もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第48話 岩壁の精霊

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 放課後、イーアは学校の中を歩いていた。
 ユウリは今日も先生に授業の質問をしながら、学園祭の日に白装束たちに協力をした犯人の手がかりを探している。
 オッペンは、ドルボッジ部に行って修行中だ。
 でも、イーアはもう防御魔法の練習はあきらめた。
 
(白装束の共犯者を探すために、わたしも先生に何か質問しようかな。それか、アルバイトを探そうかな)

 迷いながら、イーアはアルバイトの掲示板や職員室がある方へ歩いていった。
 歩いていると、職員室前から「参ったな」というマジーラ先生の声が聞こえてきた。
 マジーラ先生と庭師のヘクトルさんが、しかめっ面で廊下で立ち話をしていた。

「オレン先生が見つからないとなると、あの呪文を使える教員は、今いないんだ」

「それじゃ、オレン先生がお戻りになるのを待ちますよ。あいつら、移動しちまうかもしれませんが」

 そんな会話が聞こえて、なんだか気になったので、イーアは「こんにちは。マジーラ先生、ヘクトルさん」とあいさつをした。

「ああ、こんにちは。どうした? 何か質問か?」

 マジーラ先生はすぐにイーアの方を見てそうたずねた。続いて、ヘクトルさんもイーアの方に振り返って言った。

「おう。この前のバイトか。そういえば、おまえは、なんか変な踊るホウキを連れ歩いてたな。ひょっとして、おまえはアレ、しゃべれるんじゃないか? バケモンに通じるアレ」

 ヘクトルさんはアレアレ言っているけど、アレが何のことだかよくわからない。

「アレって、なんですか?」

 イーアがたずねると、ヘクトルさんのかわりにマジーラ先生が説明してくれた。

「召喚術に使う精霊語のことだ」

「精霊語なら得意です。誰にも負けません」

 イーアが自信をもって答えると、ヘクトルさんは言った。

「そりゃ頼もしいな。先生、ダメ元でこの生徒にバイトでやってもらっちゃいかんですか? 時間がたつと、あいつら、動き回って見つからなくなっちまうかもしれませんから」

 マジーラ先生は少し考えこみながら言った。

「うーん。1年に頼むレベルの仕事じゃないんだが。まぁ、危険はないはずだからな」

 なんだか、臨時のバイトを見つけられそうだ。イーアはたずねた。

「どういう仕事ですか?」

「モンペルという精霊を移動させる仕事なんだが……」

 マジーラ先生の説明によると、グランドールの敷地のはずれには崖があって、その崖下の谷底に四角い岩みたいなモンペルという精霊が大量に住んでいるらしい。

「学校にも精霊がいたんですか!?」

 イーアがおどろいてたずねると、マジーラ先生はうなずいた。

「ああ。もちろん、危険な精霊はいないがな。それに、モンペルのいる崖は立ち入り禁止なんだ。許可なく行くんじゃないぞ。それはそうと、困ったことに、あのモンペルという岩の精霊は、たまに大量発生するんだ。人を襲うことはないが、もともと城壁に使われていたといわれるだけあって、とにかく固い。だから、道路にモンペルが集まると、通行不能になってしまうんだ」

 モンペルは、たまに谷底から出て林の中をうろつくことがあって、そして、さらに外にまで出て、学校の外の道路を通行止めにしてしまうことがあるらしい。
 そうなると大変だから、そうなる前に、モンペルを谷底に帰らせないといけない。
 マジーラ先生は困ったように言った。

「モンペルを帰らせるための呪文があるんだが、それが、魔導語ではなく精霊語の呪文なんだ。精霊語は特殊だから、今はオレン先生以外にまともに使える者がいない」

 イーアは胸を張って言った。

「精霊とおしゃべりするのは、得意です。マジーラ先生、任せてください」

「じゃ、とりあえず、やってみてくれ。成功したらアルバイト代がでるようにしておく。でも、失敗しても気にしなくていいぞ」

 マジーラ先生はあまり期待してなさそうに言った。
 先生の許可がおりたので、イーアはヘクトルさんにモンペルのいた場所までつれていってもらった。

 ヘクトルさんとイーアは、林の中をどんどんと歩いて行った。

「いたいた。ほら、あれだ」

 林の中、ヘクトルさんが指さす先に、とても濃いダークブルーの少し光る四角い岩が数個あった。
 一見、ただのきれいな色の岩にしか見えない。
 でも、じっと見ていると、その岩は、たまーに勝手に動いていた。
 あれがモンペルという精霊らしい。
 ヘクトルさんは言った。

「絶対に攻撃するなよ。刺激を与えると、あいつら、くっついて壁みたいになっちまうんだ。そうなると、にっちもさっちも動かなくなる。しかも、あいつらは、本当にかたくてな。俺のクワはもちろん、先生たちの魔法でもちょっとやそっとじゃ砕けない。だから、刺激しないようにそっと近づいて呪文を唱えるんだ」

「わかりました」

 イーアは呪文のかかれたけっこう古そうなメモを見た。
 そこには精霊語で『精霊モンペルよ。盟約に従い、キャスエルテスの西の谷へと戻れ』と書かれていた。
 イーアはそーっとモンペルたちのほうへ近づき、精霊語でメモを読み上げた。
 モンペルたちは、一度おどろいたように跳び上るように動いた。
 それから、跳びはねながら林の中を移動しはじめた。

 ヘクトルさんが近づいてきて言った。

「よしよし。あっちは崖の方角だ。大したもんだ。先生と同じように、ちゃんとできてるじゃないか」

 ヘクトルさんはすっかり感心したようすだ。
 でも、イーアは最初からできる自信があったので、別になんとも思わなかった。イーアは精霊語だけはオレン先生にも負ける気がしない。
 イーアはヘクトルさんにたずねた。

「モンペルはあちこちにいるんですか?」

「ああ。1か月くらい前……学園祭の後くらいからか。林の中でよく見るようになってな。見つけるたびに先生を呼んで谷に戻してるんだが」

「じゃ、もうちょっとひとりで探してみます。モンペルを見つけたら、谷にもどるように言っておきます」

「おう、たのもしいな。じゃ、たのんだぞ。成功の報告をしておくから、好きな時にもどってバイト代を受け取ってくれ」

「はい。ありがとうございました」

 イーアは、去って行くヘクトルさんを見送りながら、心の中で(よし!)と思った。
 イーアはひとりでモンペルとお話したかったのだ。
 そして、あわよくば、モンペルと召喚の契約をしたかった。
 マジーラ先生やヘクトルさんの話によると、モンペルは集まって頑丈な壁をつくることができるみたいだ。
 つまり、もしモンペルを自在に操れたら、強力な障壁魔法代わりになる。

 イーアは、モンペルたちが去って行った方向に急いで進んで行った。
 早歩きでしばらく進むと、木々の間にモンペルが跳ねているのが見えてきた。
 イーアはモンペルたちの後を追いかけた。
 さらにしばらく進むと、林のはずれ、崖の上に出た。
 モンペルたちは、崖の上から飛び降りるように跳ね降りていく。

 イーアは左右を確認した。左の方に看板が見えた。
 近づいてみると、看板には「この先進入禁止」と書かれていて、その先に細い道が続いていた。
 ここから崖の下に降りられそうだ。
 さっきマジーラ先生に入っちゃだめだと言われたばっかりだけど。
 イーアは気にせず、そのまま崖をくだる道を進んで行った。
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