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52うっとり
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テディ視点
口の中に何かの液体を流し込まれた気がする。
ありとあらゆる草を煮詰めたような不思議な味だったが嫌な感じはしない。
腹が温かくなって、身に巣食っていた黒い靄がすべて消え去った感覚がある。
気付くと体がゆりかごのように揺られて心地良かった。
何が起こっているのか確認しなくてはと思うのに、じんわり滲む温かさがあまりに気持ちよくて目を開けたくなかった。
痛くもなく寒くもなく、怖くも悲しくもない。
この絶対的な安心に包まれる感覚は体験したことがある気がする…まるで母の腕の中のような。
覚えているはずがないのになぜかそんなことを思った。
マサキ様の背中で目を覚ますと世界は変わっていた。
デイビッド様の屋敷からなぜかマサキ様の屋敷に移動させられており、マサキ様が引き取ったと説明を受ける。
奴隷館を通さずに直接引き渡されることは初めてだったが、奴隷はただ目の前の人間の命令に従うだけの存在に徹する必要がある。
素早く受け入れた俺にポカンと気の抜けた顔をする新しいご主人様は、唐突に俺の名前を聞いた。
今まで沢山の意地悪な言葉を浴びせられたが、その中でもとびきりの意地悪だと思った。
だって奴隷に名前なんてあるはずがない。
奴隷は人間とは別の生き物なのだから。
答えられないでいると困った顔をされてしまい、悪意がないことに気付いた。
この方は奴隷が人間とは違うことを知らないのだ。
だから俺に騙されて名前まで与えてくれた。
人間と同じ…番号ではない名前。
人生で初めて生命の維持とはまったく関係ない施しを受けた。
俺の為に、俺だけの為に与えられたモノ。取り上げられる心配のないモノ。
可愛らしい響きのそれが俺に似合っているのかは分からないが、人間みたいにこの名前を死ぬまで大切に抱えていようと思う。
希望に満ちた心地ですべてをご主人様に捧げようと決意したのだが、それはあっさり却下されて生まれた時から装着している隷属の首輪が外されてしまった。
すごく心許ない。奴隷の身分が証明できなければ俺は一体何になるのか。
ご主人様は俺の事を人間だと言う。
でも俺はそれを信じることは出来なかった。
だってそれじゃあ、俺の今までの人生は何だったというのか。
あまりにバカみたいじゃないか。
納得できないのが顔に出ていたのか少し悲しそうに笑ったご主人様が印象的だった。
ご主人様が与えてくれる物は全て初めてで、全て温かい。
お湯は貴重な物のはずなのに俺なんかに惜しげもなく使ってくれる。
生まれて初めて触れたお湯は夢のように気持ちいい。
全身を泡に包まれてご主人様が右往左往しながらマッサージ。
まるで主従が逆転したみたいだ。
あまりに気持ちよくて眠ってしまいそうだったが、俺の為にちょこまかと忙しく動きまわるご主人様が独楽鼠のようで可愛らしく、それも見続けていたいと眠気と葛藤した。
お湯に浸かっていいと言われた時は自分は王族になってしまったかのような高揚感を感じ、身体の芯まで届くような心地よさに溶けてしまいそうになっていたが、ふいにご主人様が居ないことに気付く。
身体は温かいのに不安で心が冷たくなる違和感に耐えられずお湯から出て出口に向かう。
その先にご主人様が下着姿で居たのだが、おかしな男に迫られていた。
この男に服をはぎ取られたのかもしれないと最大限警戒したが、俺に気付いたご主人様は何事もなかったかのようにこちらに近寄って来た。
どうやら男は相手にされていないらしく、雲のようにフワフワのタオルでご主人様に大切に拭かれる俺を射殺しそうなほど憎々しげに睨みつけていた。
忌み嫌われ軽蔑の視線を向けられるのには慣れているが、あれは似て非なるもの。
俺本人というより、嫉妬で憎しみを向けられているように感じた。
きっと羨ましくて仕方がないのだろうが、ここは俺の居場所だ。
昨日まで何も持たず、それどころか死にかけていた俺が、今日は人間から強烈な羨望を向けられる。
その温度差に感情が麻痺を起こしそうだ。
男はご主人様の好みは筋肉隆々なごついタイプで、俺のようなヒョロガリはすぐに捨てられると吠える。
話の内容からして、ご主人様は男が好きなのだろうか?
確か2番目のご主人様も愛人は男娼だった。
貴族ではその事実が明るみになると凄くまずいようで、行為後の寝室の掃除は奴隷である俺の仕事だった。
いくら事実を言いふらそうと俺の言葉など真に受ける者はいないのでうってつけだったのだろう。
日々を生き抜くことに精一杯で、肉欲なんて湧く余裕を持ったことがなく俺にはよくわからないが、ご主人様は俺にそういうことを求めているのだろうか。
しかし男曰く、俺はご主人様のタイプではないらしい…。
まぁ…このままご主人様の側にいられるのなら何でも出来ると思う。
その後、初めて目にする魔法というもので髪に温かい風を当てて乾かしてもらう。
ご主人様は奴隷も人間だというけれど、こんなことは俺には絶対に出来ない。
やはり同じ生き物だとは思えない。
それともご主人様が特別な生き物なのだろうか?
頭を撫でられうっとりしながら、そんなことを考えた。
口の中に何かの液体を流し込まれた気がする。
ありとあらゆる草を煮詰めたような不思議な味だったが嫌な感じはしない。
腹が温かくなって、身に巣食っていた黒い靄がすべて消え去った感覚がある。
気付くと体がゆりかごのように揺られて心地良かった。
何が起こっているのか確認しなくてはと思うのに、じんわり滲む温かさがあまりに気持ちよくて目を開けたくなかった。
痛くもなく寒くもなく、怖くも悲しくもない。
この絶対的な安心に包まれる感覚は体験したことがある気がする…まるで母の腕の中のような。
覚えているはずがないのになぜかそんなことを思った。
マサキ様の背中で目を覚ますと世界は変わっていた。
デイビッド様の屋敷からなぜかマサキ様の屋敷に移動させられており、マサキ様が引き取ったと説明を受ける。
奴隷館を通さずに直接引き渡されることは初めてだったが、奴隷はただ目の前の人間の命令に従うだけの存在に徹する必要がある。
素早く受け入れた俺にポカンと気の抜けた顔をする新しいご主人様は、唐突に俺の名前を聞いた。
今まで沢山の意地悪な言葉を浴びせられたが、その中でもとびきりの意地悪だと思った。
だって奴隷に名前なんてあるはずがない。
奴隷は人間とは別の生き物なのだから。
答えられないでいると困った顔をされてしまい、悪意がないことに気付いた。
この方は奴隷が人間とは違うことを知らないのだ。
だから俺に騙されて名前まで与えてくれた。
人間と同じ…番号ではない名前。
人生で初めて生命の維持とはまったく関係ない施しを受けた。
俺の為に、俺だけの為に与えられたモノ。取り上げられる心配のないモノ。
可愛らしい響きのそれが俺に似合っているのかは分からないが、人間みたいにこの名前を死ぬまで大切に抱えていようと思う。
希望に満ちた心地ですべてをご主人様に捧げようと決意したのだが、それはあっさり却下されて生まれた時から装着している隷属の首輪が外されてしまった。
すごく心許ない。奴隷の身分が証明できなければ俺は一体何になるのか。
ご主人様は俺の事を人間だと言う。
でも俺はそれを信じることは出来なかった。
だってそれじゃあ、俺の今までの人生は何だったというのか。
あまりにバカみたいじゃないか。
納得できないのが顔に出ていたのか少し悲しそうに笑ったご主人様が印象的だった。
ご主人様が与えてくれる物は全て初めてで、全て温かい。
お湯は貴重な物のはずなのに俺なんかに惜しげもなく使ってくれる。
生まれて初めて触れたお湯は夢のように気持ちいい。
全身を泡に包まれてご主人様が右往左往しながらマッサージ。
まるで主従が逆転したみたいだ。
あまりに気持ちよくて眠ってしまいそうだったが、俺の為にちょこまかと忙しく動きまわるご主人様が独楽鼠のようで可愛らしく、それも見続けていたいと眠気と葛藤した。
お湯に浸かっていいと言われた時は自分は王族になってしまったかのような高揚感を感じ、身体の芯まで届くような心地よさに溶けてしまいそうになっていたが、ふいにご主人様が居ないことに気付く。
身体は温かいのに不安で心が冷たくなる違和感に耐えられずお湯から出て出口に向かう。
その先にご主人様が下着姿で居たのだが、おかしな男に迫られていた。
この男に服をはぎ取られたのかもしれないと最大限警戒したが、俺に気付いたご主人様は何事もなかったかのようにこちらに近寄って来た。
どうやら男は相手にされていないらしく、雲のようにフワフワのタオルでご主人様に大切に拭かれる俺を射殺しそうなほど憎々しげに睨みつけていた。
忌み嫌われ軽蔑の視線を向けられるのには慣れているが、あれは似て非なるもの。
俺本人というより、嫉妬で憎しみを向けられているように感じた。
きっと羨ましくて仕方がないのだろうが、ここは俺の居場所だ。
昨日まで何も持たず、それどころか死にかけていた俺が、今日は人間から強烈な羨望を向けられる。
その温度差に感情が麻痺を起こしそうだ。
男はご主人様の好みは筋肉隆々なごついタイプで、俺のようなヒョロガリはすぐに捨てられると吠える。
話の内容からして、ご主人様は男が好きなのだろうか?
確か2番目のご主人様も愛人は男娼だった。
貴族ではその事実が明るみになると凄くまずいようで、行為後の寝室の掃除は奴隷である俺の仕事だった。
いくら事実を言いふらそうと俺の言葉など真に受ける者はいないのでうってつけだったのだろう。
日々を生き抜くことに精一杯で、肉欲なんて湧く余裕を持ったことがなく俺にはよくわからないが、ご主人様は俺にそういうことを求めているのだろうか。
しかし男曰く、俺はご主人様のタイプではないらしい…。
まぁ…このままご主人様の側にいられるのなら何でも出来ると思う。
その後、初めて目にする魔法というもので髪に温かい風を当てて乾かしてもらう。
ご主人様は奴隷も人間だというけれど、こんなことは俺には絶対に出来ない。
やはり同じ生き物だとは思えない。
それともご主人様が特別な生き物なのだろうか?
頭を撫でられうっとりしながら、そんなことを考えた。
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