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第2部 バララセ東部 ~密林の巨鳥と水竜の島
第85話 オッペンへの宣告
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シャヒーン先生との会話からしばらくたったある日。
イーアはたまたまキャシー達といっしょに廊下を歩いていた。
ユウリは一緒じゃない。イーアはガリに言われたことが気になって、冬休みがあけてからは以前よりもユウリと一緒にいる時間を少なくし、なるべくキャシーやアイシャといるようにしていた。
突然、キャシーがイーアのローブをひっぱった。
「ねぇ、あそこでシャヒーン先生としゃべってるのって、アスカル様じゃない?」
廊下で、シャヒーン先生が誰か見知らぬ人とおしゃべりしている。見たことのないデザインのとても美しい深紅のローブを着た背の高い女の人だ。
「アスカルさま?」
(あんなローブもあるんだ)と思いながらイーアが聞き返すと、キャシーは興奮した様子で言った。
「<星読みの塔>の塔主様! なんで、なんでこんなところにアスカル様が!?」
<星読みの塔>といえば、たしか占術の名門だ。シャヒーン先生も占術士だから、知り合いなのかな、とイーアが思っていると。
イーア達のうしろから歩いてきたオッペンがいつもの大声で言った。
「あ? なんだあの、ボンキュッボンのド派手なねーちゃんは」
(オッペン、その発言は……)
イーアですらありえないと思ったくらいだから、即座にキャシーがオッペンの頭をひっぱたいていた。
「いてっ!」
「バカオッペン! 失礼なこと言うんじゃない! アスカル様は歴史ある<星読みの塔>初の女性塔主で、<星読みの塔>を改革した偉大な占術師なの。占術士を目指す、ううん、魔導士をめざすすべての女子の憧れなんだから!」
いつのまにか他の生徒も集まってきていて、廊下中がざわざわしている。グランドールは女子の数が少ないのに、ここにはどんどん女子が集まっていた。そして、キャシーがいうように、女子生徒達はみんなアスカルに熱い憧れの視線を送っている。
(そんなにすごい人なんだ……。アスカルさん)
イーアがそんなことを考えていると、シャヒーン先生がこっちにふりむいた。アスカルもこっちを見た。
とたんに、イーア達の近くにいた女子数人が小さな歓声をあげた。
(すごい人気だね……)
アスカルは、つかつかとイーア達のほうへ向かって歩いてきた。アスカルはとてもスタイルがいいから、歩く姿だけで格好よかった。
アスカルは、オッペンの前で立ちどまった。そばにいるイーアのところにまでなんだかいい匂いが漂ってきた。近くで見ると、アスカルはキリリとした顔だちの美人だった。歴史に名をのこす実力を持っているうえに、どこを見ても完璧に格好いい大人の女性で、たしかにみんなが憧れるのがわかるとイーアは思った。
さて、さっき失礼なことを言っていたオッペンは少し警戒したようすでアスカルを見上げていた。
「あんたが、オッペンかい」
アスカルの口調は質問ではなく、ただの確認だった。
オッペンは、ちょっと落ち着きがない感じで言った。
「な、なんだよ。おれになんか用かよ」
キャシーがバシッとオッペンの背中をたたいて「言葉づかい!」とささやいた。
たしかに相手は偉い魔導師なんだから、言葉づかいをあらためるべきだけど、オッペンは基本的に敬語がつかえないから、むりだ。
アスカルはしばらく無言でオッペンをじろじろと観察して、それから、言った。
「なるほど。あんた、うちの塔にきな」
キャシーが、イーアの方を見て、口をパクパクさせた。
言葉にならなかったみたいだけど、言いたいことは伝わった。たぶん、「落ちこぼれオッペンが占術の名門<星読みの塔>の塔主にスカウトされている!」とキャシーは心の中で叫んでいた。
周囲にいる同級生たち全員から、そういう叫び声が伝わってきそうな気配が漂っていた。
でも、オッペンだけは、状況を理解していなかった。
「塔? あんで?」
キャシーがあわててオッペンの耳元でささやいた。
「あんたは今、占術の名門<星読みの塔>に入門しないかってさそわれてるの!」
「あん? 占術の名門に入門? しねーよ。おれは占術なんて興味ねーもん。それに、おれは卒業したら、軍に入るんだからな。バーンと強い攻撃魔法で敵を倒すんだ」
とたんに、周囲の生徒達全員、特に女子生徒達から「はぁ!? あんた何言ってるの!?」って叫びが聞こえそうな、ものすごく険悪な空気が漂った。
キャシーは実際に「何言ってんのよ!」とオッペンにむかって叫んでいた。
イーアは自分は関係ないのに心臓が苦しくなるほどハラハラしながら成り行きを見ていた。
アスカルは肩をすくめて言った。
「シャヒーンの言う通り、かわいがりがいがありそうなガキだねぇ」
そして、アスカルは片手をオッペンの頭上にかざした。アスカルは指を動かしていただけなのに、すぐにいくつもの複雑な光でできた魔法陣がオッペンの頭上にあらわれた。
「<宣告>する。あんたはこの先、攻撃魔法は初級魔法さえまともに使えることはなく、軍に入ることは絶対にない」
アスカルの言葉とともに、光の魔法陣がオッペンに降りかかった。
「あんだ? なんか今、変な感じしたぞ? なにが起こったんだ?」
オッペンが不思議がってキョロキョロしている横で、キャシーはイーアにくっつくようにして興奮した様子で説明していた。
「あれが、アスカル様の<宣告>! <宣告>を受けた人には、宣告された未来が必ず起きるようになるんだって。アスカル様だけが使える伝説的な魔術なの。あぁ、この目で見られるなんて、感動! 感激!」
周囲の女子たちも感激している様子でささやきあっていたけれど、キャシーの言葉を聞いたオッペンの顔色はみるみる変わっていった。
「はぁ!? 言われたことが強制的におこる!? じゃあ、俺はこの先、初級魔法も使えなくって、軍にも入れないのかよ! 最悪の呪いじゃねぇか!!! おい! この呪いを解けよ!」
だけどそのとき、アスカルはすでにオッペンに背をむけてシャヒーン先生の方にむかって歩きだしていた。そして、「入門する気になったら塔に来な」と言って手をふると、そのまま歩き去っていった。
「かっこいい……」
キャシーと周囲の女子生徒達がうっとりとつぶやいて、ため息をついた。
でも、オッペンは頭を抱えていた。
「どうしてくれるんだよ! おれの将来の夢! 初級魔法も使えなくて軍に入れないって。ありえねーだろ! だぁー!」
オッペンは叫びながら、ろうかを走り去っていった。
イーアはたまたまキャシー達といっしょに廊下を歩いていた。
ユウリは一緒じゃない。イーアはガリに言われたことが気になって、冬休みがあけてからは以前よりもユウリと一緒にいる時間を少なくし、なるべくキャシーやアイシャといるようにしていた。
突然、キャシーがイーアのローブをひっぱった。
「ねぇ、あそこでシャヒーン先生としゃべってるのって、アスカル様じゃない?」
廊下で、シャヒーン先生が誰か見知らぬ人とおしゃべりしている。見たことのないデザインのとても美しい深紅のローブを着た背の高い女の人だ。
「アスカルさま?」
(あんなローブもあるんだ)と思いながらイーアが聞き返すと、キャシーは興奮した様子で言った。
「<星読みの塔>の塔主様! なんで、なんでこんなところにアスカル様が!?」
<星読みの塔>といえば、たしか占術の名門だ。シャヒーン先生も占術士だから、知り合いなのかな、とイーアが思っていると。
イーア達のうしろから歩いてきたオッペンがいつもの大声で言った。
「あ? なんだあの、ボンキュッボンのド派手なねーちゃんは」
(オッペン、その発言は……)
イーアですらありえないと思ったくらいだから、即座にキャシーがオッペンの頭をひっぱたいていた。
「いてっ!」
「バカオッペン! 失礼なこと言うんじゃない! アスカル様は歴史ある<星読みの塔>初の女性塔主で、<星読みの塔>を改革した偉大な占術師なの。占術士を目指す、ううん、魔導士をめざすすべての女子の憧れなんだから!」
いつのまにか他の生徒も集まってきていて、廊下中がざわざわしている。グランドールは女子の数が少ないのに、ここにはどんどん女子が集まっていた。そして、キャシーがいうように、女子生徒達はみんなアスカルに熱い憧れの視線を送っている。
(そんなにすごい人なんだ……。アスカルさん)
イーアがそんなことを考えていると、シャヒーン先生がこっちにふりむいた。アスカルもこっちを見た。
とたんに、イーア達の近くにいた女子数人が小さな歓声をあげた。
