もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
89 / 207
第2部 バララセ東部 ~密林の巨鳥と水竜の島

第89話 旅路

しおりを挟む
 こうして、夏の休みが始まるとすぐ、イーアはバララセ大陸にむかった。
 本当は、イーアはこっそりひとりで行くつもりだった。でも、バララセの地図を調べたり準備をしているうちに、ユウリとオッペンにバレてしまって、オッペンが「おれもバララセへ行く」と言い出した。

 オッペンはずっとバララセ大陸に行きたかったらしい。オッペンのお父さんは、バララセ東部のどこかで戦死したから。

「骨も帰ってこなかったからさ。おれは、バララセで父ちゃんの墓を探さなきゃなんねーんだ。そのために、ずっと金もためてんだ。シャヒーン先生に習ったダウジングで父ちゃんの墓を見つけてやる」

 そうオッペンは真剣な表情で言っていて、ちょうどイーアの目的地も同じ辺りだったから、いっしょに行くのを断れなかった。

 ユウリは、予想通り、「イーアが行くならぼくも行く」と言ってきかなかった。ユウリには関係ないウェルグァンダルの任務だとしても、<白光>に狙われていて危険なはずなのにイーアがバララセ大陸に行く、と聞いて、ユウリが黙っているはずがない。と思ったから、秘密にしておくつもりだったのだけど。

 結局、3人でバララセ大陸に行くことに決まった。
 もちろん、ユウリには絶対に師匠のホスルッドには言わないように念を押した。ホスルッドが<白光>だから、とは言わなかったけれど。

 だけど、いざ出発の日が近づくと、ユウリがホーヘンハインから帰ってこなくなってしまった。
 そして、そのままユウリはバララセ大陸へむかう船の出航にまにあわなかった。
 きっと、ホーヘンハインでホスルッドがユウリを止めているのだろう。
 イーアは少し迷ったけれど、結局そのまま出発した。


 港町の街並みがしだいにはっきりと見えるようになってきた。
 イーアは海風を受けながら、徐々に近づいてくる大陸の光景を船上から眺めていた。
 オッペンが手すりにつかまって身を乗り出して叫んだ。

「すげぇ! あれがバララセ大陸か!」

 船がゆれて、身を乗り出していたオッペンが落ちかけて、すかさず移動魔法でダモンがオッペンを甲板にひきあげた。「まったく。何回落ちかければ気がすむんだ」とダモンがオッペンに文句を言っている。
 ドルボッジ部のダモンとガボーはバララセ大陸出身で、今は学校から家に帰るところだ。
 イーア達がバララセ大陸に行くつもりだというと、二人は行き方や船のチケットの買い方、服装や注意点までくわしく教えてくれた。

「あれがチュジェの町だね」

 オッペンのことは気にせずイーアがつぶやくと、ガボーが言った。

「おれは、帰ってきてほっとするどころか、緊張する。おまえも気をつけるんだな。あの町に足を踏み入れた瞬間から、おれ達は本当に奴隷人種なんだ。誘拐されて売り払われたら、一生奴隷で人生が終わるんだ」

 肌の色の白いダモンは数代前にアグラシアからバララセに移住した農場主の息子だけど、色の黒いガボーはもともとバララセ大陸に住んでいた一族だった。
 続けてダモンが言った。

「ムトカラはメラフィス砂漠の北をずっと東に行った先だ。本当に俺達なしで大丈夫か? 俺はお前達をムトカラまで送ってから南に向かってもいいんだぞ」

「大丈夫。オッペンもいっしょだもん」

「それが余計に心配なんだな」

 ガボーにそう言われると、イーアも否定できなかった。むこうで、はしゃぎながら港町を見ていたオッペンがタイミングよくくしゃみをしている。
 
「うん……。でも、わたしには召喚があるから、だいじょうぶ」

「お前の召喚術のすごさは知っているが……」

 チュジェの街並みが近づいてくるのを見ながら、ダモンは言った。

「気をつけろ。バララセで生まれ育った人間として故郷の悪口を言いたくはないが、ここは帝都のあたりとは比べ物にならない物騒な場所だ」

「うん。気をつけるよ」

 イーアは素直にそう返した。
 イーアの眼前、船の進む先には美しい港町が広がっていて、とてもそんな物騒な場所には見えなかった。だけど、この先は、イーアがまだ知らない土地、バララセ大陸なのだ。


 船は無事にバララセ大陸の港町チュジェに到着した。
 バララセ大陸の玄関口と言われるチュジェは、建物も行きかう人の服装もアグラシアと大きく違いはなかった。
 だけど、港で働いている労働者の多くは肌の色の黒いバララセ人だ。

 ガボーの話によると、ここで働いているバララセ人は皆、奴隷だという。
 彼らは落ちくぼんだ生気のない目で黙々と働き続けていた。
 それでも、ガボーが言うには、こういう人目に付きやすい町で働かされている奴隷は比較的待遇が良いのだという。
 鉱山や大農場で働かされている奴隷はもっと過酷で、日常的に暴力をふるわれて、死んでいくものも多い。
 「農場での待遇は、オーナーしだいだけどな」と、ガボーはダモンに遠慮するようにつけたした。だけど、ダモンは頭を横に振って言った。

「待遇のいいところなんて、あるはずがない。誰も奴隷を同じ人間だと思っていないんだ。俺だって、グランドールでガボーと親友になるまで、対等な人間だと思ったことがなかった。かわいそうだと思ったことはあるさ。犬や猫に同情するのと同じような感じで。でも、俺と同じ人間だとは思っていなかった。今は、あの頃の俺こそ、恥ずかしい奴だと思ってるが」


 翌朝、ダモンとガボーは南へ向かう馬車に乗り、イーアとオッペンは東に向かう馬車に乗った。
 イーアの目的地は、バララセ北東にある町、ムトカラだった。ムトカラにはウェルグァンダルの召喚士ンワラデがいる。

 チュジェからムトカラは何日もかかった。
 移動の途中でメラフィス砂漠の砂丘がみえた。
 大昔、あの砂漠に、『支配者の石板』を作った古代王国があったのだと思うと、少し気になった。
 だけど、今はムトカラに行くのが先だ。それに、今のメラフィス砂漠にはひたすら砂漠が広がっていて、古代王国の遺跡はないらしい。

 途中、オッペンが詐欺師《さぎし》にだまされかけたり、強盗に襲われかけたり、ちょっと危ないことはあったけれど、イーアが適当にドプープクや双頭の狼を召喚して、片づけた。
 だから、特に大きな問題は起こらず、イーア達はムトカラについた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...