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54不審者
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テディに性奴隷とかは特に募集していない旨を慌てて説明する羽目になった。
確かに恋人は欲しいが肉欲だけを満たしたいわけではない。
俺のことを愛してくれる人と愛し合いたいのだ。
恋人探しにしたってデイビッドの失敗もあるし、セイレスもいるのだから今はもっと慎重になるべきだ。
そんなことを叫んだものだからウォレントや他の料理人まで厨房から顔をのぞかせているし、ジョフィルからは冷気が漏れている。
テディは腑に落ちていない様子だったが、精進しますと最後には納得してくれた。
納得…したんだよな?
翌日からテディは屋敷で生き生きと活動し始めた。
これまでも奴隷として働いていたためか、掃除も洗濯も馬の世話も庭の手入れもなんでも出来た。
屋敷の他の人間も全員元奴隷だと知ると凄く驚いたが、ふんと小さく鼻を鳴らして「素人が…」と呟いていて、よく分からないがちょっと怖かった。
食事は好きに食べていいと知ると、凄い食欲を発揮してウォレントを驚かせていた。
テディ用の消化に良いメニューは翌日には撤廃され、2,3人前をペロリと平らげてしまう食べっぷりだ。
屋敷の手の足りていないところをなんでもこなしてくれるオールラウンダーだが、本人は庭仕事を一番好んでいるようだ。
というのも思いのほかショーンに懐いているらしく、ショーンは邪険にしているのに積極的に話しかけているのを目にする。
アルは仲良しのショーンを取られて寂しいかもしれないと気を使って声を掛けたりお菓子を差し入れたりたが、すごく嫌そうにされるだけだった。
もうね。汚らしい物を見るあの目が怖い。
なんだか反抗期の娘を持ったお父さんの気分を味わっている感覚だ。
セイレスも大きくなってこんな感じだったらどうしようかと密かに怯えた。
そんな感じで屋敷の仕事をしてもらいつつ、合間に勉強をさせることにした。
なんでも文字が読めないらしい。
丁度セイレスも文字の勉強をしているところだったので、セイレスのお勉強の時間にテディも参加する形をとっている。
講師は元商家の娘さんであるクローエさんだ。
突然現れた痩せノッポのテディにクローエさんも最初は戸惑っている様子だった。
しかしテディが先生と呼んで尊敬のまなざしを向けて来るものだから、積極的な姿勢で授業に挑む姿も相まって次第に好意的になった気がする。
今まで打ってもまったく響かないセイレスを相手にしていたので、そのギャップにやられたのもあるだろうが。
うちの子がご迷惑をおかけして申しわけない。
そんな日々を過ごして気付くとテディを迎えて1月経った。
最近のテディはなんだか急激に肥えた気がする。
元がやせ過ぎなので良い事とは思うが、変化が急すぎるのも体に悪いのではなかろうか。
横の厚みが2倍になっている気がする。
それは柔らかい脂肪というよりみっちりとした筋肉のように見える。
よく腕立てやスクワットをしている姿を見るのでおそらく鍛えているのだろう。
たまにこちらに向かいマッスルポーズをドヤ顔で見せつけてくるが、なんかよく分からないが本人が楽しそうなので愛想笑いでスルーしている。
*****
この日俺は手紙を前に気落ちしていた。
セイレスの出自に関して人を使って調査させていたのだが、両親は見つけられず仕舞いだという報告書に目を通しているところだ。
エルフの集落は隠れ里として有名で並大抵の者には特定は不可能だったが、雇った調査人は費用が莫大に必要な代わりに優秀だった。
いくつかのエルフの里は見事探し当てたのだが、残念ながらセイレスのご両親らしき人物はいなかったようだ。
「マサキ、元気ない? 風邪ひいた?」
膝に乗せたセイレスが眉を下げて不安そうに問いかけてくる。
「だ、大丈夫だよ。お、俺は元気だ」
頭を撫でると嬉しそうに目を細めるセイレス。
満足したのかそのまま手に持った児童書の読書を再開させる。
