97 / 207
第2部 バララセ東部 ~密林の巨鳥と水竜の島
第97話 カンラビの遺跡
しおりを挟む
聖域の樹木に覆われるようにひっそりと、切り出した石で作られた神殿の遺跡がたたずんでいた。
遺跡の隠し扉がある場所はほかの部分と同じようにツタに覆われた壁にしか見えない。
だけど、カゲがなにか呪文のようなものを唱えると、その石の壁が消えた。
カゲは『さぁいきましょう』とツタの間にひょろりとすべり込み、そのまま歩いて行った。
イーアはツタと草をかきわけ中に入りながら思った。
カゲの呪文は、精霊語ではなかった。むしろ魔導語みたいに聞こえた。
『カゲって、魔導士なの?』
『魔導士? さぁ、記憶がないのでわかりません。でも、イーアさんがそういうなら、そうだったのかもしれませんねぇ』
でも、精霊が魔導士になったケースなんて、イーアは聞いたことがない。
遺跡の中は暗かったので、イーアはラプラプを呼んで、通路を照らしだしてもらった。
大きな切り出された石でできた狭い通路がずっと続いている。
イーアはちょうどそのまま通れるけれど、背の高い人だったら頭がぶつかりそうな、狭い通路だった。しかも、所々、崩れている。
歩きながらティトが鼻を鳴らし文句を言った。
『この遺跡、崩壊したりしないだろうな。生き埋めはごめんだぞ』
しばらく進んだところで、道は終わった。岩が崩れてその先をふさいでしまっている。
『おやまぁ。こまりました。これでは、進めませんよ』
カゲは困ったようすでうろうろしている。イーアは『友契の書』を手にとり言った。
『だいじょうぶ、だと思う。グモーチ、ここを掘って』
イーアはグランドールの地下に住んでいる巨大なモグラみたいな霊獣を呼んだ。おでこのところに王冠みたいな模様があるから、グモーチは『掘削の王獣』という異名で呼ばれている。
グモーチの巨大な手には尖った鋼鉄のような長い爪がはえていて、その爪の先端部分は高熱を発することもできるらしい。グモーチはとにかく穴を掘るのが得意で、やわらかい地面じゃなくても、硬い岩盤でも、どんどん掘ってしまう。
グモーチはあっという間に、遺跡の崩れた岩を掘って通り道を作った。
『ありがとう、グモーチ』
イーアがお礼を言うと、グモーチは大きな手を振って、消えていった。
イーア達がさらに少し進むと、上にあがる石の階段があった。
上の方から空気が流れこんでくる。光も見える。
イーアはラプラプを帰すと、警戒しながら階段をあがっていった。
階段の先には予想もしなかった驚きの光景が広がっていた。
そこには、いくつかテーブルが置かれていて岩がイスのように配置されていた。
棚の上では小鳥が上機嫌に歌っていて、壁には草や花や雑貨が飾られていた。
なんだかおしゃれで平和そうな空間だ。
壁にあいた大穴から外の光が差しこんでいて、密林の新鮮な空気が流れこんでくるから、ここにいるだけで癒される。
『いやはや。私の記憶にまったくない場所にでてきてしまいましたよ?』
カゲが首をかしげながらつぶやいた時、イーア達は突然声をかけられた。
『らっしゃーい。3名さま?』
『ク、クーちゃん?』
そこにはエプロンをつけた白い大きな霊鳥、『料理鳥ククックー』が立っていた。ウェルグァンダルの料理鳥とそっくりだから、思わずイーアは『クーちゃん?』とたずねてしまったけれど、よく見ると、クーちゃんとはちょっと違う。
見知らぬククックーは言った。
『クーチャン? だれだそれ。おれ様の名はククディだい。さぁ、食材をだせ。おれ様のレストランのお代は食材だ』
『レストラン? えーっと、今、食材はなくて、じゃなくて、食べてるばあいじゃなくて……』
イーアがとまどいながら返事をすると、ククックーのククディは怒ったような鳴き声をあげて翼をバタバタさせた。
『あんだとぉ! おれ様の料理が食えねぇだとぉ!?』
『そうじゃなくて、今、いそがしくて……』
『おれ様の料理が食えねぇほど忙しいことなんてこの世にありゃしねぇ! 急いでるなら、早く食え。とっとと、そこに座りやがれ! お代はツケでいい。食わないなんて言ったことを後悔させてやる!』
ククックーは興奮してバタバタ翼を動かしながら、叫んでいた。
しかたがないので、イーアは近くにあった椅子みたいな石に座った。
