もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
179 / 207
第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第179話 ユウリ、<星読みの塔>に

しおりを挟む
 <星読みの塔>塔主の部屋。
 不機嫌そうな塔主アスカルの前に、端正たんせいな顔だちの少年が立ち、挨拶あいさつをした。

「<星読みの塔>の警備のために派遣はけんされました。エルツ・クローです。よろしくお願いします」

「ああ。バルトルから話は聞いている。まぁ、適当にやってくれ。といっても、うちは機密情報が多いから、塔の内部はあまりうろつかれると困るが」

「わかりました。塔の外の見回りをします」

「そうしてくれ」

 ユウリが去った後、占術士リリファはアスカルにたずねた。

「なぜ、<白光>は彼をここに? 我々への監視のためでしょうか? 何か<白光>に疑いをもたれるようなことがあったでしょうか? 我々ほど帝国に忠実な門派はないはずですが」

 一般的には、<星読みの塔>はもっとも王家と帝国に忠実な魔導士組織だと知られている。
 帝国のためにはどんな犠牲ぎせいいとわない。
 <星読みの塔>は、かつては特にそういう組織だった。
 そして、その犠牲になってきたのが、<星読み>エレイをはじめとした占術士達だった。

 アスカルは<星読みの塔>を大きく変える改革を行ってきた。
 非人道的な行いを禁止し、占術士の自由を拡大する改革は、犠牲にされてきた若い占術士達から支持されたが、かつて塔の中で権力を握っていた守旧派の反発は大きかった。
 時には敵対するものを力でじ伏せ黙らせながら、アスカルは改革を行ってきた。

 だが、どんな改革を行ってもアスカルや<星読みの塔>が王家への忠誠を疑われたことはなかった。
 それはアスカルと国王の関係による。

 アスカルの父は大魔導士カーラルと称えられた魔導士だが、カーラルは平民と結婚するために王位継承けいしょう権を放棄ほうきした元王子であり、今の国王の弟にあたる。
 カーラルは幼少時から非常に優秀で、末弟であるカーラルを次期国王にという声もあったほどだが、そのためにあえてカーラルは王位継承権を放棄したともいわれる。

 現国王と他の兄弟の間には熾烈しれつな争いがあったが、自ら早くに王位継承争いから離脱したカーラルと現国王の関係は決して悪くなかった。


 ちなみに、アスカルの母がただの平民ではなく、帝国内で差別を受けている少数民族ラナ人であることは、国家機密扱いの秘密だが、型破りなアスカルの父はそういうことに無頓着むとんちゃくだったため、アスカル自身はラナの文化にも触れて育ち、おそらく母親の家系ゆずりの占術の才能を開花させた。

 カーラルと現国王の仲がよかったため、アスカルは幼い頃から王家に出入りしていた。男児ばかり生まれて娘のいなかった国王は、めいのアスカルを娘のようにかわいがってきた。

 その国王の後ろ盾あって初めて、アスカルによる<星読みの塔>の改革は可能になったのだ。
 そのため、<星読みの塔>は今も最も王家に忠実な組織だと思われている。

 アスカルは投げやりにリリファに答えた。

「いーや。これは、あの坊やが何かしでかした時、我々に責任を押し付けるためさ。あのかわいいクローの坊やは反乱勢力の少女とつながっているんでね」

「はぁ。また、クローらしい話ですね。お父上似の見目みめうるわしい少年ですから、何も許されぬ恋に走らずとも、彼と恋に落ちる少女は無数にいるでしょうに。本当にロマンチックな一族」

 リリファは、どこかうっとりとした様子で、ため息をついた。

「厄介なのは、あの坊やは顔がいいだけじゃないんだ。クロー本家に生まれた男子としてここ数百年で最高の才能を持つといわれている」

「ホスルッド様を超えるのですか。ホスルッド様がホーヘンハインの城主になられた時は、あの若さで城主になった方は、ホーヘンハインの城主を輩出はいしゅつしてきたクロー家の中でも珍しいと話題でしたよね」

「ホスルッドは、ああみえて努力で伸びた人間だからね。少年時代はクロー本家の無才の問題児といわれていたもんさ。<白光>のクロー派としては、将来有望な跡取りを守りたいが、あの坊やが何かしでかした時に自分達が責任を取らされるのも嫌だ。つまり、我々はバルトルに、大事な爆弾のお守りを押し付けられたってわけだ」

「なるほど。我々が彼をしっかり監視しないといけない、ということですね?」

 だが、アスカルは言った。

「いや。放っておけ。何がどう転がるか、すでに我々ですらわからないんだ。若い奴らには好きにやらせればいいさ」

「アスカル様。それでは、王家を守護するという我々の役目を果たせません」

 リリファがたしなめると、アスカルは深く考えこむような表情をうかべてつぶやいた。

「我々の役目、か」


 ・・・


 <白光>の任務として<星読みの塔>に派遣されたものの、ユウリは特に仕事を与えられるわけではなかった。
 しかも、<星読みの塔>は入門者以外は立ち入り禁止の場所が多く、塔の内部はほとんど見て回ることができない。
 そのため、ユウリは毎日<星読みの塔>の周囲を警備のために散歩してまわるだけの日々を送った。

 塔の周囲には何もなかった。
 <星読みの塔>は山の上にあり、その山にはこの塔の他には何もないのだ。

 ただ、山頂にある塔からの眺めはよく、低い丘の上に建てられた白亜はくあの城と、その城の前に広がる湖の光景が美しかった。

 あの城は今は離宮として使われていて、風光明媚めいびなこの場所を気に入っている国王は、よくあの城に滞在していた。
 そのため、帝都からは離れた場所だが、ここはここで帝国の中枢ともいえる場所だった。

 だからこそ、不思議だった。
 バルトルがここにユウリを派遣したのは、イーア達に協力させないためだろう。
 だが、バルトルのやり口は徹底てっていしていなかった。

 ユウリは今でもイーアと手紙のやり取りができる。
 手紙の内容を盗み見られている可能性はあるため、お互い重要なことは伝えない。それでも、ユウリは最近反乱軍が「不死者の王」に苦戦していることをイーアからの報せで知っていた。

(バルトルさんは、何を考えているのだろう)

 本気でユウリの動きを封じたいならば、どこかに幽閉してしまえばいい。どこか、もっと辺鄙へんぴな場所に。だが、そうしない。

 <星読みの塔>の占術士達なら、ユウリが何か行動をとろうとすれば、占術で事前に察知することができるから、彼らの力に期待しているのだろうか。
 だが、仮に裏切りを察知したとしても、<星読みの塔>の占術士達は、いざ戦闘になればユウリにかなわないはずだ。

 自然魔法は初等魔学校で最初にならう魔法のひとつだが、達人の扱う自然魔法の攻撃力は数ある魔術の中でも最上級だ。
 ホーヘンハインに入門して数年、ユウリはすでに一流の自然魔法使いになっていた。
 戦闘に使える魔術を習得しない占術士達は、何人いようとユウリに瞬殺される。

 この処遇は、すべてが中途半端なのだ。
 むしろバルトルはユウリを本気でとめる気はない。
 そう思えてくる。

 ユウリがそんなことを考えながら、<星読みの塔>の中庭に座っていると、音がした。
 車輪がきしみながら草を踏み、ゆっくりと車いすの少年が進んできていた。

「今日はいい天気だね」

「はい……」

 落ち着いた声や雰囲気は年上のようだったが、外見や声は同じ年頃か、むしろ少し年下の少年のように思えた。
 車椅子の少年は<星読みの塔>の占術士に違いないだろう。
 だが、<星読みの塔>の占術士は、塔主以外は姿をあまり知られていない。
 ここにきてから紹介されることもなかったので、ユウリは相手が誰だかわからなかった。

「僕はエレイ。君に届け物を頼まれたんだ」

「届け物?」

「うん。ほら、これだよ」

 車椅子に座るエレイの膝の上に小箱がのせられていた。
 ユウリはその小箱をとりあげた。開けてみると、中には、とても強い魔力が秘められた球が入っていた。

「これは?」

「<生命の霊玉>。死にひんした者の命を救ってくれる」

 見たのは初めてだったが、名前は知っていた。
 生命の霊薬よりも効果が強い蘇生アイテムだ。
 即座に使えば死んだ者すら蘇らせるといわれる、とても強力で、とても貴重なものだ。

「なんでそんな高価なものを? 誰が?」

「箱の中を見てごらん。なぜあの人が君にそれを送るのかは、僕にはわからない。でも、あの人が送るなら、きっと君にはそれが必要になるんだろうね。それじゃ、僕は戻らないと」

 そう言うと、少年はまたゆっくりと塔の中へと戻っていった。
 ユウリは手中の箱の中をもう一度よく見た。
 紙が一枚入っていて、そこにはこう書かれていた。


 ユウリへ
 後悔しないように。
 一度失われた命はもう戻らず、二度と死者とは話せない。


 今はもうユウリをその名で呼ぶ者は限られている。
 そしてその字には見覚えがあった。

(ナミン先生……?)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...