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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第15話 ガリの到着
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プリンを食べてゆっくり休んだあと、イーアはリグナムにウェルグァンダルの案内の続きをお願いした。
食堂を出たところでリグナムは言った。
「もー。君、着いて5分で食堂を使いこなしてリラックスしすぎじゃない? すっかり食堂を我が物にしてるよ?」
「すみません。プリンがおいしすぎて」
「まー。いーけどねー。僕もひまだし」
リグナムは階段を上りながら、イーアに説明した。
「図書室は全部で3つ。それぞれ入室資格が違って、別の階にあるんだ。第二図書室は6階にあるけど、あそこは<召喚士>しか入れないんだよ。お客さんが入れるのは4階まで」
イーアはそれを聞いて、ふと疑問に思ってたずねた。
「この塔って、何階まであるんですか?」
「実は僕も知らないんだ。10階以上に行ったことないから、よくわからないんだよね。噂だと99階まであるとかいうけど、たぶんそんなにないよ。そうだ。せっかくだから、9階まで行ってみる?」
「はい。行ってみたいです」
というわけで、イーアとリグナムはのんびり階段を上っていった。
塔の中は、上の階に上がるにつれ、どんどんとほこりっぽく蜘蛛の巣だらけになってきた。
「なんか汚い……」
6階でちょっと休憩しながらイーアがつぶやくと、リグナムは言った。
「気づいた? 5階より上の階にはほとんど誰も来ないから、掃除するのやめちゃったんだ」
「えー……。あのぉ、いちおう聞きますけど、ここのそうじも簡単にできるんですか?」
たぶん、聞くまでもなく、できるはずだ。
イーアがすでに半分あきれながらたずねると、リグナムはうなずいた。
「うん。そこで居眠りしているマホーキっていう妖精に精霊語で声をかけるだけだよ」
階段の傍に木でできたホウキみたいなものが落ちていた。
でもこれはホウキじゃなくて妖精らしい。
イーアは顔を近づけてよく見てみた。
どう見ても、ホウキだ。でも、寝息のような音がする。
イーアはためしに声をかけてみた。
『マホーキ、そうじして』
とたんに、ホウキみたいな物体が一度ぐにゃりと曲がって、ピョンっと飛び上って、『ホウホウホウ、サッサッサッ』と歌いながら階段を掃きだした。
リグナムは心底感心したようにイーアをほめた。
「君、超優秀なそうじ係だね! マホーキがあんなにやる気を出してそうじしてくれるなんて! 食堂でも思ったけど、君ってまるでウェルグァンダルのそうじ係になるために生まれてきたみたいだ!」
イーアは(そうじ係になるために生まれるって、あんまりうれしくないよ)と心の中で思ったけど、言わなかった。
「僕が声をかけても、あんなにやる気になってくれないよ? 一応、そうじはしてくれるけど。それに、僕は、声をかけるのすらめんどくさくてさ。だって、掃除しなくてもガリは気づかないんだよ?」
(そういう問題じゃないよ。汚いじゃん。放置しちゃだめだよ!)
イーアは心の中でそう思ったけど、言わなかった。
「たまに門弟の方々が来るから、その時はそうじするんだけどさ。さ、そこが9階のホール。なつかしいなー。昔はここにみんなが集まって集会とかお祝いとかしたんだ」
イーア達は9階についた。
階段をあがったところの右手には小さな扉があり、左手には大きな扉があった。
リグナムは左手に進み大きな扉を開けた。
その先は大きな広間だった。だだっぴろい何もない部屋だ。
イーアはホールの中に入り、奥まで歩いて行った。そして、窓に近寄り外を見た。
9階だから眺めがいいかと思ったけど、窓の外は深い霧で何も見えなかった。
リグナムも窓の外を見て、言った。
「昔はここまで霧がひどくなかったから、外の景色を見れたんだけど。もともと森と荒れ地が広がるだけの場所だけどさ。今はすっかり霧がひどくて、それすら見えないよ。僕がかってに思ってるんだけど。これ、きっとガリが塔主になったせいだよ。きっと黒竜好みの気候にしちゃったんだよ」
リグナムは冗談っぽくそう言った。
「黒竜?」
イーアが聞き返すとリグナムは説明した。
「ガリは<黒竜の子>って呼ばれてるでしょ? ガリは黒竜(ブラックドラゴン)に育てられたんだ。だから、人間嫌いなのさ。ドラゴンと一緒にいる方が落ち着くらしいよ。暇さえあれば戦争に行ってるし。ほんと、ガリは塔主には向いてないよ。そりゃ、ウェルグァンダルに<黒竜の子>はぴったりだけど。絶対に跡継ぎはザヒの方がよかったのにさ。なんでガリが……」
イーアは、その時、気が付いた。
音もなく、気配もなく、この部屋の入り口に黒い人影が立っていたことに。
「あ……」
「え? あ……!」
リグナムは、入り口の人影に気がついて青ざめた。
部屋の入り口から、ガリが険しい表情でリグナムを睨んでいた。
リグナムはあわてて言い訳をはじめた。
「ガリ、僕は別にガリが塔主失格だなんて言ってないよ? 全然言ってないよ?」
ガリはリグナムには何も言わず、イーアに言った。
「来い。とっとと<入塔の儀>を終わらせる」
ガリはそれだけ言うと、きびすを返し、階段の方へ姿を消した。
