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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第7話 奨学生
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こうして面接は終わった。奨学生試験は全て終わった。
イーアは試験会場の外でユウリと合流した。
イーアはユウリを見つけると、いきなり泣きついた。
「ユウリ~。だめだったよ~。わたしはナミンの家に帰って、お手伝いさんになるから。ユウリはグランドールでがんばってね」
ユウリは困りきった表情で言った。
「イーア。結果が出るまではあきらめないで。それに、入学試験は合格してるんだ。お金さえあれば、入学できるんだから、どうにかして、ぼくが授業料をかせぐよ。すぐには無理でも来年入学できるように……」
イーアは涙をふいた。来年、という言葉を聞いて、思い出したのだ。
「うん。そういえば、奨学生試験は毎年あるもんね。よし、来年がんばろう! ユウリは先に入学して待っててね。わたしは猛勉強して、来年こそ受かるよ!」
グランドールは13歳くらいで入学する人が多いけど、17歳までなら入学できる。だから、イーアはまだまだ何回も受験可能だ。
「あ、うん……」
勝手に元気を取り戻したイーアにユウリが拍子抜けしながらうなずいた時。遠くからユウリを呼ぶ声が聞こえた。
「受験番号1番 ケイニス君。受験番号2番 ユウリ君。試験会場の入り口に来てください」
試験会場の入り口前で、誰かがそう呼んでいる。
「ユウリ、呼ばれてるよ?」
「うん。じゃあ、イーア。ぼくは行くから、また後で。ここで集合しよう」
「うん、まってるよ。じゃーねー」
イーアはユウリを見送ると、近くにあったベンチに座った。
ここからは、グランドールの立派な校舎がよく見えた。
風格のあるお城みたいな建物だ。
でも、イーアはこのままではあの校舎に入れない。奨学生になるか学費を払うかしないと、入学できない。
そう思うと、校舎の重厚さがよそよそしく感じられて、まるで建物が「お前のような貧乏人には入学資格なし! 底辺は底辺らしく底辺におさまっておればよいのだ」と悪口を言ってくるように思えてきた。
(不公平だよね。同じ成績でも、お金があれば入学できるのに)
イーアが心の中でそうつぶやくと、グランドールの校舎が威圧的に言い返してくるように感じた。「何でも選べると思うな。選ぶ資格を持てるのは生まれつき恵まれた者だけだ。その肌を見ろ。奴隷にされていないだけありがたく思え」と。
(そんなの、おかしいよ。なんで、勉強したい人はみんな学校に入れるようにならないのかな)
そう思いながらイーアが座ってユウリを待っていると、女の子が二人近づいてきた。
ひとりは、のんびりした雰囲気の女の子だ。ストロベリーブロンドの美しい髪の毛にかわいらしい髪飾りをつけ、高級そうな布地のローブにかわいいブローチをつけている。
もうひとりは、ピンで栗色の髪の毛をとめた、きりっとした感じの女の子。この子は召喚術の試験やさっきの面接で一緒だった受験番号46番の子だ。
受験番号46番の子が、イーアに話しかけてきた。
「ね、さっき面接でいっしょだったよね? あなたの名前はイーアでしょ?」
「うん。えーっと……」
イーアは名前をおぼえていなかった。
「あたしはキャシー。この子は友達のアイシャ。初等魔学校が同じだったの」
「よろしくねぇ」
アイシャはのんびりした声でそう言って、かわいく手を振った。
「うん。よろしくね」
あいさつを終えると、キャシーは興奮した様子で話しだした。
「今、アイシャと話してたんだけど、面接にガリ様がきてたよね! イーアが話しかけられてて、とっても、うらやましかった!」
イーアは首をかしげた。
「ガリ様?」
イーアが話しかけられた、ということは、キャシーが言ってるのは、面接のときに召喚術のテストをしてきた怖い魔導師のことのようだ。厳密には、話しかけられていないけど。あの魔導師は一言もしゃべっていないから。
キャシーとアイシャはそれぞれ叫んだ。
「天才召喚士<黒竜の子>! 名門ウェルグァンダルの若き塔主! 最強の召喚士!」
「2大イケメン魔導師の一人だよぉ~!」
イーアはきょとんとした。特に、アイシャが言ったことに。
「2大イケメン……?」
この子は何を言っているんだろう。
イーアは心の中でそう思った。
魔導師の顔なんて、どうでもいい。