のんびりご飯なんて食べている場合ではないけれど、断るとククディに襲われそうだ。『料理鳥ククックー』の料理へのこだわりは半端なく、時には料理をめぐって殺し合いすら起こる、と霊鳥図鑑にのっているほどなのだ。
ククディが料理を作っている間、イーアは壁にあいた大穴を見ながらつぶやいた。
『遺跡に穴があいて、そこにククックーがレストランを開いちゃったんだね。おしゃれなレストランだけど……』
『こんなとこに食いにくるやつ、いるのか?』とティトがテーブルにあごをのせて言った。
『カンラビ族の聖域だから、人間はこないよね。精霊さんが来るのかな。オーロガロンとか?』
でも、オーロガロンの体の大きさじゃ、このレストランには入れそうにない。たぶん、この聖域に住んでいる別の精霊たちが来るのだろう。
カゲがテーブルにひじをついてしょんぼりと言った。
『困りましたねぇ。どうやら、この神殿はすっかり壊れちゃっているみたいです。誰かが神殿の壁を破壊したんでしょう。ちょっとやそっとじゃ壊れないはずなんですが。<昔日見の手鏡>はもう奪われてしまっているかもしれませんねぇ』
『<昔日見の手鏡>? それが、わたしたちが探してる道具の名前? どんな見た目?』
イーアがたずねると、カゲは説明した。
『見た目は、一見、ただの手鏡です。決まった言葉をいわないと過去を見ることはできませんから、価値を知らないひとにとってはただの手鏡でしょうねぇ』
『へぇ。手鏡……』
イーアは壁に飾られている手鏡を指さして、たずねた。
『あんな感じ?』
『そうです、そうです。あんな感じの手鏡です』
ククディが大皿をいくつももってやってきた。
『ほらよ。超特急でつくってやったぜ。まずは、のうさぎのステーキ、ゴロールの実ソースかけ。こっちは白身魚のフライとサパサパの葉いため……』
料理の説明をするククディに、イーアはたずねた。
『ククディ、あの手鏡って……』
『おう。あれはおれ様のハンサムな顔をうつすのにぴったりな鏡だ。この廃墟でみつけたんだぜ』
『ちょっと借りていい?』
『だめとはいえねぇな。レディーには』
『ありがとう』
イーアは手鏡をとってきてカゲに見せた。
『これ、まさかさすがに、<昔日見の手鏡>だったりはしないよね?』
『ためしてみましょう』
そう言って、カゲは呪文らしきものを唱えた。
<昔日見の手鏡や。こしかたを知らんとせし者が声にこたへたまへ。五千日前の昔日を見せよ>
とたんに、手鏡の鏡の部分が波打ち、そして、鏡の中にはイーアの顔でも、テーブルに並んだ料理でもなく、切り出された大石でできた遺跡の中の様子が映し出された。
『え……?』
とまどうイーアに、カゲは言った。
『昔日見の手鏡を通してみると、過去の様子が見えるんですよ。今は5000日前、つまり、13年以上前の様子を見せるように言いました』
イーアが壁にあいた大穴の方へ手鏡を動かすと、そこには石の壁が見えた。どの方向に動かしても、手鏡の中にはレストランの様子は映らず、うす暗い遺跡の中の様子だけが映し出される。
『これだよ! ククディ!』
イーアは興奮して話しかけたけど、ククディは翼で腕組みして言った。
『おいおい。おまえら猫舌かぁ? 早く食わねぇと、おれ様の絶品料理がさめちまうぞ』
『じゃ、食べるか』と言って、ティトがウサギの肉にかぶりついた。ククディが怒りそうなので、イーアも先に食べることにした。
『とりあえず、食べよっか……おいしー! クーちゃんの料理もおいしいけど、ククディの料理も、とってもおいしい!』
イーアは一口食べて感激して叫んだ。でも、ククディは、よろこぶどころか不機嫌になった。
『あーん? おれの料理もだとぉ? モってなんだ! おれ様の方が上だろ。おい、もっとちゃんと食べて味わえ!』
おいしくて、とまらないので、イーアは言われなくてもどんどん食べていた。手鏡のことがすごく気になるけれど、それでもとまらないくらいに、ククディの料理はおいしかった。
ティトが言った。
『あの鳥の料理とごかくのうまさだな』
『だよね。クーちゃんの料理ほどおいしい料理はこの世にないって思ってたけど、互角だよね』
イーアが思わずティトに同意すると、ククディはバタバタ暴れながら叫んだ。
『互角だとぉ! そのクーチャンってのは、どこのどいつだ!』
