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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第50話 あやしい会話
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グランドールの先生の中にいるという白装束の共犯者についても<白光の魔導士団>についても、何の情報もつかめないまま、何日かが過ぎた。
学校の中はいつも通り、毎日、平和だ。平和すぎて、学校の中に白装束の魔導士の共犯者がいるという話は、シャヒーン先生のただの妄想なんじゃないかという気すらしてくる。
さて、イーアは今日もアルバイトだ。
集合場所に行くと、庭師のヘクトルさんは言った。
「今日は、イナムの並木道での仕事だ。おまえさんには簡単すぎて退屈かもしれないがな。さ、イナムの並木道に行くぞ」
イーアがヘクトルさんに連れていかれたのは、林の中の並木道だ。
道の両脇に並んでいるのがイナムという木らしい。
砂利道には黄色い葉っぱがたくさん落ちていた。
「この落ち葉をそうじするんですか?」
「いや。今日はイナムの実を集めてほしいんだ。ほら、木の下にいっぱい落ちてるだろ?」
そう言って、ヘクトルさんは足元に落ちていた、親指の先くらいのサイズの淡黄色の固い木の実を拾ってみせた。
「こいつは食べられるんだ。外の固い殻をわると、中に実が入ってる。これがなかなかうまいんだ。しかも、食べ続けるとちょっとだけ魔力があがるらしいぞ。食堂の料理長が、イナムのたきこみご飯を作りたいらしいから、こいつを集めてくれ。たくさん集めりゃ、数日のうちに食堂で、イナムのたきこみご飯が出されるぞ」
ヘクトルさんはそう言って、イーアに木の実をいれる袋を渡した。
「わかりました!」
食堂で料理がだされると聞くと、がぜんイーアはやる気になった。
「じゃ、俺は別の仕事があるから。6時半にここで集合だ」
そう言って、ヘクトルさんは校舎の方に去って行った。
イーアはさっそく並木道で木の実を拾いはじめた。
少しして、イーアは思った。
(やっぱ、ひとりじゃさびしいね。誰か呼ぼうかな。そうだ! コプタンを呼んでみよう)
小さな木の実だったら、コプタンでも集められるだろう。
ティトがコプタンを脅して以来、コプタンを召喚したことはなかったけど。
せっかく契約できたんだから、呼んでみよう。
そう思って、イーアは『友契の書』を手に取り、コプタンを呼んでみた。
『コプタンのみんな! 木の実集めを手伝って!』
10秒くらい後。5人くらいのコプタンたちがイーアの前に整列していた。
コプタン達の様子を見て、イーアは思わずたずねた。
『ど、どうしたの?』
コプタンたちはいつも出てくるなり走り回っていたのに、今日はまるで兵隊さんみたいに直立不動で整列している。
コプタン達はびしっと言った。
『言うこと聞きます!』
『だから食べないで!』
『ポクら、まずいですから!』
(ティトが脅したせい!?)
イーアはコプタン達に言った。
『そんなにかしこまらなくてもだいじょうぶだよ。ティトは今日はいないよ』
『そう?』
『なーんだ』
『じゃ、リラーックス』
コプタン達は、とたんに地面にねそべったり、逆立ちしたり、自由なふんいきになった。
イーアはひざをついて小さなコプタン達にイナムの実を見せながら頼んだ。
『今日は、地面に落ちてるこの木の実を集めるのを手伝ってほしいの』
コプタン達は興味しんしんな様子で、イーアが手にもつイナムの実を見た。
『これ食べれるの? でかいボールみたいだね』
『カチコチだねぇ。しかも、すんごい臭いよ!』
『巨人はこんなもの食べるの?』
コプタンたちは体が小さくて鼻がいいから、イナムの実はとても臭い巨大な謎の物体に見えるみたいだった。
『うん。わたしも食べたことないけど。この実はおいしいらしいよ。だから、ひろってこの袋にいれてくれる?』
『オッケー!』
コプタン達は一斉に散らばって、イナムの実を拾いはじめた。
コプタン達はいつも駆け足ですばやくって、しかも鼻がいいから簡単に木の実を見つけて拾ってくる。
すぐに、袋がいっぱいになった。
『すごいよ! コプタンのみんな。こんなに大きな袋が、もう一杯だよ』
イーアが満杯になった袋を手にしてそう言うと、コプタンたちは、ふんぞり返ったりしながら聞き返した。
『ポク、そんなにすごい?』
『すごーくイケてる?』
『とっても、すごーい?』
コプタン達は、もっとほめてほしそうだったから、イーアはもっとほめておいた。
『すごいよ。えらいよ。とってもすごいよ』
コプタン達はとてもうれしそうになった。
イーアはお礼を言った。
『ありがとう。もう袋に入らないから、終わりだね。残りの木の実は持って帰っていいよ。イナムの実は固い殻を割って食べるんだって』
