兄さん覗き見好きなんだね?

かぎのえみずる

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第二部 視線

第二十六話 美味しいチェリー

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 帰る時間まで抱き締め合っていた枯葉だったが、ベビードールを脱がし、それをゴミ箱に捨てながら残念そうな表情をした。
「兄さん、あのね、さっきのベビードールを着て、お客さんの前に出て貰います」
「……さ、っきの?」
「新しいベビードールになるんですけれど、デザインは変わりません。お客さんのハジメテを奪う感じで、淫乱に演じてください……そんな顔しないで。僕も心苦しいのですよ」
 あまり気が進まない感情が表に出たのだろう、柚ははっとして首を振る。
 枯葉だって耐えて他の客とえっちできてるのだ、自分だって頑張って金を貯めねばなるまいと柚は決意し「判った」と告げた。

「枯葉、家の鍵貸して…………俺、持ってくるの忘れた」
 枯葉と柚は帰る時間をずらしていた、毎度一緒では仲が良すぎると親も変に思うだろうから。
 何でも無い、他愛ない話をしようと柚は、枯葉の顔を見て決めた。
 枯葉の表情はあまりにやるせない。

「進路決めたか? 教育学部がいいな、俺は……」
「僕はまだ、内緒です」
「何でだよ、教えろよ……」
「だって、多分僕は受験することになる、今決めてるとこにするなら」

 柚たちの学校はエスカレーター式で、ある程度優秀であれば、希望学部を提出するだけで認められれば大学を望めるものだった。
 枯葉自身は頭が良く回り、勉強の仕方も自分なりにやれば得意であった。

「受かったら兄さんに真っ先に教えるので、身体でお祝いしてくださいね」
「ばーか……プレゼントの一つはくれてやるよ」




 とうとうこの日がきた、兄はベビードールとショーツだけを身に纏い。
 枯葉は客のリクエストで、白い学ランを身に纏う。
 学生らしい若者を視線だけでも味わいたいという変態的な要望のせいだ。
 柚を競り落とした客は、大喜びでシャワーを浴びている。

 その間に柚の性感が落ちないようにと、胸を弄ったり身体を触ったりしているのだが、この部屋は確かに仕掛けがあった。

 大画面で柚と枯葉のいる部屋を、大勢で見ている部屋がスクリーンで見えるのだ。
 つまり、自分たちのえっちや、それで盛り上がる沢山集ってる人々も観察できる、まさに兄好みの部屋だ。
 兄の身体を弄って兄が僅かに震える度に、客が嬉しげにうっとりと見つめている。
 それがリアルタイムに間近に判る部屋だ――。

 客がシャワーからあがるなり、枯葉は柚の身体に触れるのをやめ、客へ柚を誘導する。
 誘導された柚は、おずおずと口淫で客の肉棒を起立させていき、客は気持ちよさに吐息をつく。
 客が吐息をつく間に柚は、枯葉からやり方を教わった口でゴムをつけるという手に出る。
 ゴムがつけば、客はベッドで寝そべり、柚は客の上に跨がる。
 まだ現時点では挿入しない。

「これがあの夢にまで見た、可憐な赤い蕾ですか、可愛い膨らみだ」
 客がくにくにと柚の胸の尖りを弄り、やがてむしゃぶりつき、赤ん坊のように吸い続ける。
 柚の性感が更に高まるように後ろから枯葉は、耳を蹂躙する。

「お客様、うちの兄さんは美味しいでしょう?」
「ああ、ああ! 甘美な背徳の味がするよ……表情を見たまえ、気持ちよさに困惑している! 私を誘惑するいけない子だ」
 息づかいが荒い客に、柚は流し目をし、相手の唇へ人差し指を置く。

「お客様も、美味しそうなさくらんぼです、よ……」

 緩く笑みを浮かべ誘う様は、確かに夢魔のようであった。


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