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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第171話 アイシャに会う
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帝都のはずれの隠れ家的なカフェ。
小ぎれいな店内では、おいしい料理も食べられるけれど、実はここは革命主義者の協力者があつまるカフェだった。
そのお店でイーアはキャシーと会った。
オッペンはキャシーを連れてきてすぐ、「こいつ、警官隊とケンカしてたんだぜ。すっかり不良だぜ」と、うれしそうに言ってキャシーに睨まれて、今は別の席でごはんを食べている。
イーアはキャシーが逮捕されかけるに至った、これまでの話を聞いた。
「キャシーも大変だったんだね」
「イーアはどうしてたの? またずっと行方不明だったけど」
「召喚士の活動はしてるよ。次期塔主を決めるのでバトルしたり。他は、わたしも色々あったんだけど、聞かないほうがいいかも」
イーアが革命軍に協力していること、さらにはお尋ね者の「ダークエルフ」の正体だ、と知った上でイーアに協力すれば、キャシーも革命主義者と同罪になってしまう。
「了解。察するわ」と、キャシーは察しよく言った。
キャシーもイーアが何をしているか、だいたい想像はついているのだろう。
イーアは本題に入った。
「キャシーは今もアイシャと会ってる? 久しぶりにアイシャに会いたいなって思ったんだけど。連絡先もよくわからなくて」
「それが、あたしもいそがしくて、アイシャとはしばらく会ってなかったの。王子様との婚約の噂は聞いたんだけど。相手は15才も年上で、おめでとうと言いづらいから、逆に会いづらくなっちゃってて」
キャシーがそう言ったのを聞いて、イーアは驚いた。
「アイシャの婚約相手って、15才も年上なの!?」
アイシャの約15歳年上ということは、第三王子は三十代だ。
なんとなく、イーアはもっと若い王子様を想像していたけれど、よく考えてみれば国王はもう高齢だから、王子様がそれくらいの年齢なのは当たり前といえば当たり前だった。
キャシーはイーアが知らなかったことに驚いたようだった。
「知らなかったの? 第3王子は王子の中では一番若いけど、見た目は格好よくなくて、どもりぐせがあるんだって。アイシャって、恋に恋する乙女で、もともと相手の身分なんかどうでもいいでしょ? なのに政略結婚で見た目の良くないおじさんと婚約なんて、最悪としか思えなくて」
イーアも困ってしまった。
「うーん……。たしかに、おめでとう、って言えない……」
キャシーは気を取り直したように言った。
「でも、久しぶりだから、会おうって連絡してみるわ。婚約してもすぐ結婚にはならないだろうけど、もしアイシャが結婚しちゃったら、平民のあたしたちなんて、もう会えないかもしれないもん」
「王族の一員になっちゃうんだもんね。あのアイシャが……て想像すると、なんだか変な感じだけど」
「ほんと。グランドールに入学した頃は、アイシャが王族と婚約なんてちっとも想像もしなかった。あたしも、あの頃は想像しなかったようなことを今しちゃってるけど」
それを言ったら、イーアが一番、入学した時は想像もしなかったことを散々しでかしている。
でも、イーアだけじゃない。
オッペンも、マーカスも、ケイニスも、ユウリも。
みんな、入学した時は今の状態を想像もしなかったはずだ。
イーアはしみじみと言った。
「みんな、入学した時に思ってたのとは全然違うことやってるかもね。まだ3年たってないのに。後悔してる人もいるかもしれないけど、でも、わたしは良かったって思うんだ」
「うん。あたしも。婦人解放協会の活動はしてよかったと思う。今はみんながどうなったか心配だけど」
「……心配だね」
イーア達なら、逮捕された女性達を無理やり逃がすことはできるだろう。
でも、革命主義者とつながっている、なんて思われた方が重罪になってしまう。今脱獄すれば、この先ずっと犯罪者として逃亡生活を送ることになる。帝国政府が倒され、アグラシアが変わるまで。