『オッケー!』
『異界の食べ物だー!』
『ほんとに食べられるのかなぁ。こんなカチコチで臭いの』
コプタン達はひとりひとつずつイナムの実を抱きかかえて、元の世界へと帰っていった。
さて、袋は一杯になったから、イーアがヘクトルさんに頼まれた仕事はもう終わりだ。
でも、たぶん、ヘクトルさんは6時半になるまでここにはこない。
今は、たぶん、まだ6時にもなっていない。
「お散歩でもしてようかな」
この辺に来たのははじめてだから、ちょっと歩いてみよう。
そう思って、イーアはイナムの実がいっぱいに入った袋を木の根元に置いて、並木道の散歩を始めた。
並木道は途中で分岐していた。横に曲がると他の道につながっている。
でも、イーアは曲がらず、そのまままっすぐ歩き続けた。じきに砂利道が消えて、なんとなく道があるようなただの林の中のような、そんな感じになっていった。
普通は人は歩かない所だ。
でも、イーアは林の中を歩き回るのに慣れていたので、全然気にしないで直進していった。
しばらく進むと、廃屋のような小屋が見えてきた。
小屋の木のドアはひっぱったらあいたから、イーアは小屋の中に入ってみた。
小屋の中には、林道の整備に使うようなものが置かれていた。
そこら中にほこりがたまっていた。
特に気になるものはない。
(ただの物置小屋だね。帰ろっと)
だけど、イーアが外に出ようと思った時。外のどこかから、とぎれとぎれに声が聞こえた。
「隠し……地下……扉……ました」
「……調子で地下の調査を進めなさい。あのおか……」
声は遠ざかって行き、それ以上は聞き取ることができなかった。
(地下の調査……?)
イーアは急いで小屋の外に出て、周囲を確認した。
誰もいない。
少なくとも、この小屋の外には誰もいなかったはずだ。
きっと、さっきの会話はもっと遠くから聞こえてきたのだろう。
(気のせいかな……)
イーアは林の中に目をこらした。
今は、飛び立つ小鳥の姿以外、動くものは見えなかった。
さっきの声はとてもかすかなものだったから、聞こえてきた方角すらよくわからない。
むしろ、今はもう、あれは幻聴だったのかもしれないとすら思えてくる。
だけど、もしあの会話が本物だとしたら。
(誰かが、今も地下に入ってる……?)
学校の中はいつも通り、毎日、平和だ。平和すぎて、学校の中に白装束の魔導士の共犯者がいるという話は、シャヒーン先生のただの妄想なんじゃないかという気すらしてくる。
さて、イーアは今日もアルバイトだ。
集合場所に行くと、庭師のヘクトルさんは言った。
「今日は、イナムの並木道での仕事だ。おまえさんには簡単すぎて退屈かもしれないがな。さ、イナムの並木道に行くぞ」
イーアがヘクトルさんに連れていかれたのは、林の中の並木道だ。
道の両脇に並んでいるのがイナムという木らしい。
砂利道には黄色い葉っぱがたくさん落ちていた。
「この落ち葉をそうじするんですか?」
「いや。今日はイナムの実を集めてほしいんだ。ほら、木の下にいっぱい落ちてるだろ?」
そう言って、ヘクトルさんは足元に落ちていた、親指の先くらいのサイズの淡黄色の固い木の実を拾ってみせた。
「こいつは食べられるんだ。外の固い殻をわると、中に実が入ってる。これがなかなかうまいんだ。しかも、食べ続けるとちょっとだけ魔力があがるらしいぞ。食堂の料理長が、イナムのたきこみご飯を作りたいらしいから、こいつを集めてくれ。たくさん集めりゃ、数日のうちに食堂で、イナムのたきこみご飯が出されるぞ」
ヘクトルさんはそう言って、イーアに木の実をいれる袋を渡した。
「わかりました!」
食堂で料理がだされると聞くと、がぜんイーアはやる気になった。
「じゃ、俺は別の仕事があるから。6時半にここで集合だ」
そう言って、ヘクトルさんは校舎の方に去って行った。
イーアはさっそく並木道で木の実を拾いはじめた。
少しして、イーアは思った。
(やっぱ、ひとりじゃさびしいね。誰か呼ぼうかな。そうだ! コプタンを呼んでみよう)
小さな木の実だったら、コプタンでも集められるだろう。
ティトがコプタンを脅して以来、コプタンを召喚したことはなかったけど。
せっかく契約できたんだから、呼んでみよう。
そう思って、イーアは『友契の書』を手に取り、コプタンを呼んでみた。
『コプタンのみんな! 木の実集めを手伝って!』
10秒くらい後。5人くらいのコプタンたちがイーアの前に整列していた。
コプタン達の様子を見て、イーアは思わずたずねた。
『ど、どうしたの?』
コプタンたちはいつも出てくるなり走り回っていたのに、今日はまるで兵隊さんみたいに直立不動で整列している。
コプタン達はびしっと言った。
『言うこと聞きます!』
『だから食べないで!』
『ポクら、まずいですから!』
(ティトが脅したせい!?)
