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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第53話 犯人?
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シャヒーン先生がぎょっとしたように振り返り、ユウリがすぐにイーアにたずねた。
「誰かが地下にいるって?」
「うん」
「よっしゃ、犯人を捕まえようぜ!」
オッペンは元気よくそう言ったけど、シャヒーン先生は言った。
「およし。そんな危ないことは。生徒を危険にさらしたら、あたしのクビがとぶって最初に言ったろ。それに、地下で犯人を捕まえたら、あたしらが地下に入ったのもバレちまうじゃないかい。バレたらあたしもあんた達もこってりしかられるよ。立ち入り禁止なんだから」
「げっ。そりゃないぜ」
その横で、イーアはアプタンにたずねていた。
『どんな人だった?』
イーアがたずねると、アプタンは言った。
『とうめいだよ! イェイ! 目には見えないよ! とうめい巨人だよ! イェーイ!』
イーアはとまどいながら、たずねた。
『目に見えないなら、人間じゃないってこと?』
目に見えない人間なんていないはずだ。
でも、アプタンは断言した。
『ここにいる巨人と同じだよ! イェイ! 見えなくたって臭いでわかるもん! とうめい巨人! イェーイ!』
嗅覚がすぐれたアプタンが自信をもって言うなら、きっとまちがいないんだろう。
「地下に人がいるけど、とうめいで目に見えないって。でも、臭いはわたしたちと同じ人間だって」
「な、なんだよ、それ。おばけってことか?」
ユウリが冷静につぶやいた。
「魔法や魔法の道具で姿を消す方法はあるはずだよ。ものすごく高度な魔法だけど。それより、戻ろう。相手が目に見えないなら、気がつかないうちに遭遇してしまうかも。それに、犯人はいつか地上に出るはずだから、地上への出入り口を見張ればいいよ」
シャヒーン先生もうなずいた。
「たしかに、追いかけるより、出入口で待ち構えた方がいいかもしれないね」
来た道を引き返して地下から外に出た時には、辺りはもう暗くなっていた。
ユウリは言った。
「シャヒーン先生は、校舎内の出入り口を見張ってください。犯人は、ぼくらの知らない方法で結界をすり抜けている可能性もあります。ぼくらは、ここでこの入り口を見張ります」
「じゃ、そうするよ。あんた達、見つからないように気をつけるんだよ。それから、犯人を見つけても、絶対に逮捕しようなんてするんじゃないよ。あんた達が危ない目にあったら、あたしがマジーラに死ぬほど怒られちまうんだからね」
シャヒーン先生はそう言って校舎に戻っていった。
ユウリは「念のため、準備しておいてよかった」と言いながら、入り口の地面に手を当て、呪文を唱えた。
「<堀土>、<湧水>」
地面が少しへこみ、そこに水たまりができた。
でも、地面には枯れ葉が多く、草が茂っているから、そこに水たまりができていることは、見た目ではよくわからない。
「犯人が出てきたら、たぶん、水たまりに落ちると思う。気がついて浮遊魔法を唱えないかぎり。でも、これだけじゃわからないから……」
ユウリはカバンから魔法陣と呪文が書かれた呪符を取り出した。
ユウリはその呪符を水たまりの中に置き、呪文を唱えた。水たまりが一瞬だけ赤い光を放った。
「これでよし。隠れて待とう。近くにいる必要はないから、見つからない場所にいよう」
イーア達三人は、草むらの中にかくれて待つことにした。
イーアはそこで自分の傍で青いチルランが光っていることに気がついた。
青いチルランはいつもイーアの傍にいるわけではなくて、ひとりでふらふら散歩したり、寮の部屋の中で待っていることもあった。
だけど、今はイーアの傍に浮いている。
あたりはすっかり暗いので、イーアの傍で浮いているチルランの青白い光が目立ってしまう。精霊はすべての人に見えるわけではないらしい。だけど、魔学生ふくめて魔導士はたいてい見ることができるから、チルランの光が敵の目をひいてしまうだろう。
