もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
71 / 207
第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第71話 侵入者

しおりを挟む
 楽しかったパーティーは終わり、イーア達は着替えて馬車でグランドールに戻った。
 イーアはゆかいな気分だったけど、ケイニスはずっと暗い表情で無言だ。
 ケイニスは普段から無口で難しい顔をしているけど。今は特に険しい表情をしている気がする。

「ケイニス君。パーティー、つまんなかった?」

 馬車から降りたところでイーアがたずねると、暗闇の中、ケイニスは暗い声で言った。

「俺は、後悔しているんだ」

「後悔?」

「ローレインと踊ったことを」

「なんで? ダンス、じょうずだったよ?」

 ケイニスは暗い声で言った。

「俺が子どもの頃、あのお嬢様と遊んでいるのがバレたら、何が起こったと思う?」

「……なにが起こったの?」

「俺は親父にボコボコに殴られて、親父は、俺の代わりに、ローレインの父親に死ぬほどムチで打たれた。奴隷人種がお嬢様に近づくとはなんたることか、ってな。親父は3日は起き上がることすらできなかった。おまけに、ひどい減給処分で、あの年は家族全員、飢え死にしそうだった」
 
 イーアは、以前ローレインが、ある日突然ケイニスがローレインを避けるようになった、と言っていたことを思い出した。どうやら、その出来事が理由だったようだ。

「俺と踊っていたことを、もし誰かがローレインの親に告げ口をしたら。俺の家族がどうなるかわからない」

「ごめん……。なにも知らないで」

 イーアは無邪気にローレインの手助けをしたことを後悔した。
 人が誰かと仲良くなることに、危険がともなうことがあるなんて、想像もしなかった。そんなこと、あるはずがないと思っていたのだ。
 ケイニスは優しい表情になって言った。

「おまえのせいじゃない。何かあったとしても。ローレインの誘いを断れなかった俺がいけない。……いや、いけないのは、この帝国か。おまえも気をつけろ。正直、俺は、何も知らずに生きてこれたおまえがうらやましい。おまえとエルツが、うやましい。だけど、誰でも平等に扱ってもらえるグランドールは、特別な場所なんだ。一歩外にでれば、俺達はまともに人間扱いされない」

 ケイニスはそう忠告するように言って、さきに学校へ戻っていった。
 ケイニスが去って行ったあと、ユウリがぽつりとつぶやいた。

「ケイニスも、色々大変なんだな」

「そうだね。わたし、ナミンの家で育ってよかったよ。わたしがユウリと仲良くしてても誰も文句言わないもん」

「うん。ぼくも、今はそう思う。これでよかったのかもって。昔は、なんで誰もぼくを迎えにきてくれないんだろうって思ったこともあったけど。ナミンの家で育ったから、ぼくはイーアと会えたんだ。だから、きっとこれでよかったんだよ」

 ユウリはそう言って笑顔を見せた。
 イーアは思い出した。
 ユウリのお母さんはユウリを生んですぐに死んでしまって、それで、大家さんか誰かが、ユウリを孤児院に預けたのだという。
 本当はどこかにお父さんや親せきがいるかもしれない。なのに、誰も迎えにきてくれない。
 ユウリはそう思って、ずっと家族に捨てられたように感じていたのかもしれない。

(わたしは……どうだろ……)

 もしもガネンの民が白装束の魔導士に襲われることがなかったら、きっと、イーアは今もガネンの森で血のつながった家族といっしょに暮らしていただろう。
 イーアがユウリやナミンの家のみんなと出会うことはなかった。
 ユウリと出会うことすらなかったなんて、そんなのは嫌だ。
 それでも……これでよかったとは、今のイーアには言えなかった。


 寮に入ったところで、イーアは玄関ホールのところでマジーラ先生が一風変わった服装のおじさんと話しこんでいるのに気がついた。
 イーア達に気がついて、マジーラ先生は呼んだ。

「ちょうどよかった。イーア、エルツ。ちょっと来てくれ」

「はい?」

 最近は先生に呼び出されるようなことはしていないので、イーアは不思議に思いながらマジーラ先生のそばに近よった。

「ふたりとも。この方はマーカスのお父さんだ」

「マーカスの!?」

 マーカスのお父さんはマーカスとは全然、雰囲気がちがう。頼りないけどやさしくて、お人よしそうな感じのおじさんだ。
 マーカスのお父さんは、背はマジーラ先生より高いけどとてもやせていて、マジーラ先生の方が腕力は強そうだ。

 それはそうと、マーカスのお父さんの顔は青ざめていた。
 見るからに何かを心配していた。
 マジーラ先生は言った。

「マーカスが、まだ家に帰っていないらしいんだ。おまえたちは仲がいいだろう? 何か知っていないか?」

 ユウリは「別に仲はよくありません」と言いたそうな顔をしていたけど、イーアは心配になりながら答えた。

「マーカスは冬休みが始まってすぐ、家に帰ったと思います」

 ユウリも言った。

「冬休みが始まった日から、マーカスのことは見かけていません」

 イーア達はこっそりマーカスの監視を続けていたから、まちがいない。
 といっても、つねに見張っていたわけではないから、マーカスが寮を出るところは見ていない。だけど、マーカスが学校にいないのはたしかだ。

 その時、マジーラ先生の持つ携帯《けいたい》伝話機《でんわき》が鳴った。

「なに!? 地下への入り口で?」

 マジーラ先生は携帯伝話機から耳をはなすと、険しい表情でイーア達へたずねた。

「あの林の中の地下への入り口、お前達は今日は近づいていないな?」

「先生に見つかってからは行ってません」

 イーア達は本当に地下への入り口には近づいていない。
 ユウリは言った。

「ぼくらは今日、アイシャの家のパーティーに行ってて、今、帰ってきたところです。何か起きたんですか?」

 マジーラ先生は厳しい口調で言った。

「いいか。絶対に寮からでるな。あの入り口の封鎖が破壊されて、守衛さんが重傷を負った」

 マジーラ先生は、マーカスのお父さんに、緊急事態だから行かないといけないと謝って、「この寮で待っていてください」と告げた。
 マジーラ先生は携帯伝話機に向かって大声で叫びながら、走りさっていった。

「緊急事態だ! 学内にいる全教職員を職員室に集めてくれ。学校を守る結界が破壊されている可能性も高い。警備を最大級に強化! 学内に残っている生徒は全員、寮に集め、寮にも警備を配置しろ!」

 マーカスのお父さんとイーアたちは取り残された。
 どうしたらいいかわからない様子のマーカスのお父さんに、ユウリはたずねた。

「マーカスの部屋にいきますか?」

「ええ。お願いします」
 
 マーカスの部屋はユウリたちの部屋と同じフロアにある。マーカスの部屋に向かっている途中、マーカスのお父さんは、やつれた顔でほほえんで言った。

「君たちみたいな友だちがいてくれて、安心したよ。あの子は、意地っ張りで不器用な子だから。グランドールで友だちができないんじゃないかと、心配していたんだ」

 イーアは言った。

「マーカスは学校で人気ですよ。特にギルフレイ卿に弟子入りしてからは」

 最近のマーカスの取りまきを、マーカスの本当の友達といえるのかは疑問だけど。マーカスが人気者になっているのはたしかだ。

「ギルフレイ卿に弟子入り? いつ?」

 マーカスのお父さんは、けげんそうに聞き返した。マーカスのお父さんは弟子入りについて何も知らなかったようだ。
 イーアはユウリの方を見て言った。

「学園祭の後すぐ? だっけ?」

「たしか、そんな話だったよ」

「うちはあの方に弟子入りできるような家柄じゃないんだが……」

 マーカスのお父さんは考えこむようにそうつぶやいた。
 マーカスのお父さんを部屋に案内した後、イーア達は、急いでユウリの部屋に向かった。

 ユウリは部屋に入るなり、ベッドの下を探り、そこにかくしてあったカバンを取り出して、中をさぐった。
 数分後、ユウリは悔しそうにカバンをたたき、眉をしかめて小声で言った。

「ない。なくなってる。あの扉の宝玉が盗まれてる。たぶん、マーカスのしわざだ。カバンを置いていくんじゃなかった……」

 双竜模様の扉のカギは盗まれた。これで、白装束の魔導士たちが地下の迷宮に入ることができてしまう。
 イーアは部屋の中を見た。
 マーカスがイーアに送ってきた透明になれるローブは、他の冬至祭プレゼントといっしょに、机の上に置きっぱなしだった。
 イーアは透明ローブを手に取った。
 ユウリはたずねた。

「行くつもり?」

「うん。強盗の好きにはさせない」

 何ができるかはわからない。それでも、白装束の魔導士たちの好きにはさせたくなかった。
 ユウリは覚悟を決めたように息をはき、言った。

「イーアが行くなら、ぼくも行く。危険な場所に、イーアひとりでは行かせない」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...