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第3部 帝都騒乱 ~魔女の血脈~
第142話 王宮前広場の騒乱
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群衆が広場になだれこんできたとき、イーアは広場に並ぶ冬至祭マーケットのお店の傍にいた。だから、イーアは何が起こっているのかすぐには把握できなかった。
広場を出るように呼びかける警察や警備隊の声は、たくさんの叫び声にかき消され、イーアの耳にはよく聞こえなかった。
(どうしよう……逃げたほうがいいのかな? でも、学校のみんなの様子を見てこようかな)
ラグチェスター校の炊き出しの方へ、イーアは歩いて行こうとした。
だけど、間に沢山の人がいて、なかなか向こうに行けそうにない。
そうこうしている内に、一度周囲が何か魔法の光で包まれ、その後、銃声が響き始めた。
イーアは『友契の書、みんなに準備するように伝えて』と精霊語でささやいた。
銃声が響いているということは、ここはすでに戦場だ。召喚の準備をしておいた方がいい。
でも、イーアには迷いもあった。
(わたしも逃げた方がいいよね。ここで召喚して正体がバレたら困るもん……)
誰もいない地下の鍾乳洞やバララセの密林ならともかく、帝都のど真ん中で白昼堂々、召喚してしまっては、大変なことになる。
召喚したことがバレれば、アラムとしての平穏な生活は終わる。
銃声が響きだすと、まだ残っていた冬至祭マーケットの出店者たちやお客さんたちは必死になって広場から出ようと逃げだした。
イーアも脱出しようとしていたその時、黄色いローブを着た人の姿がイーアの視界に入った。
(あれは黄色の魔導士……? 前に見た時とちょっと違うけど……でも、ケイニス君?)
イーアが黄色の魔導士らしき人影に気をとられていると、近くで、逃げようとしていた小さな子どもが転んで泣きだした。
「だいじょうぶ?」
イーアが子どもを助けおこそうとした時、突然、空に巨大なツララがいくつも出現した。
氷魔法の攻撃だ。
(広場にはまだみんないるのに!)
混乱の中で簡単には移動できなかったから、広場には出店者達や買い物客、親子連れだって、まだたくさん残っていた。
『モンペル!』
巨大なツララが広場の群衆に向かって無差別に降り落ちてきた時、イーアと子どもを覆うように、青い岩の精霊達が頑丈な屋根を作った。
降り注ぐ巨大なツララがモンペルの天井にぶつかり砕けて、細かい氷になって、地面に落ちていった。
モンペルのおかげでイーアと子どもは無事だ。傷一つない。
だけど、向こうに、ツララに体を貫かれて倒れる人の姿が見えた。
「ひどい……」
イーアは子どもを抱きしめながら思わずつぶやいた。
すでに冬至祭マーケットに来ていた人達だけではなく、デモ隊の群衆の大半も、みんな逃げようとしていた。
だけど、銃声は門の方からだけでなく広場の外からも聞こえる。
人々が逃げる方向はまちまちで人の流れがあちこちでぶつかるから、ますます脱出するのが難しくなっている。
パニックになって動く人々のむこうに、ラグチェスター校の炊き出しの場所が一瞬見えた。
そこはすでに無人だったけれど、そこだけは障壁魔法で守られていた。
王宮警備隊の攻撃は続いていた。
イーアが空を仰ぎ見ると、上空に軍服を着た魔導士の姿が見えた。再び魔法で攻撃しようとしていた。このままじゃ、さらに多くの人達が犠牲になってしまう。
イーアは精霊語で『友契の書』にむかってささやいた。
『エラスシオ、なるべく見つからないように、空から攻撃してくる魔導士を吹き飛ばして』
『友契の書』かどこかから『無茶を言う』というエラスシオの声が聞こえたような気がした。
でも、じきに少し離れたところで、上空に向かって激しい水流が吹きあがり、空にいた魔導士を吹き飛ばした。
水柱は人々の頭ごしに見えたけど、水竜エラスシオの巨体は見えない。
巨大な首長水竜が広場にあらわれれば目立つことこの上ないけど、エラスシオは姿を隠したまま、うまく攻撃してくれているみたいだった。
『ありがとう、エラスシオ。その調子でお願い』
女性が泣き叫ぶような声で誰かを何度も呼ぶ声が聞こえた。
「ママ!」と、イーアが抱きかかえていた子どもが叫び、走り出した。
母親のもとへと駆けていく子どもを見送りながら、イーアは冷静に考えた。
(わたしも逃げなくちゃ)
<白光>と対峙している時と比べれば、敵の力に脅威を感じなかった。
今、群衆に攻撃をしている魔導士達は、<白光>の魔導士と比べればずっと弱い。たぶん、イーアは彼らと戦闘しても勝てる。
だけど、帝都のど真ん中で帝国軍と戦闘なんてしたら、アラムが指名手配犯になってしまう。
ここに支配者の石板の欠片があるわけではない。
何が起こっているのかわからないけれど、これはイーアの戦いではないのだ。
だけどその時、黄色いローブを着た人が倒れるのが見えた。
(ケイニス君?)
