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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第24話 昼休みの因縁
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ある日の昼休み。イーアはユウリと一緒に食堂にいた。
少し離れたテーブルに、マーカスがいた。
マーカスはあの召喚術の授業以来、イーアと口をきこうとしない。
あの後イーアは謝ろうと思っていたのだけれど、マーカスはイーアに気が付くとすぐに歩き去ってしまうから、話をするチャンスすらなかった。
以前はやたらとマーカスの方から話しかけてきてはイヤミなことを言って去っていってたのに。
あれから、もうだいぶ時間がたったけど、マーカスはいまだに怒っているようだ。「いやみを言われなくなってよかったよ」とユウリは言うけど。
マーカスは最近、上級生といっしょにいることが多かった。
今もマーカスは3人の上級生と一緒にいて、イーア達の方をちらちらと見ている。
上級生の男子生徒3人は、3人とも顔までいかついくらいに筋肉質で、とにかく体格がよかった。そのせいか声も大きかった。
だから、耳がいいイーアには彼らの会話がはっきりと聞こえた。
「あれがホーヘンハインにスカウトされたやつか?」
「ずいぶんきれいな顔してんだな。でも、女々しそうなんだな」
「やっぱホーヘンハインの悪いくせって本当なのか?」
ユウリについてしゃべっているみたいだ。
上級生たちの横で、マーカスはあえてイーアとユウリの方を見ながら、あざわらうような表情を浮かべて言った。
「きっと、そうですよ。あいつは顔で取り入ったんです。エルツは顔がいいだけの汚いやつなんです」
なんだかよくわからないけれど、イーアはムカッとして、立ち上がるとマーカスの方にずんずんと歩いて行った。
イーアは自分は悪口を言われても気にならないけれど、ユウリが悪口を言われるとガマンがならなかった。
イーアはマーカスと上級生たちを睨みつけて言った。
「こっそりこそこそ悪口言わないで!」
マーカスが何かを言う前に、そこへ、ちょうど牛乳のビンをラッパ飲みしながら通りかかったオッペンが加わった。
「ケンカか? イーア。よっしゃ! おれが加勢するぜ! ぶちのめしてやる!」
とたんに、上級生のマッチョな3人組が立ちあがり、イーアとオッペンを見下ろして、口々に言った。
「なんだと? このチビ」
「生意気なんだな」
「やる気か? 身の程ってやつを思い知らせてやるぜ」
上級生たちは立ち上がると、とても大きかった。
筋肉で腕や胸板が分厚いだけじゃなくて、背も高い。
1年生の中でも身長が低めなイーアや一番小さいオッペンは見上げないと相手の顔が見えない。上級生たちはまるで体の大きさが倍くらいあるように感じた。
でも、イーアはひるまなかった。
イーアが言い返そうとしたところで、あわててユウリがとめにやってきた。
「イーア。ケンカはやめなよ」
ユウリはイーアを後ろに引っ張っていった。
オッペンのことは、たまたま近くの席にいたキャシーとアイシャが後ろに引きずっていった。「おい、なんだよ。離せよ」とオッペンは文句を言っていたけど。
ちょうどその時、昼休み終了5分前のチャイムがなって、やたらとマッチョな上級生たちも、「時間だ。行くぞ」「おまえら、命拾いしたんだな」「さぁて、授業だ」と言って、のしのし歩いて食堂を出ていった。
マーカスはニタニタと嫌な感じで笑いながら、上級生たちに続いて去っていった。
マーカス達を見送って、オッペンは言った。
「へっ。あいつらビビッて逃げてったぜ」
キャシーはあきれたように言った。
「オッペン。あんたはチビで魔法もへたなくせに、どっから出てくるのよ。その自信」
