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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第16話 <真の名>
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階段のそばの小さな扉の前で、イーアはガリに追いついた。
扉が開き、ガリは無言で中に入って行った。イーアも後に続いた。
狭い室内の床にはグランドールの寮のエレベーターと同じような魔法陣が描かれていた。
この部屋は、エレベーターのようだ。
扉が閉まり床が上昇を始めた。
ガリはずっと無言だ。何も言わない。
ガリが怒っているのか、単にすごく無口なのか、よくわからなくて、イーアは不安になった。
上昇を続ける床は、いつまでもいつまでも上昇し続けているようにイーアは感じた。
でも、やがて上昇は止まり扉が開いた。
その先には広い廊下が続いていた。
壁には複雑な紋様が描かれ、ところどころにドラゴンの彫刻が掘られた柱とアーチがあった。
ガリは無言でどんどん先を歩いて行った。
ドラゴンの絵が描かれた大きなアーチ型の扉が途中にいくつもあった。その巨大な扉はガリが手をかざすと勝手に開いていった。
やがて、何本もの竜の頭がついたかんぬきでカギがかけられた巨大な扉の前にやってきた。
かんぬきはどんなに背が高い人でも手が届かない高いところにある。
ガリが手をかざすと、竜の頭がついたかんぬきは次々に横にスライドしていき、そして、扉がゆっくりと開いた。
その先の空間は不思議な光で満ちていた。
光に満ちた部屋の中へガリは無言で入って行き、イーアも後に続いた。
不思議なまぶしい光が部屋の上部から降りそそいでいて、この部屋の天井は見えなかった。
部屋の真ん中には白い石のテーブルが一つだけある。
ガリはテーブルの向こう側に立ち、広間を出てからはじめて口を開いた。
「『友契の書』を出せ」
イーアはカバンから『友契の書』を取り出して、テーブルの上に置いた。
ガリは『友契の書』の表紙を開くと、何か早口に呪文を唱えた。
すると、『友契の書』から声が聞こえた。
『魂の名が不明です。塔との契約は行えません』
ガリは鋭い目でイーアをちらっと見た。
それから、ガリは再び何かを唱えた。
今度は部屋の上方から声が響いた。
『かのものの魂の名はすでに封じられています。魂の名を塔に封じることができません』
ガリはイーアを見ると、きつい口調でたずねた。
「おまえの<真の名>が封じられている。なぜだ?」
イーアは何のことだかわからずたずねた。
「わたしの名前ですか?」
ガリは鋭い目でイーアを見ながら言った。
「名前ではない。<真の名>だ。『魂の名』ともいう」
<真の名>というのは魔導士が使う用語のようだ。精霊語では『魂の名』というらしい。
どちらも、イーアは聞いたことがない言葉だ。
「<真の名>ってなんですか? たぶん、持ってません」
ガリは小さくため息をつき説明をはじめた。
「あらゆる生き物が<真の名>を持っている。魂に刻まれた記号のようなものだ。魔導士にとっては弱点にもなる。だから、入門と同時に<真の名>を塔に封じる。だが、お前の<真の名>はすでに誰かに封じられている。誰かに弟子入りをしたか?」
イーアはぶんぶんと頭を横に振った。
「弟子入りなんて、してません」
「ならば、誰かと契約をしたか? 大規模な術をかけられたか?」
「ないです」
でも、ガリは断言した。
「ある。思い出せ。このままでは、ウェルグァンダルへ入門できない」
そう言われて、イーアははじめて、これが問題だということに気が付いた。
ウェルグァンダルに入門できない。ということは、つまり、学費を出してもらえなくなるってことだ!
