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63結婚
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「ここの使用人達はみんな元気があるね」
走り去るアルの背中を見てフェリクスが呟いた。
「ま、まぁね」
揃いも揃って個性的だけど悪くないと思う。
「セ、セイレスはこの部屋だ——セ、セイレス。お待たせ……グホッ!」
扉を開けると弾丸のようにセイレスが腹に飛び込んできた。
イタズラっ子の目をしたセイレスは心弾ませた顔でこちらを見上げてくる。
「ダメよセイレス。マサキ様がビックリするわ」
セイレスを見て貰えるように頼んでいたクローエさんが慌ててこちらに駆け寄ってくる。
「申し訳ありません、マサキ様……まぁ!お客様でしたのね。大変失礼いたしました」
フェリクスに気付いたクローエさんが慌てて丁寧な礼をする。
「気にしないでくれお嬢さん。お邪魔してるよ」
「セ、セイレス。ク、クローエさん。こ、こちらはフェ、フェリクス。お、俺の、ゆ、ゆ、友人だ」
一瞬、俺ごときが友人と名乗っていいのだろうかと不安になったが、フェリクスならばそんな事で気を悪くなどしないだろう。
「フェリクス様ってあの…“白光の守護騎士”の…?」
「ああ、正直その二つ名は気恥ずかしいが、その通りだよ。よろしく頼む」
フェリクスの笑顔は爽やかだなぁ…クローエさんなんて見惚れて口が開いている。
ショーンやアルからアプローチされてもまったく動じない彼女のこんな姿は珍しい。
「君がマサキが可愛がっているセイレスだね…おや…?」
フェリクスが視線を合わせる為に屈んだが、セイレスは俺の後ろに隠れてしまった。
「はは、君はマサキが好きなんだね。俺はマサキの親友だ。よろしく頼むよ」
「……」
「ほ、ほら、セ、セイレス。あ、挨拶は?」
「や…」
俺の服を掴んだまま拒絶の言葉を口にするセイレス。
無反応はいつものことだが、拒絶までしたのはデイビッド以来だ。
「はは、いいよマサキ。こんないい男を袖にするなんて将来有望だ」
セイレスの不躾な態度も笑って済ませてくれた。
「お、俺たち、ま、街に行くんだけど、セ、セイレスも来る?」
「……うん」
頷くセイレスの頭を撫でて抱き上げる。
「本当に可愛がってるな。まるで親子みたいだ」
「え、え、へへ」
こんなに可愛いセイレスと血の繋がりがあるように見えるなんて。
良くて子守りのバイト、悪くてロリコン誘拐犯だと思っていたから嬉しい。
喜ぶ俺とは対照的にセイレスは頬を膨らませて不機嫌になった。
やっぱり俺と親子は嫌だったかな…。
******
市場に着くと親子に見られたのはフェリクスとセイレスだった。
抱っこしているのは俺だが、どうやら使用人に見えるらしい。
美形の親子だとうっとりしている店の人が、フェリクスにタメ口で喋る俺に驚いているくだりを何回も繰り返した。
ちょっとフェリクスにジェラシー…。
「あいつらへの贈り物って改めて考えると難しいな…」
いくつか雑貨屋や家具屋を回ったがいまいちピンとくるものがなく難航している。
二人とも間違いなく金持ちなのでなんでも持っているだろう。
だったら他国にはないこの土地の名産をと思うがなかなか難しい。
「う、うーん。ふ、二人一緒の、こ、好物とかあったかな?」
「どうっだったかな。付き合いの長い二人だから似ている部分もあると思うが…」
長い付き合い…そういえばフェリクスは二人の関係について知っていたのだろうか。
「フェ、フェリクスは、ふ、二人が、そ、その、い、いつから付き合っていたとか、き、聞いていたのか?」
「うーん、はっきり聞いたわけじゃないが、魔王討伐の旅の序盤からじゃないか? 明らかに様子がおかしくなったからすぐわかったけど…え、もしかしてマサキ気付いてなかったのか?あんなに分かりやすかったのに!?」
「…!? も、も、もちろん、き、気づいてたさ」
思わず見栄を張ってしまった…そうか、分かりやすかったのか。
俺は二人が仲が悪いものだとずっと思っていたよ…。