オッペンは自信満々に言った。
「男は気合なんだよ。そういや、次の時間なんだっけ?」
キャシーは言った。
「次は移動魔法でしょ。あたし、道具を取りにロッカーに行かなきゃ」
「あ、わたしも」
ユウリとオッペンは直接次の教室に向かい、イーアはキャシー達とロッカーに向かった。
ロッカーへ歩いて行く途中で、イーアはキャシー達に聞いた。
「ホーヘンハインの悪いくせってなに?」
さっきの上級生たちがバカにするように言っていたことが気になったのだ。
すると、アイシャがなんだかうれしそうに笑った。
「ウフフゥー。ホーヘンハインはねぇ、男同士の恋が盛んなのぉ。ウフフフ」
キャシーは肩をすくめて言った。
「実際はどうかわからないけど。ホーヘンハインって女人禁制なの。女性が入門できなくて、しかも隔絶された空の孤城。だから、ホーヘンハインにはうわさが……というか、ホーヘンハインを舞台にした、そういう乙女の創作が盛んなの。で、アイシャはそういう美少年同士の恋愛の創作物が大大大好きで、いっぱいコレクションしてるの。アイシャの家には、そういう本をしまっておく専用の部屋まであるのよ?」
キャシーはあきれている様子だけど、アイシャは訂正した。
「美少年だけじゃないよぉ。ホーヘンハインものは名作がいっぱいなのぉー。ウフフゥー」
アイシャは楽しそうだ。
イーアは楽しくない。
ユウリがバカにされていたことをはっきり理解できたから。
「あいつは顔で取り入ったんです」というマーカスの声がもう一度聞こえてきたような気がした。
移動魔法のマジーラ先生は、筋肉ムキムキ、元気で熱血な感じのかっこいい女の先生だ。
マジーラ先生は、大きな教室中に響き渡る大声で言った。
「お前達。前回の課題、浮遊魔法<浮>はマスターしたな? ほうきなんてなくても浮かべるようになったな?」
「はい!」とクラス中が返事をした。実はまだ浮くことができない子もふくめて。
イーアも実はまだ全然浮かぶことができないけれど、返事をした。
なぜかマジーラ先生の授業では大声で元気よく返事をしないといけない雰囲気になっている。
マジーラ先生はいつもの大声で言った。
「今日の授業は、自分じゃなくて他の物体を動かす移動魔法だ!」
「はい!」
そこで、隣の席のオッペンが小声でイーアにささやいた。
「移動魔法って力いらねーんだよな? 前から思ってたんだけどさ。なんで、マジーラ先生って、ムキムキなんだ?」
とたんに、マジーラ先生の怒鳴り声がとんできた。
「そこ! ちゃんと話を聞け! 移動魔法は失敗すると命にかかわる! 気を抜くな!」
「はい!」
オッペンは反射的に元気よく返事をした。
「返事はよろしい。では、説明の続きだ。移動魔法には大きく分けてふたつある。一つは自分が動く。もう一つは、他の物体を動かす。どっちも仕組みは同じだ。魔力で力を操作する! わかったか!」
「はい!」
「移動魔法は習うより慣れろ! 練習あるのみだ! 机の上に四角い箱があるな?」
「はい!」
マジーラ先生は教卓の向こうに立った。教卓の上には小さな箱が置いてある。
教卓だけじゃなくて、今日は全員、机の上に紙でできた軽い小箱を置いている。
「今日はこの箱を動かす。まずはこの箱に浮遊魔法をかける。補助魔動具が必要なら、今日はワンドをつかっていい。前呪文はいつもと同じだ。<我万有の引力を支配せん>。そして、その後で、<浮け>」
マジーラ先生の「オ・ルル」という声にあわせ、教卓の上の小箱が空中に浮遊した。
「魔力により物体を浮かせコントロールする魔法だ。重力とつりあわせろ。さぁ、やってみろ!」
「はい!」
みんなは元気よく答えて、机の上の小箱にむかって浮遊魔法を唱えた。
イーアも呪文を唱えた。
「<我万有の引力を支配せん>……オ・ルル!」
小箱はちょっとだけ浮かんだ……でも、すぐに机の上に落ちてしまった。杖も使っているのに。しかも、この杖はユウリから借りたもので、ユウリが師匠に買ってもらった高級な杖だ。