婦人解放協会の女性達にとっては、そんなことになる方が迷惑なはずだ。
だから、今はこのままにするしかない。
キャシーはすぐにアイシャに連絡し、その翌週にはアイシャと会えることになった。
場所は帝都のボンペール商会のデパートの中の個室レストランだ。
高級デパートの高級レストランで、イーアは落ち着かないから、(やっぱりキャシーといっしょに来てよかったー)と思った。
アイシャは、見たところ以前とあまり変わっていなかった。
「アイシャ、久しぶり」
「久しぶりだねぇ。イーアは背ぇ、のびたねぇ」
「そうかな。……そうかも」
ユウリやオッペンも、魔動人形のマーカス以外は、みんな背が伸びているから、あまり実感がなかった。
だけど、たしかに以前はアイシャの方が背が高かったのに、今はイーアの方が背が高くなっている。
キャシーはアイシャに言った。
「アイシャ、元気だった? 婚約の話を聞いて、もし結婚しちゃったら簡単に会えなくなるかもしれないから、今のうちにたくさん会っておこうってイーアと話してたの」
「だいじょうぶだよぉ。結婚しても気軽に会えるよぉ」
「でも、相手は王族でしょ?」
「だいじょうぶだよぉ」
アイシャはあいかわらずのんびりしている。
「そういえば、アイシャ、婚約おめでとう……」
おめでとうと言っていいのかわからないとキャシーに聞いた後だったので、イーアは口ごもりながら言った。
キャシーもおそるおそるたずねた。
「聞いていいのか、わからないんだけど、王子様はどういう人?」
アイシャはいつもの、かわいいけどちょっと変わった笑い方で笑った。
「ンフフフフー。彼はねー。いい人だよー。いい人なんだよー」
アイシャはうれしそうだ。
「いい人って、性格がいい人ってこと?」
キャシーがたずねると、アイシャは笑顔で力強く言った。
「わたしのコレクションを理解してくれる人だよ~!」
「コレクション?」と、イーアは聞き返したけれど、「あー。そういうことね」と、長年の親友であるキャシーは即座に理解したみたいだった。
キャシーがイーアに説明してくれた。
「ほら、アイシャって、色んな恋愛ものの本や絵画を集めるのが趣味でしょ? 中には、他人、特に夫になる人には、絶対に見せられないようなものも、かなり沢山あるんだけど……」
そこでアイシャが興奮した様子で言った。
「それをねー。彼はねー、理解してくれるんだよー。アイシャが好きなら僕も好きになりますってぇ」
「それは、たしかに、いい人かも」と、キャシーがちょっと驚いた様子で言った。
「コレクションの保管庫はいくらでも用意しますってー」
アイシャがそう言うと、キャシーは深くうなずいた。
「なるほど。あの趣味を理解して支援してくれる人。だから、婚約の話、受けたのね」
「そうだよー。パパはねぇ、断ってもいいって言ってたのー。この婚約は商人としてはリスクやデメリットもあるから、正直、あまりすすめはしないってぇ」
アイシャがそう言うのを聞いて、イーアは驚いた。
「そうだったの? 相手は王子様なのにお父さんは反対だったの?」
「だって、パパは商人だもん。パパはアイシャに結婚させて王様から爵位とか地位とかをもらいたいわけじゃないんだよぉ」
そうなのだろう。今はむしろ王家の方がボンペール商会の協力をほしがっている側なのだ。
「じゃ、アイシャが自分でその人との婚約を選んだんだね……」
イーアはつぶやきながら、王制を滅ぼそうとしている側として、複雑な気分になった。
「そうだよー。違うと思ったのぉ?」
「だって15才も年上の、全っ然、格好よくない方よ?」
キャシーはついに本音をはっきり言ってしまった。
でも、アイシャは強く抗議した。
「そんなことないよぉ? かわいいんだよぉ。ちょっと太ってるところか、もさもさの眉毛とか、急ぐとすぐに、はぁはぁするところとか」
キャシーは降参するように言った。
「それがかわいいっていうなら、もう、アイシャにはこれ以上の婚約相手はいないわ。あたしがまちがってた! 心から、おめでとう!」
キャシーに続いて、イーアも言った。
「そうだね。おめでとう」