「それは困る……! でも、なにも心当たりないです……」
ガリはイーアの『友契の書』をバタンと閉じると、イーアに突き返した。
「思い出せ」
それだけ言うと、ガリは部屋から出て行ってしまった。
イーアはあわててガリの後を追って部屋から出た。
半分パニックになりながら、イーアはとりあえず、ガリを追いかけて来た道を戻っていった。
さっき開いていった扉が、イーアが通るたびに背後でどんどんと閉じていった。
そして、一番エレベーターに近いところにあった扉が閉じた時、ガリはどこかに消えていた。
さっきまでイーアの目の前を歩いていたはずなのに、ガリは一瞬で消えてしまった。
何も言わずに。
イーアはどこに行けばいいのかわからなかったから、とりあえずエレベーターに乗って1階に降りた。
図書室の方に行くと、リグナムがいた。
リグナムはイーアを見つけると、あわてて駆け寄ってきた。
「君、君。入門者だったの!? ああ! その手に持つのは『友契の書』! ……なんてこった。あのガリが弟子入りを認めるなんて。しかも<見習い>をすっとばしていきなり正式に入門!?」
そう叫ぶリグナムの前で、イーアはぼそぼそと言った。
「あのー。それが……。弟子入りできなかったんです……」
リグナムは首をかしげた。
「え? そなの? 『友契の書』をもらっているのに? それ、ウェルグァンダルの<召喚士>の証なんだよ? 正式に<召喚士>として認めてもらわないと、もらえないんだ」
イーアはリグナムに入門できなかった事情を説明した。
リグナムは納得したように何度もうなずきながら、あっさり言った。
「なるほど、<真の名>が。それは、僕にはどうしようもないね。そっか。ようやくガリの弟子1号が出現したかと思ったら、やっぱりダメだったか。ま、ガリに弟子なんてできるわけないよね」
「そんなこと言わないで、助けてください! リグナムさん!」
イーアはお願いしたけど、リグナムは手をひらひらと振った。
「むりむり。<真の名>を見つけるとか、封印を解くとか、僕の手には負えないよ。そんなことできるなら、僕だってとっくに入門できてるよ」
とても説得力があったので、イーアはリグナムの助けはあきらめた。
リグナムは言った。
「でも、調べものをしたいなら、第一図書室は勝手に使っていいよ。あと、泊まる部屋を用意しといたよ」
「それは、ありがとうございます……」
イーアはとりあえず今日泊まる部屋に案内された。
ベッドと机があるだけの質素だけど十分快適そうな部屋だった。ちょっとほこりっぽいけど。
「昼食と夕飯は食堂でクーちゃんに注文してね。僕はいつもおまかせ定食だけど」
そう明るく言って、リグナムは去って行った。
クーちゃんの作るご飯はおいしそうだから楽しみだ。
でも、今はそれどころじゃない。
「<真の名>……」
ガリは思い出せと言った。思い出せば、どうにかなるってことだ。
イーアは過去に起こったことをよく思い出してみた。
扉が開き、ガリは無言で中に入って行った。イーアも後に続いた。
狭い室内の床にはグランドールの寮のエレベーターと同じような魔法陣が描かれていた。
この部屋は、エレベーターのようだ。
扉が閉まり床が上昇を始めた。
ガリはずっと無言だ。何も言わない。
ガリが怒っているのか、単にすごく無口なのか、よくわからなくて、イーアは不安になった。
上昇を続ける床は、いつまでもいつまでも上昇し続けているようにイーアは感じた。
でも、やがて上昇は止まり扉が開いた。
その先には広い廊下が続いていた。
壁には複雑な紋様が描かれ、ところどころにドラゴンの彫刻が掘られた柱とアーチがあった。
ガリは無言でどんどん先を歩いて行った。
ドラゴンの絵が描かれた大きなアーチ型の扉が途中にいくつもあった。その巨大な扉はガリが手をかざすと勝手に開いていった。
やがて、何本もの竜の頭がついたかんぬきでカギがかけられた巨大な扉の前にやってきた。
かんぬきはどんなに背が高い人でも手が届かない高いところにある。
ガリが手をかざすと、竜の頭がついたかんぬきは次々に横にスライドしていき、そして、扉がゆっくりと開いた。
その先の空間は不思議な光で満ちていた。
光に満ちた部屋の中へガリは無言で入って行き、イーアも後に続いた。
不思議なまぶしい光が部屋の上部から降りそそいでいて、この部屋の天井は見えなかった。
部屋の真ん中には白い石のテーブルが一つだけある。
ガリはテーブルの向こう側に立ち、広間を出てからはじめて口を開いた。
「『友契の書』を出せ」
イーアはカバンから『友契の書』を取り出して、テーブルの上に置いた。
ガリは『友契の書』の表紙を開くと、何か早口に呪文を唱えた。
すると、『友契の書』から声が聞こえた。
『魂の名が不明です。塔との契約は行えません』
ガリは鋭い目でイーアをちらっと見た。
それから、ガリは再び何かを唱えた。
今度は部屋の上方から声が響いた。
『かのものの魂の名はすでに封じられています。魂の名を塔に封じることができません』
ガリはイーアを見ると、きつい口調でたずねた。
「おまえの<真の名>が封じられている。なぜだ?」
イーアは何のことだかわからずたずねた。
「わたしの名前ですか?」
ガリは鋭い目でイーアを見ながら言った。
「名前ではない。<真の名>だ。『魂の名』ともいう」
<真の名>というのは魔導士が使う用語のようだ。精霊語では『魂の名』というらしい。
どちらも、イーアは聞いたことがない言葉だ。
「<真の名>ってなんですか? たぶん、持ってません」
ガリは小さくため息をつき説明をはじめた。
「あらゆる生き物が<真の名>を持っている。魂に刻まれた記号のようなものだ。魔導士にとっては弱点にもなる。だから、入門と同時に<真の名>を塔に封じる。だが、お前の<真の名>はすでに誰かに封じられている。誰かに弟子入りをしたか?」
イーアはぶんぶんと頭を横に振った。
「弟子入りなんて、してません」
「ならば、誰かと契約をしたか? 大規模な術をかけられたか?」
「ないです」
でも、ガリは断言した。
「ある。思い出せ。このままでは、ウェルグァンダルへ入門できない」
そう言われて、イーアははじめて、これが問題だということに気が付いた。
ウェルグァンダルに入門できない。ということは、つまり、学費を出してもらえなくなるってことだ!
「それは困る……! でも、なにも心当たりないです……」
ガリはイーアの『友契の書』をバタンと閉じると、イーアに突き返した。
「思い出せ」
それだけ言うと、ガリは部屋から出て行ってしまった。
イーアはあわててガリの後を追って部屋から出た。
半分パニックになりながら、イーアはとりあえず、ガリを追いかけて来た道を戻っていった。
さっき開いていった扉が、イーアが通るたびに背後でどんどんと閉じていった。
そして、一番エレベーターに近いところにあった扉が閉じた時、ガリはどこかに消えていた。
さっきまでイーアの目の前を歩いていたはずなのに、ガリは一瞬で消えてしまった。
何も言わずに。
イーアはどこに行けばいいのかわからなかったから、とりあえずエレベーターに乗って1階に降りた。
図書室の方に行くと、リグナムがいた。
リグナムはイーアを見つけると、あわてて駆け寄ってきた。
「君、君。入門者だったの!? ああ! その手に持つのは『友契の書』! ……なんてこった。あのガリが弟子入りを認めるなんて。しかも<見習い>をすっとばしていきなり正式に入門!?」
そう叫ぶリグナムの前で、イーアはぼそぼそと言った。
「あのー。それが……。弟子入りできなかったんです……」
リグナムは首をかしげた。
「え? そなの? 『友契の書』をもらっているのに? それ、ウェルグァンダルの<召喚士>の証なんだよ? 正式に<召喚士>として認めてもらわないと、もらえないんだ」
イーアはリグナムに入門できなかった事情を説明した。
リグナムは納得したように何度もうなずきながら、あっさり言った。
「なるほど、<真の名>が。それは、僕にはどうしようもないね。そっか。ようやくガリの弟子1号が出現したかと思ったら、やっぱりダメだったか。ま、ガリに弟子なんてできるわけないよね」
「そんなこと言わないで、助けてください! リグナムさん!」
イーアはお願いしたけど、リグナムは手をひらひらと振った。
「むりむり。<真の名>を見つけるとか、封印を解くとか、僕の手には負えないよ。そんなことできるなら、僕だってとっくに入門できてるよ」
とても説得力があったので、イーアはリグナムの助けはあきらめた。
リグナムは言った。
「でも、調べものをしたいなら、第一図書室は勝手に使っていいよ。あと、泊まる部屋を用意しといたよ」
「それは、ありがとうございます……」
イーアはとりあえず今日泊まる部屋に案内された。
ベッドと机があるだけの質素だけど十分快適そうな部屋だった。ちょっとほこりっぽいけど。
「昼食と夕飯は食堂でクーちゃんに注文してね。僕はいつもおまかせ定食だけど」
そう明るく言って、リグナムは去って行った。
クーちゃんの作るご飯はおいしそうだから楽しみだ。
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