イーアの隣では、オッペンが杖を手に呪文を唱えていた。でも、やっぱり失敗だった。
オッペンは頭をかいて情けない顔をした。
「クッソー。これ、むずかしいな」
呪文は簡単だけど、成功させるのは難しい。
でも、イーアの隣でユウリは杖もなしに小箱を空中に静止させていた。
「なんでユウリはできるの?」
イーアがたずねると、ユウリは当然のことのように言った。
「予習してるからだよ」
イーアだったら、予習したってこんなにできるようになるとは思えない。やっぱりユウリは天才だ。
小箱を浮かせる練習の次は、今度は浮かせた小箱を前後左右に移動させる練習だった。
呪文は簡単。オ・ルルで浮かせた後に、<押>、<引>、<右>、<左>のどれかを言えばいいだけだ。
でも、なかなか箱は動かない。ユウリは自在に動かしているけれど。
(やっぱり、ユウリはすごいよね)
たまにマジーラ先生が「集中しろ! 練習あるのみ!」と言いながら歩いてくるから、イーアはその時だけ練習しているふりをして、授業時間の終わりまですごした。
そんなこんなで、その日の授業はすべて終わった。
夕方、イーアはユウリといっしょに食堂で夕食を食べていた。
昼休みと違って、夕食はみんなバラバラな時間に取るので、食堂もすいている。
イーアが食べ終わった頃。マーカスがやってきた。
「あ、マーカスだ」
イーアがマーカスに昼休みのことで文句を言ってやろうと思いながらつぶやくと、それを察してユウリがさとすように言った。
「イーア、無視しよう。関わってもいいことはないよ」
だけど、マーカスの方から、こっちへとやってきた。
マーカスはイーア達のテーブルの傍に立って言った。
「おい。イーア、エルツ。ドルボッジ場でダモン先輩達が待っているぞ」
「ダモン先輩?」
イーアが聞き返すと、マーカスは言った。
「君たちが昼休み、むぼうにもケンカを売った先輩たちさ」
ユウリはイーアにもう一度言った。
「無視しよう」
でも、マーカスはニタニタと笑いながら言った。
「俺はそれでもいいけどな。早くいかないと、先に行ったオッペンがボコボコにされるぞ?」
少し離れたテーブルに、マーカスがいた。
マーカスはあの召喚術の授業以来、イーアと口をきこうとしない。
あの後イーアは謝ろうと思っていたのだけれど、マーカスはイーアに気が付くとすぐに歩き去ってしまうから、話をするチャンスすらなかった。
以前はやたらとマーカスの方から話しかけてきてはイヤミなことを言って去っていってたのに。
あれから、もうだいぶ時間がたったけど、マーカスはいまだに怒っているようだ。「いやみを言われなくなってよかったよ」とユウリは言うけど。
マーカスは最近、上級生といっしょにいることが多かった。
今もマーカスは3人の上級生と一緒にいて、イーア達の方をちらちらと見ている。
上級生の男子生徒3人は、3人とも顔までいかついくらいに筋肉質で、とにかく体格がよかった。そのせいか声も大きかった。
だから、耳がいいイーアには彼らの会話がはっきりと聞こえた。
「あれがホーヘンハインにスカウトされたやつか?」
「ずいぶんきれいな顔してんだな。でも、女々しそうなんだな」
「やっぱホーヘンハインの悪いくせって本当なのか?」
ユウリについてしゃべっているみたいだ。
上級生たちの横で、マーカスはあえてイーアとユウリの方を見ながら、あざわらうような表情を浮かべて言った。
「きっと、そうですよ。あいつは顔で取り入ったんです。エルツは顔がいいだけの汚いやつなんです」
なんだかよくわからないけれど、イーアはムカッとして、立ち上がるとマーカスの方にずんずんと歩いて行った。
イーアは自分は悪口を言われても気にならないけれど、ユウリが悪口を言われるとガマンがならなかった。
イーアはマーカスと上級生たちを睨みつけて言った。
「こっそりこそこそ悪口言わないで!」