「チルラン、一度帰って……」
チルランはふるふると頭を横にふった。
「……くれないよね」
このチルランは、何がなんでもこの世界にいたがる。
「ぼくのかばんの中にいれよう」
ユウリはカバンのふたをあけた。イーアはチルランをユウリのカバンの中にいれてふたをしめた。
これで、チルランの青い光は見えなくなった。
森の中からは虫とふくろうの鳴き声が響いていた。
ここは校舎からも寮からも離れているので、人の声や物音は聞こえない。
やがて、足音が聞こえた。イーア達は息をころして入り口を見張った。
突然、バシャンと音がした。
「クソッ。なんだこの水たまり。ずっと晴れてたのになんで水たまりが……」
そういまいましげにつぶやく声がして、草むらの中を何かが動いて行く音がした。姿は見えない。動物が草むらの中を進むような音だけがして、その音はしだいに遠くに去って行った。
しばらくして、ユウリが言った。
「引っかかったはずだ。行こう」
ユウリが呪文を唱えると、草むらの中に赤い光が点々と見えた。
「成功。あれがターゲットの足跡だよ。追いかけよう」
足跡が赤く光るのは、ユウリから5メートルくらいの範囲だけで、しかも呪文を唱えた数秒後には消えてしまう。
でも、ユウリが呪文を唱えると、そのたびに足跡は赤く光ったから、追跡には困らない。
足跡は林の中を進んで行き、林の中の道に出た。
さらに足跡を追いかけて行くと、やがてイーア達の寮が見えてきた。
足跡は寮に向かってつづいていた。
(犯人はわたしたちの寮にいる?)
イーア達は寮の中に入って、足跡を追っていった。
足跡はいつもイーア達が使っている魔動昇降機に続いていた。
イーア達は1階ずつ降りて足跡がないか確認していった。
足跡が赤く光ったのは、ユウリ達の部屋がある階だった。
足跡はお風呂場に続いていた。
ユウリはつぶやいた。
「洗い流すと魔法の効果は消えちゃうな」
「風呂場に突入してとっ捕まえようぜ?」
オッペンはそう言った。
だけど、ユウリが返事をする前に、お風呂場からカバンとぬれた靴をもって出てきた不審な生徒がいた。
「なんだよ。3人バカ面ひっさげて、アホみたいにぼけーっと何見てるんだ?」
焦りをかくすためかいつもより一層バカにした声で言い放ったその生徒は、マーカスだった。
「誰かが地下にいるって?」
「うん」
「よっしゃ、犯人を捕まえようぜ!」
オッペンは元気よくそう言ったけど、シャヒーン先生は言った。
「およし。そんな危ないことは。生徒を危険にさらしたら、あたしのクビがとぶって最初に言ったろ。それに、地下で犯人を捕まえたら、あたしらが地下に入ったのもバレちまうじゃないかい。バレたらあたしもあんた達もこってりしかられるよ。立ち入り禁止なんだから」
「げっ。そりゃないぜ」
その横で、イーアはアプタンにたずねていた。
『どんな人だった?』
イーアがたずねると、アプタンは言った。
『とうめいだよ! イェイ! 目には見えないよ! とうめい巨人だよ! イェーイ!』
イーアはとまどいながら、たずねた。
『目に見えないなら、人間じゃないってこと?』
目に見えない人間なんていないはずだ。
でも、アプタンは断言した。
『ここにいる巨人と同じだよ! イェイ! 見えなくたって臭いでわかるもん! とうめい巨人! イェーイ!』
嗅覚がすぐれたアプタンが自信をもって言うなら、きっとまちがいないんだろう。
「地下に人がいるけど、とうめいで目に見えないって。でも、臭いはわたしたちと同じ人間だって」
「な、なんだよ、それ。おばけってことか?」
ユウリが冷静につぶやいた。
「魔法や魔法の道具で姿を消す方法はあるはずだよ。ものすごく高度な魔法だけど。それより、戻ろう。相手が目に見えないなら、気がつかないうちに遭遇してしまうかも。それに、犯人はいつか地上に出るはずだから、地上への出入り口を見張ればいいよ」
シャヒーン先生もうなずいた。
「たしかに、追いかけるより、出入口で待ち構えた方がいいかもしれないね」
来た道を引き返して地下から外に出た時には、辺りはもう暗くなっていた。