「だよな、あれで分からなかったら鈍すぎだ。招待状が届いた時もやっとかと思ったくらいだ」
「そ、そ、そ、そ、そうだなっ!」
鈍い…自分は勘は鋭いほうだと密かに思っていたが認識を改める必要がありそうだ。
結局二人とも甘い物が好きだったことを思い出して、蜂蜜とこの土地の名産のフルーツで作ったジャムの詰め合わせを贈ることにした。
長期保存が出来るからと思いそれにしたが、念のため時間停止付与のマジックバッグに入れて贈ることにした。
マジックバッグなら自作出来るし、そこそこ希少で日常でも役に立つので、贈り物としても最適だ。
良い贈り物が出来たとホクホクで帰路に着く。
セイレスもジャムの店で買ったフルーツ飴を加えてご機嫌だ。
ジョフィルに見つかったらまた怒られそうなので食べ終わるまでゆっくり歩こう。
「フェ、フェリクスは、きょ、今日は、う、うちに泊まっていくか?」
「いや、今日は宿に帰って大量の課題について考えようと思う」
「し、仕事忙しそうだな。な、なんなら、フェ、フェリクスの家まで、お、送っていこうか?」
転移魔法は俺しか使えないのでそう提案するが首を横に振られる。
「大丈夫。まだしばらくこの国に滞在する予定だから。またすぐに遊びに行くよ」
「そ、そうか。ま、待ってる」
夕日の沈む中でフェリクスと別れの握手をする。
旅の間はずっと一緒だったから未だにさよならの瞬間には違和感がある。
「…実は俺も近いうちに結婚するんだ」
「えっ!!」
まさかの告白に思わず大きな声が出た。
「そ、そ、それは、お、おめでとう! だ、だ、誰と?」
「ずっと愛してたヒトと。もうずっと前から決めてたんだけど、色々問題があって…こんなに遅くなっちゃったよ」
はにかみながら語るフェリクスの夕日に照らされた顔は本当に幸せそうだ。
俺はというと、“ずっと愛してた”という言葉が気になった。
出会ったばかりの頃は婚約者や恋人は居なかったはずだ。
一体いつの間に…。
本当のことを言うとやっぱり少しくらい恋人の存在を教えて欲しかったが、今直接言ってくれただけでも十分だと思うべきなのだろう。
相手はどんな人だろうか。
走り去るアルの背中を見てフェリクスが呟いた。
「ま、まぁね」
揃いも揃って個性的だけど悪くないと思う。
「セ、セイレスはこの部屋だ——セ、セイレス。お待たせ……グホッ!」
扉を開けると弾丸のようにセイレスが腹に飛び込んできた。
イタズラっ子の目をしたセイレスは心弾ませた顔でこちらを見上げてくる。
「ダメよセイレス。マサキ様がビックリするわ」
セイレスを見て貰えるように頼んでいたクローエさんが慌ててこちらに駆け寄ってくる。
「申し訳ありません、マサキ様……まぁ!お客様でしたのね。大変失礼いたしました」
フェリクスに気付いたクローエさんが慌てて丁寧な礼をする。
「気にしないでくれお嬢さん。お邪魔してるよ」
「セ、セイレス。ク、クローエさん。こ、こちらはフェ、フェリクス。お、俺の、ゆ、ゆ、友人だ」
一瞬、俺ごときが友人と名乗っていいのだろうかと不安になったが、フェリクスならばそんな事で気を悪くなどしないだろう。
「フェリクス様ってあの…“白光の守護騎士”の…?」
「ああ、正直その二つ名は気恥ずかしいが、その通りだよ。よろしく頼む」
フェリクスの笑顔は爽やかだなぁ…クローエさんなんて見惚れて口が開いている。
ショーンやアルからアプローチされてもまったく動じない彼女のこんな姿は珍しい。
「君がマサキが可愛がっているセイレスだね…おや…?」
フェリクスが視線を合わせる為に屈んだが、セイレスは俺の後ろに隠れてしまった。
「はは、君はマサキが好きなんだね。俺はマサキの親友だ。よろしく頼むよ」
「……」
「ほ、ほら、セ、セイレス。あ、挨拶は?」
「や…」
俺の服を掴んだまま拒絶の言葉を口にするセイレス。
無反応はいつものことだが、拒絶までしたのはデイビッド以来だ。
「はは、いいよマサキ。こんないい男を袖にするなんて将来有望だ」
セイレスの不躾な態度も笑って済ませてくれた。
「お、俺たち、ま、街に行くんだけど、セ、セイレスも来る?」