イーアは置いていかれないように、あわててガリを追いかけた。
一方、ひとり取り残されたリグナムはぽかーんと口を開けて、信じられないというようにつぶやいた。
「<入塔の儀>? まさか、あの子、入門者? ガリが、ついに、弟子を取る!?」
食堂を出たところでリグナムは言った。
「もー。君、着いて5分で食堂を使いこなしてリラックスしすぎじゃない? すっかり食堂を我が物にしてるよ?」
「すみません。プリンがおいしすぎて」
「まー。いーけどねー。僕もひまだし」
リグナムは階段を上りながら、イーアに説明した。
「図書室は全部で3つ。それぞれ入室資格が違って、別の階にあるんだ。第二図書室は6階にあるけど、あそこは<召喚士>しか入れないんだよ。お客さんが入れるのは4階まで」
イーアはそれを聞いて、ふと疑問に思ってたずねた。
「この塔って、何階まであるんですか?」
「実は僕も知らないんだ。10階以上に行ったことないから、よくわからないんだよね。噂だと99階まであるとかいうけど、たぶんそんなにないよ。そうだ。せっかくだから、9階まで行ってみる?」
「はい。行ってみたいです」
というわけで、イーアとリグナムはのんびり階段を上っていった。
塔の中は、上の階に上がるにつれ、どんどんとほこりっぽく蜘蛛の巣だらけになってきた。
「なんか汚い……」
6階でちょっと休憩しながらイーアがつぶやくと、リグナムは言った。
「気づいた? 5階より上の階にはほとんど誰も来ないから、掃除するのやめちゃったんだ」
「えー……。あのぉ、いちおう聞きますけど、ここのそうじも簡単にできるんですか?」
たぶん、聞くまでもなく、できるはずだ。
イーアがすでに半分あきれながらたずねると、リグナムはうなずいた。
「うん。そこで居眠りしているマホーキっていう妖精に精霊語で声をかけるだけだよ」
階段の傍に木でできたホウキみたいなものが落ちていた。
でもこれはホウキじゃなくて妖精らしい。
イーアは顔を近づけてよく見てみた。
どう見ても、ホウキだ。でも、寝息のような音がする。
イーアはためしに声をかけてみた。
『マホーキ、そうじして』
とたんに、ホウキみたいな物体が一度ぐにゃりと曲がって、ピョンっと飛び上って、『ホウホウホウ、サッサッサッ』と歌いながら階段を掃きだした。
リグナムは心底感心したようにイーアをほめた。
「君、超優秀なそうじ係だね! マホーキがあんなにやる気を出してそうじしてくれるなんて! 食堂でも思ったけど、君ってまるでウェルグァンダルのそうじ係になるために生まれてきたみたいだ!」
イーアは(そうじ係になるために生まれるって、あんまりうれしくないよ)と心の中で思ったけど、言わなかった。
「僕が声をかけても、あんなにやる気になってくれないよ? 一応、そうじはしてくれるけど。それに、僕は、声をかけるのすらめんどくさくてさ。だって、掃除しなくてもガリは気づかないんだよ?」
(そういう問題じゃないよ。汚いじゃん。放置しちゃだめだよ!)
イーアは心の中でそう思ったけど、言わなかった。
「たまに門弟の方々が来るから、その時はそうじするんだけどさ。さ、そこが9階のホール。なつかしいなー。昔はここにみんなが集まって集会とかお祝いとかしたんだ」
イーア達は9階についた。
階段をあがったところの右手には小さな扉があり、左手には大きな扉があった。
リグナムは左手に進み大きな扉を開けた。
その先は大きな広間だった。だだっぴろい何もない部屋だ。
イーアはホールの中に入り、奥まで歩いて行った。そして、窓に近寄り外を見た。
9階だから眺めがいいかと思ったけど、窓の外は深い霧で何も見えなかった。
リグナムも窓の外を見て、言った。
「昔はここまで霧がひどくなかったから、外の景色を見れたんだけど。もともと森と荒れ地が広がるだけの場所だけどさ。今はすっかり霧がひどくて、それすら見えないよ。僕がかってに思ってるんだけど。これ、きっとガリが塔主になったせいだよ。きっと黒竜好みの気候にしちゃったんだよ」
リグナムは冗談っぽくそう言った。
「黒竜?」
イーアが聞き返すとリグナムは説明した。
「ガリは<黒竜の子>って呼ばれてるでしょ? ガリは黒竜(ブラックドラゴン)に育てられたんだ。だから、人間嫌いなのさ。ドラゴンと一緒にいる方が落ち着くらしいよ。暇さえあれば戦争に行ってるし。ほんと、ガリは塔主には向いてないよ。そりゃ、ウェルグァンダルに<黒竜の子>はぴったりだけど。絶対に跡継ぎはザヒの方がよかったのにさ。なんでガリが……」
イーアは、その時、気が付いた。
音もなく、気配もなく、この部屋の入り口に黒い人影が立っていたことに。
「あ……」
「え? あ……!」
リグナムは、入り口の人影に気がついて青ざめた。
部屋の入り口から、ガリが険しい表情でリグナムを睨んでいた。
リグナムはあわてて言い訳をはじめた。
「ガリ、僕は別にガリが塔主失格だなんて言ってないよ? 全然言ってないよ?」
ガリはリグナムには何も言わず、イーアに言った。
「来い。とっとと<入塔の儀>を終わらせる」
ガリはそれだけ言うと、きびすを返し、階段の方へ姿を消した。
イーアは置いていかれないように、あわててガリを追いかけた。
一方、ひとり取り残されたリグナムはぽかーんと口を開けて、信じられないというようにつぶやいた。
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