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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第156話 次期塔主候補の召喚バトル
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イーアは召喚した。
『ティロモサ!』
ティロモサとともに出現した海水がパガンゴすべてを飲みこみ、渦巻いた水がパガンゴをザヒの方へと押し流していった。
ザヒが戻したのか、ティロモサの攻撃でダメージを受けたのか、爆発する前にパガンゴは消えていった。
ザヒに向かってティロモサが大口を開けて突っこんでいく。
だけど、その時、ザヒの頭上にはすでに巨大な白い鯨みたいな精霊があらわれていた。
数年前、グランドールの地下でイーア達が殺されそうになった『大海の覇者 モビンディク』だ。
あの時、モビンディクはあまりに巨大で強力な存在に見えた。
今見てもモビンディクは巨大だけど、あれくらいの強大さ、各地域で神と恐れられる類の精霊を、イーアはすでに見慣れていた。
ティロモサとモビンディクが正面からぶつかり合い、激しい霊力の波と水流に、イーアとティトは体を飛ばされ流された。
はるか遠くからザヒの嬉しそうな笑い声が響いた。
「ふははは! 共に海神と呼ばれる精霊同士のぶつかり合い! これだ、これだ! 召喚バトルはこうでなければ! ようやく楽しめるようになってきたじゃないか!」
ザヒはまるで心からこの召喚バトルを楽しんでいるみたいだった。
以前も感じたけれど、ザヒはそもそも召喚バトルが大好きなようだ。
イーアは召喚バトルよりも精霊たちと平和に遊ぶ方が好きだけど。でも、各地域で人々から神と呼ばれ恐れられる精霊達が目の前で戦いを繰り広げているさまは、たしかに普通の人間は一生見ることがないだろう凄い光景だ。
ティロモサの牙がモビンディクの腹を割いた。
だけど、モビンディクの激しい体当たりでティロモサも大きなダメージを受け、両者はほとんど同時に消えていった。
巨大な海の覇者達が消えていく。その時イーアはすでに次の召喚を行っていた。
『レントンの大樹!』
ガネンの森の『イーランの来訪所』にいるレントンの木の上位種たちが台地の上に出現した。
草木の生えない荒れ地の台地が一瞬で巨大な霊樹に囲まれた林のようになった。
レントンの大木から、イーアへと霊力が流れこんでくる。
下位のレントンの木では実を食べることでしか霊力を回復できないけれど、上位種のレントンの木は直接イーアに霊力を送ることができる。
そして、レントンの大樹は逆にわずかながら霊力を奪うこともできる。
ザヒとワイヒルトは今、徐々に魔力を奪われていた。
ザヒは舌打ちをした。
「忌々しい。わずかとはいえ魔力が奪われるのは気色が悪い。『豪炎獣パラボードン』! 『炎鳥ウェベンヌ」! あの霊樹どもを燃やしつくせ!』
地には長い鼻を持つ巨大な霊獣パラボードン、空には燃えさえる炎の翼をもつ巨大な霊鳥ウェベンヌが出現した。
『あののろまなやつはおれが相手しよう』
と、ティトがパラボードンを鼻でさして言った。
だけど、イーアは別の指示をだした。霊樹を召喚すればザヒが炎属性の精霊を召喚してくるのは想定通りなのだ。
『ティトは光線攻撃の準備。エラスシオ! 二体相手だけど、エラスシオなら大丈夫だよね?』
イーアとザヒの間の地面の一部が突如、闇の沼に沈み、そして、オーロラ色に光るエラスシオがゆっくりと巨体をあらわした。
『やれやれ。毎度毎度、注文の多い。だが、無論。愚鈍な獣や小鳥なんぞ、何匹いようが、我が後れをとるものか』
エラスシオのドラゴンらしい高慢に聞こえる物言いを聞き取ったのかいないのか、ザヒは舌打ちした。
「ドラゴンか。嫌な奴を思い出す」
豪炎獣パラボードンが炎を吹き出した。その炎は、エラスシオが放った水流で打ち消されたけれど、ほとんど同時に炎の鳥ウェベンヌが空を滑るように飛び燃え盛る体で立ち並ぶレントンの木々へと突っこんでいった。
オーロラ色に輝く光の壁が炎の鳥ウェベンヌをはじき返した。
ウェベンヌの痛そうな声が空に響いた。
バラボードンに水攻撃をすると同時に、エラスシオはオーロラ色の障壁魔法を張っていた。
ティトがイーアの横で尻尾に強い光を貯めながら感心したように言った。
『あの首長トカゲ、えらそうなだけじゃなくて本当に使えるやつだな』
距離が離れているのでイーアには聞こえなかったけれど、その時ザヒも横にいるワイヒルト相手に人語でつぶやいていた。
「首長水竜エラスシオ。水竜と名はついているが、実は水だけでなく光魔法を操るドラゴンの中でも珍しい種族。まったく珍奇なものと契約をしているものだ。ゲオですらエラスシオは未契約だろうに。ドラゴン嫌いのエルフの血を引いているくせに、霊獣と相性の悪いドラゴンすら手なずける霊獣使い、か。さすがは忌々しい<黒竜の子>の一番弟子。万能っぷりが憎らしいことこの上ない」
パラボードンは早くもエラスシオの水攻撃で姿を消そうとしていた。
イーアは小声でティトにささやいた。
『ティト、すきを見てザヒの友契の書を攻撃して』
『友契の書』は本自体が命を持っているわけではないけれど、大きなダメージを受ければ一時的に機能しなくなり、召喚できなくなる。
ティトの光線攻撃が当たれば、十分機能停止させることができるだろう。
パラボードンが姿を消し、ウェベンヌとエラスシオの戦いが始まった。
その戦いを眺めながらザヒはつぶやいていた。
「エラスシオに、太陽の霊獣ラシュト。同じ霊獣使いでも、あいつは光を操る精霊に好かれた召喚士。ならば、俺は俺らしく闇と邪悪でいこう。『闇猫王グリーチェ』、『悪鬼猿イヤナヒニ』」
突然あたりに暗い闇がたちこめはじめた。
暗い虚空に巨大な口と歯が見え、その巨大な口が、エラスシオに飛びかかって噛みついた。
闇に体が溶けこんでいて巨大な口しか見えないけれど、あれがグリーチェだ。
そして、地表には、巨大な赤と黒の大きな猿のような霊獣イヤナヒニが何体も出現していた。
『悪鬼猿イヤナヒニ』は見境なく人や精霊を襲う凶暴さで知られている。
イヤナヒニは手に持つこん棒を振り回しながら、イーアの方に向かって走ってきた。
『オーロガロン、わたしをつかんで後ろに逃げて。ティトも後ろに逃げて』
イヤナヒニがとびかかる直前、大怪鳥オーロガロンがイーアをつかんで飛び去った。
『テリトベラ、イヤナヒニを捕まえて!』
あたり一面にグネグネした霊草が生い茂った。
あやうく、空を飛んで逃げるイーアの足までテリトベラにつかまりそうになったけれど、オーロガロンは空高くかつ後方に飛び去っていたので、なんとか、逃れた。
ティトは、イーアがテリトベラを召喚した時にはすでにけっこう離れていたので、なんとか逃れたけれど、『あいつらを呼ぶならもっと早く言ってくれ。こんなことしてると、力を溜めらんないぞ』と走りながら文句を言っていた。
テリトベラのグネグネとした茎が悪鬼猿イヤナヒニの足を絡み取っていった。
イヤナヒニは暴れ、テリトベラを引きちぎっていくけれど、次から次へとテリトベラの茎はからみつき、毒でイヤナヒニを痺れさせていく。
一匹のイヤナヒニがテリトベラを振りほどこうと振り回した棒が、テリトベラの黄色いトゲトゲした実に触れた。
テリトベラの実は爆弾のように爆発してイヤナヒニ達の全身に突き刺さった。
地味だけど、相手に炎攻撃がない時、テリトベラは強力だった。
イーアは地表に降りた。ティトがイーアに目くばせした。
ティトの光線攻撃の貯めが終わっていた。
『オーロガロン、空からザヒを襲って』
オーロガロンは、一度空高く飛翔し、そしてザヒの頭上に向かって降下して行った。ザヒは一瞬オーロガロンに気を取られた。
その瞬間、ティトの尻尾からザヒめがけて、光線が放射された。
ザヒは自分の前に魔法で障壁を張っていたけれど、ティトの一撃は、その障壁をやすやすと貫き破った。
そして、ラシュトの光線がザヒに命中する、と思った瞬間、黒い影がザヒの前を横切った。