『クーちゃんは、ウェルグァンダルの塔の料理鳥だよ』
『そいつも料理鳥だとぉ? 負けてられるか! 勝つのになにが足りない? 食材の鮮度か? 調味料か? 急いでるっつーから、ありあわせのもので作っちまったからなぁ』
ククディは翼をバタバタさせて悔しがっている。
イーアは食べ終わったので、手鏡を手に取って、ククディにたずねた。
『あの、それより、ククディ。この手鏡がほしいんだけど、どうしたら、ゆずってもらえる?』
『んなもん、くれてやる! それよりウェルグァンダルってのの場所を教えやがれ。おれ様が直接クーチャンって野郎と料理勝負してやる!』
『くれるの!? ありがとう! ウェルグァンダルの塔はアグラシアにあるから、かなり遠いけど、わたしと召喚契約をしてくれれば呼べるよ。だけど、ただでご飯たべさせてもらって、手鏡ももらっちゃって、なんか申し訳ないね……』
食べ終わったティトが満足そうに舌で口のまわりをなめながらあくびをした。
『魔道具探しは意外と簡単に終わったな。さっきの白装束は、今頃、遺跡の中でむだにトラップと格闘してるのか?』
そこで、カゲが首をかしげながら言った。
『それなんですが。なにかひっかかってるんですよねぇ。えぇ。私の記憶によると、何かもうひとつこの神殿には役割が……あ、そうだ。思い出した。思い出しましたよ。入り口です。入り口なんですよ。ここはあの島への』
『入り口? どういうこと?』
『ここの地下から、あの島へと行けるんです。あの島は古水竜に守られている上に、険しい崖と霊草霊樹に守られているので、祭壇がある場所に海上、空から行くのは大変なんです。だから、ここから行かないと』
それを聞いて、イーアはとつぜん心臓をつかまれたみたいな気分になった。
『祭壇……。カゲ、その祭壇って、支配者の石板の欠片を置いてある祭壇じゃないよね?』
『そうです。それなんです。ここは石板の欠片の隠し場所への入り口なんです。あー、すっかり思い出しましたよ。すっきりしました』
カゲは思い出せてうれしそうだけど、イーアは急にいやしのレストランから戦場に戻ったような気分になっていた。
『じゃあ、白装束のねらいは、この手鏡じゃなくて、やっぱり石板の欠片?』
遺跡の隠し扉がある場所はほかの部分と同じようにツタに覆われた壁にしか見えない。
だけど、カゲがなにか呪文のようなものを唱えると、その石の壁が消えた。
カゲは『さぁいきましょう』とツタの間にひょろりとすべり込み、そのまま歩いて行った。
イーアはツタと草をかきわけ中に入りながら思った。
カゲの呪文は、精霊語ではなかった。むしろ魔導語みたいに聞こえた。
『カゲって、魔導士なの?』
『魔導士? さぁ、記憶がないのでわかりません。でも、イーアさんがそういうなら、そうだったのかもしれませんねぇ』
でも、精霊が魔導士になったケースなんて、イーアは聞いたことがない。
遺跡の中は暗かったので、イーアはラプラプを呼んで、通路を照らしだしてもらった。
大きな切り出された石でできた狭い通路がずっと続いている。
イーアはちょうどそのまま通れるけれど、背の高い人だったら頭がぶつかりそうな、狭い通路だった。しかも、所々、崩れている。
歩きながらティトが鼻を鳴らし文句を言った。
『この遺跡、崩壊したりしないだろうな。生き埋めはごめんだぞ』
しばらく進んだところで、道は終わった。岩が崩れてその先をふさいでしまっている。
『おやまぁ。こまりました。これでは、進めませんよ』
カゲは困ったようすでうろうろしている。イーアは『友契の書』を手にとり言った。
『だいじょうぶ、だと思う。グモーチ、ここを掘って』
イーアはグランドールの地下に住んでいる巨大なモグラみたいな霊獣を呼んだ。おでこのところに王冠みたいな模様があるから、グモーチは『掘削の王獣』という異名で呼ばれている。
グモーチの巨大な手には尖った鋼鉄のような長い爪がはえていて、その爪の先端部分は高熱を発することもできるらしい。グモーチはとにかく穴を掘るのが得意で、やわらかい地面じゃなくても、硬い岩盤でも、どんどん掘ってしまう。
グモーチはあっという間に、遺跡の崩れた岩を掘って通り道を作った。
『ありがとう、グモーチ』
イーアがお礼を言うと、グモーチは大きな手を振って、消えていった。
イーア達がさらに少し進むと、上にあがる石の階段があった。