「……うん」
頷くセイレスの頭を撫でて抱き上げる。
「本当に可愛がってるな。まるで親子みたいだ」
「え、え、へへ」
こんなに可愛いセイレスと血の繋がりがあるように見えるなんて。
良くて子守りのバイト、悪くてロリコン誘拐犯だと思っていたから嬉しい。
喜ぶ俺とは対照的にセイレスは頬を膨らませて不機嫌になった。
やっぱり俺と親子は嫌だったかな…。
******
市場に着くと親子に見られたのはフェリクスとセイレスだった。
抱っこしているのは俺だが、どうやら使用人に見えるらしい。
美形の親子だとうっとりしている店の人が、フェリクスにタメ口で喋る俺に驚いているくだりを何回も繰り返した。
ちょっとフェリクスにジェラシー…。
「あいつらへの贈り物って改めて考えると難しいな…」
いくつか雑貨屋や家具屋を回ったがいまいちピンとくるものがなく難航している。
二人とも間違いなく金持ちなのでなんでも持っているだろう。
だったら他国にはないこの土地の名産をと思うがなかなか難しい。
「う、うーん。ふ、二人一緒の、こ、好物とかあったかな?」
「どうっだったかな。付き合いの長い二人だから似ている部分もあると思うが…」
長い付き合い…そういえばフェリクスは二人の関係について知っていたのだろうか。
「フェ、フェリクスは、ふ、二人が、そ、その、い、いつから付き合っていたとか、き、聞いていたのか?」
「うーん、はっきり聞いたわけじゃないが、魔王討伐の旅の序盤からじゃないか? 明らかに様子がおかしくなったからすぐわかったけど…え、もしかしてマサキ気付いてなかったのか?あんなに分かりやすかったのに!?」
「…!? も、も、もちろん、き、気づいてたさ」
思わず見栄を張ってしまった…そうか、分かりやすかったのか。
俺は二人が仲が悪いものだとずっと思っていたよ…。
「だよな、あれで分からなかったら鈍すぎだ。招待状が届いた時もやっとかと思ったくらいだ」
「そ、そ、そ、そ、そうだなっ!」
鈍い…自分は勘は鋭いほうだと密かに思っていたが認識を改める必要がありそうだ。
結局二人とも甘い物が好きだったことを思い出して、蜂蜜とこの土地の名産のフルーツで作ったジャムの詰め合わせを贈ることにした。
長期保存が出来るからと思いそれにしたが、念のため時間停止付与のマジックバッグに入れて贈ることにした。
マジックバッグなら自作出来るし、そこそこ希少で日常でも役に立つので、贈り物としても最適だ。
良い贈り物が出来たとホクホクで帰路に着く。
セイレスもジャムの店で買ったフルーツ飴を加えてご機嫌だ。
ジョフィルに見つかったらまた怒られそうなので食べ終わるまでゆっくり歩こう。
「フェ、フェリクスは、きょ、今日は、う、うちに泊まっていくか?」
「いや、今日は宿に帰って大量の課題について考えようと思う」
「し、仕事忙しそうだな。な、なんなら、フェ、フェリクスの家まで、お、送っていこうか?」
転移魔法は俺しか使えないのでそう提案するが首を横に振られる。
「大丈夫。まだしばらくこの国に滞在する予定だから。またすぐに遊びに行くよ」
「そ、そうか。ま、待ってる」
夕日の沈む中でフェリクスと別れの握手をする。
旅の間はずっと一緒だったから未だにさよならの瞬間には違和感がある。
「…実は俺も近いうちに結婚するんだ」
「えっ!!」
まさかの告白に思わず大きな声が出た。
「そ、そ、それは、お、おめでとう! だ、だ、誰と?」
「ずっと愛してたヒトと。もうずっと前から決めてたんだけど、色々問題があって…こんなに遅くなっちゃったよ」
はにかみながら語るフェリクスの夕日に照らされた顔は本当に幸せそうだ。
俺はというと、“ずっと愛してた”という言葉が気になった。
出会ったばかりの頃は婚約者や恋人は居なかったはずだ。
一体いつの間に…。
本当のことを言うとやっぱり少しくらい恋人の存在を教えて欲しかったが、今直接言ってくれただけでも十分だと思うべきなのだろう。
相手はどんな人だろうか。
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