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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第159話 隠し手
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オーロガロンと火竜を退避させたところで、イーアはふたりめのティロモサを呼んだ。
ティロモサの強力な突撃を受けて、鎧がぶつかりあいバラバラになって崩れ落ちていった。
だけど、ティロモサの一撃でも、亡霊の巨人兵たちすべてを倒すことはできなかった。
イーアは手の大きな猿みたいな霊獣モキュッチを呼んで、魔力回復のためのレントンの実を集めてもらいながら、呼べる限りの精霊を呼んで残った巨兵と戦ってもらった。
一体、また一体と、亡霊巨兵は崩れ落ちていった。
大変な戦いだったけど、絶望的な状況には一度もならなかった。
後になって思えば、そのことを疑うべきだったのかもしれない。
けれど、その時はイーアは戦闘で手一杯で考えがいたらなかった。
最後の巨兵との戦闘が繰り広げられている時、ティトはザヒに近いところでワイヒルトと戦闘をしていた。
ティトがワイヒルトを地に組み伏せた瞬間、ちょうど巨兵の最後の一体がヤゴンリルによって倒された。
イーアはザヒの次の召喚が来るのを予想しながら、少しでも魔力を回復しようと、手持ちの最後の魔力回復薬を飲み干した。
すでにレントンの大樹たちも力尽き、イーアはほとんど魔力切れ状態だった。
回復薬で回復できたのはわずかだ。
それに、契約している精霊達は、みんな大きなダメージを受けたり霊力が尽きたりしていて、呼べる召喚獣は残り少なかった。
あとはザヒがどれだけ余力を残しているかだった。
ザヒに余力は、ないはずだった。あれだけの召喚を行えば。
ガリの話では、今のイーアの魔力量は人間ではありえないほどに多く、かつ精霊たちと仲が良いので召喚に必要な魔力量は小さい。
だから単純に強力な召喚獣をぶつけあえば、イーアが勝る。
ザヒは亡霊巨兵の軍団を呼ぶ前に特殊な魔力回復薬で魔力を全回復さらに強化していたみたいだけど、あんなことを何度もできるはずがない。
今はザヒの相棒のワイヒルトも、ティトに組み伏せられたまま動けないでいる。
ザヒは負けた。
なのに、ザヒは笑っていた。
「よくやった。蛮族の娘。合格だ」
まるで初めからこうなることを予測、いや、期待していたような笑いだ。
ザヒはやはり何か隠している。
ザヒの隠し手を警戒しながら、イーアは尋ね返した。
「何が合格なの? これで召喚バトルが終わりなら、わたしの勝ちだよ。約束通り、悪だくみをやめて」
ザヒはまったく焦る様子もなく笑い、言った。
「この召喚バトルは、お前の勝ちでいい。エルフの血からくる異様な魔力と精霊どものなつきやすさ。お前はまぎれもなく規格外の召喚士だ。まともな人の身ではお前には勝てん」
ザヒは負けを認めたけれど、召喚士としての力を全部生まれのせいにされて、イーアはむっとした。
「別に、エルフの子孫だからじゃ……」
イーアの抗議を無視し、ザヒはしゃべり続けていた。
「約束通り次期塔主の座はくれてやる。だが、ギアラド人どもの命は別だ。貴様の命もな。そうだろう。アポロウ」
風がざわめき、荒れ地に白いローブ姿の男があらわれた。<白光>の魔導士だった。
そのアポロウという名前に、イーアは覚えがあった。
帝国で有名な魔導師の一人だ。
「俺がひとりだと思ったか? ダークエルフ」
ザヒはそう言って残忍そうな笑みを浮かべた。
ほとんど同時に、アポロウによって、周囲には転移を妨害する結界が張られていた。
銀仮面の向こうから声が聞こえた。
「貴様はここで終わりだ。帝国にあだなすダークエルフよ」
『現在、塔への転移はできません』と、『友契の書』、ルヴィの声が聞こえた。
もう逃げることはできない。
(召喚バトルは、罠……)
イーアが召喚バトルで力を出し切ったところを、<白光>の仲間が叩く。ザヒはそういう計画だったのだ。
まんまと嵌められた。