イーアは思わず、地に倒れた黄色いローブを着た者の傍に駆け寄り、フードで覆われた頭を抱きかかえた。
黄色いローブの男は、流れてきた銃弾に頭を撃ち抜かれていた。
男の顔は覆面で隠されていたけれど、首の肌はあらわになっていた。
その肌の色はケイニスにしては白かった。
イーアは覆面をはずした。
銃弾で額を撃ち抜かれた男は、やはりケイニスではなかった。
でも、年齢はあまり変わらない若者だ。二十歳にはなっていないだろう。
腕の中で生命が失われたのを感じ、イーアは若者の頭をそっと地面に置いた。
銃声は鳴り響き続けていた。モンペルが近くで壁になって遮ってくれているから、イーアには当たらない。
だけど逃げていく群衆にも銃弾は撃ちこまれていた。
ここでこれ以上戦うべきではないとわかっていた。
だけど、イーアは『ドプープク達、銃を撃つ兵士を気絶させて』と静かにささやいた。
広場を出るように呼びかける警察や警備隊の声は、たくさんの叫び声にかき消され、イーアの耳にはよく聞こえなかった。
(どうしよう……逃げたほうがいいのかな? でも、学校のみんなの様子を見てこようかな)
ラグチェスター校の炊き出しの方へ、イーアは歩いて行こうとした。
だけど、間に沢山の人がいて、なかなか向こうに行けそうにない。
そうこうしている内に、一度周囲が何か魔法の光で包まれ、その後、銃声が響き始めた。
イーアは『友契の書、みんなに準備するように伝えて』と精霊語でささやいた。
銃声が響いているということは、ここはすでに戦場だ。召喚の準備をしておいた方がいい。
でも、イーアには迷いもあった。
(わたしも逃げた方がいいよね。ここで召喚して正体がバレたら困るもん……)
誰もいない地下の鍾乳洞やバララセの密林ならともかく、帝都のど真ん中で白昼堂々、召喚してしまっては、大変なことになる。
召喚したことがバレれば、アラムとしての平穏な生活は終わる。
銃声が響きだすと、まだ残っていた冬至祭マーケットの出店者たちやお客さんたちは必死になって広場から出ようと逃げだした。
イーアも脱出しようとしていたその時、黄色いローブを着た人の姿がイーアの視界に入った。
(あれは黄色の魔導士……? 前に見た時とちょっと違うけど……でも、ケイニス君?)
イーアが黄色の魔導士らしき人影に気をとられていると、近くで、逃げようとしていた小さな子どもが転んで泣きだした。
「だいじょうぶ?」
イーアが子どもを助けおこそうとした時、突然、空に巨大なツララがいくつも出現した。
氷魔法の攻撃だ。
(広場にはまだみんないるのに!)
