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64美味しいお茶
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*長くなったので分割して先に1話投稿します。
フェリクスが尋ねてきて数日が経った。
アルに相談された件だが、ショーンと話をしようとしたが数日休みを取っているらしく丁度いなかった。
アルいわく屋敷にも戻っていないようだ。
「は、早く会いたいな…」
ショーンの話を聞きたいのに会えないとなるとモヤモヤする。
「なんだ、また誰かに恋したんですか?」
突然背後から声を掛けられた。
振り返るとウォレントが湯気の出ているマグカップを持って微笑んでいた。
「俺、今から休憩なんです。良かったら付き合ってもらえませんか?」
余裕のある優しい微笑みに促されて気付くと頭を縦に振っていた。
こうして裏庭が見えるテラス席にウォレントと並んで腰を下ろすことになった。
広大な裏庭はどこもかしこも完璧に手入れされており、ショーンとアルの努力がよくわかる。
「どうぞ。アップルジンジャーティだ」
わざわざ俺の分も用意してくれたらしい。
目の前に湯気の立ったマグカップが置かれた。
薄くスライスされたリンゴが入っていてすごくオシャレだ。
「あ、あ、ありがとう」
熱々のそれを火傷をしないように慎重に啜ると、ほんのり甘く、生姜とリンゴの香りがスーッと鼻を通り抜けて実に爽やか。
「お、お、美味しいっ!ウォ、ウォレントは凄いな」
「こんなの簡単ですぜ。リンゴの皮と生姜を煮だしたお湯で紅茶を淹れるだけです。最後に蜂蜜を溶かせばそれで完成」
「ウォ、ウォレントみたいに、や、優しい味がする」
「そいつは良かった」
軽く簡単だと言うが、煮だすタイミングも配合も大事だと思う。
ウォレントはやはり料理上手で凄い。
「それで、誰に会いたいんですか?新しい奴隷?またどこかで恋でもしたんでしょ」
呆れの混じった苦笑を向けられてちょっと恥ずかしい。
フェリクスにも似たような感じで揶揄われたが、俺ってそんなにいつも片想いばかりしているイメージなのだろうか。
「ち、違う。ショ、ショーンに会いたいんだ」
「ショーン!? なんでまた?」
思ってもみなかったらしく大きなリアクションで驚くウォレント。
「じ、実は最近、ショ、ショーンの様子が、お、おかしいらしくて…な、何か悩んでいるらしい。い、一度話をしてみようと、お、思っているんだけど、ショ、ショーンに会えないんだ」
「ほっときゃいいでしょ、そんなもの」
ウォレントは何か原因を知らないか尋ねようとしたが、思いがけず冷たい反応で質問を飲み込む。
「マサキ様が気にしてやることねぇんですよ、あんな奴」
「…ウォ、ウォレントはショーンと、な、仲が良くなかったんだっけ?」
懐の深いウォレントが誰かに悪感情を抱いているのが意外で思わず率直に聞いてしまう。
「良くも悪くもないですよ。ただ、ショーンとアルのマサキ様への態度は日ごろから気に入りません」
「お、お、俺?」
珍しく仏頂面のウォレントは手に持ったマグカップをズズッと不機嫌そうに啜る。
「正直マサキ様は人が好過ぎるんだと思いますよ。これほどの施しを受けておいてあの態度はないでしょう。きちんと叱らないからつけ上がるんです」
「う…」
「それなのにショーンの心配したり、アルを甘やかしたり。ジョフィルじゃねぇけど、小言の一言くらい言いたくなるってもんでしょう。ま、ジョフィルの態度も頂けないんですが、あいつはあれでから回って自分の首を絞めているから…」
俺が説教されてしまった。
ついでになんだかよく分からないがジョフィルにも流れ弾が当たった気がする。
「あいつら屋敷を出て行く気なんかさらさらないようだし、ここいらで一度きちんと突き放すべきです」
ウォレントはショーンとアルの態度を思ったよりも重大に捉えているらしい。
そう言えばロキも同じようなことを前に言っていた気がする。
二人とも俺を思ってくれてなんて優しいのだろうかと感動する。
でも元奴隷みんなに負い目のある俺は、見下される態度を取られても仕方のないことをやらかした自覚があり、怒る資格なんてないと思っている。
俺なんかに一方的に想われて、施しを押し付けられるなんておぞましいに決まっている。
その贖罪の意味もあって、二人の態度を改善しようとは思っていない。
俺としては元奴隷のみんながのびのびと暮らせているのならそれだけでいいんだけどな…。
フェリクスが尋ねてきて数日が経った。
アルに相談された件だが、ショーンと話をしようとしたが数日休みを取っているらしく丁度いなかった。
アルいわく屋敷にも戻っていないようだ。
「は、早く会いたいな…」
ショーンの話を聞きたいのに会えないとなるとモヤモヤする。
「なんだ、また誰かに恋したんですか?」
突然背後から声を掛けられた。
振り返るとウォレントが湯気の出ているマグカップを持って微笑んでいた。
「俺、今から休憩なんです。良かったら付き合ってもらえませんか?」
余裕のある優しい微笑みに促されて気付くと頭を縦に振っていた。
こうして裏庭が見えるテラス席にウォレントと並んで腰を下ろすことになった。
広大な裏庭はどこもかしこも完璧に手入れされており、ショーンとアルの努力がよくわかる。
「どうぞ。アップルジンジャーティだ」
わざわざ俺の分も用意してくれたらしい。
目の前に湯気の立ったマグカップが置かれた。
薄くスライスされたリンゴが入っていてすごくオシャレだ。
「あ、あ、ありがとう」
熱々のそれを火傷をしないように慎重に啜ると、ほんのり甘く、生姜とリンゴの香りがスーッと鼻を通り抜けて実に爽やか。
「お、お、美味しいっ!ウォ、ウォレントは凄いな」
「こんなの簡単ですぜ。リンゴの皮と生姜を煮だしたお湯で紅茶を淹れるだけです。最後に蜂蜜を溶かせばそれで完成」
「ウォ、ウォレントみたいに、や、優しい味がする」
「そいつは良かった」
軽く簡単だと言うが、煮だすタイミングも配合も大事だと思う。
ウォレントはやはり料理上手で凄い。
「それで、誰に会いたいんですか?新しい奴隷?またどこかで恋でもしたんでしょ」
呆れの混じった苦笑を向けられてちょっと恥ずかしい。
フェリクスにも似たような感じで揶揄われたが、俺ってそんなにいつも片想いばかりしているイメージなのだろうか。
「ち、違う。ショ、ショーンに会いたいんだ」
「ショーン!? なんでまた?」
思ってもみなかったらしく大きなリアクションで驚くウォレント。
「じ、実は最近、ショ、ショーンの様子が、お、おかしいらしくて…な、何か悩んでいるらしい。い、一度話をしてみようと、お、思っているんだけど、ショ、ショーンに会えないんだ」
「ほっときゃいいでしょ、そんなもの」
ウォレントは何か原因を知らないか尋ねようとしたが、思いがけず冷たい反応で質問を飲み込む。
「マサキ様が気にしてやることねぇんですよ、あんな奴」
「…ウォ、ウォレントはショーンと、な、仲が良くなかったんだっけ?」
懐の深いウォレントが誰かに悪感情を抱いているのが意外で思わず率直に聞いてしまう。
「良くも悪くもないですよ。ただ、ショーンとアルのマサキ様への態度は日ごろから気に入りません」
「お、お、俺?」
珍しく仏頂面のウォレントは手に持ったマグカップをズズッと不機嫌そうに啜る。
「正直マサキ様は人が好過ぎるんだと思いますよ。これほどの施しを受けておいてあの態度はないでしょう。きちんと叱らないからつけ上がるんです」
「う…」
「それなのにショーンの心配したり、アルを甘やかしたり。ジョフィルじゃねぇけど、小言の一言くらい言いたくなるってもんでしょう。ま、ジョフィルの態度も頂けないんですが、あいつはあれでから回って自分の首を絞めているから…」
俺が説教されてしまった。
ついでになんだかよく分からないがジョフィルにも流れ弾が当たった気がする。
「あいつら屋敷を出て行く気なんかさらさらないようだし、ここいらで一度きちんと突き放すべきです」
ウォレントはショーンとアルの態度を思ったよりも重大に捉えているらしい。
そう言えばロキも同じようなことを前に言っていた気がする。
二人とも俺を思ってくれてなんて優しいのだろうかと感動する。
でも元奴隷みんなに負い目のある俺は、見下される態度を取られても仕方のないことをやらかした自覚があり、怒る資格なんてないと思っている。
俺なんかに一方的に想われて、施しを押し付けられるなんておぞましいに決まっている。
その贖罪の意味もあって、二人の態度を改善しようとは思っていない。
俺としては元奴隷のみんながのびのびと暮らせているのならそれだけでいいんだけどな…。
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