エンド後勇者、奴隷たちに振られまくる総受け生活

極寒の日々

文字の大きさ
16 / 72

16女の子

しおりを挟む
「マサキ…どう?」

俺の選んだ靴を履いてはにかむセイレスの可愛い事と言ったら…。
どうかどうか、俺の娘になって欲しい。

「か、か、可愛い! よ、よく似合ってる! せ、世界一可愛い!」
「へへ…」
「マサキ様、私はどう…でしょうか?」

照れるセイレスに見とれていると、全身を着飾ったクローエさんも聞いてきた。

「う、うん。き、綺麗だと、お、思います」

本当は複雑なデザインのドレスに大ぶりなネックレスは派手過ぎないかなという感想が頭をよぎったが、似合ってはいるのでぶんぶんと頷く。
余計なことを言わないのがマナーというものだろう。
いや、もしかしたら“綺麗”もセクハラになってしまわないかな。
心配になった俺は早々にクローエさんとの話を切り上げ商人に向き直る。

「ぜ、全部頂きます」
「ありがとうございます。いやぁこのようにお美しい奥様をお迎えされるとは、さすがは勇者様ですな」
「まぁ奥様ですって…ふふ、照れますわ」

商人が俺に向かって発した世辞にクローエさんが頬を染める。

「おや、これは失礼。まだご婚約者様でしたかな」

美女の照れた様子に朗らかに笑う商人。
周囲を漂うほんわかした空気に驚いて何も言えなくなる。

(そっか。俺とクローエさんってそんな風に見えるのか)

今までセイレスの世話係で屋敷のみんなの憧れのマドンナという認識しかなかったが、客観的にみれば妙齢の女性にドレスやアクセサリーを贈るってことは世間一般でみれば恋人や夫婦の関係に見られるものだ。
女性であるクローエさんをそういう対象に少しも見ていなかった俺には商人の反応は青天の霹靂だった。
ふと、商人とクローエさんのやり取りを呆気に取られて見守っていた俺の手をぎゅっと握る小さな存在に気付く。

「マサキ…セイ眠くなった…」
「あ、もうお昼寝の時間か」

眠気で不機嫌なのか口をへの字に曲げて目をこするセイレス。
慌ててその手を止めて、小さな体を抱き上げる。

「それじゃあ俺はこれで。支払いはジョフィルに任せるよ。よろしくね」
「かしこまりました」

丁寧に頭を下げてくれるジョフィルに見送られてお昼寝用の寝室に運ぶ。
3階を女子専用にしているがこの部屋は2階の俺の部屋の隣で、内側で扉が繋がっている。
本来は対になった家主夫婦の寝室用に作られたものだが、独り身なので空いていたその部屋をセイレスが気に入ってこの部屋が良いとおねだりされて仕方なくお昼寝用に明け渡したのだ。
適度に日当たりも良く、万が一窃盗団にでも押し入られても俺が隣で待機しているので安全だ。

部屋のど真ん中に置かれた大きな天蓋付きベッドの上に慎重にセイレスを置く。
腕の中で何もしゃべらないのでてっきり移動中に眠ってしまったかと思ったが、頭をそっと撫でると大きな海色の目がぱっちりとこちらを捉えた。

「マサキ、一緒に寝よ」
「お、お、女の子とい、一緒のベッドには、は、入れないよ」

親しき中にも礼儀ありである。
首を振って拒否すると、セイレスはキョトンと不思議そうにそれを見上げる。

「セイ、女の子じゃないよ」
「ん?」

セイレスの言葉の意味が分からない。
セイレスは女の子ではない?
実は男の子だというのだろうか?
しかし入浴と着替えを任せているクローエさんから一言もそんなことを報告されたことはない。

「ど、ど、どういう意味? せ、セイレスは、お、男の子ってこと?」

いや、セイレスの性別が男女どちらでも俺は構わないのだが、ゲイの俺が男の子を引き取ったとなればジョフィルからショタコンの容疑で正義の鉄槌として暗殺される可能性が出てきてしまう。

「セイはセイだよ」

ちょっと頬を膨らませて不機嫌そうに返された予想外の言葉に面食らう。

「そ、そ、そっか。セ、セイレスはセイレスだな」

もしかすると女の子扱いされるのが嫌なお年頃なのかもしれない。
頷く俺にセイレスはニパッと花が咲いたように笑った。

「そうだよ。だから一緒に寝よ」

そう言って袖をぐいぐいと強引に引っ張られた俺は断る口実が思いつかずにそのままベッドに寝転ぶことになってしまった。
セイレスは猫のように懐にするりと潜り込むと、機嫌良さそうに胸元に顔をすりすりとこすりつけてくる。
仕方がないのでセイレスが寝てからこっそり抜け出そうと思っていたが、子供の温かい体温があまりに心地よくて気づけば一緒に爆睡。
夕方になってジョフィルに発見され、はしたない汚らわしいとしこたま怒られてしまった。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

原作を知らないblゲーに転生したので生きるため必死で媚びを売る

ベポ田
BL
blゲームの、侯爵家に仕える従者に転生してしまった主人公が、最凶のご主人様に虐げられながらも必死に媚を売る話。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

処理中です...