(すごい人気だね……)
アスカルは、つかつかとイーア達のほうへ向かって歩いてきた。アスカルはとてもスタイルがいいから、歩く姿だけで格好よかった。
アスカルは、オッペンの前で立ちどまった。そばにいるイーアのところにまでなんだかいい匂いが漂ってきた。近くで見ると、アスカルはキリリとした顔だちの美人だった。歴史に名をのこす実力を持っているうえに、どこを見ても完璧に格好いい大人の女性で、たしかにみんなが憧れるのがわかるとイーアは思った。
さて、さっき失礼なことを言っていたオッペンは少し警戒したようすでアスカルを見上げていた。
「あんたが、オッペンかい」
アスカルの口調は質問ではなく、ただの確認だった。
オッペンは、ちょっと落ち着きがない感じで言った。
「な、なんだよ。おれになんか用かよ」
キャシーがバシッとオッペンの背中をたたいて「言葉づかい!」とささやいた。
たしかに相手は偉い魔導師なんだから、言葉づかいをあらためるべきだけど、オッペンは基本的に敬語がつかえないから、むりだ。
アスカルはしばらく無言でオッペンをじろじろと観察して、それから、言った。
「なるほど。あんた、うちの塔にきな」
キャシーが、イーアの方を見て、口をパクパクさせた。
言葉にならなかったみたいだけど、言いたいことは伝わった。たぶん、「落ちこぼれオッペンが占術の名門<星読みの塔>の塔主にスカウトされている!」とキャシーは心の中で叫んでいた。
周囲にいる同級生たち全員から、そういう叫び声が伝わってきそうな気配が漂っていた。
でも、オッペンだけは、状況を理解していなかった。
「塔? あんで?」
キャシーがあわててオッペンの耳元でささやいた。
「あんたは今、占術の名門<星読みの塔>に入門しないかってさそわれてるの!」
「あん? 占術の名門に入門? しねーよ。おれは占術なんて興味ねーもん。それに、おれは卒業したら、軍に入るんだからな。バーンと強い攻撃魔法で敵を倒すんだ」
とたんに、周囲の生徒達全員、特に女子生徒達から「はぁ!? あんた何言ってるの!?」って叫びが聞こえそうな、ものすごく険悪な空気が漂った。
キャシーは実際に「何言ってんのよ!」とオッペンにむかって叫んでいた。
イーアは自分は関係ないのに心臓が苦しくなるほどハラハラしながら成り行きを見ていた。
アスカルは肩をすくめて言った。
「シャヒーンの言う通り、かわいがりがいがありそうなガキだねぇ」
そして、アスカルは片手をオッペンの頭上にかざした。アスカルは指を動かしていただけなのに、すぐにいくつもの複雑な光でできた魔法陣がオッペンの頭上にあらわれた。
「<宣告>する。あんたはこの先、攻撃魔法は初級魔法さえまともに使えることはなく、軍に入ることは絶対にない」
アスカルの言葉とともに、光の魔法陣がオッペンに降りかかった。
「あんだ? なんか今、変な感じしたぞ? なにが起こったんだ?」
オッペンが不思議がってキョロキョロしている横で、キャシーはイーアにくっつくようにして興奮した様子で説明していた。
「あれが、アスカル様の<宣告>! <宣告>を受けた人には、宣告された未来が必ず起きるようになるんだって。アスカル様だけが使える伝説的な魔術なの。あぁ、この目で見られるなんて、感動! 感激!」
周囲の女子たちも感激している様子でささやきあっていたけれど、キャシーの言葉を聞いたオッペンの顔色はみるみる変わっていった。
「はぁ!? 言われたことが強制的におこる!? じゃあ、俺はこの先、初級魔法も使えなくって、軍にも入れないのかよ! 最悪の呪いじゃねぇか!!! おい! この呪いを解けよ!」
だけどそのとき、アスカルはすでにオッペンに背をむけてシャヒーン先生の方にむかって歩きだしていた。そして、「入門する気になったら塔に来な」と言って手をふると、そのまま歩き去っていった。
「かっこいい……」
キャシーと周囲の女子生徒達がうっとりとつぶやいて、ため息をついた。
でも、オッペンは頭を抱えていた。
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オッペンは叫びながら、ろうかを走り去っていった。
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