もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第54話 追跡

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 翌日の放課後、イーア達はシャヒーン先生の部屋にいた。
 シャヒーン先生は、今は不在だ。さっき、「ちょいっと用事があるから、部屋で待ってておくれ」とイーア達に言って去って行った。

 イーア達は話し合っていた。

「やっぱり、マーカスが白装束の魔導士……強盗の仲間ってこと?」

 ユウリは冷静に言った。

「それは、どうかな。マーカスは学園祭の日はコンテストで忙しかったはずだ。そうじゃなくても、マーカスにはあの階段下の入口の結界は解けないよ。だから、シャヒーン先生が言ってた学園祭の日に強盗に協力した犯人は、マーカスじゃないはずだ」

 すると、オッペンが無邪気に言った。

「じゃ、あいつ、探検してただけかもな。やっぱ、地下迷宮の探検とか、男のロマンだもんな。見つけたら探検しねーと」

 ユウリは首をひねった。

「ぼくは地下の探検に魅力を感じないけど。それより、マーカスが姿を消す魔法なんて使えるとは思えないし、ひとりであの入り口を見つけたとも思えない。きっと、誰かが必要な物をあたえて指示を出してるんだ。だけど、マーカスといえば……」

 ユウリが何か言いかけたところで、ドアが開いた。
 シャヒーン先生が意気ようようと帰ってきた。

「なんだい。難しそうな顔をして。エルツ、そういう顔は、あんたの歳には似合わないよ。もっとオッペンの何も考えてなさそうな面を見習いな」

 シャヒーン先生は上機嫌にそう言いながら、数枚の紙をイーア達の前のテーブルに置いた。

「さぁて、あんたたち、これにサインしな」

「なんですか? これ」

 イーアがたずねると、シャヒーン先生は言った。

「入部届だよ。あたしが監督をする占星術部の」

「入部届!?」

「先生。おれら、占星術部になんて入らねーぞ?」

 オッペンが口をとがらせて文句を言うと、シャヒーン先生はほがらかに言った。

「だいじょうぶさ。マジーラとは話をつけてきたよ。ドルボッジ部と掛け持ちOKだ」

(全然大丈夫じゃない!)と、イーアは心の中で叫んだ。
 先生たちは大いなる誤解をしているみたいだ。
 ユウリが即座に強く言った。

「ぼくはドルボッジ部になんて入りません。絶対に。……だけど、占星術も向いていないので、入部は遠慮します」

「そうだぜ。おれは占星術なんてぜんっぜん興味ねーよ」

 イーアが「わたしも……」といいかけたところで、シャヒーン先生はちゃんとした説明をはじめた。

「まぁ、話を聞きな。実は占星術部はね、もうとっくにつぶれてるんだよ。部員がゼロでね。ほら、他に占術部があるだろ? 占いに興味ある子はみんな、あっちに入ってるのさ。そりゃそうと、占星術の基本は天体観測なんだよ。つまり夜空を観察することが大事でね。だから、占星術部は夜に外で活動せにゃならんのさ」

 それを聞いて、ユウリは理解したようにうなずいた。

「なるほど。そういうことですか」

 シャヒーン先生も意味ありげにうなずいた。

「そういうことさね。占星術部に入れば、夜中に堂々と外をうろつけるのさ」

 グランドールの生徒は、本当は夜8時以降は寮の外に出ちゃいけない。
 でも、占星術部の活動ということにすれば夜中に外にいても大丈夫だから、夜中まで犯人さがしをできるってことだ。
 イーアは元気よく言った。

「じゃ、入ります」

「いつでも抜けていいんだよな? おれ、占いなんてやらねーからな」

 オッペンは渋々そう言った。
 シャヒーン先生は肩をすくめた。

「そりゃ、残念だね。今年の1年の中じゃ、あんたが断然一番見こみがあるってのに」

 
 イーア達は地下の探索とマーカスの追跡を続けた。
 その日も、イーアは地下に入ってすぐにアプタンを呼び出して、偵察をお願いした。
 しばらく待つと、さっそくアプタンが報告してくれた。

『巨人いたよ~』

 イーアはアプタンに地図をもってもらって場所を確認した。
 地図の左上あたりに人のマークがある。
 前回も、その辺りにマークが浮かんでいた。マーカスはいつも同じ場所に向かっているようだ。
 イーア達はその場所をめざして進んでいった。
 途中で、以前、白装束の魔導士ザヒと戦闘になった大広間を通過した。
 やがて、目的地についた。
 すでにマーカスはいない。

「マーカスはどこかな? ここ、行きどまりだよね」

 イーアがつぶやくとなりで、ユウリは地図を見ながら首をかしげた。

「この地図の形、奇妙だな。ここだけへこんでる。この壁の向こうに何かありそうな形だよ。<発光レシア>」

 ユウリは近くの壁を照らした。
 よく見ると、石壁に文字らしきものが刻まれていた。
 でも、イーアは知らない文字だ。

「この文字は、たぶんギアラド王国のだ」

 ユウリがそう言うと、オッペンはうれしそうに言った。

「じゃあ、やっぱここにはギアラド王国のお宝があるってことだな? おれ達でお宝、見つけよーぜ! マーカスには負けねぇぞ」

「宝、ならいいけど。何が眠っているか、わからないよ。地下で行方不明になった先生の話もある……。この地下には何かあるのかもしれない」

 ユウリが心配そうにそう言うのを聞いて、イーアは今までユウリたちに言い忘れていたことを思い出した。

「そういえば、ふたりには言ってなかったけど。この地下にはドラゴンがいるかも」

「ドラゴン!?」

 オッペンとユウリがぎょっとした顔でイーアを見た。

「ひょっとして、前にイーアが地底竜モルドーについて知りたがっていたのって……」

 おそるおそる、たずねるユウリに、イーアははっきりと言った。

「うん。ここにモルドーがいるかもしれないから、聞いたんだよ。わたしは、モルドーと会って話をしたいんだ。召喚の契約をするために」

 ユウリはものすごく困った表情でぶつぶつとつぶやいた。

「ドラゴンってものすごく危ない……。しかも伝説のドラゴン、モルドー……。そんなのと遭遇したら、そりゃ先生でも生きて帰れないよ。そんな危険なところに行きたくないけど……。イーアが行くっていうなら、ひとりでは行かせられないから……」

 一方、オッペンは元気に独り言を言っていた。

「ドラゴンか。ますますお宝がありそうな感じがするな。わくわくするぜ!」

 さて、イーアは壁に刻まれた文字をもう一度見た。

「なんて書いてあるかわからないけど、ここ、あやしいね……」

 イーアは壁を叩いてみた。そこには、たしかに壁がある。
 だけど、グランドールの校舎の階段下の入り口だって、結界が張られている時は、そうだった。見た目にも、触った感じも、ちゃんと壁があるように感じられたのだ。
 ユウリは言った。

「結界が張られているなら、どこかに結界を解除する仕組みがあるはずだ」

「近くにスイッチがあるかもね」

 でも、周囲にはそれらしきものは見当たらない。

「そうだ。オッペン、シャヒーン先生がかしてくれたダウジング・ロッドを使ってみようよ」

「そーいや、変な棒を渡されたんだっけな」

 そう言いながら、オッペンはローブのポケットから、直角に曲がった棒を二本取り出した。
 これがダウジング・ロッドだ。探し物を見つけるのに使えるらしい。
 シャヒーン先生は「こいつはすごい魔道具なんだよ。あんたにゃ豚に真珠しんじゅかもしれないけどね。大事にしておくれよ」と言いながら、オッペンにこのダウジング・ロッドを貸してくれたのだ。

 オッペンは両手に曲がった棒を一本ずつ持った。

「こうすんだっけ? でも、こんな棒でわかるわけねーよな。あやしー話だぜ。ったく、占術って地味であやしいのばっかだよな。やっぱ魔法はバーンと火焔魔法とか爆発魔法とか、かっこよくて強いのが一番だぜ」

 オッペンはそんなことを言ってふらふらしているので、イーアは声をかけた。

「いいから、オッペン。集中して探し物のこと、隠しスイッチのことを考えて」

「あいよ。えーっと、隠しスイッチ、隠しスイッチ……つってもさぁ、んなもん、あるかもわかんねーのに」

 オッペンはそう言いながらイーアの前を歩きだした。
 すると、オッペンが手に持つ棒の先がひょいっと動いた。

「あ、動いた」

「こっちか?」

 オッペンは棒の指し示す先に向かって歩いて行った。
 イーアとユウリはオッペンの後をついていった。
 少しして、オッペンは壁の前で立ちどまった。
 オッペンの持つダウジングロッドの先端は、石の壁に向いている。

「壁にぶつかっちまったぜ。なんもねーな。やっぱ、こんな棒でわかるわけねーよ」

 オッペンはそう言ったけど、ユウリはダウジング・ロッドの指し示す先にあった、壁の中の石に手を伸ばした。

「この石、動きそうだよ」

 ユウリはその石を横にスライドさせた。
 イーアは、さっきのあやしい壁のところに走っていった。
 文字が刻まれていた所のとなりの壁がなくなっていた。
 その先に、下りの階段が見えた。

「壁がなくなったよ。やったね!」

「マジかよ。この変な棒で?」

 オッペンは信じられないというように、自分の手の中のダウジング・ロッドを見た。
 
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