マーカスが何かを言う前に、そこへ、ちょうど牛乳のビンをラッパ飲みしながら通りかかったオッペンが加わった。
「ケンカか? イーア。よっしゃ! おれが加勢するぜ! ぶちのめしてやる!」
とたんに、上級生のマッチョな3人組が立ちあがり、イーアとオッペンを見下ろして、口々に言った。
「なんだと? このチビ」
「生意気なんだな」
「やる気か? 身の程ってやつを思い知らせてやるぜ」
上級生たちは立ち上がると、とても大きかった。
筋肉で腕や胸板が分厚いだけじゃなくて、背も高い。
1年生の中でも身長が低めなイーアや一番小さいオッペンは見上げないと相手の顔が見えない。上級生たちはまるで体の大きさが倍くらいあるように感じた。
でも、イーアはひるまなかった。
イーアが言い返そうとしたところで、あわててユウリがとめにやってきた。
「イーア。ケンカはやめなよ」
ユウリはイーアを後ろに引っ張っていった。
オッペンのことは、たまたま近くの席にいたキャシーとアイシャが後ろに引きずっていった。「おい、なんだよ。離せよ」とオッペンは文句を言っていたけど。
ちょうどその時、昼休み終了5分前のチャイムがなって、やたらとマッチョな上級生たちも、「時間だ。行くぞ」「おまえら、命拾いしたんだな」「さぁて、授業だ」と言って、のしのし歩いて食堂を出ていった。
マーカスはニタニタと嫌な感じで笑いながら、上級生たちに続いて去っていった。
マーカス達を見送って、オッペンは言った。
「へっ。あいつらビビッて逃げてったぜ」
キャシーはあきれたように言った。
「オッペン。あんたはチビで魔法もへたなくせに、どっから出てくるのよ。その自信」
オッペンは自信満々に言った。
「男は気合なんだよ。そういや、次の時間なんだっけ?」
キャシーは言った。
「次は移動魔法でしょ。あたし、道具を取りにロッカーに行かなきゃ」
「あ、わたしも」
ユウリとオッペンは直接次の教室に向かい、イーアはキャシー達とロッカーに向かった。
ロッカーへ歩いて行く途中で、イーアはキャシー達に聞いた。
「ホーヘンハインの悪いくせってなに?」
さっきの上級生たちがバカにするように言っていたことが気になったのだ。
すると、アイシャがなんだかうれしそうに笑った。
「ウフフゥー。ホーヘンハインはねぇ、男同士の恋が盛んなのぉ。ウフフフ」
キャシーは肩をすくめて言った。
「実際はどうかわからないけど。ホーヘンハインって女人禁制なの。女性が入門できなくて、しかも隔絶された空の孤城。だから、ホーヘンハインにはうわさが……というか、ホーヘンハインを舞台にした、そういう乙女の創作が盛んなの。で、アイシャはそういう美少年同士の恋愛の創作物が大大大好きで、いっぱいコレクションしてるの。アイシャの家には、そういう本をしまっておく専用の部屋まであるのよ?」
キャシーはあきれている様子だけど、アイシャは訂正した。
「美少年だけじゃないよぉ。ホーヘンハインものは名作がいっぱいなのぉー。ウフフゥー」
アイシャは楽しそうだ。
イーアは楽しくない。
ユウリがバカにされていたことをはっきり理解できたから。
「あいつは顔で取り入ったんです」というマーカスの声がもう一度聞こえてきたような気がした。
移動魔法のマジーラ先生は、筋肉ムキムキ、元気で熱血な感じのかっこいい女の先生だ。
マジーラ先生は、大きな教室中に響き渡る大声で言った。
「お前達。前回の課題、浮遊魔法<浮>はマスターしたな? ほうきなんてなくても浮かべるようになったな?」
「はい!」とクラス中が返事をした。実はまだ浮くことができない子もふくめて。
イーアも実はまだ全然浮かぶことができないけれど、返事をした。
なぜかマジーラ先生の授業では大声で元気よく返事をしないといけない雰囲気になっている。
マジーラ先生はいつもの大声で言った。
「今日の授業は、自分じゃなくて他の物体を動かす移動魔法だ!」
「はい!」
そこで、隣の席のオッペンが小声でイーアにささやいた。
「移動魔法って力いらねーんだよな? 前から思ってたんだけどさ。なんで、マジーラ先生って、ムキムキなんだ?」
とたんに、マジーラ先生の怒鳴り声がとんできた。
「そこ! ちゃんと話を聞け! 移動魔法は失敗すると命にかかわる! 気を抜くな!」
「はい!」
オッペンは反射的に元気よく返事をした。
「返事はよろしい。では、説明の続きだ。移動魔法には大きく分けてふたつある。一つは自分が動く。もう一つは、他の物体を動かす。どっちも仕組みは同じだ。魔力で力を操作する! わかったか!」
「はい!」
「移動魔法は習うより慣れろ! 練習あるのみだ! 机の上に四角い箱があるな?」
「はい!」
マジーラ先生は教卓の向こうに立った。教卓の上には小さな箱が置いてある。
教卓だけじゃなくて、今日は全員、机の上に紙でできた軽い小箱を置いている。
「今日はこの箱を動かす。まずはこの箱に浮遊魔法をかける。補助魔動具が必要なら、今日はワンドをつかっていい。前呪文はいつもと同じだ。<我万有の引力を支配せん>。そして、その後で、<浮け>」
マジーラ先生の「オ・ルル」という声にあわせ、教卓の上の小箱が空中に浮遊した。
「魔力により物体を浮かせコントロールする魔法だ。重力とつりあわせろ。さぁ、やってみろ!」
「はい!」
みんなは元気よく答えて、机の上の小箱にむかって浮遊魔法を唱えた。
イーアも呪文を唱えた。
「<我万有の引力を支配せん>……オ・ルル!」
小箱はちょっとだけ浮かんだ……でも、すぐに机の上に落ちてしまった。杖も使っているのに。しかも、この杖はユウリから借りたもので、ユウリが師匠に買ってもらった高級な杖だ。
イーアの隣では、オッペンが杖を手に呪文を唱えていた。でも、やっぱり失敗だった。
オッペンは頭をかいて情けない顔をした。
「クッソー。これ、むずかしいな」
呪文は簡単だけど、成功させるのは難しい。
でも、イーアの隣でユウリは杖もなしに小箱を空中に静止させていた。
「なんでユウリはできるの?」
イーアがたずねると、ユウリは当然のことのように言った。
「予習してるからだよ」
イーアだったら、予習したってこんなにできるようになるとは思えない。やっぱりユウリは天才だ。
小箱を浮かせる練習の次は、今度は浮かせた小箱を前後左右に移動させる練習だった。
呪文は簡単。オ・ルルで浮かせた後に、<押>、<引>、<右>、<左>のどれかを言えばいいだけだ。
でも、なかなか箱は動かない。ユウリは自在に動かしているけれど。
(やっぱり、ユウリはすごいよね)
たまにマジーラ先生が「集中しろ! 練習あるのみ!」と言いながら歩いてくるから、イーアはその時だけ練習しているふりをして、授業時間の終わりまですごした。
そんなこんなで、その日の授業はすべて終わった。
夕方、イーアはユウリといっしょに食堂で夕食を食べていた。
昼休みと違って、夕食はみんなバラバラな時間に取るので、食堂もすいている。
イーアが食べ終わった頃。マーカスがやってきた。
「あ、マーカスだ」
イーアがマーカスに昼休みのことで文句を言ってやろうと思いながらつぶやくと、それを察してユウリがさとすように言った。
「イーア、無視しよう。関わってもいいことはないよ」
だけど、マーカスの方から、こっちへとやってきた。
マーカスはイーア達のテーブルの傍に立って言った。
「おい。イーア、エルツ。ドルボッジ場でダモン先輩達が待っているぞ」
「ダモン先輩?」
イーアが聞き返すと、マーカスは言った。
「君たちが昼休み、むぼうにもケンカを売った先輩たちさ」
ユウリはイーアにもう一度言った。
「無視しよう」
でも、マーカスはニタニタと笑いながら言った。
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