転生したおれ、悪役令嬢一家を守る! ……って決意したんだけど、その、おれ、ぬいぐるみなんだけど?

しゃぼてん

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第41話 テディベア、魔王の娘をたすける

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 ドラゴンが歩いていく先は、どんどんと深いやぶになっていった。木々とトゲトゲしたツタがからみあっていて、ふつうならとても歩けそうにないんだけど……

「ファイヤー!」

 クリスティーナたんのかわいい声がひびいて、 とんでいった炎のかたまりが草とツタをもやした。

<まだまだだな。こむすめよ。もっと、もっと、炎をもやすのだ。こうだぁー!>

 ドラゴンがいきおいよく、口から激しく炎をふき、あたりの草は燃え尽きた。
 あと、ついでに、やぶのなかにかくれていた魔物とかも消えていった気がする。いっしゅんで消えたから、よく見えないけど。
 ジャックの話だと、このあたりの魔物ってかなり強いんだよね? ドラゴンの炎で紙切れのように消えていったんだけど……。

「わかった! こうね。ファイヤー!」

 クリスティーナたん、なんか、たのしそう。

 たのしそうに、クリスティーナたんとレッドドラゴンは炎で行く手をもやして、のっしのっし進んで行く。

 このちょうしでいくと、魔王城の庭が焼け野原になっちゃうんじゃない?
 と思っていたら。
 炎で焼き払われたやぶから、にょろにょろとながーいトゲトゲのツタがのびてきた。

<むっ! あらわれたぞ!>

 そういいながら、ドラゴンがさらに炎をはくと、かべになっていた草やつたが燃え落ち、そのむこうに巨大な植物系モンスターのすがたがあらわれた。

 トゲトゲのついた長いツタが何本ものびていて、まんなかの、ツタが密集してからまっているように見える胴体部分に、巨大な赤いバラの花がさいている。

 あのモンスター、たしか、昔、ゲームの攻略情報で見たことがあるぞ。
 おれはゲームの中で戦ったことはないんだけど。
 魔王城に侵入するにはいくつかルートがあって、正門じゃなくて裏から忍び込んだ時に、途中にあるバラ園でこのボスモンスターがでてくるのだ。 

 ラストステージのボスの一体だから、もちろん、強い。
 状態異常をふりまくいやらしい敵……だったんだけど.......

<ふぁっふぁっふぁー! くらえ我が本気のファイヤーブレス!>

「メガファイヤー!」

 ドラゴンの口からいままでより大きな炎がふきだし、クリスティーナたんはいままでみたことないような巨大な炎魔法をはなった。

 クリスティーナたん、いつのまにか、上位魔法のメガファイヤーをおぼえていたんだね。
 さっきからずっとドラゴンに炎魔法の特訓されてたからかな。
 メガ級になるとMP消費が大きくなるけど、MPはおれが自動回復しとくから、バンバンうっちゃってー。

「メガファイヤー! メガファイヤー!」

<いいぞ! いいぞ! もっと火力をあげろ! ファイヤーブレス!>

 巨大なトゲトゲお花のモンスターは、連発される炎魔法を前に手も足もでない。炎が弱点のモンスターだから。
 トゲトゲのツタをのばしても、燃やされちゃうから、ろくに攻撃もこない。

 だけど、楽勝なのはいいんだけど……あっつー!

 もう、ふたりで炎をだしまくるから、このへん、灼熱地獄しゃくねつじごくだよ。あっつい!

 テディベアは汗をかけないんだから。おれが熱中症になっちゃうぞ! ……なるのかな? ぬいぐるみだから、ならない?

 おれが熱中症について考えていたら。
 いつのまにか巨大なバラのボスモンスターは、燃えつきて炭になっていた。

<ふぁっふぁっふぁー! どうだ。我が炎の力、おもい知ったか>

「やったね、テディ。あれ? テディ、ぐったりしてる?」

 あっつー。あつすぎて、もうだめ。
 やっぱ、おれは、ぬいぐるみも熱中症になると思う。

 ねぇ、魔法で氷だして? 

 って、クリスティーナたんにお願いしたいんだけど。
 ジェスチャーでつたわるかなぁ。

 氷! 氷!

