説得は命がけだ、いいな? これでも長い付き合いで一番可愛がってきてたから教えてるんだぞ」
「野良猫にかける気紛れの情、有難う」
「いいや。飼い猫さ。ま、暫くは大人しく……してても無駄だと思うが、気をつけろよ」

 奏さんはオレをもう一回軽く蹴ると、さっさと去ってしまった。
 持病って何だろうと思っていると、いつものメッセージアプリの通知が倍になる。
 今まで盗聴なり盗撮なりしていたのか、メッセージアプリのチャットにはしっかりと「嫉妬してます」と誰が見ても分かるポエムがびっしり載っていた。

「あー……病んでる病んでる」

 リストカットしちゃうよ?? みたいな腕の写真まで載っけてるので、「勝手にしろ」と返信すればまた通知が倍の倍。
 ポエムだらけのチャットにうざったさを感じたオレは通知を消して、すやりと再び夜まで眠る。
 夜に揺すられて起きれば、目の前には旋風の顔。
 旋風は泣きそうな顔をして、頬を膨らませていたので、やっぱりハムスターを連想してしまう。

「酷い、日向さん。嗤った」
「いや、あの、可愛くてな」
「そんな言葉誰にでも言ってるんでしょう? 僕知ってるんですからね、貴方の過去の客全部洗いました。全員、貴方から可愛がられてた……大層楽しい思いをされていたのですね」
「本当に楽しいと思うなら帰れよ、お前にはオレのこと分からないよ」
「……ッ、言い過ぎ、ました」
「さぞかし愉しく見えたからそんなこと言うんだろ? 借金背負って悲劇のヒロイン気取ってるなーって思ったんだろ」
「違います!! 嗚呼、愚かでした、僕が! お願いだ、日向さん、こっちを向いて……」
 顔を向けてやると、旋風はほっとしたようで微笑んだ。
 しょうがないから、頭を撫でてやりながら笑っておいた。
「あのな、オレは永遠が欲しいんだ」
「永遠?」
「そう、恋人には永遠を求めるんだ。でも、そんなの現実じゃあり得ないって知ってるよ」
「どうして?」
「永遠を誓える仲になんてそう簡単に出会えないからだ。浮気するし不倫するだろ、更に言うなら愛が冷めることもある。永遠なんて、あるわけがない。漫画だけの世界だ」
「……どうやったら僕は貴方の永遠になれますか?」
「なることはないよ、お前だっていずれオレのこと放って巣穴に帰る」
「そんなことない!!」

 大声で怒鳴ってから旋風はわなわなと震え、自分の顔を覆っていた。
 可哀想に泣いているのかなと思って手を伸ばせば、身体を引き寄せられ、スタンガンを当てられた。ばちんと大きな音が鳴り、身体が身動きできない。
 うっとりとした旋風がそこにはいた。

「僕が貴方でいっぱいなこととことん教えてあげます、だから安心して永遠を一緒に過ごしましょう……僕の日向さん。僕だけの……ふ、ふふ、僕だけのだ。誰も、誰も触れさせてやらない! 奏にもだ!」

 あー、そろそろ監禁する頃合いだから気をつけろって、奏さんは言いたかったんだなーと薄れゆく意識の中で気づいた。
 何だか半分だけお人好しなのに、半分だけ不親切で少しだけおかしかった。


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