混乱の中で簡単には移動できなかったから、広場には出店者達や買い物客、親子連れだって、まだたくさん残っていた。
『モンペル!』
巨大なツララが広場の群衆に向かって無差別に降り落ちてきた時、イーアと子どもを覆うように、青い岩の精霊達が頑丈な屋根を作った。
降り注ぐ巨大なツララがモンペルの天井にぶつかり砕けて、細かい氷になって、地面に落ちていった。
モンペルのおかげでイーアと子どもは無事だ。傷一つない。
だけど、向こうに、ツララに体を貫かれて倒れる人の姿が見えた。
「ひどい……」
イーアは子どもを抱きしめながら思わずつぶやいた。
すでに冬至祭マーケットに来ていた人達だけではなく、デモ隊の群衆の大半も、みんな逃げようとしていた。
だけど、銃声は門の方からだけでなく広場の外からも聞こえる。
人々が逃げる方向はまちまちで人の流れがあちこちでぶつかるから、ますます脱出するのが難しくなっている。
パニックになって動く人々のむこうに、ラグチェスター校の炊き出しの場所が一瞬見えた。
そこはすでに無人だったけれど、そこだけは障壁魔法で守られていた。
王宮警備隊の攻撃は続いていた。
イーアが空を仰ぎ見ると、上空に軍服を着た魔導士の姿が見えた。再び魔法で攻撃しようとしていた。このままじゃ、さらに多くの人達が犠牲になってしまう。
イーアは精霊語で『友契の書』にむかってささやいた。
『エラスシオ、なるべく見つからないように、空から攻撃してくる魔導士を吹き飛ばして』
『友契の書』かどこかから『無茶を言う』というエラスシオの声が聞こえたような気がした。
でも、じきに少し離れたところで、上空に向かって激しい水流が吹きあがり、空にいた魔導士を吹き飛ばした。
水柱は人々の頭ごしに見えたけど、水竜エラスシオの巨体は見えない。
巨大な首長水竜が広場にあらわれれば目立つことこの上ないけど、エラスシオは姿を隠したまま、うまく攻撃してくれているみたいだった。
『ありがとう、エラスシオ。その調子でお願い』
女性が泣き叫ぶような声で誰かを何度も呼ぶ声が聞こえた。
「ママ!」と、イーアが抱きかかえていた子どもが叫び、走り出した。
母親のもとへと駆けていく子どもを見送りながら、イーアは冷静に考えた。
(わたしも逃げなくちゃ)
<白光>と対峙している時と比べれば、敵の力に脅威を感じなかった。
今、群衆に攻撃をしている魔導士達は、<白光>の魔導士と比べればずっと弱い。たぶん、イーアは彼らと戦闘しても勝てる。
だけど、帝都のど真ん中で帝国軍と戦闘なんてしたら、アラムが指名手配犯になってしまう。
ここに支配者の石板の欠片があるわけではない。
何が起こっているのかわからないけれど、これはイーアの戦いではないのだ。
だけどその時、黄色いローブを着た人が倒れるのが見えた。
(ケイニス君?)
イーアは思わず、地に倒れた黄色いローブを着た者の傍に駆け寄り、フードで覆われた頭を抱きかかえた。
黄色いローブの男は、流れてきた銃弾に頭を撃ち抜かれていた。
男の顔は覆面で隠されていたけれど、首の肌はあらわになっていた。
その肌の色はケイニスにしては白かった。
イーアは覆面をはずした。
銃弾で額を撃ち抜かれた男は、やはりケイニスではなかった。
でも、年齢はあまり変わらない若者だ。二十歳にはなっていないだろう。
腕の中で生命が失われたのを感じ、イーアは若者の頭をそっと地面に置いた。
銃声は鳴り響き続けていた。モンペルが近くで壁になって遮ってくれているから、イーアには当たらない。
だけど逃げていく群衆にも銃弾は撃ちこまれていた。
ここでこれ以上戦うべきではないとわかっていた。
だけど、イーアは『ドプープク達、銃を撃つ兵士を気絶させて』と静かにささやいた。
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