49 / 72
49勘違い
しおりを挟む
「ち、違うから! そ、そんなことしない!」
ようやく口に出せた否定の言葉。
ジョフィルはこの場の3人を見渡して、それからため息を吐いた。
「まさかあなた様自ら奴隷を洗うなんて…これは下心があったと取られても仕方ありませんよ。普段の行いを考えてごらんなさい」
「う、う…」
ショーンの言葉を間に受けたりはしなかったが、結局叱られてしまった。
「ショーン、これは新しい奴隷です。ふむ。洗えばかなりマシになりましたね」
テディをまじまじ見ながら感心するジョフィル。
「か、かなり、が、頑張ったんだ。ひ、ひどい汚れだったから」
「確かクリーン呪文をお使いになられますよね? 何故使わなかったのですか?」
「はっ…!」
クリーン呪文は身体の表面の汚れを除去出来る日常呪文で、当然俺は使えるのだが風呂好きなので普段はきっちり入浴する。
冒険の旅が終わってからは殆ど使っていなかったこともありすっかり忘れていた。
でもまぁテディに風呂の使い方も教えたかったし、気持ち良さそうだったから良しとしよう。
「…新しい奴隷? これが?」
「あ、ああ。テ、テディって言うんだ。な、仲良くしてあげてほしい」
紹介するとショーンは嫌そうに鼻に皺をつくった。
「んだよ紛らわしい。じゃあロキにはもう飽きたんですね」
「あ、飽きたっていうか、ちゃ、ちゃんと諦めてるから」
ショーンたちが俺が買ってきた元奴隷に何日好きで居続けるか賭けているのは知っている。
初日で俺の恋は終わったのに、ロキが対象の賭けの更新はまだ続いているらしい。
どういう判定基準なんだろう。
「それで今度はタイプ変えてヒョロガリですか」
「テ、テディは成り行きっていうか、な、なんていうか」
「じゃあ惚れて買ったわけじゃないのか」
「う、うん…」
俺の事情を知らないテディの前でするには気まずい会話だが、俺がゲイであることはいずれ知るだろうし隠しても仕方ない。
テディのきょとんとした目が怖い。
「テ、テディは前の家で、ひ、酷い扱いを受けていたみたいなんだ。だ、だからこの家に馴染めるように、い、色々と教えてあげてくれ」
「嫌ですよ、野郎の世話なんか」
「ショ、ショーンはなんだかんだ言って、せ、世話好きな面もあるし、き、期待してる」
「はぁ?勝手に期待すんのやめてもらえます? キモいから。とにかく俺は嫌ですからね!」
ショーンは心外だとばかりにドタドタと足を踏み鳴らしながら出て行ってしまった。
風呂は良かったのかな?
「じゃ、じゃあ、つ、続きやろう」
一息ついたところでタオルでテディの頭を拭くのを再開するが、もう水気は殆ど切れていた。
「お、温風で乾かそう」
呪文でテディの頭部の周りに温風を纏わり付かせる。
俺はその間に髪に櫛を通す。
うん、俺の特製トリートメントのお陰でサラサラになっている。
「ふわぁ…」
テディは心地良さそうに欠伸をした。
日向ぼっこをしている猫のようで可愛い。
「だから甘やかしすぎです。マサキ様が奴隷の世話などする必要はございません」
「テ、テディは、も、もう奴隷じゃない。そ、それに初日だけだから」
「え!」
俺たちの会話にテディの驚きの声が割り込んできた。
「あ、すみません。そうですよね…ご主人様に髪や身体を優しく洗って貰ったり、こんな風に心地よく触って貰えるのが当たり前なわけないですよね」
しゅんとするテディが可愛い。
そんなに気に入ってくれるなら本当は毎日やってもいいんだけど…。
それを口にすると怒られそうだ。
現にジョフィルが冷たい目でテディを睨みつけている。
でもテディが望むなら見つからないようにまた髪を乾かしてあげたいな。
「う、うん。き、綺麗だ」
手櫛で指感触を確認して満足する。
なんだか自信の作品を作り上げた達成感がある。
満足そうな俺とは裏腹に、ジョフィルは苛立ちを募らせているらしい。
不機嫌だと顔に書いてある。
「ジョ、ジョフィルにも、こ、今度やってあげるから」
「……!?」
何かフォローをしなくてはと声をかけると、ジョフィルは息をのんだ。
「な、何をっ…あなた様と二人で全裸で洗い合いなんて、そ、そんなはしたないことは出来ませんっ!」
ちょっと裏返った声で叫ぶジョフィル。
いや、何故互いを洗いっこするなんて発想になるんだ?