「ありがとー」
それから、しばらく色々楽しくおしゃべりをして、イーアはキャシーと一緒に帰路についた。
歩きながらイーアは言った。
「アイシャ、幸せそうでよかったね」
「ほんと。予想もしなかった。でも、そういえばアイシャって、昔からけっこう年上好きで、意外な人のことを素敵だって言ってたわ」
「みんながいう格好良さとか年の差とか、そういうので決めつけちゃいけなかったんだね」
イーアがちょっと反省していると、キャシーはいたずらっぽく言った。
「で、これでよかったの? イーア。なんか悪だくみがあったんでしょ?」
「ごめんね。まきこんじゃって」
「いいって。あたしだって、オッペンがこなかったら今頃、監獄にいる身だもん」
逮捕されてしまった婦人解放運動の人達は、今も皆、監獄にいる。いつ釈放されるかわからない。
「早くこんなことのない世界にしたいけど。でも、そうなると、アイシャには……」
キャシーはイーアを元気づけるように言った。
「アイシャのことは、気にしなくていいんじゃない? ほら、あの子、マイペースだから。普通の人が怒るようなことでも、意外と気にしなかったりするから」
「うん……」
でも、やっぱりイーアは後ろめたかった。
イーアはアイシャとの会談中に、ある精霊をアイシャの服に潜ませていたのだ。
その精霊は、ガネンの森にひっそりこっそり生息している小さな虫みたいな精霊で、名前はダノミノ。
大きさは、5ミリもなく、半透明で、霊力もとても小さいから、精霊が見える人でもダノミノは見つけづらい。
ダノミノはけっこう頭がよくて、耳もいいから、こっそり色んな情報を集めていたりする。
だから、『物知り虫ダノミノ』とも呼ばれている。
でも、ダノミノを見つけるのはすごく難しい。
もともとイーアの『友契の書』にダノミノはのっていなかったので、今回、イーアはティトやフモシー達と一緒にガネンの森でダノミノを探して、仲間になってもらった。
ダノミノを見つけるのは本当に大変で、みんなで探したのに何日もかかってしまった。人間にはまず見つけられないだろう。
イーアはそのダノミノに新型兵器の情報を探るようお願いして、たくさんアイシャの服に忍ばせたのだ。
ダノミノは無害とはいえ、(友達にすることじゃないよね……)とイーアは思ったけれど。
小ぎれいな店内では、おいしい料理も食べられるけれど、実はここは革命主義者の協力者があつまるカフェだった。
そのお店でイーアはキャシーと会った。
オッペンはキャシーを連れてきてすぐ、「こいつ、警官隊とケンカしてたんだぜ。すっかり不良だぜ」と、うれしそうに言ってキャシーに睨まれて、今は別の席でごはんを食べている。
イーアはキャシーが逮捕されかけるに至った、これまでの話を聞いた。
「キャシーも大変だったんだね」
「イーアはどうしてたの? またずっと行方不明だったけど」
「召喚士の活動はしてるよ。次期塔主を決めるのでバトルしたり。他は、わたしも色々あったんだけど、聞かないほうがいいかも」
イーアが革命軍に協力していること、さらにはお尋ね者の「ダークエルフ」の正体だ、と知った上でイーアに協力すれば、キャシーも革命主義者と同罪になってしまう。
「了解。察するわ」と、キャシーは察しよく言った。
キャシーもイーアが何をしているか、だいたい想像はついているのだろう。
イーアは本題に入った。
「キャシーは今もアイシャと会ってる? 久しぶりにアイシャに会いたいなって思ったんだけど。連絡先もよくわからなくて」
「それが、あたしもいそがしくて、アイシャとはしばらく会ってなかったの。王子様との婚約の噂は聞いたんだけど。相手は15才も年上で、おめでとうと言いづらいから、逆に会いづらくなっちゃってて」
キャシーがそう言ったのを聞いて、イーアは驚いた。
「アイシャの婚約相手って、15才も年上なの!?」
アイシャの約15歳年上ということは、第三王子は三十代だ。
なんとなく、イーアはもっと若い王子様を想像していたけれど、よく考えてみれば国王はもう高齢だから、王子様がそれくらいの年齢なのは当たり前といえば当たり前だった。
キャシーはイーアが知らなかったことに驚いたようだった。
「知らなかったの? 第3王子は王子の中では一番若いけど、見た目は格好よくなくて、どもりぐせがあるんだって。アイシャって、恋に恋する乙女で、もともと相手の身分なんかどうでもいいでしょ? なのに政略結婚で見た目の良くないおじさんと婚約なんて、最悪としか思えなくて」
イーアも困ってしまった。
「うーん……。たしかに、おめでとう、って言えない……」
キャシーは気を取り直したように言った。
「でも、久しぶりだから、会おうって連絡してみるわ。婚約してもすぐ結婚にはならないだろうけど、もしアイシャが結婚しちゃったら、平民のあたしたちなんて、もう会えないかもしれないもん」
「王族の一員になっちゃうんだもんね。あのアイシャが……て想像すると、なんだか変な感じだけど」
「ほんと。グランドールに入学した頃は、アイシャが王族と婚約なんてちっとも想像もしなかった。あたしも、あの頃は想像しなかったようなことを今しちゃってるけど」
それを言ったら、イーアが一番、入学した時は想像もしなかったことを散々しでかしている。
でも、イーアだけじゃない。
オッペンも、マーカスも、ケイニスも、ユウリも。
みんな、入学した時は今の状態を想像もしなかったはずだ。
イーアはしみじみと言った。
「みんな、入学した時に思ってたのとは全然違うことやってるかもね。まだ3年たってないのに。後悔してる人もいるかもしれないけど、でも、わたしは良かったって思うんだ」
「うん。あたしも。婦人解放協会の活動はしてよかったと思う。今はみんながどうなったか心配だけど」
「……心配だね」
イーア達なら、逮捕された女性達を無理やり逃がすことはできるだろう。
でも、革命主義者とつながっている、なんて思われた方が重罪になってしまう。今脱獄すれば、この先ずっと犯罪者として逃亡生活を送ることになる。帝国政府が倒され、アグラシアが変わるまで。
婦人解放協会の女性達にとっては、そんなことになる方が迷惑なはずだ。
だから、今はこのままにするしかない。
キャシーはすぐにアイシャに連絡し、その翌週にはアイシャと会えることになった。
場所は帝都のボンペール商会のデパートの中の個室レストランだ。
高級デパートの高級レストランで、イーアは落ち着かないから、(やっぱりキャシーといっしょに来てよかったー)と思った。
アイシャは、見たところ以前とあまり変わっていなかった。
「アイシャ、久しぶり」
「久しぶりだねぇ。イーアは背ぇ、のびたねぇ」
「そうかな。……そうかも」
ユウリやオッペンも、魔動人形のマーカス以外は、みんな背が伸びているから、あまり実感がなかった。
だけど、たしかに以前はアイシャの方が背が高かったのに、今はイーアの方が背が高くなっている。
キャシーはアイシャに言った。
「アイシャ、元気だった? 婚約の話を聞いて、もし結婚しちゃったら簡単に会えなくなるかもしれないから、今のうちにたくさん会っておこうってイーアと話してたの」
「だいじょうぶだよぉ。結婚しても気軽に会えるよぉ」
「でも、相手は王族でしょ?」
「だいじょうぶだよぉ」
アイシャはあいかわらずのんびりしている。
「そういえば、アイシャ、婚約おめでとう……」
おめでとうと言っていいのかわからないとキャシーに聞いた後だったので、イーアは口ごもりながら言った。
キャシーもおそるおそるたずねた。
「聞いていいのか、わからないんだけど、王子様はどういう人?」
アイシャはいつもの、かわいいけどちょっと変わった笑い方で笑った。
「ンフフフフー。彼はねー。いい人だよー。いい人なんだよー」
アイシャはうれしそうだ。
「いい人って、性格がいい人ってこと?」
キャシーがたずねると、アイシャは笑顔で力強く言った。
「わたしのコレクションを理解してくれる人だよ~!」
「コレクション?」と、イーアは聞き返したけれど、「あー。そういうことね」と、長年の親友であるキャシーは即座に理解したみたいだった。
キャシーがイーアに説明してくれた。
「ほら、アイシャって、色んな恋愛ものの本や絵画を集めるのが趣味でしょ? 中には、他人、特に夫になる人には、絶対に見せられないようなものも、かなり沢山あるんだけど……」
そこでアイシャが興奮した様子で言った。
「それをねー。彼はねー、理解してくれるんだよー。アイシャが好きなら僕も好きになりますってぇ」
「それは、たしかに、いい人かも」と、キャシーがちょっと驚いた様子で言った。
「コレクションの保管庫はいくらでも用意しますってー」
アイシャがそう言うと、キャシーは深くうなずいた。
「なるほど。あの趣味を理解して支援してくれる人。だから、婚約の話、受けたのね」
「そうだよー。パパはねぇ、断ってもいいって言ってたのー。この婚約は商人としてはリスクやデメリットもあるから、正直、あまりすすめはしないってぇ」
アイシャがそう言うのを聞いて、イーアは驚いた。
「そうだったの? 相手は王子様なのにお父さんは反対だったの?」
「だって、パパは商人だもん。パパはアイシャに結婚させて王様から爵位とか地位とかをもらいたいわけじゃないんだよぉ」
そうなのだろう。今はむしろ王家の方がボンペール商会の協力をほしがっている側なのだ。
「じゃ、アイシャが自分でその人との婚約を選んだんだね……」
イーアはつぶやきながら、王制を滅ぼそうとしている側として、複雑な気分になった。
「そうだよー。違うと思ったのぉ?」
「だって15才も年上の、全っ然、格好よくない方よ?」
キャシーはついに本音をはっきり言ってしまった。
でも、アイシャは強く抗議した。
「そんなことないよぉ? かわいいんだよぉ。ちょっと太ってるところか、もさもさの眉毛とか、急ぐとすぐに、はぁはぁするところとか」
キャシーは降参するように言った。
「それがかわいいっていうなら、もう、アイシャにはこれ以上の婚約相手はいないわ。あたしがまちがってた! 心から、おめでとう!」
キャシーに続いて、イーアも言った。
「そうだね。おめでとう」
「ありがとー」
それから、しばらく色々楽しくおしゃべりをして、イーアはキャシーと一緒に帰路についた。
歩きながらイーアは言った。
「アイシャ、幸せそうでよかったね」
「ほんと。予想もしなかった。でも、そういえばアイシャって、昔からけっこう年上好きで、意外な人のことを素敵だって言ってたわ」
「みんながいう格好良さとか年の差とか、そういうので決めつけちゃいけなかったんだね」
イーアがちょっと反省していると、キャシーはいたずらっぽく言った。
「で、これでよかったの? イーア。なんか悪だくみがあったんでしょ?」
「ごめんね。まきこんじゃって」
「いいって。あたしだって、オッペンがこなかったら今頃、監獄にいる身だもん」
逮捕されてしまった婦人解放運動の人達は、今も皆、監獄にいる。いつ釈放されるかわからない。
「早くこんなことのない世界にしたいけど。でも、そうなると、アイシャには……」
キャシーはイーアを元気づけるように言った。
「アイシャのことは、気にしなくていいんじゃない? ほら、あの子、マイペースだから。普通の人が怒るようなことでも、意外と気にしなかったりするから」
「うん……」
でも、やっぱりイーアは後ろめたかった。
イーアはアイシャとの会談中に、ある精霊をアイシャの服に潜ませていたのだ。
その精霊は、ガネンの森にひっそりこっそり生息している小さな虫みたいな精霊で、名前はダノミノ。
大きさは、5ミリもなく、半透明で、霊力もとても小さいから、精霊が見える人でもダノミノは見つけづらい。
ダノミノはけっこう頭がよくて、耳もいいから、こっそり色んな情報を集めていたりする。
だから、『物知り虫ダノミノ』とも呼ばれている。
でも、ダノミノを見つけるのはすごく難しい。
もともとイーアの『友契の書』にダノミノはのっていなかったので、今回、イーアはティトやフモシー達と一緒にガネンの森でダノミノを探して、仲間になってもらった。
ダノミノを見つけるのは本当に大変で、みんなで探したのに何日もかかってしまった。人間にはまず見つけられないだろう。
イーアはそのダノミノに新型兵器の情報を探るようお願いして、たくさんアイシャの服に忍ばせたのだ。
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