衝突の衝撃でザヒは地面に倒れた。
そして、ザヒの代わりにティトの光線攻撃に腹を貫かれたワイヒルトが地面に落ちた。
『ティロモサ!』
ティロモサとともに出現した海水がパガンゴすべてを飲みこみ、渦巻いた水がパガンゴをザヒの方へと押し流していった。
ザヒが戻したのか、ティロモサの攻撃でダメージを受けたのか、爆発する前にパガンゴは消えていった。
ザヒに向かってティロモサが大口を開けて突っこんでいく。
だけど、その時、ザヒの頭上にはすでに巨大な白い鯨みたいな精霊があらわれていた。
数年前、グランドールの地下でイーア達が殺されそうになった『大海の覇者 モビンディク』だ。
あの時、モビンディクはあまりに巨大で強力な存在に見えた。
今見てもモビンディクは巨大だけど、あれくらいの強大さ、各地域で神と恐れられる類の精霊を、イーアはすでに見慣れていた。
ティロモサとモビンディクが正面からぶつかり合い、激しい霊力の波と水流に、イーアとティトは体を飛ばされ流された。
はるか遠くからザヒの嬉しそうな笑い声が響いた。
「ふははは! 共に海神と呼ばれる精霊同士のぶつかり合い! これだ、これだ! 召喚バトルはこうでなければ! ようやく楽しめるようになってきたじゃないか!」
ザヒはまるで心からこの召喚バトルを楽しんでいるみたいだった。
以前も感じたけれど、ザヒはそもそも召喚バトルが大好きなようだ。
イーアは召喚バトルよりも精霊たちと平和に遊ぶ方が好きだけど。でも、各地域で人々から神と呼ばれ恐れられる精霊達が目の前で戦いを繰り広げているさまは、たしかに普通の人間は一生見ることがないだろう凄い光景だ。
ティロモサの牙がモビンディクの腹を割いた。
だけど、モビンディクの激しい体当たりでティロモサも大きなダメージを受け、両者はほとんど同時に消えていった。
巨大な海の覇者達が消えていく。その時イーアはすでに次の召喚を行っていた。
『レントンの大樹!』
ガネンの森の『イーランの来訪所』にいるレントンの木の上位種たちが台地の上に出現した。
草木の生えない荒れ地の台地が一瞬で巨大な霊樹に囲まれた林のようになった。
レントンの大木から、イーアへと霊力が流れこんでくる。
下位のレントンの木では実を食べることでしか霊力を回復できないけれど、上位種のレントンの木は直接イーアに霊力を送ることができる。
そして、レントンの大樹は逆にわずかながら霊力を奪うこともできる。
ザヒとワイヒルトは今、徐々に魔力を奪われていた。
ザヒは舌打ちをした。
「忌々しい。わずかとはいえ魔力が奪われるのは気色が悪い。『豪炎獣パラボードン』! 『炎鳥ウェベンヌ」! あの霊樹どもを燃やしつくせ!』
地には長い鼻を持つ巨大な霊獣パラボードン、空には燃えさえる炎の翼をもつ巨大な霊鳥ウェベンヌが出現した。
『あののろまなやつはおれが相手しよう』
と、ティトがパラボードンを鼻でさして言った。
だけど、イーアは別の指示をだした。霊樹を召喚すればザヒが炎属性の精霊を召喚してくるのは想定通りなのだ。
『ティトは光線攻撃の準備。エラスシオ! 二体相手だけど、エラスシオなら大丈夫だよね?』
イーアとザヒの間の地面の一部が突如、闇の沼に沈み、そして、オーロラ色に光るエラスシオがゆっくりと巨体をあらわした。
『やれやれ。毎度毎度、注文の多い。だが、無論。愚鈍な獣や小鳥なんぞ、何匹いようが、我が後れをとるものか』
エラスシオのドラゴンらしい高慢に聞こえる物言いを聞き取ったのかいないのか、ザヒは舌打ちした。
「ドラゴンか。嫌な奴を思い出す」
豪炎獣パラボードンが炎を吹き出した。その炎は、エラスシオが放った水流で打ち消されたけれど、ほとんど同時に炎の鳥ウェベンヌが空を滑るように飛び燃え盛る体で立ち並ぶレントンの木々へと突っこんでいった。
オーロラ色に輝く光の壁が炎の鳥ウェベンヌをはじき返した。
ウェベンヌの痛そうな声が空に響いた。
バラボードンに水攻撃をすると同時に、エラスシオはオーロラ色の障壁魔法を張っていた。
ティトがイーアの横で尻尾に強い光を貯めながら感心したように言った。
『あの首長トカゲ、えらそうなだけじゃなくて本当に使えるやつだな』
距離が離れているのでイーアには聞こえなかったけれど、その時ザヒも横にいるワイヒルト相手に人語でつぶやいていた。
「首長水竜エラスシオ。水竜と名はついているが、実は水だけでなく光魔法を操るドラゴンの中でも珍しい種族。まったく珍奇なものと契約をしているものだ。ゲオですらエラスシオは未契約だろうに。ドラゴン嫌いのエルフの血を引いているくせに、霊獣と相性の悪いドラゴンすら手なずける霊獣使い、か。さすがは忌々しい<黒竜の子>の一番弟子。万能っぷりが憎らしいことこの上ない」
パラボードンは早くもエラスシオの水攻撃で姿を消そうとしていた。
イーアは小声でティトにささやいた。
『ティト、すきを見てザヒの友契の書を攻撃して』
『友契の書』は本自体が命を持っているわけではないけれど、大きなダメージを受ければ一時的に機能しなくなり、召喚できなくなる。
ティトの光線攻撃が当たれば、十分機能停止させることができるだろう。
パラボードンが姿を消し、ウェベンヌとエラスシオの戦いが始まった。
その戦いを眺めながらザヒはつぶやいていた。
「エラスシオに、太陽の霊獣ラシュト。同じ霊獣使いでも、あいつは光を操る精霊に好かれた召喚士。ならば、俺は俺らしく闇と邪悪でいこう。『闇猫王グリーチェ』、『悪鬼猿イヤナヒニ』」
突然あたりに暗い闇がたちこめはじめた。
暗い虚空に巨大な口と歯が見え、その巨大な口が、エラスシオに飛びかかって噛みついた。
闇に体が溶けこんでいて巨大な口しか見えないけれど、あれがグリーチェだ。
そして、地表には、巨大な赤と黒の大きな猿のような霊獣イヤナヒニが何体も出現していた。
『悪鬼猿イヤナヒニ』は見境なく人や精霊を襲う凶暴さで知られている。
イヤナヒニは手に持つこん棒を振り回しながら、イーアの方に向かって走ってきた。
『オーロガロン、わたしをつかんで後ろに逃げて。ティトも後ろに逃げて』
イヤナヒニがとびかかる直前、大怪鳥オーロガロンがイーアをつかんで飛び去った。
『テリトベラ、イヤナヒニを捕まえて!』
あたり一面にグネグネした霊草が生い茂った。
あやうく、空を飛んで逃げるイーアの足までテリトベラにつかまりそうになったけれど、オーロガロンは空高くかつ後方に飛び去っていたので、なんとか、逃れた。
ティトは、イーアがテリトベラを召喚した時にはすでにけっこう離れていたので、なんとか逃れたけれど、『あいつらを呼ぶならもっと早く言ってくれ。こんなことしてると、力を溜めらんないぞ』と走りながら文句を言っていた。
テリトベラのグネグネとした茎が悪鬼猿イヤナヒニの足を絡み取っていった。
イヤナヒニは暴れ、テリトベラを引きちぎっていくけれど、次から次へとテリトベラの茎はからみつき、毒でイヤナヒニを痺れさせていく。
一匹のイヤナヒニがテリトベラを振りほどこうと振り回した棒が、テリトベラの黄色いトゲトゲした実に触れた。
テリトベラの実は爆弾のように爆発してイヤナヒニ達の全身に突き刺さった。
地味だけど、相手に炎攻撃がない時、テリトベラは強力だった。
イーアは地表に降りた。ティトがイーアに目くばせした。
ティトの光線攻撃の貯めが終わっていた。
『オーロガロン、空からザヒを襲って』
オーロガロンは、一度空高く飛翔し、そしてザヒの頭上に向かって降下して行った。ザヒは一瞬オーロガロンに気を取られた。
その瞬間、ティトの尻尾からザヒめがけて、光線が放射された。
ザヒは自分の前に魔法で障壁を張っていたけれど、ティトの一撃は、その障壁をやすやすと貫き破った。
そして、ラシュトの光線がザヒに命中する、と思った瞬間、黒い影がザヒの前を横切った。
衝突の衝撃でザヒは地面に倒れた。
そして、ザヒの代わりにティトの光線攻撃に腹を貫かれたワイヒルトが地面に落ちた。
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