もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
50 / 207
第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第50話 あやしい会話

しおりを挟む
 グランドールの先生の中にいるという白装束の共犯者についても<白光の魔導士団>についても、何の情報もつかめないまま、何日かが過ぎた。
 学校の中はいつも通り、毎日、平和だ。平和すぎて、学校の中に白装束の魔導士の共犯者がいるという話は、シャヒーン先生のただの妄想なんじゃないかという気すらしてくる。

 さて、イーアは今日もアルバイトだ。
 集合場所に行くと、庭師のヘクトルさんは言った。

「今日は、イナムの並木道での仕事だ。おまえさんには簡単すぎて退屈かもしれないがな。さ、イナムの並木道に行くぞ」

 イーアがヘクトルさんに連れていかれたのは、林の中の並木道だ。
 道の両脇に並んでいるのがイナムという木らしい。
 砂利道には黄色い葉っぱがたくさん落ちていた。

「この落ち葉をそうじするんですか?」

「いや。今日はイナムの実を集めてほしいんだ。ほら、木の下にいっぱい落ちてるだろ?」

 そう言って、ヘクトルさんは足元に落ちていた、親指の先くらいのサイズの淡黄色の固い木の実を拾ってみせた。

「こいつは食べられるんだ。外の固い殻をわると、中に実が入ってる。これがなかなかうまいんだ。しかも、食べ続けるとちょっとだけ魔力があがるらしいぞ。食堂の料理長が、イナムのたきこみご飯を作りたいらしいから、こいつを集めてくれ。たくさん集めりゃ、数日のうちに食堂で、イナムのたきこみご飯が出されるぞ」

 ヘクトルさんはそう言って、イーアに木の実をいれる袋を渡した。

「わかりました!」

 食堂で料理がだされると聞くと、がぜんイーアはやる気になった。

「じゃ、俺は別の仕事があるから。6時半にここで集合だ」

 そう言って、ヘクトルさんは校舎の方に去って行った。
 イーアはさっそく並木道で木の実を拾いはじめた。
 少しして、イーアは思った。

(やっぱ、ひとりじゃさびしいね。誰か呼ぼうかな。そうだ! コプタンを呼んでみよう)

 小さな木の実だったら、コプタンでも集められるだろう。
 ティトがコプタンを脅して以来、コプタンを召喚したことはなかったけど。
 せっかく契約できたんだから、呼んでみよう。
 そう思って、イーアは『友契の書』を手に取り、コプタンを呼んでみた。

『コプタンのみんな! 木の実集めを手伝って!』

 10秒くらい後。5人くらいのコプタンたちがイーアの前に整列していた。
 コプタン達の様子を見て、イーアは思わずたずねた。

『ど、どうしたの?』

 コプタンたちはいつも出てくるなり走り回っていたのに、今日はまるで兵隊さんみたいに直立不動で整列している。
 コプタン達はびしっと言った。

『言うこと聞きます!』
『だから食べないで!』
『ポクら、まずいですから!』

(ティトが脅したせい!?)

 イーアはコプタン達に言った。

『そんなにかしこまらなくてもだいじょうぶだよ。ティトは今日はいないよ』

『そう?』
『なーんだ』
『じゃ、リラーックス』

 コプタン達は、とたんに地面にねそべったり、逆立ちしたり、自由なふんいきになった。
 イーアはひざをついて小さなコプタン達にイナムの実を見せながら頼んだ。

『今日は、地面に落ちてるこの木の実を集めるのを手伝ってほしいの』

 コプタン達は興味しんしんな様子で、イーアが手にもつイナムの実を見た。

『これ食べれるの? でかいボールみたいだね』
『カチコチだねぇ。しかも、すんごい臭いよ!』
『巨人はこんなもの食べるの?』

 コプタンたちは体が小さくて鼻がいいから、イナムの実はとても臭い巨大な謎の物体に見えるみたいだった。

『うん。わたしも食べたことないけど。この実はおいしいらしいよ。だから、ひろってこの袋にいれてくれる?』

『オッケー!』

 コプタン達は一斉に散らばって、イナムの実を拾いはじめた。
 コプタン達はいつも駆け足ですばやくって、しかも鼻がいいから簡単に木の実を見つけて拾ってくる。
 すぐに、袋がいっぱいになった。
 
『すごいよ! コプタンのみんな。こんなに大きな袋が、もう一杯だよ』

 イーアが満杯になった袋を手にしてそう言うと、コプタンたちは、ふんぞり返ったりしながら聞き返した。

『ポク、そんなにすごい?』
『すごーくイケてる?』
『とっても、すごーい?』 

 コプタン達は、もっとほめてほしそうだったから、イーアはもっとほめておいた。

『すごいよ。えらいよ。とってもすごいよ』

 コプタン達はとてもうれしそうになった。
 イーアはお礼を言った。

『ありがとう。もう袋に入らないから、終わりだね。残りの木の実は持って帰っていいよ。イナムの実は固い殻を割って食べるんだって』

『オッケー!』
『異界の食べ物だー!』
『ほんとに食べられるのかなぁ。こんなカチコチで臭いの』 

 コプタン達はひとりひとつずつイナムの実を抱きかかえて、元の世界へと帰っていった。

 さて、袋は一杯になったから、イーアがヘクトルさんに頼まれた仕事はもう終わりだ。
 でも、たぶん、ヘクトルさんは6時半になるまでここにはこない。
 今は、たぶん、まだ6時にもなっていない。

「お散歩でもしてようかな」

 この辺に来たのははじめてだから、ちょっと歩いてみよう。
 そう思って、イーアはイナムの実がいっぱいに入った袋を木の根元に置いて、並木道の散歩を始めた。

 並木道は途中で分岐していた。横に曲がると他の道につながっている。
 でも、イーアは曲がらず、そのまままっすぐ歩き続けた。じきに砂利道が消えて、なんとなく道があるようなただの林の中のような、そんな感じになっていった。
 普通は人は歩かない所だ。
 でも、イーアは林の中を歩き回るのに慣れていたので、全然気にしないで直進していった。

 しばらく進むと、廃屋のような小屋が見えてきた。
 小屋の木のドアはひっぱったらあいたから、イーアは小屋の中に入ってみた。

 小屋の中には、林道の整備に使うようなものが置かれていた。
 そこら中にほこりがたまっていた。
 特に気になるものはない。

(ただの物置小屋だね。帰ろっと)

 だけど、イーアが外に出ようと思った時。外のどこかから、とぎれとぎれに声が聞こえた。

「隠し……地下……扉……ました」
「……調子で地下の調査を進めなさい。あのおか……」

 声は遠ざかって行き、それ以上は聞き取ることができなかった。

(地下の調査……?)

 イーアは急いで小屋の外に出て、周囲を確認した。
 誰もいない。
 少なくとも、この小屋の外には誰もいなかったはずだ。
 きっと、さっきの会話はもっと遠くから聞こえてきたのだろう。
 
(気のせいかな……)

 イーアは林の中に目をこらした。
 今は、飛び立つ小鳥の姿以外、動くものは見えなかった。
 さっきの声はとてもかすかなものだったから、聞こえてきた方角すらよくわからない。
 むしろ、今はもう、あれは幻聴だったのかもしれないとすら思えてくる。
 だけど、もしあの会話が本物だとしたら。

(誰かが、今も地下に入ってる……?)

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...