イーアが何か言う前に、キャシーが言った。
「アイシャ、そこ? でも、たしかにガリ様はクールな感じでかっこよかったよね? ね? イーア」
「そうだっけ……?」
それどころじゃなかったので、イーアは面接の時に会った人の顔はおぼえていない。なんとなく、暗くて怖い雰囲気の人だったということだけおぼえている。
「あのガリ様に召喚術のテストをしてもらえるなんて。うらやましい!」
キャシーはそう言ったけど、イーアは暗い声で言った。
「でも、失敗ぽかったから……恥ずかし……」
あの魔導師が天才召喚士だったとか聞くと、イーアはますます恥ずかしい気持ちになってきて、ぜんぶ忘れようと頭をぶんぶんと振った。
「でも、ちゃんと呼び出せてたもん。あんな、教科書で見たことのない精霊を呼べるなんて、イーアはすごいよね」
キャシーはそうほめてくれた。
それから、キャシーは興奮したようすで続けて言った。
「それに、なんと、ホスルッド様も来てたらしいの! あたしは会えなかったけど」
「ホスルッド様?」
イーアが聞き返すと、アイシャが説明した。
「二大イケメン魔導師のもう一人だよぉ。麗《うるわ》しのホスルッド様だよぉ~!」
即座にキャシーが説明しなおした。
「たしかにホスルッド様は絶世の美男子で有名だけど。ホスルッド様といえば、自然魔法の名門ホーヘンハインの長でしょ。20代で<師>の資格を取っただけじゃなくて名門の長をやってる2大天才魔導師、ホスルッドとガリ。あの二人がそろってたなんて。今回の奨学生試験、奇跡みたい。受けに来てよかった」
それを聞いて、イーアはふと疑問に思ってたずねた。
「キャシーは奨学生試験を受けないつもりだったの?」
「だって、あたしなんて受けてもどうせ受からないもん。でも、うちの親はケチだから。奨学生試験を受けなきゃ授業料を払ってやらん、って言うから、受けるだけ受けたの」
キャシーの家は十分授業料を払えるくらいお金持ちのようだ。
アイシャはのんびりと言った。
「わたしはねぇ。どっちでもよかったんだけどねぇ。たのしそうかなぁって」
「アイシャなんて、ぜーったい、奨学金いらないもんねー」
アイシャはかなりのお金持ちの家の子みたいだ。
「そっか……」
お金がなくて入学できないのはイーアだけのようだ。
イーアがため息をついた時、むこうの方で、グランドールの先生がこっちにむかって手を振っているのに気がついた。
「あれ? 先生が手を振ってる……」
手を振っているのは、召喚術の試験の時にイーアが変な召喚獣でノックアウトしてしまった高齢の先生だ。たしか、オレンという名前の。
オレン先生はイーア達のほうに近づいてきて、声をかけてきた。
「受験番号49番のイーアさん。少し話をしていいかね?」
「はい……」
返事をしながら、イーアは不安になった。
(どうしよう。召喚術のテストでKOしちゃったこと、怒ってるかな)
「じゃあねー。イーア。入学式でまた会お!」
「またねぇ」
キャシーとアイシャは、そう言って去って行った。
周囲にほかの受験生がいなくなると、先生は言った。
「私の名はオレン。グランドールの召喚術担当教員だ。さっきは驚いたよ」
「すみません! 変なプープクを呼んじゃって! わざとじゃないんです!」
イーアは勢いよく謝った。
「ああ、そのことじゃない。あれにも驚いたが。面接の時のことだよ。信じられん。不完全とはいえ、まさか神獣イーランを呼び出すものがいるとは」
イーアは聞き返した。
「神獣イーラン?」
「君が呼びだした召喚獣だよ。霊獣の中で最も高位の一体と言われる。知らなかったのかい?」
知るはずがない。それに、あの召喚獣は手乗りサイズで弱そうだった。
とても高位の召喚獣には見えなかった。態度はえらそうだったけど。
「知りませんでした。それに、召喚の契約もしてなくて、見たこともなかったです」
オレン先生は首を左右に振った。
「契約なんて、できるはずがない。地域によっては神として信仰を集めている霊獣だ。いまだかつてこの世にイーランと契約を交わしたものなどいない。いや、私が知る限り、イーランを自ら呼び出した者の記録もないはずだ。君はいったいなぜあんな霊獣を呼び出せるのだ?」
「さぁ……。あの呪文……?」
イーアはただ指示された呪文を唱えただけだ。
だから、今の今までイーアは、あの呪文はあの召喚獣を呼び出すためのものだと思いこんでいた。
オレン先生は説明した。
「君が使った呪文は、イーランを呼びだす召喚呪文ではない。あれは、呼び出せる中で最も高位の召喚獣を呼び出す呪文だ。気づいていただろうが、君は試されていたんだよ。ウェルグァンダルの塔主に。……そして、見事、合格したのだ」
