56 / 72
56復活
しおりを挟む
特に焦ることもなく、ゆったりとした動きでデイビッドの上から降りるショーン。
激しく咽せるデイビッドのことも少しは気がかりだが、今はショーンの方が重要だ。
「なんすか大声出して。マサキ様って大きい声出せたんすね、珍し」
「い、今、な、何しようとした?」
「不審者をちょっと脅してただけですけど?冗談ですよ冗談」
肩をすくめて戯けてみせるショーンだったが、俺の表情を見て不機嫌そうに表情を曇らせる。
「なんですかその顔。まるで俺が本気で殺そうとしたみたいな反応しないでくれます?こいつがふざけたこと言ってたからお仕置きしただけです」
「デ、デイビッドは一応、し、知り合いだ。し、侵入の目的も定かでないうちに、ぼ、暴力なんてダメだ」
「ふーん…知り合いね。そいつが以前屋敷に連れて来た奴ですか?」
「あ、ああ。そ、そうだ」
そういえばショーンはテディと初めて会った時も同じ質問をしていたな。
「もしかしてこいつと付き合ったりしてます?」
ショーンが瞬きもせずにじっと見つめてくる。
いつもの戯けた雰囲気とはかけ離れた重い空気を感じた。
「つ、付き合ってないよ」
「へー…あっそ」
空気が途端に軽くなった。
いつもの緊張感のないダルそうな表情に様変わり。
先ほどの雰囲気は気のせいだったのかと瞬きをすると、ショーンはへらりと皮肉っぽく笑う。
「まぁどうでもいいんすけどね」
「おい、ショーン」
そのまま背を向けて去っていくショーンとそれを追いかけるアルを見送る。
結局ちゃんと叱ることが出来なかったが、舐められまくっている俺ではショーンに響くことは永遠にないだろう。
「ショーンってあんなに凶暴な面もあるんですね。殺気で思わず剣を抜きかけました」
ロキがショーンの背中を見つめながら呟く。
ショーンは実は犯罪奴隷だった。
しかし罪状は確か窃盗の罪で、他人を傷つける殺人や暴行ではなかった。
初犯だったらしく本来ならすぐに出られるような罪なのだが、盗みに入った相手が悪かった。
司法に絶大な権力を持つ貴族だったらしく、そのまま奴隷落ちさせられた経緯がある。
ショーンは奴隷館で自分から売り込んできた。
丁度立ち直ったジョフィルが屋敷の仕事に手をつけ始めて忙しそうにしていた時だった。
相手にされなさ過ぎて寂しかった時に、ショーンに檻から明るく喋りかけられて惹かれたのがきっかけだ。
今思えば出会った時はまだ丁寧に接してくれていた気がする。
今は俺に対する態度はあれだが仕事に対しては至って真面目で、口で言うほどサボったりもしていない様子。
だからもう更生したものだと思っていたが、もしや昔のワルだった頃の血が疼いたのだろうか。
「マサキ、マサキ!」
ショーンについて考えていると、声をかけられていることに気づく。
「デイビッド…」
「良かった、マサキ。誤解なんだ。縄を解いてくれ」
「……」
デイビッドを軽く睨みながら無言で縄を解く。
デイビッドの身なりはあの時と比べてかなり荒んだ印象だ。
前は高級な服をオシャレに着こなし清潔感があったが、今はよれたシャツ一枚で無精髭まで生えている。
「助かった。あー痛かった」
縛られていた手首を押さえながらヘラヘラしているデイビッド。
「そ、それで? な、何が目的だ?」
「おいおい。そんなに睨まないでくれよ。君に会いに来たが眼鏡の奴隷に追い返されてね。つい、庭から勝手に入ったら見つかってしまったんだ」
それを不審者と言うんだけど、一体何が誤解なんだ。
「ジョ、ジョフィルは奴隷じゃない。そ、それに君と俺は、な、仲良く家を訪問し合う、な、仲じゃないだろ?」
「ああ、そんな連れないこと言わないでくれよ。あの時の僕と今の僕は違うんだ」
「だ、だろうね」
荒んだデイビッドを見ながら皮肉を返す。
「君に魔法を掛けられてから、僕はおかしいんだ。誰かと寝ようとしても僕の下半身は誰にも反応しないんだ。どんな絶世の美女や美男子でもだよ?この僕がだよ?」