ザヒは今まで戦闘をしかけてくる時はいつも一人だったから。
ザヒは格下だと侮っているだろうイーアを相手に策は弄しないだろうと思いこんでいたから。
まるで見抜けなかった。
「絶望するがいい。もう呼べる召喚獣も魔力も尽きただろう? 冥途の土産だ。最後にとっておきの召喚を見せてやる。光栄に思え。こいつの準備には幾人もの命が必要だった」
ザヒがそう言って、片手をあげた。ザヒの手には、不気味な赤黒い大きな羽が握られていた。
ウェルグァンダルでは行われないけれど、召喚術の中には召喚のたびに専用の召喚道具や生贄が必要になる特殊な召喚があるという。あの血染めの羽は、そういった類の道具だろう。
だけど、何人もの命を犠牲にした、ということは、絶対にウェルグァンダルでは禁止されているはずの召喚だ。
イーアもアポロウも、ザヒの手に握られる赤い羽に気をとられたその瞬間、ティトが組み伏せていたはずのワイヒルトの姿が消えた。
そして、黒い疾風が刃のように、<白光>の魔導士アポロウを切り裂いた。
驚いたことに、同時にティトの光線攻撃もアポロウにむかって放たれていた。
二匹の霊獣の連携攻撃に、アポロウは完全に不意をつかれた。
ワイヒルトとティトは、さっき組み合って戦っている時にこっそりと話し合ってこの攻撃を計画していたのかもしれない。
だけど、なんでザヒのワイヒルトが、仲間であるはずの<白光>の魔導士を攻撃するのか、イーアにはわからなかった。
そして、霊獣達が攻撃している間に、ザヒは召喚をしていた。
『奴の時を止め幽閉せよ。時の巨神グローヌ』
巨大な巨人の手のようなものが、突然、空の何もないところからあらわれた。
腕だけでも、地表に生きる者を震え上がらせる威風を持つ精霊だった。
巨人の巨大な手は、檻のようなものをつかんだまま空から降ってきた。
イーアは何もできず、ただその光景を見ていた。
巨神の檻が、アポロウの上にかぶせられた。
檻の中のアポロウは、身動きもせず止まっていた。
空中で呪文を唱えようとしているかのような状態のまま、ワイヒルトに胴を切り裂かれ、ティトの光線攻撃に肩を貫かれた状態のまま、アポロウは静止していた。
傷口からも血は流れ出てこない。
あの檻の中は、ウェルグァンダルの塔の地下で見た、時間を凍結させる装置の中と同じように、時間がとまっているようだった。
ティロモサの強力な突撃を受けて、鎧がぶつかりあいバラバラになって崩れ落ちていった。
だけど、ティロモサの一撃でも、亡霊の巨人兵たちすべてを倒すことはできなかった。
イーアは手の大きな猿みたいな霊獣モキュッチを呼んで、魔力回復のためのレントンの実を集めてもらいながら、呼べる限りの精霊を呼んで残った巨兵と戦ってもらった。
一体、また一体と、亡霊巨兵は崩れ落ちていった。
大変な戦いだったけど、絶望的な状況には一度もならなかった。
後になって思えば、そのことを疑うべきだったのかもしれない。
けれど、その時はイーアは戦闘で手一杯で考えがいたらなかった。
最後の巨兵との戦闘が繰り広げられている時、ティトはザヒに近いところでワイヒルトと戦闘をしていた。
ティトがワイヒルトを地に組み伏せた瞬間、ちょうど巨兵の最後の一体がヤゴンリルによって倒された。
イーアはザヒの次の召喚が来るのを予想しながら、少しでも魔力を回復しようと、手持ちの最後の魔力回復薬を飲み干した。
すでにレントンの大樹たちも力尽き、イーアはほとんど魔力切れ状態だった。
回復薬で回復できたのはわずかだ。
それに、契約している精霊達は、みんな大きなダメージを受けたり霊力が尽きたりしていて、呼べる召喚獣は残り少なかった。
あとはザヒがどれだけ余力を残しているかだった。
ザヒに余力は、ないはずだった。あれだけの召喚を行えば。
ガリの話では、今のイーアの魔力量は人間ではありえないほどに多く、かつ精霊たちと仲が良いので召喚に必要な魔力量は小さい。
だから単純に強力な召喚獣をぶつけあえば、イーアが勝る。
ザヒは亡霊巨兵の軍団を呼ぶ前に特殊な魔力回復薬で魔力を全回復さらに強化していたみたいだけど、あんなことを何度もできるはずがない。
今はザヒの相棒のワイヒルトも、ティトに組み伏せられたまま動けないでいる。
ザヒは負けた。
なのに、ザヒは笑っていた。
「よくやった。蛮族の娘。合格だ」
まるで初めからこうなることを予測、いや、期待していたような笑いだ。
ザヒはやはり何か隠している。
ザヒの隠し手を警戒しながら、イーアは尋ね返した。
「何が合格なの? これで召喚バトルが終わりなら、わたしの勝ちだよ。約束通り、悪だくみをやめて」
ザヒはまったく焦る様子もなく笑い、言った。
「この召喚バトルは、お前の勝ちでいい。エルフの血からくる異様な魔力と精霊どものなつきやすさ。お前はまぎれもなく規格外の召喚士だ。まともな人の身ではお前には勝てん」
ザヒは負けを認めたけれど、召喚士としての力を全部生まれのせいにされて、イーアはむっとした。
「別に、エルフの子孫だからじゃ……」
イーアの抗議を無視し、ザヒはしゃべり続けていた。
「約束通り次期塔主の座はくれてやる。だが、ギアラド人どもの命は別だ。貴様の命もな。そうだろう。アポロウ」
風がざわめき、荒れ地に白いローブ姿の男があらわれた。<白光>の魔導士だった。
そのアポロウという名前に、イーアは覚えがあった。
帝国で有名な魔導師の一人だ。
「俺がひとりだと思ったか? ダークエルフ」
ザヒはそう言って残忍そうな笑みを浮かべた。
ほとんど同時に、アポロウによって、周囲には転移を妨害する結界が張られていた。
銀仮面の向こうから声が聞こえた。
「貴様はここで終わりだ。帝国にあだなすダークエルフよ」
『現在、塔への転移はできません』と、『友契の書』、ルヴィの声が聞こえた。
もう逃げることはできない。
(召喚バトルは、罠……)
イーアが召喚バトルで力を出し切ったところを、<白光>の仲間が叩く。ザヒはそういう計画だったのだ。
まんまと嵌められた。
ザヒは今まで戦闘をしかけてくる時はいつも一人だったから。
ザヒは格下だと侮っているだろうイーアを相手に策は弄しないだろうと思いこんでいたから。
まるで見抜けなかった。
「絶望するがいい。もう呼べる召喚獣も魔力も尽きただろう? 冥途の土産だ。最後にとっておきの召喚を見せてやる。光栄に思え。こいつの準備には幾人もの命が必要だった」
ザヒがそう言って、片手をあげた。ザヒの手には、不気味な赤黒い大きな羽が握られていた。
ウェルグァンダルでは行われないけれど、召喚術の中には召喚のたびに専用の召喚道具や生贄が必要になる特殊な召喚があるという。あの血染めの羽は、そういった類の道具だろう。
だけど、何人もの命を犠牲にした、ということは、絶対にウェルグァンダルでは禁止されているはずの召喚だ。
イーアもアポロウも、ザヒの手に握られる赤い羽に気をとられたその瞬間、ティトが組み伏せていたはずのワイヒルトの姿が消えた。
そして、黒い疾風が刃のように、<白光>の魔導士アポロウを切り裂いた。
驚いたことに、同時にティトの光線攻撃もアポロウにむかって放たれていた。
二匹の霊獣の連携攻撃に、アポロウは完全に不意をつかれた。
ワイヒルトとティトは、さっき組み合って戦っている時にこっそりと話し合ってこの攻撃を計画していたのかもしれない。
だけど、なんでザヒのワイヒルトが、仲間であるはずの<白光>の魔導士を攻撃するのか、イーアにはわからなかった。
そして、霊獣達が攻撃している間に、ザヒは召喚をしていた。
『奴の時を止め幽閉せよ。時の巨神グローヌ』
巨大な巨人の手のようなものが、突然、空の何もないところからあらわれた。
腕だけでも、地表に生きる者を震え上がらせる威風を持つ精霊だった。
巨人の巨大な手は、檻のようなものをつかんだまま空から降ってきた。
イーアは何もできず、ただその光景を見ていた。
巨神の檻が、アポロウの上にかぶせられた。
檻の中のアポロウは、身動きもせず止まっていた。
空中で呪文を唱えようとしているかのような状態のまま、ワイヒルトに胴を切り裂かれ、ティトの光線攻撃に肩を貫かれた状態のまま、アポロウは静止していた。
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