イーアは何も気づいていなかったし、オレン先生の話はよくわからなかったけれど、最後にでてきた「合格」という言葉で、イーアは目を見開いた。
「合格……? じゃ、奨学生試験に合格!?」
でも、オレン先生はきっぱり首を左右に振った。
「いや、グランドールの奨学生試験には、落ちただろう。もちろん、正式な結果はまだ出ていないが、君の成績を見る限り、どうやっても……」
イーアはがっかりしながら、でも、納得してつぶやいた。
「ですよねー」
オレン先生は言った。
「その代わり、さっき、ウェルグァンダルの塔主から申し出があったよ。ウェルグァンダルが君を奨学生として受け入れたいと。学費と寮費を全額支給してくれるそうだ。つまり、君はウェルグァンダルの奨学生としてグランドールに入学できる。この申し出を受けるかね?」
数秒の間、イーアはどういうことか理解できなくて停止していた。それから、慌ててたずね返した。
「授業料を全額払ってくれるんですか? じゃ、お金がなくてもグランドールに入学できるんですか?」
「もちろんだ。ただし、当然、ウェルグァンダルへの入門が条件だろう。つまり、他の門派へ入門することはできなくなる。私としてはこの申し出を受けることをすすめるが、召喚術は数ある魔術の中でも特に危険で苦難が多いことも確かだ。もしも他に入門したいところがあるのなら……」
イーアは立ち上がって、力強く叫んだ。
「入ります! ウエガーダル! 授業料を払ってくれるなら!」
ウェルグァンダルがどういうところかは知らないけれど、それどころか、名前もよく聞き取れないけど、イーアとしては、学費を払ってくれるなら、なんでもよかった。
「そうかね。では、先方に伝えておこう。それでは、また入学式の日に」
オレン先生はそう言って立ち上がった。
イーアはオレン先生の後ろ姿に向かって元気よく言った。
「はい! また入学式の日に!」
イーアは目の前の世界がすっかり明るくなったような気がした。
さっきまではよそよそしくイーアをバカにしているように見えた学校の重厚な建物が、今はすっかりフレンドリーに「よっ! よく来たね!」と言っているように見えてくる。
(入学できた! 入学できたー!)
イーアは手をあげて一人で、大きく跳びあがった。
イーアは試験会場の外でユウリと合流した。
イーアはユウリを見つけると、いきなり泣きついた。
「ユウリ~。だめだったよ~。わたしはナミンの家に帰って、お手伝いさんになるから。ユウリはグランドールでがんばってね」
ユウリは困りきった表情で言った。
「イーア。結果が出るまではあきらめないで。それに、入学試験は合格してるんだ。お金さえあれば、入学できるんだから、どうにかして、ぼくが授業料をかせぐよ。すぐには無理でも来年入学できるように……」
イーアは涙をふいた。来年、という言葉を聞いて、思い出したのだ。
「うん。そういえば、奨学生試験は毎年あるもんね。よし、来年がんばろう! ユウリは先に入学して待っててね。わたしは猛勉強して、来年こそ受かるよ!」
グランドールは13歳くらいで入学する人が多いけど、17歳までなら入学できる。だから、イーアはまだまだ何回も受験可能だ。
「あ、うん……」
勝手に元気を取り戻したイーアにユウリが拍子抜けしながらうなずいた時。遠くからユウリを呼ぶ声が聞こえた。
「受験番号1番 ケイニス君。受験番号2番 ユウリ君。試験会場の入り口に来てください」
試験会場の入り口前で、誰かがそう呼んでいる。
「ユウリ、呼ばれてるよ?」
「うん。じゃあ、イーア。ぼくは行くから、また後で。ここで集合しよう」
「うん、まってるよ。じゃーねー」
イーアはユウリを見送ると、近くにあったベンチに座った。
ここからは、グランドールの立派な校舎がよく見えた。
風格のあるお城みたいな建物だ。
でも、イーアはこのままではあの校舎に入れない。奨学生になるか学費を払うかしないと、入学できない。
そう思うと、校舎の重厚さがよそよそしく感じられて、まるで建物が「お前のような貧乏人には入学資格なし! 底辺は底辺らしく底辺におさまっておればよいのだ」と悪口を言ってくるように思えてきた。
(不公平だよね。同じ成績でも、お金があれば入学できるのに)
イーアが心の中でそうつぶやくと、グランドールの校舎が威圧的に言い返してくるように感じた。「何でも選べると思うな。選ぶ資格を持てるのは生まれつき恵まれた者だけだ。その肌を見ろ。奴隷にされていないだけありがたく思え」と。
(そんなの、おかしいよ。なんで、勉強したい人はみんな学校に入れるようにならないのかな)
そう思いながらイーアが座ってユウリを待っていると、女の子が二人近づいてきた。
ひとりは、のんびりした雰囲気の女の子だ。ストロベリーブロンドの美しい髪の毛にかわいらしい髪飾りをつけ、高級そうな布地のローブにかわいいブローチをつけている。
もうひとりは、ピンで栗色の髪の毛をとめた、きりっとした感じの女の子。この子は召喚術の試験やさっきの面接で一緒だった受験番号46番の子だ。
受験番号46番の子が、イーアに話しかけてきた。
「ね、さっき面接でいっしょだったよね? あなたの名前はイーアでしょ?」
「うん。えーっと……」
イーアは名前をおぼえていなかった。
「あたしはキャシー。この子は友達のアイシャ。初等魔学校が同じだったの」
「よろしくねぇ」
アイシャはのんびりした声でそう言って、かわいく手を振った。
「うん。よろしくね」
あいさつを終えると、キャシーは興奮した様子で話しだした。
「今、アイシャと話してたんだけど、面接にガリ様がきてたよね! イーアが話しかけられてて、とっても、うらやましかった!」
イーアは首をかしげた。
「ガリ様?」
イーアが話しかけられた、ということは、キャシーが言ってるのは、面接のときに召喚術のテストをしてきた怖い魔導師のことのようだ。厳密には、話しかけられていないけど。あの魔導師は一言もしゃべっていないから。
キャシーとアイシャはそれぞれ叫んだ。
「天才召喚士<黒竜の子>! 名門ウェルグァンダルの若き塔主! 最強の召喚士!」
「2大イケメン魔導師の一人だよぉ~!」
イーアはきょとんとした。特に、アイシャが言ったことに。
「2大イケメン……?」
この子は何を言っているんだろう。
イーアは心の中でそう思った。
魔導師の顔なんて、どうでもいい。
イーアが何か言う前に、キャシーが言った。
「アイシャ、そこ? でも、たしかにガリ様はクールな感じでかっこよかったよね? ね? イーア」
「そうだっけ……?」
それどころじゃなかったので、イーアは面接の時に会った人の顔はおぼえていない。なんとなく、暗くて怖い雰囲気の人だったということだけおぼえている。
「あのガリ様に召喚術のテストをしてもらえるなんて。うらやましい!」
キャシーはそう言ったけど、イーアは暗い声で言った。
「でも、失敗ぽかったから……恥ずかし……」
あの魔導師が天才召喚士だったとか聞くと、イーアはますます恥ずかしい気持ちになってきて、ぜんぶ忘れようと頭をぶんぶんと振った。
「でも、ちゃんと呼び出せてたもん。あんな、教科書で見たことのない精霊を呼べるなんて、イーアはすごいよね」
キャシーはそうほめてくれた。
それから、キャシーは興奮したようすで続けて言った。
「それに、なんと、ホスルッド様も来てたらしいの! あたしは会えなかったけど」
「ホスルッド様?」
イーアが聞き返すと、アイシャが説明した。
「二大イケメン魔導師のもう一人だよぉ。麗《うるわ》しのホスルッド様だよぉ~!」
即座にキャシーが説明しなおした。
「たしかにホスルッド様は絶世の美男子で有名だけど。ホスルッド様といえば、自然魔法の名門ホーヘンハインの長でしょ。20代で<師>の資格を取っただけじゃなくて名門の長をやってる2大天才魔導師、ホスルッドとガリ。あの二人がそろってたなんて。今回の奨学生試験、奇跡みたい。受けに来てよかった」
それを聞いて、イーアはふと疑問に思ってたずねた。
「キャシーは奨学生試験を受けないつもりだったの?」
「だって、あたしなんて受けてもどうせ受からないもん。でも、うちの親はケチだから。奨学生試験を受けなきゃ授業料を払ってやらん、って言うから、受けるだけ受けたの」
キャシーの家は十分授業料を払えるくらいお金持ちのようだ。
アイシャはのんびりと言った。
「わたしはねぇ。どっちでもよかったんだけどねぇ。たのしそうかなぁって」
「アイシャなんて、ぜーったい、奨学金いらないもんねー」
アイシャはかなりのお金持ちの家の子みたいだ。
「そっか……」
お金がなくて入学できないのはイーアだけのようだ。
イーアがため息をついた時、むこうの方で、グランドールの先生がこっちにむかって手を振っているのに気がついた。
「あれ? 先生が手を振ってる……」
手を振っているのは、召喚術の試験の時にイーアが変な召喚獣でノックアウトしてしまった高齢の先生だ。たしか、オレンという名前の。
オレン先生はイーア達のほうに近づいてきて、声をかけてきた。
