転生したおれ、悪役令嬢一家を守る! ……って決意したんだけど、その、おれ、ぬいぐるみなんだけど?

しゃぼてん

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第42話 テディベア、ただのテディベアのふりをする

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 たくさんふみふみして、しばらくねそべった後、レッドドラゴンは、ようやく旧魔王城の入り口にむかってあるきだした。

 とちゅうでまたゾンビがたーっくさんでてきたから、ドラゴンとクリスティーナたんが炎でやきつくしていった。ゾンビは無限にわきでる仕様みたいだ。
 おかげで、クリスティーナたんはもうレベル39だ。

 なんかクリスティーナたん、一日でレベルが30もあがっている気がするけど、いいの、これ?
 まぁ、いっか。

 城の入り口にきたところで、魔王のむすめクーピは言った。

「おしろにはたくさんしかけがあるっち。でも、あたちがぜんぶしってるからだいじょうぶっち」

 そういえば、魔王城にはパズル系のしかけとか、トラップとか、たくさんあったなぁ。
 と、おれが思っているあいだに、ドラゴンにのったクリスティーナたんたちは、ズンズン中に入って行った。

「こっち、こっちっち」

 と案内されて進んで行くと、ドラゴンの巨体がはいれない細いろうかにでてしまった。

「このさきはドラゴンさんはとおれないね」

<ふむ。そのようだ>

 えー。ドラゴンなしにクリスティーナたんたちだけですすむの? 
 と思ったけど、「またね。ドラゴンさん」と言って、クリスティーナたんたちはどんどんすすんでいってしまった。

 トラップもパズルもクーピがそっこう解除でどんどん進んで行く。

 あ、凶悪そうなボスモンスターがいる! 

 って思ったら、クーピが「こっち、こっち」と、かくし通路にあんないしてくれて、ボスモンスターはスルー。

 なんにも起きない。
 もう、この子たち、たのしく魔王城をおさんぽしてるだけだ。

 だけど、このままじゃ、みんなと合流できないまま、クリスティーナたんだけで、あの邪悪な元勇者のところにたどりついちゃうぞ。
 これ、まずいんじゃない?

 と思っている間に。
 魔王城の一番上、その先に魔王がいそうな大きな扉の前についてしまった。
 いかにも、ラスボスがいそうな場所だから、きっとロビンの体をのっとった、あの邪悪な元勇者はここにいるだろう。

 おれは、クリスティーナたんからとびおりて、扉の前でジェスチャーでつたえた。

 クリスティナたん、この先に行くのは、まずいよ。
 あいつはすごく強いし、いまはまだ、あいつをたおしても封印できないんだから。
 みんなを待とう!

 クーピがさけんだ。

「かわいいっち! テディがおどって、おうえんしてくれてるっち!」

「うん! テディ! がんばるね!」

 ちがーう! そうじゃなーい!

 あわてるおれの背後で、大きなとびらがぎぃーっと開いていった。
 広い魔王の間の玉座に、ちいさなおさない男の子がすわっている。

「ロビン!」

 みためは小さくてかわいいロビンだけど、中身はちがう。
 ロビンの目は赤くひかっていた。

「きたか。憎きグリムズリーめ」

 かんだかい幼い声だけど、声には邪悪さがにじみでていた。

「あのこが、クリスっちのおとーと?」

「ロビンのなかにじゃあくなやみがいるの。おいださなきゃ」

 おさないロビンの口から、大人びた言葉がながれてきた。

「邪悪な闇じゃない。邪悪なのは貴様ら、グリムズリーの一族だ。憎き憎きグリムズリー。かつてグリムズリーが俺をこの世界に召喚し、そして、王国の者達は俺をおだてあげ、勇者として魔王討伐をおこなわせた。しかし、俺が魔王をたおしたとたん、王国は俺を裏切り、グリムズリーは俺を封印した。やつらは俺をさんざん利用しておいて約束の報酬も未来も俺には渡さなかった。俺は封印されていた長い長い間ひたすら復讐をちかい……」

 元勇者はとうとうと述べていたけど、クーピは首をかしげ、クリスティーナたんにささやいた。

「むずかしくてなにいってるかわかんないっち」

「ゆうしゃだったんだって。それでおこってるんだって」

「あのこのなかにいるのがゆうしゃっち!?」 

 クーピがさけび、ロビンの体をのっとった復讐ふくしゅうにもえる元勇者は笑った。

「フハハハハ、そうだ、俺は勇者だ。かつて俺はつらく困難な戦いをつづけて、この魔王城へとやってきた。そして、魔王城の数々のしかけとわなによって、満身創痍まんしんそうい、ボロボロになりながらここまで到達したのだ。ここに貴様らをよんだのは、グリムズリーどもにも、あの苦難を味わわせてやるためだ! どうだ、あのころと変わらず保存されてきた魔王城のしかけは、おそろしかっただろう?」

 あ、えっと、その……。すごく言いづらいんだけど.......。
 クリスティーナたんは心底ふしぎそうにこくびをかしげた。

「え? なにが?」

 ロビンの体をのっとった元勇者はどなった。

「は? 魔王城のおそろしいトラップの数々! ボスモンスターども! ここにいたるまでに、仲間が次々と力つき、たおれていっただろう?」

 クリスティーナたんは天使のようにほほえんで、安心させるように言った。

「だいじょうぶだよ。わたしとクーピちゃんは、ちっとも、おけがをしてないよ」

 うん。だって、クリスティーナたんたち、危険なとこはぜんぶ、うかいしてきたもん。かすりきずひとつないよね。ケガしてもおれが回復するけど、出番なかったもん。

 元勇者はうろたえたように、クリスティーナたんたちとその周囲を見た。

「まさか、無傷? グリムズリーのほかの者は力つきたわけでは......?」

 無傷だよー。他の人はたんにまだ来てないだけだよー。

 そこで、クーピが叫んだ。

「パパのかたき!」

 クーピは、元勇者とクリスティーナたんの会話のあいだ、技を出すために力をためていたみたいだった。そして、クーピはためていた力で闇魔法をはなった。

 小さいけど、クーピはやっぱり魔王のむすめだ。
 まがまがしい闇属性の魔法がとんでいく。

 だけど、元勇者にのっとられたロビンが片手をあげて呪文をとなえると、クーピがはなった闇魔法は、きりのように消えてなくなってしまった。

「こんなこどもだましがきくものか。貴様は魔王の娘か? あの魔王に娘がいたとはな。この城にいた魔族は俺が全員切り刻んでやったはずだが。まぁ、いい。他のグリムズリーがどこで何をしているのかはしらんが、まずは、そのいまいましい転生者もろとも、貴様らの命をここでかき消してやる」

 ん? ここに転生者なんていたっけ?
 おれは、きょろきょろあたりを見てさがした。

「てんせーさ?」

 クリスティーナたんとクーピもきょろきょろしているけど、ここにはおれたちしかいない……とおもったところで思い出した。

 あ、おれ、そういえば、前世は異世界の人間だったっけ?
 転生者って、おれのことか!?

 すっかりわすれてたー。
 さいきんは身も心もテディベアだったから。
 だいたい元の世界で人間だった時にいい思い出ないし、悪い記憶は忘れるのが一番だ。
 あんな邪悪な元転生勇者と同じにされちゃ困るしー。

 だから、もう、おれ、前世とか存在しない、ただのかわいいテディベアってことで、よろしく!

「てんせいしゃなんていないよ?」

「あたちのことっち?」

 クリスティーナたんとクーピが首をかしげ、おれも知らんぷりをしていると、ロビンをのっとった邪悪なやつはぶつぶつつぶやいた。

「転生者ではないのか? あの異様な力。俺と同じようにグリムズリーの一族によってこの世界に召喚された転生者なのかと思ったが……。まぁ、どちらでもいい。全員始末してやる!」

 ロビンの周囲にまがまがしいオーラがみえて、そして、たくさんの氷でできたやりみたいなつららが出現した。

「アイススピアー!」

 ロビンのおさない声がひびいたかと思うとたくさんの巨大な氷のやりが、こっちにむかってとんでくる。

「メガファイヤー!」

「デビルブラスト!」

 クリスティーナたんとクーピが魔法で応戦する。
 魔法と魔法がぶつかりあい、氷のやりはとちゅうでとけたり、ふきとんだりして、クリスティーナたんとクーピにはあたらなかった。

「ふんっ。すこしはやるようだな。末おそろしいガキどもが。やはりいまのうちに殺し、芽をつぶしておかねば」

 元勇者にのっとられた赤い目のロビンがぶつぶつと呪文をとなえると、ロビンの周囲にこんどは巨大な炎がもえひろがった。

「ギガファイヤー!」

 邪悪な元勇者は、最上位の炎魔法をはなってきた。

「はわわわわー! あんなおおきいの、もうだめっちー!」

 クーピは頭をかかえてしゃがみこんだ。

「ブリザード!」

 クリスティーナたんは氷魔法で応戦したが、氷はギガファイヤーの巨大な炎にのみこまれ、消えてしまった。
 おれたちを焼きつくそうと、巨大な炎がせまってくる……その時。

「アイスウォール!」
「ウォーターウォール!」

 ふたつの声とともに、巨大な氷のかべと水のかべが二重に、おれたちの前にあらわれて、元勇者がはなったギガファイヤーをせきとめた。

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