もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第2部 バララセ東部 ~密林の巨鳥と水竜の島

第103話 水竜の守る島

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 やがて、サンゴ礁でできた島らしきものが見えてきた。
 海の中に壁のようにそびえる島には大きな穴があいていて、イーア達をのせた透明な球はその海中洞窟の中へと進んで行った。そして、しばらく真っ暗な洞窟の中を進んだ後で上昇をはじめ、水の上へとでた。

 そこは、池のただ中だった。エメラルドグリーンの水面の向こうに緑が茂るのが見える。
 イーア達をのせた透明な球はエメラルドグリーンの美しい池を、ほとりへむかって滑るように進んでいき、陸地にあがったところで、突然、消えてしまった。

『なくなっちゃった……』

 さっきまでは押してもびくともしなかったのに、透明な球体は雲散霧消して今はどこにもなかった。
 イーアは周囲を観察した。
 池のまわりには緑が茂り、その周囲を囲むように、そびえたつ崖が見える。島の上空には飛びかうオーロガロンの姿が見えた。
 普通に海を渡ってきたとしたら、あの崖の向こう側につくことになる。あの崖を超えてここにやってくるのはかなりむずかしいだろう。
 カゲが言っていた通り、ここへ来るためには、あの遺跡の仕掛けを使わないといけないようだ。

 池の周りにはグネグネとした植物がたくさん生えていて、黄色いトゲトゲした大きな果物があちこちになっていた。
 イーアはカゲが言っていたもうひとつのこと、この島は霊草霊樹に守られている、ということを思い出した。
 たぶん、あのグネグネした植物はただの植物ではなく、精霊の一種だろう。

(ここから、どこへむかえばいいんだろ……)

 イーアはカゲを召喚した。すぐに、どこからどう見てもただの人型の影にしか見えないカゲがあらわれてうれしそうに言った。

『はいはーい。無事に島につけましたね』

『カゲ、ここからどこへ行けばいいの?』

『この池は入り口の池ですよね?』

 イーアは首をかしげた。

『入り口の池? さっきの乗り物がついたところだよ』

『それが入り口の池です。この島には、こんな風にきれいな色の池がふたつあるんです。本当に美しい島ですよねぇ』

『うん。きれいだね。怖いぐらいに』

 ここは精霊の気配の濃い場所、つまり人間から見れば、異界に近い場所だ。
 だけど、この島の風景は、そういう場所に慣れているイーアですら、どこか恐ろしさを感じるほど美しかった。

『もうひとつの池にむかえばいいの?』

 イーアがたずねると、カゲは自信なさげにこたえた。

『えぇ、たぶん。もう一つの池の中です。おそらく』

『もうひとつの池は、この先だよね。どうしよっか』

 イーアはびっしりとぶあつい絨毯じゅうたんのように密集して地表を覆う植物をみやった。
 ロロロがおびえたような声で言った。

『あのトゲトゲした黄色い果物には近づいちゃだめだ。あれはテリトベラの実っていって、爆発してトゲをとばすんだ。トゲだらけにされちゃうぞ』

 それだけじゃない。イーアはつぶやくようにたずねた。

『実だけじゃなくて、この植物、グネグネ動いてるよね?』

 ロロロはふるえながら説明した。

『そうなんだ。テリトベラのあの茎にからみつかれると、動けなくされちゃうんだ。茎は頑丈なうえに、しびれる毒がでる小さなトゲがたくさんついてんだ。だから、一度テリトベラにつかまると、餓死するまで動けなくされて、そのままテリトベラの養分にされちゃうんだ』

 よく見れば、テリトベラのグネグネした茎のところどころに、白骨のようなものがひっかかっているのが見える。あれはテリトベラの獲物のなれの果てだろう。

『どうすればいい? 空を飛べばだいじょうぶかな?』

 イーアがたずねると、ロロロが勢いよく頭を左右に振った。

『だめだ! テリトベラは、上にあるものにむかってツルをのばす習性があるんだ。近くを飛んでる鳥だってつかまえちゃうんだ。だから、上はぜったいにだめだ』

 ロロロの言葉を聞きながら、カゲがうなずいていた。

『そうそう、そうなんですよねぇ。だから、ここは、島の上からくると大変な目にあうんですよ』

 そこでロロロは言った。

『でも、じつはテリトベラは下にあるものには反応しないから、テリトベラの下を通過すればいいんだ』

『下……?』

 テリトベラの下、といっても、テリトベラは密集してあたり一面に生えているので、通過できる場所はなさそうだ。
 でも、よく見ると、たまに下の方に、数十センチくらいの高さの隙間すきまがあいているところがあった。ロロロなら、あのすきまを通れるだろう。
 イーアも、地面に身を伏せて這っていけば、なんとか通れるかもしれない。

『わかった。わたしは這って進むよ』

『おれは通れそうにないな。向こうについたら呼んでくれ』

 そう言って、ティトはあきらめたように池のほとりに寝そべった。

『おれっちが先に行って池につながるルートを探してくる! しばらく待っててくれろ』

 ロロロはひとり、グネグネしたテリトベラの根元のすきまの中へと走って行った。
 しばらくして、ロロロが帰ってきた。

『見つけたぞ。こっちだ!』

 イーアはロロロの後についてテリトベラの茂みの下を這っていった。
 背中のすぐ上をテリトベラの太い茎がグネグネと動いていて、そのまま体をテリトベラにつかまれてしまうんじゃないかとイーアは不安になった。
 だけど、ときたま頭や背中を押されるだけで、テリトベラはイーアを捕獲しようとはしなかった。

 テリトベラの下にある隙間は狭く、進むのはとても大変だった。だから、すごく長く感じたけれど、やがて、イーアはテリトベラの茂みの外に出た。
 念のためさらにしばらくほふく前進してから、イーアは立ち上がった。
 イーアの手も顔も服もすっかり泥だらけだ。服についた土を手でたたいて落としながら、イーアは目の前に広がる池を見た。

 こちらもエメラルドグリーンの美しい池だった。池の中はよく見えないけれど、とても深そうだ。
 祭壇はこの池の中だとして、どうやってみつけるのかわからない。

(池の中に入って泳いで探すしかないかな? うーん。わからないから、もういちどカゲにたずねよう)

 そうイーアが思った時、突然、池の水面が大きく動いた。
 盛り上がった水が滝のように流れていき、そこに首の長い巨大なドラゴンがあらわれた。
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