ユウリは言った。
「シャヒーン先生は、校舎内の出入り口を見張ってください。犯人は、ぼくらの知らない方法で結界をすり抜けている可能性もあります。ぼくらは、ここでこの入り口を見張ります」
「じゃ、そうするよ。あんた達、見つからないように気をつけるんだよ。それから、犯人を見つけても、絶対に逮捕しようなんてするんじゃないよ。あんた達が危ない目にあったら、あたしがマジーラに死ぬほど怒られちまうんだからね」
シャヒーン先生はそう言って校舎に戻っていった。
ユウリは「念のため、準備しておいてよかった」と言いながら、入り口の地面に手を当て、呪文を唱えた。
「<堀土>、<湧水>」
地面が少しへこみ、そこに水たまりができた。
でも、地面には枯れ葉が多く、草が茂っているから、そこに水たまりができていることは、見た目ではよくわからない。
「犯人が出てきたら、たぶん、水たまりに落ちると思う。気がついて浮遊魔法を唱えないかぎり。でも、これだけじゃわからないから……」
ユウリはカバンから魔法陣と呪文が書かれた呪符を取り出した。
ユウリはその呪符を水たまりの中に置き、呪文を唱えた。水たまりが一瞬だけ赤い光を放った。
「これでよし。隠れて待とう。近くにいる必要はないから、見つからない場所にいよう」
イーア達三人は、草むらの中にかくれて待つことにした。
イーアはそこで自分の傍で青いチルランが光っていることに気がついた。
青いチルランはいつもイーアの傍にいるわけではなくて、ひとりでふらふら散歩したり、寮の部屋の中で待っていることもあった。
だけど、今はイーアの傍に浮いている。
あたりはすっかり暗いので、イーアの傍で浮いているチルランの青白い光が目立ってしまう。精霊はすべての人に見えるわけではないらしい。だけど、魔学生ふくめて魔導士はたいてい見ることができるから、チルランの光が敵の目をひいてしまうだろう。
「チルラン、一度帰って……」
チルランはふるふると頭を横にふった。
「……くれないよね」
このチルランは、何がなんでもこの世界にいたがる。
「ぼくのかばんの中にいれよう」
ユウリはカバンのふたをあけた。イーアはチルランをユウリのカバンの中にいれてふたをしめた。
これで、チルランの青い光は見えなくなった。
森の中からは虫とふくろうの鳴き声が響いていた。
ここは校舎からも寮からも離れているので、人の声や物音は聞こえない。
やがて、足音が聞こえた。イーア達は息をころして入り口を見張った。
突然、バシャンと音がした。
「クソッ。なんだこの水たまり。ずっと晴れてたのになんで水たまりが……」
そういまいましげにつぶやく声がして、草むらの中を何かが動いて行く音がした。姿は見えない。動物が草むらの中を進むような音だけがして、その音はしだいに遠くに去って行った。
しばらくして、ユウリが言った。
「引っかかったはずだ。行こう」
ユウリが呪文を唱えると、草むらの中に赤い光が点々と見えた。
「成功。あれがターゲットの足跡だよ。追いかけよう」
足跡が赤く光るのは、ユウリから5メートルくらいの範囲だけで、しかも呪文を唱えた数秒後には消えてしまう。
でも、ユウリが呪文を唱えると、そのたびに足跡は赤く光ったから、追跡には困らない。
足跡は林の中を進んで行き、林の中の道に出た。
さらに足跡を追いかけて行くと、やがてイーア達の寮が見えてきた。
足跡は寮に向かってつづいていた。
(犯人はわたしたちの寮にいる?)
イーア達は寮の中に入って、足跡を追っていった。
足跡はいつもイーア達が使っている魔動昇降機に続いていた。
イーア達は1階ずつ降りて足跡がないか確認していった。
足跡が赤く光ったのは、ユウリ達の部屋がある階だった。
足跡はお風呂場に続いていた。
ユウリはつぶやいた。
「洗い流すと魔法の効果は消えちゃうな」
「風呂場に突入してとっ捕まえようぜ?」
オッペンはそう言った。
だけど、ユウリが返事をする前に、お風呂場からカバンとぬれた靴をもって出てきた不審な生徒がいた。
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