もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第77話 白装束の協力者

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 イーアが岩竜モルドーのいた場所までもどると、壁ぎわにユウリがいた。
 ユウリの他には誰もいない。
 先生たちの救援はまだ来ていない。
 ユウリがさっき大声で先生に呼びかけていたのは、やはり、敵をだますための演技だった。

 ユウリは壁にもたれかかり、荒い息をしている。
 ユウリのローブは焼け焦げていた。
 イーアは、ぼろぼろのユウリに抱きついた。
 ユウリの体のぬくもりと心臓の音を感じると、イーアの目からどんどんと涙があふれていった。
 ユウリはちゃんと生きていた。
 一瞬だけほっとした後、すぐにさっき見た光景、マーカスの悲痛な声が、イーアの脳裏によみがえってきた。

「ユウリ……。マーカスが、マーカスが殺されちゃった。ギルフレイ卿に」

 ユウリは、荒い息をしながら、なんとか声をだして言った。

「落ち着いて、イーア。ここから出よう。行くよ」

 ユウリは6角形の水晶石を片手ににぎっていた。転移水晶だ。
 「<転移>」とユウリが言うと、気が付いた時にはイーアは寮のユウリの部屋の中にいた。
 ふたりは床にへたりこみ、イーアは透明ローブを脱いだ。

 ユウリの部屋は出てきた時のままだった。
 床に転移水晶の転移先に置く魔道具がある他は、昼間からほとんど何も変わらない。
 だけど、なんだか、こげくさかった。
 臭いの発生源はすぐに見つかった。ベッドの上に、焼け焦げたクマのぬいぐるみが転がっている。
 今朝、箱から取り出したばかりの、冬至祭プレゼントで送られてきたクマのぬいぐるみだ。

 ユウリは、無残な姿になってしまったクマのぬいぐるみを見やって言った。

「あれが、ぼくの命を救ってくれたんだ。師匠がくれたぬいぐるみ、<身代わり人形>だったんだよ。そうならそう言ってくれればいいのに」

「<身代わり人形>?」

「持ち主が死ぬほどのダメージを受けた時に、一度だけ、そのダメージを肩代わりしてくれる魔法の人形なんだ」

 そのおかげで、ギルフレイ卿の魔法を受けてもユウリは生き残ることができた。
 でも、身代わり人形がすべてのダメージを肩代わりしてくれたわけではないのは、ユウリを見ればわかる。
 冷静にしゃべっているけれど、ユウリは虫の息だ。

「回復する?」

「ぼくはだいじょうぶ。回復薬は持ってる」

 ユウリはカバンから体力と魔力を回復する魔法薬のビンを取り出し、イーアにも渡した。
 ユウリは冷静な声で言った。

「イーア。あいつらがまた襲ってくるかもしれない。早くウェルグァンダルに連絡を。ウェルグァンダルに保護してもらった方がいい。敵がギルフレイ卿なら。あの強さじゃ、先生たちには何もできないよ。ぼくはホーヘンハインに行く。このカバンはイーアが持っていて。ドラゴンのたまごはそこにいれてある」

 支配者の石板の欠片を奪ったイーアを、<白光>は全力で探そうとするだろう。
 そして、距離が離れていたとはいえ、ユウリは姿を見られている。
 ユウリの言う通り、ここにとどまるのは危ない。

「わかった。ユウリ、またね」

「うん。また後で」

 イーアはユウリの魔法のカバンを持って、自分の部屋に戻った。
 『友契の書』には持ち主をウェルグァンダルの門前に移動させる機能がある。
 だけど、グランドールのどこからでも自由にウェルグァンダルに移動できるわけじゃない。
 寮の中では、ガリが細工をしたイーアの部屋の中からしか転移できない。

 イーアはいつもと同じ廊下を走り、自分の部屋にむかった。
 いつもと同じ寮なのに、まるで別の場所のように感じられた。
 そして、自分の部屋のドアを開けた時。イーアの心臓はとまりかけた。
 室内に、白いローブの男がいた。仮面は、つけていない。
 
「やはり、君だったか」

 落ちついたその声を聞きながら、イーアは混乱し、自分の耳を疑い目を疑っていた。

「オレン先生……?」

 そこにいた白いローブの男は、オレンだった。
 白装束の魔導士の協力者は、オレンだった。

 オレンは水晶石を手に持っていた。
 イーアが逃げる間もなく、オレンは「<空間転移>」と唱えていた。地面に大きな魔法陣が出現し、そして、イーアは自分がどこかへ飛ばされていくのを感じた。


 転移がおわり、気が付いた時、イーアが最初に感じたのは、暑さだった。
 真冬のはずなのに、ここは真夏のように暑い。
 周囲に植物は何も生えていない。大小の岩だけがある斜面だ。
 ここは、どこかの山の山頂付近のようだ。だけど、小刻みに、地面がゆれている。

 イーアの全身から汗がふきでて流れだした。
 白いローブ姿のオレンは、斜面の上の方にむかってゆっくりと歩いていく。
 オレンの向こうで、時折、火の粉が吹きあがっていた。
 たぶん、ここは火山。
 オレンの向こうに、火口があるのだ。

 こうこうと光を放つランプを地面に置くと、オレンはまるで授業を始めるような、落ち着きはらった声で言った。

「今日は、邪魔は入らないだろう。たとえウェルグァンダルの塔主相手でも、ザヒならば足どめ程度はできるからな。さて、始めようか」
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