もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
108 / 207
第2部 バララセ東部 ~密林の巨鳥と水竜の島

第108話 白装束の魔導士との戦い2

しおりを挟む
 白装束の魔道士がこのまま何もしないとは思えなかった。
 解放されたランがこちらにむかって走ってくる中、イーアはオッペンに「ランといっしょに逃げて。ジャングルの中へ」と指示をだした。

 そして、イーアは白装束の魔導士の方へとゆっくり数歩近づいた。オッペンとランが逃げる時間をつくるためにあえてゆっくりと。
 白装束の魔導士が再び手を伸ばした。

「さぁ、早くその石をよこせ」

 イーアは、オッペンとランが密林へと駆けて行く気配を感じながら、うなずいた。

「わかった」
 
 イーアは石板の欠片を、白装束の男の方に放り投げた。
 ほぼ同じ瞬間に、白装束の魔導士は呪文を唱えながら、禍々しい呪符のはられたビンをイーアの方にむかって投げていた。
 どうせ攻撃してくるだろうと予想していたイーアは、投げつけられたビンを走ってよけた。

 地面に落ちたビンからは、禍々しい紫色のドロドロした物体が流れ出て広がり、モンスターのように盛り上がっていく。
 その紫色のドロドロに触れた草は、とたんに枯れて溶けていった。
 広がっていく毒にやられて草原の草がどんどんと枯れて消えていく。

 石板の欠片を拾い手にした<白光>の魔導士は、高笑いをあげた。

「その猛毒はどんどん広がっていくぞ。骨まで溶かされ消えるがいい。愚かな蛮族め!」

 白装束の魔道士がそう叫んだ時、イーアは『今だ!』と精霊語で叫んでいた。
 その瞬間、白装束の魔導士が立つ地面に大きな穴があき、白装束の魔導士は、叫び声だけ残して穴の中へと落ちていった。

 実はイーアは、まだオーロンガロンにのっている時にすでに『掘削の王獣グモーチ』に指示をだしていた。
 あの魔導士たちの足下に深い穴を掘るように。そして、『今だ!』と言ったら、地上にいる白装束の人間を落とし穴に落とすように。
 穴の中には敵を拘束するために巨大な針金のような精霊ドズミリミルと、人を石にしてしまう石サソリ、ついでに猛毒の毛が全身にはえたゲギンピピも召喚しておいた。

 イーアは走って、どんどんと大きくなる猛毒の怪物から逃げながら、『エラスシオ、あの怪物の中心にあるビンを白装束の魔導士に、穴に向かって押し流して』と叫んだ。

『まったく。我を呼ぶには霊力が足りていないぞ』

 そう文句を言いながら、オーロラ色の美しい水竜エラスシオが、上半身だけあらわれた。
 イーアの魔力不足で、エラスシオの首から上しか呼び出せなかった。これが召喚術のテストだったら失敗だけど。

『まぁ、よい。十分だ』

 そう言いながら、エラスシオは激しい水流を一直線に、巨大な紫色の毒の塊の中心に、その中にある呪符のはられたビンに当てた。巨大な毒の塊は、ビンごとグモーチが掘った穴の中、白装束の魔道士の頭の上へと流し落とされた。
 穴の中から、白装束の魔道士が、解呪の呪文らしきものを叫ぶ声が聞こえた。さすがに自分の放った毒で溶かされるほど、敵は間抜けではなさそうだ。

 その間に、イーアはエラスシオの前に呼んでいた大勢のモンペルに指示を出していた。

『モンペル、急いであの穴をふさいで、白装束の魔導士を閉じこめて』

 何もない状態なら、白装束の魔導士は、浮遊魔法で簡単に地上に上がることができるはずだ。
 だけど、ドズミリミルに襲われ、さらに自ら放った猛毒が上から降ってきた中、白装束の魔導士は、モンペルが入り口をふさぐ前に穴から脱出することはできなかった。

 作戦通り。閉じ込めた。
 あとは石サソリの毒で敵が石になるのを待つ。
 イーアは警戒しながら待った。
 簡単にいくとは思っていなかった。
 <白光>の魔導士は、ティロモサの攻撃に対して行ったような身代わりの魔法を使うかもしれない。転移魔法で逃げるかもしれない。あるいは、強力な魔法でモンペルのつくった蓋を破壊するかもしれない。

 モンペルが覆った穴の中から悲鳴と叫び声が聞こえた。「やめろぉ! ケダモノ! 近寄るな!」と。
 それから、悲鳴と痛みに悶えるような唸り声が響き続けた。
 たぶん、白装束の魔導士は、触れると激痛が走る毒のトゲが全身にはえたゲギンピピのフレンドリーな抱擁ほうようを受けたのだろう。
 ただのさみしがりのゲギンピピに全く悪意のないことを知っているイーアは、笑ってしまいそうになるけれど。ゲギンピピの毒は、気を失いそうになるほど痛いし、動けなくなる。

 やがて、穴の中は静かになった。モンペルの蓋はまだ破壊されていない。

『友契の書。ドズミリミル、石サソリ、ゲギンピピは残ってる?』

 イーアがたずねると、『友契の書』は、『ドズミリミル2名、すべて帰還、石サソリは40名召喚したうち、30名帰還しました。ゲギンピピ1名は残っています』と答えた。
 ほとんど倒された。でも、石サソリは全滅していない。意外なことに、ゲギンピピも。

『ってことは……成功?』

 <白光>の魔導士相手に?
 それとも、敵は逃げた? 
 しばらく待ってから、イーアは召喚獣たちを帰還させ、穴の中の様子を確認した。
 穴の中には、銀色の仮面が落ちていた。そして、白装束の魔導士が、絶叫しているような顔のまま、しっかりと石になっていた。

『勝てた……?』

 自力で、<白光>の魔導士相手に。この半年くらいでイーアの魔力は以前より上がり、今はバララセの強力な精霊たちも協力してくれているけれど、それでも信じられなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...