上の方から空気が流れこんでくる。光も見える。
イーアはラプラプを帰すと、警戒しながら階段をあがっていった。
階段の先には予想もしなかった驚きの光景が広がっていた。
そこには、いくつかテーブルが置かれていて岩がイスのように配置されていた。
棚の上では小鳥が上機嫌に歌っていて、壁には草や花や雑貨が飾られていた。
なんだかおしゃれで平和そうな空間だ。
壁にあいた大穴から外の光が差しこんでいて、密林の新鮮な空気が流れこんでくるから、ここにいるだけで癒される。
『いやはや。私の記憶にまったくない場所にでてきてしまいましたよ?』
カゲが首をかしげながらつぶやいた時、イーア達は突然声をかけられた。
『らっしゃーい。3名さま?』
『ク、クーちゃん?』
そこにはエプロンをつけた白い大きな霊鳥、『料理鳥ククックー』が立っていた。ウェルグァンダルの料理鳥とそっくりだから、思わずイーアは『クーちゃん?』とたずねてしまったけれど、よく見ると、クーちゃんとはちょっと違う。
見知らぬククックーは言った。
『クーチャン? だれだそれ。おれ様の名はククディだい。さぁ、食材をだせ。おれ様のレストランのお代は食材だ』
『レストラン? えーっと、今、食材はなくて、じゃなくて、食べてるばあいじゃなくて……』
イーアがとまどいながら返事をすると、ククックーのククディは怒ったような鳴き声をあげて翼をバタバタさせた。
『あんだとぉ! おれ様の料理が食えねぇだとぉ!?』
『そうじゃなくて、今、いそがしくて……』
『おれ様の料理が食えねぇほど忙しいことなんてこの世にありゃしねぇ! 急いでるなら、早く食え。とっとと、そこに座りやがれ! お代はツケでいい。食わないなんて言ったことを後悔させてやる!』
ククックーは興奮してバタバタ翼を動かしながら、叫んでいた。
しかたがないので、イーアは近くにあった椅子みたいな石に座った。
のんびりご飯なんて食べている場合ではないけれど、断るとククディに襲われそうだ。『料理鳥ククックー』の料理へのこだわりは半端なく、時には料理をめぐって殺し合いすら起こる、と霊鳥図鑑にのっているほどなのだ。
ククディが料理を作っている間、イーアは壁にあいた大穴を見ながらつぶやいた。
『遺跡に穴があいて、そこにククックーがレストランを開いちゃったんだね。おしゃれなレストランだけど……』
『こんなとこに食いにくるやつ、いるのか?』とティトがテーブルにあごをのせて言った。
『カンラビ族の聖域だから、人間はこないよね。精霊さんが来るのかな。オーロガロンとか?』
でも、オーロガロンの体の大きさじゃ、このレストランには入れそうにない。たぶん、この聖域に住んでいる別の精霊たちが来るのだろう。
カゲがテーブルにひじをついてしょんぼりと言った。
『困りましたねぇ。どうやら、この神殿はすっかり壊れちゃっているみたいです。誰かが神殿の壁を破壊したんでしょう。ちょっとやそっとじゃ壊れないはずなんですが。<昔日見の手鏡>はもう奪われてしまっているかもしれませんねぇ』
『<昔日見の手鏡>? それが、わたしたちが探してる道具の名前? どんな見た目?』
イーアがたずねると、カゲは説明した。
『見た目は、一見、ただの手鏡です。決まった言葉をいわないと過去を見ることはできませんから、価値を知らないひとにとってはただの手鏡でしょうねぇ』
『へぇ。手鏡……』
イーアは壁に飾られている手鏡を指さして、たずねた。
『あんな感じ?』
『そうです、そうです。あんな感じの手鏡です』
ククディが大皿をいくつももってやってきた。
『ほらよ。超特急でつくってやったぜ。まずは、のうさぎのステーキ、ゴロールの実ソースかけ。こっちは白身魚のフライとサパサパの葉いため……』
料理の説明をするククディに、イーアはたずねた。
『ククディ、あの手鏡って……』
『おう。あれはおれ様のハンサムな顔をうつすのにぴったりな鏡だ。この廃墟でみつけたんだぜ』
『ちょっと借りていい?』
『だめとはいえねぇな。レディーには』
『ありがとう』
イーアは手鏡をとってきてカゲに見せた。
『これ、まさかさすがに、<昔日見の手鏡>だったりはしないよね?』
『ためしてみましょう』
そう言って、カゲは呪文らしきものを唱えた。
