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第2部 バララセ東部 ~密林の巨鳥と水竜の島
第105話 オッペンの戦い2
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トラップの設置を行っていたオッペン達が警報を聞いて村に戻った時には、すでに白装束の魔導師たちがランと逃げ遅れた村人を人質に取った後だった。
コサはすぐにでも飛びこんでいきそうだったが、他の男たちがコサをつかんで離さなかった。
人質がいる今は、どうしようもない。捕まった人たちはすきを見て救出することに決め、一度ジャングルの中へ身をひそめることになった。
オッペンがモイオとともに、つる草で覆い隠された木の上の偵察場から村のようすを観察していると、しばらくして、帝国の囚人兵と奴隷兵が村に到着した。
数はおそらく半減していて、あきらかに負傷している者もいる。
モイオは小声で言った。
「よくやった。アグラシアの巫術師。囮なしでもトラップがきいた。おまえの力だ」
「おう。でもよ、村の中の敵がふえちまったぞ? ますます人質を助けるのがむずかしくなるぜ?」
「問題ない。帝国軍が兵士に使う薬。あの薬は効果がきれると、ほとんど動けなくなる。正気に戻った奴隷兵は仲間にできる。それに……」
モイオは何かをよく聞こうとするように頭を動かした。かすかに動物の鳴き声が聞こえるほかは、オッペンの耳には何も聞こえない。だけど、モイオは何かのメッセージを聞き取っているようだった。
「援軍が来る」
「援軍?」
「解放軍に加わっていたカンラビの戦士たちが帰ってくる」
カンラビ族の若者たちは、解放軍に加わって密林近くの戦場で帝国軍との戦闘を続けていた。
しかし、カンラビの村がおそわれたという報せを知り、村を守るために戻ってきたのだ。
トラップ設置に同行していた片腕の動かない男が解放軍の戦士たちを迎えにいき、じきに彼らが合流した。
オッペンはそれまでに、父のゾーンから魔導銃剣の使い方を習っていた。
とはいえ、オッペンはそもそも剣術を習ったことはなく、チャンバラ遊びしかしたことがない。
ゾーンは言った。
「この魔導銃剣は壊れかけのガラクタだ。魔法は、雷撃を一発撃ったら終わりだ。そのあとはただの切れ味の悪い剣になる。いいか。本職の戦士のように戦おうとは思うな。訓練も受けてない奴が一朝一夕で戦えるもんじゃねぇ。だいたい初陣なんてのは、仲間の足ひっぱらずに生きて帰れれば上出来なんだ。少しでも役に立とうと思うなら、敵の目をあざむいて、すきをつくことを考えろ」
以前のオッペンだったら、そんなことを言われても、「いんや。おれが敵の大将を討ち取ってやる!」と言って、何も考えずに突っこんでいっただろう。だけど、今はちがった。
(おれにできることはなんだ?)
オッペンは剣をしまい、冷静に考えながら、ダウジングロッドを取り出して見つめた。
(いや、戦場でこんなもん、もってらんねぇ。これで両手がふさがっちまったらどうしようもねぇ)
オッペンがダウジングロッドをしまおうとしていると、モイオがオッペンに人質の位置を占うように言った。
オッペンはランの捕まっている場所をダウジングロッドで探った。だいたいの方角はわかった。でも、詳しいことはわからない。
(本当の占術士だったら、人質がどの家にいるとか全部わかんのか?)