「そ、そういう契約紋を、き、刻んだって言っただろ?」
契約を解除して欲しいと言いに来たのかな。
テディを取り返しに来たのなら頷けなかったが、それなら本人の反省度合いによっては考えないこともない。
「一生このままなのかと僕は絶望した。子供の時ぶりに自慰も試してみたけど、やっぱり上手くいかなかった」
諦めにも似た悲哀の籠った表情のデイビッドは、喋りながら段々俯きがちになっていく。
う…ちょっと可哀想かもしれない。
いやいや、ここで絆されたら新たな被害者が生まれる。
「でもね、元気なんてまったくない自身を擦りながら、いつも頭を掠める記憶があったんだ」
「ほ、ほう」
なんか他人の自慰の話はあまり聞きたくないな。
「君が僕に魔法を掛けた時の記憶だ」
それはまぁ、EDの原因はあの時の魔法なんだから忌々しい記憶として脳裏にチラつくのは当然ではなかろうか。
「心底軽蔑しきったあの時の君の目…まるでうっかり踏んで靴の裏に張り付いてしまった害虫を見るような苛立ちの目。あの視線を思い出して自身を擦ってみると!」
「……」
なんか話の方向性が怪しいぞ…。
「なんと!僕の僕は復活したんだ!!」
「……」
「それはもう見事としか言いようがない! 過去にない膨張率と硬さだったよ!」
俯いていた顔をあげたデイビッドは頬を紅潮させてうっとりしていた。
「ショーンに始末させてた方が良かったかもですね」
今まで黙って背後に待機していたロキが小さく呟いた。
思わず頷きそうになったが寸前で止めた自分は偉いと思う。
激しく咽せるデイビッドのことも少しは気がかりだが、今はショーンの方が重要だ。
「なんすか大声出して。マサキ様って大きい声出せたんすね、珍し」
「い、今、な、何しようとした?」
「不審者をちょっと脅してただけですけど?冗談ですよ冗談」
肩をすくめて戯けてみせるショーンだったが、俺の表情を見て不機嫌そうに表情を曇らせる。
「なんですかその顔。まるで俺が本気で殺そうとしたみたいな反応しないでくれます?こいつがふざけたこと言ってたからお仕置きしただけです」
「デ、デイビッドは一応、し、知り合いだ。し、侵入の目的も定かでないうちに、ぼ、暴力なんてダメだ」
「ふーん…知り合いね。そいつが以前屋敷に連れて来た奴ですか?」
「あ、ああ。そ、そうだ」
そういえばショーンはテディと初めて会った時も同じ質問をしていたな。
「もしかしてこいつと付き合ったりしてます?」
ショーンが瞬きもせずにじっと見つめてくる。
いつもの戯けた雰囲気とはかけ離れた重い空気を感じた。
「つ、付き合ってないよ」
「へー…あっそ」
空気が途端に軽くなった。
いつもの緊張感のないダルそうな表情に様変わり。
先ほどの雰囲気は気のせいだったのかと瞬きをすると、ショーンはへらりと皮肉っぽく笑う。
「まぁどうでもいいんすけどね」
「おい、ショーン」
そのまま背を向けて去っていくショーンとそれを追いかけるアルを見送る。
結局ちゃんと叱ることが出来なかったが、舐められまくっている俺ではショーンに響くことは永遠にないだろう。
「ショーンってあんなに凶暴な面もあるんですね。殺気で思わず剣を抜きかけました」
ロキがショーンの背中を見つめながら呟く。
ショーンは実は犯罪奴隷だった。
しかし罪状は確か窃盗の罪で、他人を傷つける殺人や暴行ではなかった。
初犯だったらしく本来ならすぐに出られるような罪なのだが、盗みに入った相手が悪かった。
司法に絶大な権力を持つ貴族だったらしく、そのまま奴隷落ちさせられた経緯がある。
ショーンは奴隷館で自分から売り込んできた。
丁度立ち直ったジョフィルが屋敷の仕事に手をつけ始めて忙しそうにしていた時だった。
相手にされなさ過ぎて寂しかった時に、ショーンに檻から明るく喋りかけられて惹かれたのがきっかけだ。
今思えば出会った時はまだ丁寧に接してくれていた気がする。
今は俺に対する態度はあれだが仕事に対しては至って真面目で、口で言うほどサボったりもしていない様子。
だからもう更生したものだと思っていたが、もしや昔のワルだった頃の血が疼いたのだろうか。
「マサキ、マサキ!」
ショーンについて考えていると、声をかけられていることに気づく。
「デイビッド…」
「良かった、マサキ。誤解なんだ。縄を解いてくれ」
「……」
デイビッドを軽く睨みながら無言で縄を解く。
デイビッドの身なりはあの時と比べてかなり荒んだ印象だ。
前は高級な服をオシャレに着こなし清潔感があったが、今はよれたシャツ一枚で無精髭まで生えている。
「助かった。あー痛かった」
縛られていた手首を押さえながらヘラヘラしているデイビッド。
「そ、それで? な、何が目的だ?」
「おいおい。そんなに睨まないでくれよ。君に会いに来たが眼鏡の奴隷に追い返されてね。つい、庭から勝手に入ったら見つかってしまったんだ」
それを不審者と言うんだけど、一体何が誤解なんだ。
「ジョ、ジョフィルは奴隷じゃない。そ、それに君と俺は、な、仲良く家を訪問し合う、な、仲じゃないだろ?」
「ああ、そんな連れないこと言わないでくれよ。あの時の僕と今の僕は違うんだ」
「だ、だろうね」
荒んだデイビッドを見ながら皮肉を返す。
「君に魔法を掛けられてから、僕はおかしいんだ。誰かと寝ようとしても僕の下半身は誰にも反応しないんだ。どんな絶世の美女や美男子でもだよ?この僕がだよ?」
「そ、そういう契約紋を、き、刻んだって言っただろ?」
契約を解除して欲しいと言いに来たのかな。
テディを取り返しに来たのなら頷けなかったが、それなら本人の反省度合いによっては考えないこともない。
「一生このままなのかと僕は絶望した。子供の時ぶりに自慰も試してみたけど、やっぱり上手くいかなかった」
諦めにも似た悲哀の籠った表情のデイビッドは、喋りながら段々俯きがちになっていく。
う…ちょっと可哀想かもしれない。
いやいや、ここで絆されたら新たな被害者が生まれる。
「でもね、元気なんてまったくない自身を擦りながら、いつも頭を掠める記憶があったんだ」
「ほ、ほう」
なんか他人の自慰の話はあまり聞きたくないな。
「君が僕に魔法を掛けた時の記憶だ」
それはまぁ、EDの原因はあの時の魔法なんだから忌々しい記憶として脳裏にチラつくのは当然ではなかろうか。
「心底軽蔑しきったあの時の君の目…まるでうっかり踏んで靴の裏に張り付いてしまった害虫を見るような苛立ちの目。あの視線を思い出して自身を擦ってみると!」
「……」
なんか話の方向性が怪しいぞ…。
「なんと!僕の僕は復活したんだ!!」
「……」
「それはもう見事としか言いようがない! 過去にない膨張率と硬さだったよ!」
俯いていた顔をあげたデイビッドは頬を紅潮させてうっとりしていた。
「ショーンに始末させてた方が良かったかもですね」
今まで黙って背後に待機していたロキが小さく呟いた。
思わず頷きそうになったが寸前で止めた自分は偉いと思う。
1,160
あなたにおすすめの小説
落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした
444
BL
『醜い顔…汚らしい』
幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。
だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。
その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話
暴力表現があるところには※をつけております
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。
また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる