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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第162話 ギアラド蜂起
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ケイニスは通信機を通してイーアに言った。
「基地だけでなく、各地の囚人兵監督部隊がほとんど同時に潰されている。これが神の仕業でなければ、戦闘のプロがかなりの数いるはずだが、どういう集団なのか、見当がつかない」
ケイニスは不審がっているけれど、イーアにはすぐに見当がついた。
「それ、ひとりだけだよ。あの人は瞬間移動できるから」
詳しいことは知らないけれど、ウェルグァンダルの力でガリは転移水晶なんてなくても瞬時に転移できる。だとしても、あの基地や各地の部隊を瞬時に制圧するなんて、とんでもなく難しいことのはずだけれど。
イーアはケイニスとの通信を切った。
(ガリって、本当にすごいんだね)と、心の中でほとんどあきれに近い感心をしながら。
「最強の召喚士」の名は伊達ではない。
ザヒが、向こうでのけぞるようにして笑っていた。
「ついに動いたか。あのドラゴンめ。『取換小鬼フーゴリ、この首輪をはずせ』」
小さな小鬼みたいな精霊があらわれ、一瞬にしてザヒについていた爆弾付きの囚人首輪を、手にもっていた禍々《まがまが》しい柄のスカーフと取り換えた。
ザヒのあの止まらない笑いを見ると、どうやらザヒの本当の狙いは、大勢のギアラド人達と自分の命をかけて、ガリを動かすことだったようだ。
それは賭けではある。
ガリが何もしなければ皆死ぬのだから。きっとザヒは本当に死ぬ覚悟を決めていただろう。
(結局、ザヒはガリを信じて、こんな計画をたてたってこと……?)
少なくとも、ザヒは自分の命をガリに預けたということだ。ガリの決断次第で死ぬつもりで。
あんなにガリのことが嫌いだと言っていたくせに。
イーアが首をかしげていると、ティトがうなった。
『イーア、あれを見ろ』
ティトに言われ、イーアは台地の向こうに広がる荒れ地の方を見た。
広大な大地を埋め尽くすゴーレム兵の大軍が、こちらに向かって迫ってきていた。
あれが、ここに集結したギアラド人を襲いに来たゴーレム兵団だろう。
あんな大軍に襲われたら、ザヒに集められたギアラドの民衆はひとたまりもなく虐殺される。
だけど、ティトが見ろと言ったのは、ゴーレム兵の大軍のことではなかった。
ゴーレム兵の大軍の上空を、黒いドラゴンが飛んでいた。
黒いドラゴンは急降下して、地表を覆うゴーレム兵の大軍をなでるように飛んで行った。
ドラゴンが通り過ぎた後には、ただの土くれだけが残っていた。
ゴーレム兵がただの泥人形の集団のようにあっという間に黒いドラゴンに倒されていく。
『すごい。あれがガリのお母さん、黒竜リアウェニヴァ?』
イーアがつぶやいた瞬間、背後から声が聞こえた。
『こんなことに母上を呼び出すものか。あれは暇を持て余している兄弟、暴竜カゼグヒードだ』
『ガリ!』
とても不機嫌そうな顔のガリがイーアの後ろに立っていた。
「ようやくお出ましか、ギアラドの王!」
いじわるい調子で、ザヒが叫んだ。
ガリは淡々と言った。
「それはすでにお前の名だ。一度名乗ったからにはギアラドの王の役目をまっとうしろ。シャイド。どうせお前は禁忌召喚獣の契約使用で破門だ。血と罪業で塗れたその力、せめてギアラドの民のために使え」
ウェルグァンダルの召喚士は、人の命を犠牲にするような召喚獣との契約や使用は禁止されている。ザヒがアポロウに使った召喚は、契約にも使用にも人の命を犠牲にする、完全に許されない禁忌召喚獣だった。
ザヒは大げさに肩をすくめた。
「ギアラドの王? そんな生ゴミのような名はいらん。だが、ここでゴミの押し付け合いをしていてもしかたがないな。ご塔主様のかわりに、破門にされた俺が、ギアラドのクズどもを死地に送るための演説をしてこよう。か弱きギアラドの民衆に、今更、非戦の選択はないからな。戦わなければ全員虐殺されるだけだ。誰かさんが帝国軍を潰してくれたおかげで」
ザヒはものすごく皮肉な調子でそう言い、ガリはものすごく不機嫌な表情だったけれど何も言わなかった。
誰のせいでこうなった、とガリは言いたいところだろうけど。
ザヒがギアラド人集落の方へと去っていくのを見ながら、イーアはため息をついた。
ザヒに<白光>を抜けさせることはできたけど、あの兄弟二人の間の険悪さは、むしろ増した感じがする。
たぶん二人とも心の底では互いのことを思っているはずなのに。
『兄弟って、むずかしいね』
イーアがつぶやくと、ティトが断言した。
『難しいのは、あいつらだけだろ。どっちもひねくれすぎなんだ』
それから、ティトは鼻を鳴らして言った。
『ま、どうでもいいさ。召喚勝負はイーアの勝ちだ』
『そういえば、次期塔主を決める召喚バトルしてたんだっけ』
たしかに召喚バトルはイーアが勝った。
その後でザヒが色々やったせいで全然勝った気がしなかったけど、召喚勝負はたしかにイーアの勝ちだった。
それに、ザヒが破門になった今、どちらにしろ次期塔主候補はイーアしかいない。
『よかったな』
しかも、ガリのおかげで、囚人兵達はみんな解放された。
ここで目標としていたことは、気がついたら全部達成されていた。
イーアはうなずいた。
『うん。なんだか、全部うまくいったね』
・・・
この日、「ギアラドの王」の名のもと、帝国支配に抵抗するギアラド人の一斉蜂起が宣言された。
こうしてアグラシア帝国はまた一歩、終焉の時に近づいた。
「基地だけでなく、各地の囚人兵監督部隊がほとんど同時に潰されている。これが神の仕業でなければ、戦闘のプロがかなりの数いるはずだが、どういう集団なのか、見当がつかない」
ケイニスは不審がっているけれど、イーアにはすぐに見当がついた。
「それ、ひとりだけだよ。あの人は瞬間移動できるから」
詳しいことは知らないけれど、ウェルグァンダルの力でガリは転移水晶なんてなくても瞬時に転移できる。だとしても、あの基地や各地の部隊を瞬時に制圧するなんて、とんでもなく難しいことのはずだけれど。
イーアはケイニスとの通信を切った。
(ガリって、本当にすごいんだね)と、心の中でほとんどあきれに近い感心をしながら。
「最強の召喚士」の名は伊達ではない。
ザヒが、向こうでのけぞるようにして笑っていた。
「ついに動いたか。あのドラゴンめ。『取換小鬼フーゴリ、この首輪をはずせ』」
小さな小鬼みたいな精霊があらわれ、一瞬にしてザヒについていた爆弾付きの囚人首輪を、手にもっていた禍々《まがまが》しい柄のスカーフと取り換えた。
ザヒのあの止まらない笑いを見ると、どうやらザヒの本当の狙いは、大勢のギアラド人達と自分の命をかけて、ガリを動かすことだったようだ。
それは賭けではある。
ガリが何もしなければ皆死ぬのだから。きっとザヒは本当に死ぬ覚悟を決めていただろう。
(結局、ザヒはガリを信じて、こんな計画をたてたってこと……?)
少なくとも、ザヒは自分の命をガリに預けたということだ。ガリの決断次第で死ぬつもりで。
あんなにガリのことが嫌いだと言っていたくせに。
イーアが首をかしげていると、ティトがうなった。
『イーア、あれを見ろ』
ティトに言われ、イーアは台地の向こうに広がる荒れ地の方を見た。
広大な大地を埋め尽くすゴーレム兵の大軍が、こちらに向かって迫ってきていた。
あれが、ここに集結したギアラド人を襲いに来たゴーレム兵団だろう。
あんな大軍に襲われたら、ザヒに集められたギアラドの民衆はひとたまりもなく虐殺される。
だけど、ティトが見ろと言ったのは、ゴーレム兵の大軍のことではなかった。
ゴーレム兵の大軍の上空を、黒いドラゴンが飛んでいた。
黒いドラゴンは急降下して、地表を覆うゴーレム兵の大軍をなでるように飛んで行った。
ドラゴンが通り過ぎた後には、ただの土くれだけが残っていた。
ゴーレム兵がただの泥人形の集団のようにあっという間に黒いドラゴンに倒されていく。
『すごい。あれがガリのお母さん、黒竜リアウェニヴァ?』
イーアがつぶやいた瞬間、背後から声が聞こえた。
『こんなことに母上を呼び出すものか。あれは暇を持て余している兄弟、暴竜カゼグヒードだ』
『ガリ!』
とても不機嫌そうな顔のガリがイーアの後ろに立っていた。
「ようやくお出ましか、ギアラドの王!」
いじわるい調子で、ザヒが叫んだ。
ガリは淡々と言った。
「それはすでにお前の名だ。一度名乗ったからにはギアラドの王の役目をまっとうしろ。シャイド。どうせお前は禁忌召喚獣の契約使用で破門だ。血と罪業で塗れたその力、せめてギアラドの民のために使え」
ウェルグァンダルの召喚士は、人の命を犠牲にするような召喚獣との契約や使用は禁止されている。ザヒがアポロウに使った召喚は、契約にも使用にも人の命を犠牲にする、完全に許されない禁忌召喚獣だった。
ザヒは大げさに肩をすくめた。
「ギアラドの王? そんな生ゴミのような名はいらん。だが、ここでゴミの押し付け合いをしていてもしかたがないな。ご塔主様のかわりに、破門にされた俺が、ギアラドのクズどもを死地に送るための演説をしてこよう。か弱きギアラドの民衆に、今更、非戦の選択はないからな。戦わなければ全員虐殺されるだけだ。誰かさんが帝国軍を潰してくれたおかげで」
ザヒはものすごく皮肉な調子でそう言い、ガリはものすごく不機嫌な表情だったけれど何も言わなかった。
誰のせいでこうなった、とガリは言いたいところだろうけど。
ザヒがギアラド人集落の方へと去っていくのを見ながら、イーアはため息をついた。
ザヒに<白光>を抜けさせることはできたけど、あの兄弟二人の間の険悪さは、むしろ増した感じがする。
たぶん二人とも心の底では互いのことを思っているはずなのに。
『兄弟って、むずかしいね』
イーアがつぶやくと、ティトが断言した。
『難しいのは、あいつらだけだろ。どっちもひねくれすぎなんだ』
それから、ティトは鼻を鳴らして言った。
『ま、どうでもいいさ。召喚勝負はイーアの勝ちだ』
『そういえば、次期塔主を決める召喚バトルしてたんだっけ』
たしかに召喚バトルはイーアが勝った。
その後でザヒが色々やったせいで全然勝った気がしなかったけど、召喚勝負はたしかにイーアの勝ちだった。
それに、ザヒが破門になった今、どちらにしろ次期塔主候補はイーアしかいない。
『よかったな』
しかも、ガリのおかげで、囚人兵達はみんな解放された。
ここで目標としていたことは、気がついたら全部達成されていた。
イーアはうなずいた。
『うん。なんだか、全部うまくいったね』
・・・
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こうしてアグラシア帝国はまた一歩、終焉の時に近づいた。
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