何度かセイレス本人に両親のことやどこからやって来たのか尋ねたこともあるが、本人は「分からない」としか言わない。
少しでも詳しい情報はないかと色々と聞いてみたが、その内口を引き結んで何も喋らなくなってしまう。
よほど辛いことでもあったのだろうかと思えば、これ以上は何も聞けない。
———トントン
部屋の扉がノックされる。
俺の部屋を訪ねるのは大体ジョフィルなのだが、今日は珍しい人物が顔を見せた。
「マサキ様、今よろしいでしょうか?」
「あ、あ、ロ、ロキ。か、帰ってたんだな」
この頃特に忙しそうで、仕事に出ると一週間は戻らないロキが久々に顔を見せてくれた。
嬉しくて思わず顔が緩む。
「はい。昨日の夜中に」
「お、おかえり」
「ただいま帰りました」
ほんわかした空気が流れるが、ロキが途中でハッとする。
「忘れるところでした。実は屋敷に不審者が入り込んだらしくて確保しました」
「ふ、不審者!?」
「しかも二人も」
ここが勇者の屋敷だと知らない泥棒グループか何かだろうか。
「とくに二人目の男が不審でして。俺と目が合うなり筋肉がどうとか一番の座は譲らないとか喚きながら迫ってきたので、縄で捕獲して転がしてます」
「んん?」
「男曰くマサキ様の性奴隷だと言うのです。マサキ様に限ってそんな訳はないと思いますが…最近性奴隷を飼ったりしてませんよね?」
うん、飼ってはない。
飼ってはないが心当たりはある。
「そ、それは、た、多分大丈夫だから、あ、あとで放してやってくれ」
「え?性奴隷飼ってるんですか?」
「か、飼ってない!」
「ですよね。ではもう一人の方なのですが、庭に侵入してコソコソしているところを確保しておりまして」
こちらは本物の不審者か。
「身なりがかなり変わってますが、あれは前に一緒にバーに行った時にあった男だと思います」
それってもしや…デイビッドか?
テディを取り返しに来たのか復讐に来たのか。
脅しが足りなかっただろうか。
だったら今度は…。
「あれはきっとマサキ様のストーカーです。可愛いから狙われたんですよ」
俺が黒いことを考えている間にロキが物凄く的外れな事を言って、思わず毒気を抜かれてしまった。
確かに恋人は欲しいが肉欲だけを満たしたいわけではない。
俺のことを愛してくれる人と愛し合いたいのだ。
恋人探しにしたってデイビッドの失敗もあるし、セイレスもいるのだから今はもっと慎重になるべきだ。
そんなことを叫んだものだからウォレントや他の料理人まで厨房から顔をのぞかせているし、ジョフィルからは冷気が漏れている。
テディは腑に落ちていない様子だったが、精進しますと最後には納得してくれた。
納得…したんだよな?
翌日からテディは屋敷で生き生きと活動し始めた。
これまでも奴隷として働いていたためか、掃除も洗濯も馬の世話も庭の手入れもなんでも出来た。
屋敷の他の人間も全員元奴隷だと知ると凄く驚いたが、ふんと小さく鼻を鳴らして「素人が…」と呟いていて、よく分からないがちょっと怖かった。
食事は好きに食べていいと知ると、凄い食欲を発揮してウォレントを驚かせていた。
テディ用の消化に良いメニューは翌日には撤廃され、2,3人前をペロリと平らげてしまう食べっぷりだ。
屋敷の手の足りていないところをなんでもこなしてくれるオールラウンダーだが、本人は庭仕事を一番好んでいるようだ。
というのも思いのほかショーンに懐いているらしく、ショーンは邪険にしているのに積極的に話しかけているのを目にする。
アルは仲良しのショーンを取られて寂しいかもしれないと気を使って声を掛けたりお菓子を差し入れたりたが、すごく嫌そうにされるだけだった。
もうね。汚らしい物を見るあの目が怖い。
なんだか反抗期の娘を持ったお父さんの気分を味わっている感覚だ。
セイレスも大きくなってこんな感じだったらどうしようかと密かに怯えた。
そんな感じで屋敷の仕事をしてもらいつつ、合間に勉強をさせることにした。
なんでも文字が読めないらしい。
丁度セイレスも文字の勉強をしているところだったので、セイレスのお勉強の時間にテディも参加する形をとっている。
講師は元商家の娘さんであるクローエさんだ。
突然現れた痩せノッポのテディにクローエさんも最初は戸惑っている様子だった。
しかしテディが先生と呼んで尊敬のまなざしを向けて来るものだから、積極的な姿勢で授業に挑む姿も相まって次第に好意的になった気がする。
今まで打ってもまったく響かないセイレスを相手にしていたので、そのギャップにやられたのもあるだろうが。
うちの子がご迷惑をおかけして申しわけない。
そんな日々を過ごして気付くとテディを迎えて1月経った。
最近のテディはなんだか急激に肥えた気がする。
元がやせ過ぎなので良い事とは思うが、変化が急すぎるのも体に悪いのではなかろうか。
横の厚みが2倍になっている気がする。
それは柔らかい脂肪というよりみっちりとした筋肉のように見える。
よく腕立てやスクワットをしている姿を見るのでおそらく鍛えているのだろう。
たまにこちらに向かいマッスルポーズをドヤ顔で見せつけてくるが、なんかよく分からないが本人が楽しそうなので愛想笑いでスルーしている。
*****
この日俺は手紙を前に気落ちしていた。
セイレスの出自に関して人を使って調査させていたのだが、両親は見つけられず仕舞いだという報告書に目を通しているところだ。
エルフの集落は隠れ里として有名で並大抵の者には特定は不可能だったが、雇った調査人は費用が莫大に必要な代わりに優秀だった。
いくつかのエルフの里は見事探し当てたのだが、残念ながらセイレスのご両親らしき人物はいなかったようだ。
「マサキ、元気ない? 風邪ひいた?」
膝に乗せたセイレスが眉を下げて不安そうに問いかけてくる。
「だ、大丈夫だよ。お、俺は元気だ」
頭を撫でると嬉しそうに目を細めるセイレス。
満足したのかそのまま手に持った児童書の読書を再開させる。
何度かセイレス本人に両親のことやどこからやって来たのか尋ねたこともあるが、本人は「分からない」としか言わない。
少しでも詳しい情報はないかと色々と聞いてみたが、その内口を引き結んで何も喋らなくなってしまう。
よほど辛いことでもあったのだろうかと思えば、これ以上は何も聞けない。
———トントン
部屋の扉がノックされる。
俺の部屋を訪ねるのは大体ジョフィルなのだが、今日は珍しい人物が顔を見せた。
「マサキ様、今よろしいでしょうか?」
「あ、あ、ロ、ロキ。か、帰ってたんだな」
この頃特に忙しそうで、仕事に出ると一週間は戻らないロキが久々に顔を見せてくれた。
嬉しくて思わず顔が緩む。
「はい。昨日の夜中に」
「お、おかえり」
「ただいま帰りました」
ほんわかした空気が流れるが、ロキが途中でハッとする。
「忘れるところでした。実は屋敷に不審者が入り込んだらしくて確保しました」
「ふ、不審者!?」
「しかも二人も」
ここが勇者の屋敷だと知らない泥棒グループか何かだろうか。
「とくに二人目の男が不審でして。俺と目が合うなり筋肉がどうとか一番の座は譲らないとか喚きながら迫ってきたので、縄で捕獲して転がしてます」
「んん?」
「男曰くマサキ様の性奴隷だと言うのです。マサキ様に限ってそんな訳はないと思いますが…最近性奴隷を飼ったりしてませんよね?」
うん、飼ってはない。
飼ってはないが心当たりはある。
「そ、それは、た、多分大丈夫だから、あ、あとで放してやってくれ」
「え?性奴隷飼ってるんですか?」
「か、飼ってない!」
「ですよね。ではもう一人の方なのですが、庭に侵入してコソコソしているところを確保しておりまして」
こちらは本物の不審者か。
「身なりがかなり変わってますが、あれは前に一緒にバーに行った時にあった男だと思います」
それってもしや…デイビッドか?
テディを取り返しに来たのか復讐に来たのか。
脅しが足りなかっただろうか。
だったら今度は…。
「あれはきっとマサキ様のストーカーです。可愛いから狙われたんですよ」
俺が黒いことを考えている間にロキが物凄く的外れな事を言って、思わず毒気を抜かれてしまった。
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