エンド後勇者、奴隷たちに振られまくる総受け生活

極寒の日々

文字の大きさ
58 / 72

58熱血指導

しおりを挟む
「はいはい! 全然ダメ!腰が入ってないんだよ腰が。君この廊下舐められるか?」
「いいえ、舐められません!」
「そうだろう。だったらどうすればいいのか分かるよな?」
「舐められるようになるまでもう一度綺麗にします!」

廊下を懸命に磨き始めるデイビッドをテディが腕組みをして見下ろしている。

「テ、テディ。う、うちはそんなに、ブ、ブラックじゃないから。ほ、ほどほどでいいよ」

止める俺にテディはカッと目を見開く。

「修行中の奴隷を甘やかしてはいけませんご主人様!」
「デ、デイビッドは、しゅ、修行中の奴隷じゃないんだけど…」
「よーしいいぞ! その腰つきを忘れるな! 最下層らしく虫のように地面に這いつくばって磨くんだ! このまま頑張ればご主人様の部屋の便器を掃除できる立場になれるぞ。君もご主人様の便器が舐めたいだろ?」
「はい!!舐めたいです!!」

なんかもう全体的に色々汚い。
どこからツッコミを入れればいいのか分からないが、とりあえず一番大事なことを確認しなくてはいけない。

「“君も舐めたい”って、ま、まさかテディ、お、俺の部屋の、トイレの便器、な、舐めてるんじゃないよな?」
「そ、そんなことするわけないじゃないですか…言葉のあやですよ」

目がすごく泳いでいる。
本当にやっていそうで怖いからそのリアクションはやめてくれ。


結局あれからデイビッドは帰ってくれなかった。
家を処分したのでもう帰る場所がないと言い張り、どこか宿泊施設に泊まるように説得したが、持ち込んだ大量の現金を置いてそこに座り込んでしまった。
金も自分も受け取ってくれるまでこの場所に居続けると言われて負けてしまった。

とりあえず開いている部屋に泊まらせたが最後。完全に居座られてしまった。
後で適当な物件を探して現金と共に放り込んでおこうと画策したが、翌日にはテディに指導を受けながら屋敷で働き始めてしまい、新人ですみたいな顔をしている。
こんな押しかけ奴隷いらない…。

テディにもかつての主人と同僚になるのは嫌じゃないかと聞いてみたが「偽物のご主人様に騙された自分が愚かだったのです」とあっけらかんと語っており、あれだけ粗雑に扱われていたのにどうやら遺恨は残っていないらしい。凄い事だと思う。
しかし奴隷志望だということはテディの重要な何かに触れるらしく、指導は今のように苛烈を極める。
恨みではないようだがほどほどにして欲しいものである。

デイビッドの方はうさぎ跳びで再会したテディが誰か最初は分からなかったらしい。
あの頃とは体格も髪型も顔つきも何もかも違っているので当然だろう。
あれほど死にそうだったテディがこんな立派に変身したことに対して、ほんの少しだけデイビッドにどうだこの野郎という気持ちがある。
何はともあれこうして二人の立場は逆転したのであった。



「あの…マサキ様、ちょっといいですか?」

盛り上がる二人の様子をなんとも言えない気持ちで見守っていると、背後から声が掛けられる。

「ア、アル…?め、珍しいな」

どうやら今日はショーンは一緒ではないらしい。

「俺が喋りかけたら迷惑でしたか?」
「そ、そんなこと、な、ないよ。ど、どうしたんだ?」

明らかにムッとしたアルに慌てて否定する。

「少しお話したいことがありまして。今時間ありますか?」
「い、今から、セ、セイレスと、お、おやつを食べる時間なんだ。せ、セイレスも一緒でいいか?」

3時のおやつタイムに遅れるとセイレスはご機嫌が悪くなるからな。

「…まぁいいですけど」

というわけで二人で食堂まで移動することになった。
アルは去り際に熱血指導中のテディと地面に這いつくばるデイビッドをチラリと見てちょっと呆れた顔をした。

到着すると既にお勉強を終えたセイレスが着席しており、その背後でジョフィルが紅茶のポットを持ってスタンバイしていた。

「遅いよマサキ」
「遅いですよマサキ様」
「ご、ごめん」

時間ピッタリではあったものの二対一なので素直に謝っておく。

「おや、アル。珍しいですね」
「ッス」

ジョフィルが俺と同じことを言ったのにアルは小さく頭を下げただけだった。
なんか納得がいかない。

「ア、アル。こ、ここに座って」

セイレスの斜め向かいの席を指して、俺はその正面、つまりセイレスの隣に腰かけた。

「困りましたね。本日のスイーツは街の人気店で取り寄せたケーキなんですが、生憎二つしか用意がございません」

セイレスの前に置かれた皿の上には季節のフルーツが美しくカットされて盛りだくさんに乗っているタルトだった。
色合いも鮮やかで美しい。

「あ、俺腹いっぱいなんで要らないっす」

真っ先にアルが辞退したが、目がタルトに釘付けである。

「お、お、俺の方が腹いっぱいだから、ア、アルが食べてくれ」
「なんでマサキ様が俺の腹具合を把握してんすか」
「と、とにかく、ア、アルは成長期なんだから、た、沢山食べないと。さ、最近テディが、ア、アルに横幅で勝ったって、い、言ってたぞ」
「あんな筋肉オタクと比べないでください。背もでけぇのに筋肉までつけ始めてアイツもう巨人ですよ」
「た、確かに」

おお、なんだかアルと和やかに会話出来ている。

「と、とにかくケーキはアルが食べなさい」
「…じゃあいただきます」

ちょっと口を尖らせて不満そうにしつつもフォークを手に取る。
そしてタルトを頬張った瞬間、その表情は嬉しそうに緩んだ。
うわぁぁ、可愛い。アルは笑顔になると一気に年相応になるよな。
普段ツンツンしているギャップにこっそりデレデレしていると、脛に衝撃が走った。
横を見るとセイレスがジットリ睨んでいた。

その視線に逃れるように紅茶を飲む。

「お代わりお注ぎします」

カップを置くと同時に背後からジョフィルの声。
まだ全然入っているけどな…と思っていると、高い位置からじょぼじょぼ注がれる熱い紅茶。
熱っ!
まだカップの柄に指を掛けたままだったので飛沫がもろにかかる。
振り返るとこちらを笑顔で見下ろすジョフィル。
目が全然笑っていなかった。
ごめんて、違うんだって。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

原作を知らないblゲーに転生したので生きるため必死で媚びを売る

ベポ田
BL
blゲームの、侯爵家に仕える従者に転生してしまった主人公が、最凶のご主人様に虐げられながらも必死に媚を売る話。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

処理中です...