なんだかとんでもない飛躍だ。
「そ、それにいい歳をして頭をなでなでなんて! ハレンチです!」
顔を真っ赤にしているジョフィルに首を傾げる。
もしかして髪を乾かしてやったのが、頭なでなでしているように見えたのだろうか。
「い、いや、お、温風で生乾きの服を乾かしたりとか、そ、そんな感じの手伝いをしようかと…」
「あ……」
何故かジョフィルはピシリと固まり、石のように動かなくなってしまった。
ようやく口に出せた否定の言葉。
ジョフィルはこの場の3人を見渡して、それからため息を吐いた。
「まさかあなた様自ら奴隷を洗うなんて…これは下心があったと取られても仕方ありませんよ。普段の行いを考えてごらんなさい」
「う、う…」
ショーンの言葉を間に受けたりはしなかったが、結局叱られてしまった。
「ショーン、これは新しい奴隷です。ふむ。洗えばかなりマシになりましたね」
テディをまじまじ見ながら感心するジョフィル。
「か、かなり、が、頑張ったんだ。ひ、ひどい汚れだったから」
「確かクリーン呪文をお使いになられますよね? 何故使わなかったのですか?」
「はっ…!」
クリーン呪文は身体の表面の汚れを除去出来る日常呪文で、当然俺は使えるのだが風呂好きなので普段はきっちり入浴する。
冒険の旅が終わってからは殆ど使っていなかったこともありすっかり忘れていた。
でもまぁテディに風呂の使い方も教えたかったし、気持ち良さそうだったから良しとしよう。
「…新しい奴隷? これが?」
「あ、ああ。テ、テディって言うんだ。な、仲良くしてあげてほしい」
紹介するとショーンは嫌そうに鼻に皺をつくった。
「んだよ紛らわしい。じゃあロキにはもう飽きたんですね」
「あ、飽きたっていうか、ちゃ、ちゃんと諦めてるから」
ショーンたちが俺が買ってきた元奴隷に何日好きで居続けるか賭けているのは知っている。
初日で俺の恋は終わったのに、ロキが対象の賭けの更新はまだ続いているらしい。
どういう判定基準なんだろう。
「それで今度はタイプ変えてヒョロガリですか」
「テ、テディは成り行きっていうか、な、なんていうか」
「じゃあ惚れて買ったわけじゃないのか」
「う、うん…」
俺の事情を知らないテディの前でするには気まずい会話だが、俺がゲイであることはいずれ知るだろうし隠しても仕方ない。
テディのきょとんとした目が怖い。
「テ、テディは前の家で、ひ、酷い扱いを受けていたみたいなんだ。だ、だからこの家に馴染めるように、い、色々と教えてあげてくれ」
「嫌ですよ、野郎の世話なんか」
「ショ、ショーンはなんだかんだ言って、せ、世話好きな面もあるし、き、期待してる」
「はぁ?勝手に期待すんのやめてもらえます? キモいから。とにかく俺は嫌ですからね!」
ショーンは心外だとばかりにドタドタと足を踏み鳴らしながら出て行ってしまった。
風呂は良かったのかな?
「じゃ、じゃあ、つ、続きやろう」
一息ついたところでタオルでテディの頭を拭くのを再開するが、もう水気は殆ど切れていた。
「お、温風で乾かそう」
呪文でテディの頭部の周りに温風を纏わり付かせる。
俺はその間に髪に櫛を通す。
うん、俺の特製トリートメントのお陰でサラサラになっている。
「ふわぁ…」
テディは心地良さそうに欠伸をした。
日向ぼっこをしている猫のようで可愛い。
「だから甘やかしすぎです。マサキ様が奴隷の世話などする必要はございません」
「テ、テディは、も、もう奴隷じゃない。そ、それに初日だけだから」
「え!」
俺たちの会話にテディの驚きの声が割り込んできた。
「あ、すみません。そうですよね…ご主人様に髪や身体を優しく洗って貰ったり、こんな風に心地よく触って貰えるのが当たり前なわけないですよね」
しゅんとするテディが可愛い。
そんなに気に入ってくれるなら本当は毎日やってもいいんだけど…。
それを口にすると怒られそうだ。
現にジョフィルが冷たい目でテディを睨みつけている。
でもテディが望むなら見つからないようにまた髪を乾かしてあげたいな。
「う、うん。き、綺麗だ」
手櫛で指感触を確認して満足する。
なんだか自信の作品を作り上げた達成感がある。
満足そうな俺とは裏腹に、ジョフィルは苛立ちを募らせているらしい。
不機嫌だと顔に書いてある。
「ジョ、ジョフィルにも、こ、今度やってあげるから」
「……!?」
何かフォローをしなくてはと声をかけると、ジョフィルは息をのんだ。
「な、何をっ…あなた様と二人で全裸で洗い合いなんて、そ、そんなはしたないことは出来ませんっ!」
ちょっと裏返った声で叫ぶジョフィル。
いや、何故互いを洗いっこするなんて発想になるんだ?
なんだかとんでもない飛躍だ。
「そ、それにいい歳をして頭をなでなでなんて! ハレンチです!」
顔を真っ赤にしているジョフィルに首を傾げる。
もしかして髪を乾かしてやったのが、頭なでなでしているように見えたのだろうか。
「い、いや、お、温風で生乾きの服を乾かしたりとか、そ、そんな感じの手伝いをしようかと…」
「あ……」
何故かジョフィルはピシリと固まり、石のように動かなくなってしまった。
1,127
あなたにおすすめの小説
落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした
444
BL
『醜い顔…汚らしい』
幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。
だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。
その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話
暴力表現があるところには※をつけております
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。
また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる