もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第26話 ドルボッジ2

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 ダモンはボールをイーア達のほうへ転がして言った。

「1年。そっちのボールスタートでいいぞ」

 イーアは転がってきたボールを拾いあげた。
 ボールのあてっこ遊びなら、イーアは小さい頃から得意だ。けっこう剛速球を投げられる。イーアは助走をつけて体全体を使って全力でボールを投げた。

 ボールはダモンの左足めがけて飛んでいった。
 そして、ボールは命中! ……したはずなのに、ボールは空中で静止してしまった。
 ボールはダモンの足にくっついたまま跳ね返らない。

「ボールがとまった!?」

 イーアが驚いていると、スコアボードの横で、マーカスがバカにしたように言った。

「当たり前だろ? ドルボッジは移動魔法でボールをコントロールするんだ。ダモン先輩ほどになれば、前置きの呪文はもちろん、何も言わずに移動魔法を発動できるのさ。ちなみに、飛んできた物を制止させる呪文は、オゴン。教科書の来週の範囲にのっているよ」

 ダモンは大きな口でにやりと笑った。

「その通り。ドルボッジとは移動魔法でボールをコントロールするスポーツだ。ドルボッジのボールは移動魔法がかかりやすくなっている。さらに、ドルボッジ・コートでは自分の陣地内では魔法がかかりやすく、相手の陣地では魔法が効きづらい。1年にもわかりやすいように、呪文を口に出してやろうか? オ・ルル……」

 ボールは高く上昇し、ダモンの頭上で静止した。
 そして、ダモンはイーアを指さし、言った。

「ゴッ!」
 
 ボールはイーアの足めがけて、猛スピードで一直線に飛んできた。
 (とれない)と判断して、イーアは反射的に横に飛んだ。
 激しい音をたてて床にぶつかった後、ボールは後ろの光の壁にぶつかり跳ね返った。
 イーアは跳ね返ったボールをキャッチしようと動いたけど、その時ダモンは叫んでいた。

「ザッ!」

 ボールはイーアの目の前で突然曲がり、今度はオッペンめがけて飛んでいった。「うわっ」と叫んで、オッペンはとび退けた。ところが。

「ゴッ!」

 ダモンが叫ぶと同時にボールは再び曲がり、オッペンの顔面にぶつかった。

「ガッ!」

 跳ね返ったボールはダモンの手元へと飛んでいった。
 マーカスの笑い声が聞こえた。

「これで1点。ぶざまだね。まったくいい眺めだよ」

 スコアボードが自動的に動き、ダモンたちの側の得点が0から1に変わった。
 ダモンは引き寄せたボールを両手でつかんで言った。

「さぁ、わかっただろう? これが、ドルボッジだ」

 ユウリは冷静につぶやいた。

「ボールの動きに合わせて一瞬で移動魔法を発動させるのか。とまっているものに移動魔法をかけるより、ずっと難しいよ」

 ボールを左右の手の間で動かしながら、ダモンが言った。

「その通り。ドルボッジには高度な移動魔法の技術が必要だ。移動魔法を極めし者がドルボッジの勝者だと言っていい。これぞ魔導士のスポーツだ! だが、1年相手だからな。ハンデをやろう。お前達はこの試合、何を使ってもOKだ。直接攻撃以外なら、好きな魔法を好きなだけ使え。さぁ、次だ」 

 ダモンが軽く投げたボールはグドロの頭上へ飛んでいき、グドロはそのままボールをキャッチせずに大きく手をふりまわしながら叫んだ。

「オルルゴッ!」

 グドロの手はボールに触れていないのに、ボールは高速でユウリめがけて飛んでいった。
 ユウリはとっさに顔の前に両手をあげ、ボールはその両腕に激しい音をたててぶつかった。ユウリの細い腕が折れたんじゃないかと心配になるくらいの激しい音だった。
 グドロはにやにや笑いながら言った。

「意外と反射神経いいな」

 マーカスが勝手に動く点数ボードを見て、にやにや笑いながら「これで0対2だ」と言った。
 跳ね返って自陣に帰ってきたボールを引き寄せ、ガボーがボールを両手にもったまま、怒鳴るように「オゴッ!」と呪文をさけんだ。

 ボールはガボーが胸の前に置いた両手から、ユウリめがけて大砲の弾のように打ち出された。激しい音をたて、ボールはふたたびユウリの腕を吹き飛ばし、衝撃で、ユウリは後ろに倒れた。