<昔日見の手鏡や。こしかたを知らんとせし者が声にこたへたまへ。五千日前の昔日を見せよ>
とたんに、手鏡の鏡の部分が波打ち、そして、鏡の中にはイーアの顔でも、テーブルに並んだ料理でもなく、切り出された大石でできた遺跡の中の様子が映し出された。
『え……?』
とまどうイーアに、カゲは言った。
『昔日見の手鏡を通してみると、過去の様子が見えるんですよ。今は5000日前、つまり、13年以上前の様子を見せるように言いました』
イーアが壁にあいた大穴の方へ手鏡を動かすと、そこには石の壁が見えた。どの方向に動かしても、手鏡の中にはレストランの様子は映らず、うす暗い遺跡の中の様子だけが映し出される。
『これだよ! ククディ!』
イーアは興奮して話しかけたけど、ククディは翼で腕組みして言った。
『おいおい。おまえら猫舌かぁ? 早く食わねぇと、おれ様の絶品料理がさめちまうぞ』
『じゃ、食べるか』と言って、ティトがウサギの肉にかぶりついた。ククディが怒りそうなので、イーアも先に食べることにした。
『とりあえず、食べよっか……おいしー! クーちゃんの料理もおいしいけど、ククディの料理も、とってもおいしい!』
イーアは一口食べて感激して叫んだ。でも、ククディは、よろこぶどころか不機嫌になった。
『あーん? おれの料理もだとぉ? モってなんだ! おれ様の方が上だろ。おい、もっとちゃんと食べて味わえ!』
おいしくて、とまらないので、イーアは言われなくてもどんどん食べていた。手鏡のことがすごく気になるけれど、それでもとまらないくらいに、ククディの料理はおいしかった。
ティトが言った。
『あの鳥の料理とごかくのうまさだな』
『だよね。クーちゃんの料理ほどおいしい料理はこの世にないって思ってたけど、互角だよね』
イーアが思わずティトに同意すると、ククディはバタバタ暴れながら叫んだ。
『互角だとぉ! そのクーチャンってのは、どこのどいつだ!』
『クーちゃんは、ウェルグァンダルの塔の料理鳥だよ』
『そいつも料理鳥だとぉ? 負けてられるか! 勝つのになにが足りない? 食材の鮮度か? 調味料か? 急いでるっつーから、ありあわせのもので作っちまったからなぁ』
ククディは翼をバタバタさせて悔しがっている。
イーアは食べ終わったので、手鏡を手に取って、ククディにたずねた。
『あの、それより、ククディ。この手鏡がほしいんだけど、どうしたら、ゆずってもらえる?』
『んなもん、くれてやる! それよりウェルグァンダルってのの場所を教えやがれ。おれ様が直接クーチャンって野郎と料理勝負してやる!』
『くれるの!? ありがとう! ウェルグァンダルの塔はアグラシアにあるから、かなり遠いけど、わたしと召喚契約をしてくれれば呼べるよ。だけど、ただでご飯たべさせてもらって、手鏡ももらっちゃって、なんか申し訳ないね……』
食べ終わったティトが満足そうに舌で口のまわりをなめながらあくびをした。
『魔道具探しは意外と簡単に終わったな。さっきの白装束は、今頃、遺跡の中でむだにトラップと格闘してるのか?』
そこで、カゲが首をかしげながら言った。
『それなんですが。なにかひっかかってるんですよねぇ。えぇ。私の記憶によると、何かもうひとつこの神殿には役割が……あ、そうだ。思い出した。思い出しましたよ。入り口です。入り口なんですよ。ここはあの島への』
『入り口? どういうこと?』
『ここの地下から、あの島へと行けるんです。あの島は古水竜に守られている上に、険しい崖と霊草霊樹に守られているので、祭壇がある場所に海上、空から行くのは大変なんです。だから、ここから行かないと』
それを聞いて、イーアはとつぜん心臓をつかまれたみたいな気分になった。
『祭壇……。カゲ、その祭壇って、支配者の石板の欠片を置いてある祭壇じゃないよね?』
『そうです。それなんです。ここは石板の欠片の隠し場所への入り口なんです。あー、すっかり思い出しましたよ。すっきりしました』
カゲは思い出せてうれしそうだけど、イーアは急にいやしのレストランから戦場に戻ったような気分になっていた。
『じゃあ、白装束のねらいは、この手鏡じゃなくて、やっぱり石板の欠片?』
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる