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第2部 バララセ東部 ~密林の巨鳥と水竜の島
第110話 召喚バトル2
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ザヒが呼んだ召喚獣の攻撃は続いた。
豪炎獣パラボードンはまたも炎を噴き出し、さらにワイヒルトが起こした竜巻が襲ってくる。そして、起き上がった鎧の巨兵までがゆっくりとこちらへと進んでくる。
ワイヒルトの竜巻を防いだ時点で、最初に呼んだモンペルの半分以上がすでに消えていた。
もうすぐ、モンペルは限界に達するだろう。
『友契の書』のモンペルのページは暗くなっている。これ以上モンペルは呼べない。
「たしかにモンペルは頑丈な壁だが、それで安全だと思うな」
ザヒがそう言った時、イーアはピンときて、とっさにヤゴンリルを呼んだ。以前、オレンがモンペルの壁を破壊するためにパガンゴを呼んだことをイーアはおぼえていたからだ。
予想は当たり、ザヒは『爆弾炎岩パガンゴ』を呼んだ。
『ヤゴンリル、パガンゴを向こうに投げて!』
『この岩は重たすぎる!』
文句を言いながら、ヤゴンリルは、転がってくるパガンゴを全力でなんとか宙に浮かべ、爆発の直前、鎧の巨兵に投げつけた。
パガンゴの爆発を受けた鎧の巨兵は、ガラガラと崩れ落ちて消えていった。
召喚獣を2体消されたのにも関わらず、ザヒはまたも笑っていた。
「そうだ、それでいい。だが、ヤゴンリル一匹でたりるか?」
とたんに、次々とパガンゴが出現して、イーアの方へと転がってきた。
『あの数では対応しきれん!』
ヤゴンリルが叫んだ。複数のパガンゴが近くで爆発すれば、モンペルも防ぎきれない。
壁ごと、イーアがバラバラに吹き飛ばされる。
逃げるしかない。だけど、どうやって? 誰を呼ぶ?
イーアが迷ったその一瞬、吹き寄せる風がイーアの全身を包んだ。
最初、イーアはワイヒルトの風攻撃にやられたのかと思った。でも、違った。
上空に吹き上げられたイーアは空でやさしくだきかかえられた。
地表では爆弾炎岩パガンゴがすべて吹きとばされ、草原のはずれで爆発して消えていった。
豪炎獣パラボードンは巨大な水の球に包まれ、苦し気にあがきながら、消えていった。
あっという間にザヒの呼んだ召喚獣を消し去った風と水の魔法は、<白光>の魔導士にも劣らない威力だった。
優しい風に包まれ、ゆっくりと空から地表へおりながら、少年はあやまった。
「遅れてごめん、イーア」
「ユウリ? なんで、ここに?」
ユウリの救援をまったく予想していなかったイーアがおどろいてそうたずねると、ユウリはちょっと困惑したように答えた。
「なんでって、イーアを追いかけてきたんだよ」
この時、あたりが暗くなるほど、上空に鳥が集まりだしていた。
精霊の気配が空から濃厚にたちこめている。集まっているのはただの鳥ではなく、霊鳥だ。
普通の鳥程度の大きさのものから、オーロガロンに劣らぬ巨大な霊鳥まで、さまざまな霊鳥がいる。
ある霊鳥は全身に雷をまとっている。またあるものは全身の羽が刃のようだった。
イーアは、時間かせぎが終わったことを知った。
一匹の黒い鳥が、草原を低空飛行しながら、ヤララの声を響かせた。
「ザ、ザヒさん。た、ただちに戦闘を、や、やめてください。ウェルグァンダルの召喚士同士の無許可戦闘は禁止されています。や、やめない場合は、私の霊鳥たちが相手になります」
ザヒが舌打ちをし頭を左右に振った。
「ヤララの遠隔召喚か。まったく。ご塔主様は過保護だな。ベビーシッター付きで任務に派遣とは。まとめて遊んでやってもいいが……。あれは……」
そうつぶやきながらザヒは、たぶん、イーアではなく、ユウリを見ていた。
「邪魔が入りすぎて興ざめだ。まだまだだが、今日のテストは合格としてやろう」
そう言い捨てて、ザヒはワイヒルトとともに瞬時に姿を消した。
ここからが本当の戦いのつもりでいたイーアは、ひょうし抜けしながら、飛んできたケピョンに向かって叫んだ。
『ヤララ、ありがとう!』
『し、仕事だから……でも、結局、私、なにも、してないけど……』
『そんなことないよ。ヤララのおかげでザヒが逃げていったもん。ザヒはおそれをなしたんだよ、きっと』
『え? そ、そんなことないはず。ザヒは……』
『ヤララとユウリと3人でだったら、ザヒに勝ててたかもよ。強そうな霊鳥さんたちだね』
イーアがそう言うと、とたんにヤララはうれしそうな声になった。
『そう! その子たちはバララセにいる霊鳥でね、あの雷をまとっているのが……あぁ、説明したいけど、仕事にもどらなきゃ』
『うん、ありがとう。ヤララ。またね!』
ヤララとの通話を終えて、イーアはほっと息をついた。
どこか遠いところから、叫び声が聞こえた。
「よっしゃー! 完全勝利だぜー!」
『イーア! すごく強かった!』
振り返ると、密林から、オッペンとランとロロロが走ってでてくるのが見えた。
「オッペン! ラン! 逃げてなかったの?」
「イーアを置いて、んな遠くまで行くわけねーだろ。ジャングルの中から見てたんだよ」
そういってから、オッペンはユウリを指さしながら文句を叫んだ。
「おい! 最後のいいとこだけもっていきやがって! 今までなにしてたんだよ!」
ユウリは申し訳なさそうに言った。
「ごめん。トラブルでホーヘンハインから出られなくて、船に乗り遅れちゃったんだ。別の船にのって追いかけてきたんだけど。まさか、イーア、こんなところにいるなんて」
「よく見つけたね」
イーアは、ユウリにはムトカラで召喚士に会う予定だ、とまでしか言っていなかった。
ユウリはため息まじりに説明した。
「ムトカラでンワラデさんに聞いたんだ。イーア達は、ティロモサに襲われて難破して、今はカンラビの密林にいるって。それで、探しまわってたんだけど、帝国と反乱軍の戦場の最前線で、<白光>と戦っているなんて。無茶しすぎだよ。イーアはいつもぼくの想像を超えるけど、今回は、本当に」
ガリにも同じことを言われそうだと思いながら、「だって……」とイーアが言い訳をしかけたところで、オッペンが「しょうがねぇよな! 戦うしかねぇ時があるんだよ!」と元気よく言った。
「だよね。村がおそわれちゃったんだもん。あ、そういえば村は? 村の戦いを見に行かなくちゃ」
イーア達が村に戻った時には、ゴーレム兵はすべて倒され泥に戻っていた。生き残っていたわずかな囚人兵はとっくに戦意を喪失しており、すすんで捕虜になった。
こうして、この日のカンラビの密林の戦いは終わった。
この地に帝国軍がいる限り、またすぐにここは戦場になるだろう。
だけど、ひとまず、平和な夜がやってきた。
豪炎獣パラボードンはまたも炎を噴き出し、さらにワイヒルトが起こした竜巻が襲ってくる。そして、起き上がった鎧の巨兵までがゆっくりとこちらへと進んでくる。
ワイヒルトの竜巻を防いだ時点で、最初に呼んだモンペルの半分以上がすでに消えていた。
もうすぐ、モンペルは限界に達するだろう。
『友契の書』のモンペルのページは暗くなっている。これ以上モンペルは呼べない。
「たしかにモンペルは頑丈な壁だが、それで安全だと思うな」
ザヒがそう言った時、イーアはピンときて、とっさにヤゴンリルを呼んだ。以前、オレンがモンペルの壁を破壊するためにパガンゴを呼んだことをイーアはおぼえていたからだ。
予想は当たり、ザヒは『爆弾炎岩パガンゴ』を呼んだ。
『ヤゴンリル、パガンゴを向こうに投げて!』
『この岩は重たすぎる!』
文句を言いながら、ヤゴンリルは、転がってくるパガンゴを全力でなんとか宙に浮かべ、爆発の直前、鎧の巨兵に投げつけた。
パガンゴの爆発を受けた鎧の巨兵は、ガラガラと崩れ落ちて消えていった。
召喚獣を2体消されたのにも関わらず、ザヒはまたも笑っていた。
「そうだ、それでいい。だが、ヤゴンリル一匹でたりるか?」
とたんに、次々とパガンゴが出現して、イーアの方へと転がってきた。
『あの数では対応しきれん!』
ヤゴンリルが叫んだ。複数のパガンゴが近くで爆発すれば、モンペルも防ぎきれない。
壁ごと、イーアがバラバラに吹き飛ばされる。
逃げるしかない。だけど、どうやって? 誰を呼ぶ?