シャヒーン先生レベルの平凡な占術士では不可能だろう。でも、オッペンは自分ならできそうな気がした。ちゃんとした訓練をうけてさえいれば。
そもそも、オッペンが本物の占術士であれば、カンラビの村への襲撃だって予知できていたかもしれない。そうすれば、誰も犠牲にならずに済んだ。
考えこむオッペンにモイオがたずねた。
「どうした?」
「なんでもねぇ。おれはほんとに何も知らないバカだったって、気づいただけだ」
攻撃魔法でバーンと吹き飛ばすだけが戦いだと思っていた自分が本当に子どもに思えてくる。
帝国軍が何をしているのか何も知らないで、正義の軍隊だと信じていた自分にもあきれてくる。
だけどモイオは言った。
「気づいた者はもうバカじゃない。愚かさを知って人は賢くなる。俺たちは広場で兵士と戦う。おまえは、コサとふたりで人質を探せ。戦士たちが敵の気を引いているうちに、人質を逃がせ」
「おう。まかせろ」
「それと、コサが、お前にこれを貸すと言っている」
そう言って、モイオが差し出したのは、コサがいつもつけていた、小動物の骨でできた首飾りだった。
「巫師の首飾り。コサの親が残したものだ」
「親の形見? なんでそんな大切なもんを」
「巫師の力を強めるといわれている。お前が持つ方が役に立つ、とコサが言っている。戦いが終わったらコサに返せ」
「おう。ぜったいに返す」
オッペンは首飾りを受け取って装着した。
やがて、村をうばいかえすための戦いの時がやってきた。
カンラビの戦士たちが村になだれこみ、戦いの火ぶたが切って落とされた。
オッペンとコサは別の場所から、こっそりと村に侵入し、人質のいる方角へむかった。
途中で、鎖につながれた奴隷兵たちが死んでいるのを見つけた。
(ひでぇ。味方の兵士にこんな……。人間のすることかよ)
オッペンが死んだ兵士たちを見つめている間に、コサは速やかに移動して、村で一番大きい家の影からオッペンを手招きしていた。
オッペンはうなずき、なるべく足音をたてないように、身をひくくして、その家の影へと小走りに移動した。
木の壁をへだてた向こう側から人の気配がする。声が聞こえた。
「ジグモ様。蛮族が襲来しました。囚人兵どもは役に立っておりませんが、ジグモ様が奴隷どもの魂を生贄にお作りになられたゴーレム兵が防戦しております」
「無能な囚人どもが。奴隷人種相手にすら後れをとるとは。ゴモル、巫女を連れてついてこい。ライン、他の人質、襲撃者、すべてひとり残らず殺せ。それが終われば残った囚人兵もだ」
「はっ。おまかせください。帝国にあだなす醜い害虫どもは私が一人残らず駆除して見せましょう」
「行くぞ、ゴモル」
ドアが開く音がして、白装束の男が家からでてきた。その後ろを、白装束の大男がランを抱えて歩いていく。
弓を構えて、コサが動いた。
コサはすぐにでも飛びこんでいきそうだったが、他の男たちがコサをつかんで離さなかった。
人質がいる今は、どうしようもない。捕まった人たちはすきを見て救出することに決め、一度ジャングルの中へ身をひそめることになった。
オッペンがモイオとともに、つる草で覆い隠された木の上の偵察場から村のようすを観察していると、しばらくして、帝国の囚人兵と奴隷兵が村に到着した。
数はおそらく半減していて、あきらかに負傷している者もいる。
モイオは小声で言った。
「よくやった。アグラシアの巫術師。囮なしでもトラップがきいた。おまえの力だ」
「おう。でもよ、村の中の敵がふえちまったぞ? ますます人質を助けるのがむずかしくなるぜ?」
「問題ない。帝国軍が兵士に使う薬。あの薬は効果がきれると、ほとんど動けなくなる。正気に戻った奴隷兵は仲間にできる。それに……」
モイオは何かをよく聞こうとするように頭を動かした。かすかに動物の鳴き声が聞こえるほかは、オッペンの耳には何も聞こえない。だけど、モイオは何かのメッセージを聞き取っているようだった。
「援軍が来る」
「援軍?」
「解放軍に加わっていたカンラビの戦士たちが帰ってくる」
カンラビ族の若者たちは、解放軍に加わって密林近くの戦場で帝国軍との戦闘を続けていた。
しかし、カンラビの村がおそわれたという報せを知り、村を守るために戻ってきたのだ。
トラップ設置に同行していた片腕の動かない男が解放軍の戦士たちを迎えにいき、じきに彼らが合流した。
オッペンはそれまでに、父のゾーンから魔導銃剣の使い方を習っていた。
とはいえ、オッペンはそもそも剣術を習ったことはなく、チャンバラ遊びしかしたことがない。
ゾーンは言った。
「この魔導銃剣は壊れかけのガラクタだ。魔法は、雷撃を一発撃ったら終わりだ。そのあとはただの切れ味の悪い剣になる。いいか。本職の戦士のように戦おうとは思うな。訓練も受けてない奴が一朝一夕で戦えるもんじゃねぇ。だいたい初陣なんてのは、仲間の足ひっぱらずに生きて帰れれば上出来なんだ。少しでも役に立とうと思うなら、敵の目をあざむいて、すきをつくことを考えろ」
以前のオッペンだったら、そんなことを言われても、「いんや。おれが敵の大将を討ち取ってやる!」と言って、何も考えずに突っこんでいっただろう。だけど、今はちがった。
(おれにできることはなんだ?)
オッペンは剣をしまい、冷静に考えながら、ダウジングロッドを取り出して見つめた。
(いや、戦場でこんなもん、もってらんねぇ。これで両手がふさがっちまったらどうしようもねぇ)
オッペンがダウジングロッドをしまおうとしていると、モイオがオッペンに人質の位置を占うように言った。
オッペンはランの捕まっている場所をダウジングロッドで探った。だいたいの方角はわかった。でも、詳しいことはわからない。
(本当の占術士だったら、人質がどの家にいるとか全部わかんのか?)
シャヒーン先生レベルの平凡な占術士では不可能だろう。でも、オッペンは自分ならできそうな気がした。ちゃんとした訓練をうけてさえいれば。
そもそも、オッペンが本物の占術士であれば、カンラビの村への襲撃だって予知できていたかもしれない。そうすれば、誰も犠牲にならずに済んだ。
考えこむオッペンにモイオがたずねた。
「どうした?」
「なんでもねぇ。おれはほんとに何も知らないバカだったって、気づいただけだ」
攻撃魔法でバーンと吹き飛ばすだけが戦いだと思っていた自分が本当に子どもに思えてくる。
帝国軍が何をしているのか何も知らないで、正義の軍隊だと信じていた自分にもあきれてくる。
だけどモイオは言った。
「気づいた者はもうバカじゃない。愚かさを知って人は賢くなる。俺たちは広場で兵士と戦う。おまえは、コサとふたりで人質を探せ。戦士たちが敵の気を引いているうちに、人質を逃がせ」
「おう。まかせろ」
「それと、コサが、お前にこれを貸すと言っている」
そう言って、モイオが差し出したのは、コサがいつもつけていた、小動物の骨でできた首飾りだった。
「巫師の首飾り。コサの親が残したものだ」
「親の形見? なんでそんな大切なもんを」
「巫師の力を強めるといわれている。お前が持つ方が役に立つ、とコサが言っている。戦いが終わったらコサに返せ」
「おう。ぜったいに返す」
オッペンは首飾りを受け取って装着した。
やがて、村をうばいかえすための戦いの時がやってきた。
カンラビの戦士たちが村になだれこみ、戦いの火ぶたが切って落とされた。
オッペンとコサは別の場所から、こっそりと村に侵入し、人質のいる方角へむかった。
途中で、鎖につながれた奴隷兵たちが死んでいるのを見つけた。
(ひでぇ。味方の兵士にこんな……。人間のすることかよ)
オッペンが死んだ兵士たちを見つめている間に、コサは速やかに移動して、村で一番大きい家の影からオッペンを手招きしていた。
オッペンはうなずき、なるべく足音をたてないように、身をひくくして、その家の影へと小走りに移動した。
木の壁をへだてた向こう側から人の気配がする。声が聞こえた。
「ジグモ様。蛮族が襲来しました。囚人兵どもは役に立っておりませんが、ジグモ様が奴隷どもの魂を生贄にお作りになられたゴーレム兵が防戦しております」
「無能な囚人どもが。奴隷人種相手にすら後れをとるとは。ゴモル、巫女を連れてついてこい。ライン、他の人質、襲撃者、すべてひとり残らず殺せ。それが終われば残った囚人兵もだ」
「はっ。おまかせください。帝国にあだなす醜い害虫どもは私が一人残らず駆除して見せましょう」
「行くぞ、ゴモル」
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弓を構えて、コサが動いた。
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