「ユウリ!」

「だいじょうぶだよ、イーア。問題ない」

 心配するイーアにユウリはおちついた声でそう言って立ち上がった。だけど、腕は痛そうだ。

「いつまで強がっていられるかな? オガッ」

 ダモンは床を勢いよく転がっていたボールを引き寄せ、そして、すぐにユウリの顔めがけてボールを一直線に飛ばした。
 ふたたび衝撃音が鳴り響く、とイーアは思った。
 だけど、無音だ。

 ボールは、ユウリが顔の前にあげた手の平の前で静かに停止していた。
 静止したボールをゆっくりと両手でつかんで、ユウリは言った。

「やっとコツをつかめたよ」

 ユウリは早くもボールを静止させる魔法オゴンを成功させていた。オッペンがガッツポーズで叫んだ。

「よっしゃ! 反撃だ!」

 0対3と表示された点数ボードの横で、マーカスがつまらなさそうに言った。

「ふん。さすが天才エルツ。でも、足手まとい二人と一緒じゃ、勝負にならないな」

 ユウリはマーカスの方にふりむき言った。

「足手まとい? とんでもない。イーアは天才だよ。イーア、さっき聞いたルール、ぼくらがもらったハンデのこと、おぼえてる?」

 イーアは首をかしげた。

「ルール? なんでもOKじゃなかったっけ?」

「そう。どんな魔法を使ってもOK」

 ユウリがそう言うと、周囲の風が渦巻きだした。そして、小さな竜巻がユウリの前に出現し、ボールは竜巻に飲み込まれた。
 さっきまでは無風だったドルボッジ場に、風が吹き荒れている。
 ユウリは、移動魔法じゃなくて風魔法を使っていた。
 ユウリはダモンにたずねた。

「なんでもOKって、先輩は言いましたよね?」

「ああ。男に二言はない。ドルボッジの公式試合では使える魔法はあらかじめ決められているが、今日はなんでも好きな魔法を使え」

 そう言った後で、ダモンは付け加えた。

「ただし、ドルボッジのルール上、相手にダメージを与えるような魔法を使えば、即、反則負けになる。それに、ドルボッジ・コートでは敵陣に入ると魔法が弱くなる」

 ユウリはうなずいた。

「それくらいで、ちょうどいいです。イーア、用意をして」

 イーアはローブの内ポケットにいれていた『友契の書』を手に取った。
 ユウリに自然魔法があるように、イーアには召喚がある。
 何でもOKなら、召喚もOKだ。
 召喚術のいい練習ができそうだ。

「準備はいい?」 

 ユウリがたずね、イーアは後ろに下がりながらうなずいた。

「OK。防御はまかせて! オッペン、なるべく後ろに下がってて」

「おう」

 オッペンは素直に指示に従い、コートの一番後ろまでさがっていった。

「それじゃ、いくよ」

 ユウリが小声で呪文を唱えると、敵陣の中に霧がたちこめだした。
 相手陣地の霧の中からグドロとガボーの声が聞こえた。

「ほとんど見えねぇ!」

 ユウリは敵陣を指さし、呪文を唱えた。
 さっきボールを飲みこんだ竜巻が螺旋らせん形となっていき、その螺旋が床と水平に大砲の筒のような形に変形していった。
 ボールは外へ出ようと微細な動きを続けながら、空気でできた筒の奥へと押しこめられている。
 ユウリは呪文の最後に落ち着いた声で言った。

「<風砲弾>」

 螺旋の筒の先端から目にもとまらぬ速さでボールが発射された。
 ボールはグドロの左腕に当たって跳ね返った。
 霧で視界が悪いせいもあって、グドロはまったくボールに反応できなかった。
 オッペンがガッツポーズで叫んだ。

「やった! 当たったぜ! 初得点だ!」

 マーカスが得点ボードの横で、悔しそうな顔をしていた。

 その時、ボールは、すでにダモンの手元に引き寄せられていた。
 もう霧はほとんど消えている。
 ダモンは「おもしろくなってきたじゃないか」と言って、ボールを頭上に浮かせた。
 また、ダモンの攻撃がくる。

 さて、イーアはその何秒か前、『友契の書』にささやいていた。
 『太古の霊樹オクスバーン』と。
 普通の魔法と違って、召喚獣はすぐにはあらわれないから、あらかじめタイミングを見計らって呼ばないといけない。

 そして、ダモンがボールを放った時。
 ちょうど、イーア達の前に壁のような巨大な霊樹があらわれた。
 ボールがオクスバーンの幹にぶつかって跳ね返る音がドルボッジ場に響いた。

「なんじゃそりゃあ!」
「ありえないんだな!」

 オクスバーンの向こう側でグドロとガボーが叫んだ。
 イーアは元気よく言った。

「なんでもOKって言ったもんね!」

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