イーアが迷ったその一瞬、吹き寄せる風がイーアの全身を包んだ。
最初、イーアはワイヒルトの風攻撃にやられたのかと思った。でも、違った。
上空に吹き上げられたイーアは空でやさしくだきかかえられた。
地表では爆弾炎岩パガンゴがすべて吹きとばされ、草原のはずれで爆発して消えていった。
豪炎獣パラボードンは巨大な水の球に包まれ、苦し気にあがきながら、消えていった。
あっという間にザヒの呼んだ召喚獣を消し去った風と水の魔法は、<白光>の魔導士にも劣らない威力だった。
優しい風に包まれ、ゆっくりと空から地表へおりながら、少年はあやまった。
「遅れてごめん、イーア」
「ユウリ? なんで、ここに?」
ユウリの救援をまったく予想していなかったイーアがおどろいてそうたずねると、ユウリはちょっと困惑したように答えた。
「なんでって、イーアを追いかけてきたんだよ」
この時、あたりが暗くなるほど、上空に鳥が集まりだしていた。
精霊の気配が空から濃厚にたちこめている。集まっているのはただの鳥ではなく、霊鳥だ。
普通の鳥程度の大きさのものから、オーロガロンに劣らぬ巨大な霊鳥まで、さまざまな霊鳥がいる。
ある霊鳥は全身に雷をまとっている。またあるものは全身の羽が刃のようだった。
イーアは、時間かせぎが終わったことを知った。
一匹の黒い鳥が、草原を低空飛行しながら、ヤララの声を響かせた。
「ザ、ザヒさん。た、ただちに戦闘を、や、やめてください。ウェルグァンダルの召喚士同士の無許可戦闘は禁止されています。や、やめない場合は、私の霊鳥たちが相手になります」
ザヒが舌打ちをし頭を左右に振った。
「ヤララの遠隔召喚か。まったく。ご塔主様は過保護だな。ベビーシッター付きで任務に派遣とは。まとめて遊んでやってもいいが……。あれは……」
そうつぶやきながらザヒは、たぶん、イーアではなく、ユウリを見ていた。
「邪魔が入りすぎて興ざめだ。まだまだだが、今日のテストは合格としてやろう」
そう言い捨てて、ザヒはワイヒルトとともに瞬時に姿を消した。
ここからが本当の戦いのつもりでいたイーアは、ひょうし抜けしながら、飛んできたケピョンに向かって叫んだ。
『ヤララ、ありがとう!』
『し、仕事だから……でも、結局、私、なにも、してないけど……』
『そんなことないよ。ヤララのおかげでザヒが逃げていったもん。ザヒはおそれをなしたんだよ、きっと』
『え? そ、そんなことないはず。ザヒは……』
『ヤララとユウリと3人でだったら、ザヒに勝ててたかもよ。強そうな霊鳥さんたちだね』
イーアがそう言うと、とたんにヤララはうれしそうな声になった。
『そう! その子たちはバララセにいる霊鳥でね、あの雷をまとっているのが……あぁ、説明したいけど、仕事にもどらなきゃ』
『うん、ありがとう。ヤララ。またね!』
ヤララとの通話を終えて、イーアはほっと息をついた。
どこか遠いところから、叫び声が聞こえた。
「よっしゃー! 完全勝利だぜー!」
『イーア! すごく強かった!』
振り返ると、密林から、オッペンとランとロロロが走ってでてくるのが見えた。
「オッペン! ラン! 逃げてなかったの?」
「イーアを置いて、んな遠くまで行くわけねーだろ。ジャングルの中から見てたんだよ」
そういってから、オッペンはユウリを指さしながら文句を叫んだ。
「おい! 最後のいいとこだけもっていきやがって! 今までなにしてたんだよ!」
ユウリは申し訳なさそうに言った。
「ごめん。トラブルでホーヘンハインから出られなくて、船に乗り遅れちゃったんだ。別の船にのって追いかけてきたんだけど。まさか、イーア、こんなところにいるなんて」
「よく見つけたね」
イーアは、ユウリにはムトカラで召喚士に会う予定だ、とまでしか言っていなかった。
ユウリはため息まじりに説明した。
「ムトカラでンワラデさんに聞いたんだ。イーア達は、ティロモサに襲われて難破して、今はカンラビの密林にいるって。それで、探しまわってたんだけど、帝国と反乱軍の戦場の最前線で、<白光>と戦っているなんて。無茶しすぎだよ。イーアはいつもぼくの想像を超えるけど、今回は、本当に」
ガリにも同じことを言われそうだと思いながら、「だって……」とイーアが言い訳をしかけたところで、オッペンが「しょうがねぇよな! 戦うしかねぇ時があるんだよ!」と元気よく言った。
「だよね。村がおそわれちゃったんだもん。あ、そういえば村は? 村の戦いを見に行かなくちゃ」
イーア達が村に戻った時には、ゴーレム兵はすべて倒され泥に戻っていた。生き残っていたわずかな囚人兵はとっくに戦意を喪失しており、すすんで捕虜になった。
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