「受験番号49番のイーアさん。少し話をしていいかね?」
「はい……」
返事をしながら、イーアは不安になった。
(どうしよう。召喚術のテストでKOしちゃったこと、怒ってるかな)
「じゃあねー。イーア。入学式でまた会お!」
「またねぇ」
キャシーとアイシャは、そう言って去って行った。
周囲にほかの受験生がいなくなると、先生は言った。
「私の名はオレン。グランドールの召喚術担当教員だ。さっきは驚いたよ」
「すみません! 変なプープクを呼んじゃって! わざとじゃないんです!」
イーアは勢いよく謝った。
「ああ、そのことじゃない。あれにも驚いたが。面接の時のことだよ。信じられん。不完全とはいえ、まさか神獣イーランを呼び出すものがいるとは」
イーアは聞き返した。
「神獣イーラン?」
「君が呼びだした召喚獣だよ。霊獣の中で最も高位の一体と言われる。知らなかったのかい?」
知るはずがない。それに、あの召喚獣は手乗りサイズで弱そうだった。
とても高位の召喚獣には見えなかった。態度はえらそうだったけど。
「知りませんでした。それに、召喚の契約もしてなくて、見たこともなかったです」
オレン先生は首を左右に振った。
「契約なんて、できるはずがない。地域によっては神として信仰を集めている霊獣だ。いまだかつてこの世にイーランと契約を交わしたものなどいない。いや、私が知る限り、イーランを自ら呼び出した者の記録もないはずだ。君はいったいなぜあんな霊獣を呼び出せるのだ?」
「さぁ……。あの呪文……?」
イーアはただ指示された呪文を唱えただけだ。
だから、今の今までイーアは、あの呪文はあの召喚獣を呼び出すためのものだと思いこんでいた。
オレン先生は説明した。
「君が使った呪文は、イーランを呼びだす召喚呪文ではない。あれは、呼び出せる中で最も高位の召喚獣を呼び出す呪文だ。気づいていただろうが、君は試されていたんだよ。ウェルグァンダルの塔主に。……そして、見事、合格したのだ」
イーアは何も気づいていなかったし、オレン先生の話はよくわからなかったけれど、最後にでてきた「合格」という言葉で、イーアは目を見開いた。
「合格……? じゃ、奨学生試験に合格!?」
でも、オレン先生はきっぱり首を左右に振った。
「いや、グランドールの奨学生試験には、落ちただろう。もちろん、正式な結果はまだ出ていないが、君の成績を見る限り、どうやっても……」
イーアはがっかりしながら、でも、納得してつぶやいた。
「ですよねー」
オレン先生は言った。
「その代わり、さっき、ウェルグァンダルの塔主から申し出があったよ。ウェルグァンダルが君を奨学生として受け入れたいと。学費と寮費を全額支給してくれるそうだ。つまり、君はウェルグァンダルの奨学生としてグランドールに入学できる。この申し出を受けるかね?」
数秒の間、イーアはどういうことか理解できなくて停止していた。それから、慌ててたずね返した。
「授業料を全額払ってくれるんですか? じゃ、お金がなくてもグランドールに入学できるんですか?」
「もちろんだ。ただし、当然、ウェルグァンダルへの入門が条件だろう。つまり、他の門派へ入門することはできなくなる。私としてはこの申し出を受けることをすすめるが、召喚術は数ある魔術の中でも特に危険で苦難が多いことも確かだ。もしも他に入門したいところがあるのなら……」
イーアは立ち上がって、力強く叫んだ。
「入ります! ウエガーダル! 授業料を払ってくれるなら!」
ウェルグァンダルがどういうところかは知らないけれど、それどころか、名前もよく聞き取れないけど、イーアとしては、学費を払ってくれるなら、なんでもよかった。
「そうかね。では、先方に伝えておこう。それでは、また入学式の日に」
オレン先生はそう言って立ち上がった。
イーアはオレン先生の後ろ姿に向かって元気よく言った。
「はい! また入学式の日に!」
イーアは目の前の世界がすっかり明るくなったような気がした。
さっきまではよそよそしくイーアをバカにしているように見えた学校の重厚な建物が、今はすっかりフレンドリーに「よっ! よく来たね!」と言っているように見えてくる。
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この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
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