イーアはコプタン達に言った。
『そんなにかしこまらなくてもだいじょうぶだよ。ティトは今日はいないよ』
『そう?』
『なーんだ』
『じゃ、リラーックス』
コプタン達は、とたんに地面にねそべったり、逆立ちしたり、自由なふんいきになった。
イーアはひざをついて小さなコプタン達にイナムの実を見せながら頼んだ。
『今日は、地面に落ちてるこの木の実を集めるのを手伝ってほしいの』
コプタン達は興味しんしんな様子で、イーアが手にもつイナムの実を見た。
『これ食べれるの? でかいボールみたいだね』
『カチコチだねぇ。しかも、すんごい臭いよ!』
『巨人はこんなもの食べるの?』
コプタンたちは体が小さくて鼻がいいから、イナムの実はとても臭い巨大な謎の物体に見えるみたいだった。
『うん。わたしも食べたことないけど。この実はおいしいらしいよ。だから、ひろってこの袋にいれてくれる?』
『オッケー!』
コプタン達は一斉に散らばって、イナムの実を拾いはじめた。
コプタン達はいつも駆け足ですばやくって、しかも鼻がいいから簡単に木の実を見つけて拾ってくる。
すぐに、袋がいっぱいになった。
『すごいよ! コプタンのみんな。こんなに大きな袋が、もう一杯だよ』
イーアが満杯になった袋を手にしてそう言うと、コプタンたちは、ふんぞり返ったりしながら聞き返した。
『ポク、そんなにすごい?』
『すごーくイケてる?』
『とっても、すごーい?』
コプタン達は、もっとほめてほしそうだったから、イーアはもっとほめておいた。
『すごいよ。えらいよ。とってもすごいよ』
コプタン達はとてもうれしそうになった。
イーアはお礼を言った。
『ありがとう。もう袋に入らないから、終わりだね。残りの木の実は持って帰っていいよ。イナムの実は固い殻を割って食べるんだって』
『オッケー!』
『異界の食べ物だー!』
『ほんとに食べられるのかなぁ。こんなカチコチで臭いの』
コプタン達はひとりひとつずつイナムの実を抱きかかえて、元の世界へと帰っていった。
さて、袋は一杯になったから、イーアがヘクトルさんに頼まれた仕事はもう終わりだ。
でも、たぶん、ヘクトルさんは6時半になるまでここにはこない。
今は、たぶん、まだ6時にもなっていない。
「お散歩でもしてようかな」
この辺に来たのははじめてだから、ちょっと歩いてみよう。
そう思って、イーアはイナムの実がいっぱいに入った袋を木の根元に置いて、並木道の散歩を始めた。
並木道は途中で分岐していた。横に曲がると他の道につながっている。
でも、イーアは曲がらず、そのまままっすぐ歩き続けた。じきに砂利道が消えて、なんとなく道があるようなただの林の中のような、そんな感じになっていった。
普通は人は歩かない所だ。
でも、イーアは林の中を歩き回るのに慣れていたので、全然気にしないで直進していった。
しばらく進むと、廃屋のような小屋が見えてきた。
小屋の木のドアはひっぱったらあいたから、イーアは小屋の中に入ってみた。
小屋の中には、林道の整備に使うようなものが置かれていた。
そこら中にほこりがたまっていた。
特に気になるものはない。
(ただの物置小屋だね。帰ろっと)
だけど、イーアが外に出ようと思った時。外のどこかから、とぎれとぎれに声が聞こえた。
「隠し……地下……扉……ました」
「……調子で地下の調査を進めなさい。あのおか……」
声は遠ざかって行き、それ以上は聞き取ることができなかった。
(地下の調査……?)
イーアは急いで小屋の外に出て、周囲を確認した。
誰もいない。
少なくとも、この小屋の外には誰もいなかったはずだ。
きっと、さっきの会話はもっと遠くから聞こえてきたのだろう。
(気のせいかな……)
イーアは林の中に目をこらした。
今は、飛び立つ小鳥の姿以外、動くものは見えなかった。
さっきの声はとてもかすかなものだったから、聞こえてきた方角すらよくわからない。
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