「なぁに? テディ。テディもうれしいの?」

 つたわらなかった......。
 ふだんは以心伝心って感じで言いたいことクリスティーナたんに伝わったりするのに、大事な時はいっつも伝わらないんだよなぁ。

 その時、とつぜん、かん高い声がひびいた。

「たすけてくれて、ありがとっち!」

 バラのボスモンスターがいた場所のむこうから、草をかきわけ、子どもがでてきた。

 見た感じは、クリスティーナたんと同じか、ちょっと小さいくらいの女の子だけど、おでこに二本、つのがはえている。
 この子もなんかの獣人かな?

「あなたは?」

 クリスティーナたんがたずねると、女の子は元気よくこたえた。

「あたちはクーピっち。まおうのむすめっち。よろしくっち」

 まおー? 
 って、魔王? 
 まさかー……でも、ここ、魔王城だしな。

 いわれてみれば、見た目も魔族っぽいかも。
 よし、テディアイ!

 あ、本当だ。
 この子、名前はクーピ、職業は「魔王のたまご」ってでてる。
 レベルは22。まだあまり強くはなさそう。

 クリスティーナたんなんて、ドラゴンのゾンビ狩りと、さっきのボスモンスター退治で、もうレベル37になっちゃってるから。

「よろしくね。わたしはクリスティーナ」

「ドラゴンライダーのクリスっちー。ありがとっち。もうちっとでクーピはあのモンスターにグサグサにされて、ようぶんになってたっち」

 魔王の娘なのに魔王城のモンスターの養分に?
 っていうか、魔王って今いるんだっけ?
 と、おれがぎもんに思ったら、ちょうどドラゴンが言ってくれた。

<魔王はちょっとまえに勇者にたおされたと聞いた気がするが>

 そうそう。この世界の設定的には、ちょっと前じゃなくて、ずーっと前に、魔王は倒されているはずなんだよ。
 今から何年か後、大きくなったコルネ姫が旅にでるゲームのストーリーで、魔王を復活させるぞーってたくらむ人たちがでてくるけど、今は魔王なんてどこにもいないはず。

「パパはゆうしゃにころされちゃったっち。ゆうしゃがおしろのみんなをころしちゃったっち。パパは、あたちだけ、みらいにとばちてくれたの。みらいでまぞくふっこーするために」

 クーピって、家族をみんな勇者に殺されて、ひとりだけ未来にとばされた子だったんだ……。
 かわいそう。
 この子もたすけてあげなきゃ、って気分になってきた。

 あれ? でも、クーピをたすけたら、魔王復活しちゃう? 

 ま、いっか。あの元勇者とかいう邪悪なやつよりはきっといい子だ。

「ゆうしゃがふっかつして、いま、このしろにいるってきいたっち。だから、かたきうちにきたっち」

 なるほど。ところが、この子は勇者と戦うどころか、庭のモンスターにたおされそうになっていた、ということか。
 
「わたしは、おとうとのロビンをたすけにきたの。あのおしろのなかにいるんだよ」

「じゃ、いっしょにいこっち。ドラゴンライダーのクリスっち」

「うん。いっしょにいこう。クーピちゃんものって」

 クーピは背中にちっちゃいつばさがはえていた。物理的にそのつばさでは飛べそうにないけど、なぜか飛べた。
 さっき見た時、クーピはHPが残りすくなかったから、おれはドラゴンのせなかにのったクーピをハグして回復してあげた。

「はわっ。はわわわわわわ! ポワンとするっち。それに、ななななななんとふわふわで、かわいい、いきものっち」

 だろー。おれ、かわいいだろー?

「このこはテディだよ」

「テディ、テディ……」

 クーピはおれをぎゅっとだきしめた。
 どうやら、またひとり、おれのとりこがふえてしまったようだ。
 おれも罪なテディベアだなー。

 なんて思っていたら。低い声がとどろいた。

<ふぅー。つかれた。そろそろふみふみがないと、うごく気にならんなぁー>

 ふみふみしたら、動けなくなるだろ! このドラゴン!

「テディ、ドラゴンさんをふみふみしてあげて?」

 まったくもう、もてもてテディベアは大変だ。


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