もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
180 / 207
第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第180話 雪山

しおりを挟む
 辺り一面真っ白だ。
 アグラシア北部にある高山エルブロン。この山の上の方は夏でも雪が解けない、一年中雪に閉ざされた地だ。

 一歩足を踏み外せばどこまでも転がり落ちていきそうな険しい雪山を、イーアは歩いていた。
 イーアは、靴裏に滑らないようにトゲトゲがついていて、かつ、魔力で雪の中に沈まない雪山用の浮遊靴を履いているけれど、それでも雪山を歩くのは大変だ。
 歩いているうちに仲良くなった小さな雪の精霊ピリラル達がキラキラと光りながらイーアの周辺を漂っている。

 ティトは、たまに出てくるけど、数秒で『うー。寒い』と唸って、いなくなってしまう。
 太陽の霊獣と呼ばれるラシュトは、寒さには弱いらしい。
 イーアはひとりだとさみしいから、たまにウェルグァンダルの塔のキッチンで食べ物を冷やしている白くてふわふわなヒューラックを呼び出していっしょに歩いていた。

 ザヒはこの山のどこかにトイネリアへの入り口があるとは教えてくれたけれど、それがどこなのかは教えてくれなかった。
 ザヒもわからないのかもしれない。
 ここには道も目印になるような建物もないのだ。
 イーアはもう自分がどこを歩いているのか、さっぱりわからない。

 空から探した方が簡単だろうけれど、熱帯地域に住むオーロガロンや火山に住む火竜は寒いところが苦手なのでここには呼べない。
 他にイーアがいても空を飛べそうなのはガネンの森にすむ『風船鳥ププップ』だけだから、呼んでみたけれど、ププップは浮かぶことしかしない鳥だから移動はできない。
 イーアはププップの足につかまって空に浮かんで、上空から探してみたけれど、それらしきものは見つからなかった。

 でも、途中で会った、きれいな女の人のような精霊ピリラレルカによると、この雪山の中に、たしかに異界へ続く場所があるらしい。
 イーアは目的地への道を聞きたかったけれど、雪山には道も何もないから、ピリラレルカに方角を教えてもらって、あとは歩けるところを歩くだけだった。

 今はもう、正しい方向に進んでいるのかもよくわからない。
 何も見つからないまま日が暮れようとしていた。

(服はいっぱい着こんできたけど、この雪山でただ野宿したら凍死しちゃうよね。急がないと)

 イーアは風船鳥ププップを呼んで、もう一度上空から周囲を見渡した。
 すると、近くに何か丸い建物みたいなものが見えた。

『建物? 人が住んでいるのかな』

『ヒュー?』

 イーアの頭の上で一緒に空に浮かんでいるヒューラックがそんな声をだしたけど、ヒューラックは精霊語を話さないから何を言っているのかはよくわからない。

『ププップ、ありがとう。下に降りて』

 空に上がった時と同じようにゆーっくり、風船鳥は下降した。
 地面に降りるとイーアはその建物みたいなものがあった窪地くぼちに向かって進んだ。

 そこには、雪でできたドーム型の家のようなものが建っていた。

『これ、やっぱり誰かの家だよね?』

 イーアは「こんにちはー」と言いながら、ドーム状の建物の中に入ってみた。

『らっしゃーい!』

 イーア達は元気のいい声に迎え入れられた。

『クーちゃん!?』

 そこにいたのは、『料理鳥ククックー』だった。

『あんだぁ? おりゃ、クックググだ』

 イーアの横にあらわれたティトが身震いしながら、あきれたような声で言った。

『こんなとこにもククックーがいるのか。こいつら、どこにでもいるんだな』

 カンラビの密林でも、誰も来ないような変なところでククックーのククディがレストランを開いていたけれど。

『すごいね。ククックーって。じゃあ、ここは、クックググのお店なの?』

『おう。ドフラックの家を借りて店を開いたんだ』

『ドフラック?』 

 イーアが聞き返すと部屋の奥から、『ヴォー』という低い声が聞こえた。白い毛むくじゃらの巨人みたいな精霊ドフラックが奥にいた。
 この雪で出来たドーム状の建物はドフラックの家らしい。

 イーアが連れてきたヒューラックが『ヒュー』と小さな手をあげてドフラックにあいさつをした。
 ドフラックも『ヴォー』と返事をした。
 ヒューラックはイーアから降りて、ドフラックのところに移動していった。
 ふたりはちゃんと意思疎通そつうできているみたいだった。
 大きさも形も全然違うけど、ヒューラックとドフラックは近い種族の精霊なのかもしれない。

『クックググはどんな料理を作るの? この雪山、植物はほとんどないよね』

『鍋料理だ。今あたためるから、待ってな』

 そう言って、クックググは鍋を火にかけた。
 イーアはつぶやいた。

『お代は、食材だよね、きっと。そうだ。クーちゃんとククディを呼んじゃおうかな』

『あいつらを呼んだら、ケンカするだろ』

 ティトにそう言われてみれば、たしかにククディは料理バトルをしかけそうだったので呼ぶのをやめて、イーアは『クーちゃん、食材を持ってきて』とクーちゃんだけ呼んだ。

 数分後、クーちゃんが食材の入ったバスケットを持って、文句を言いながらでてきた。

『おい、何が食べたいんだ。食べたい物をはっきり言わねぇと、何の食材もってくりゃいいかわからねぇ』

『クックググへのお礼だから、何でもいいよ』

 そう言った瞬間、イーアは自分が料理鳥ククックーに対して言ってはいけないことを言ったと悟った。

『あぁ? 何でもいいだとぉ!? おれの料理をくわないだとぉ!?』

 普段は気のいい霊鳥のクーちゃんが、怒って翼をバサバサいわせている。
 ティトがあくびをしながら言った。

『食うぞ。おれは食いまくるぞ』

『うん。食べる! クーちゃんの料理食べたい! でも、クーちゃんが料理を作る場所がないね』

 クックググが使っているかまどのほかには、火が使える場所はない。

『なんてこった。これじゃサラダしか作れねぇ』

 そう言いながら、クーちゃんはさっそく生野菜でサラダを作り出した。
 クーちゃんの機嫌きげんはなおったので、イーアはほっとした。
 そこで、クックググがふりかえった。

『はい、おまち。3名さ……4名様になってらぁ!』

 クーちゃんに気が付いていなかったクックググはそう言いながら、追加の食器を出して、鍋から料理をよそった。
 その時には、クーちゃんも『ほらよ。爆裂トマトと爆乳牛チーズのサラダ、できあがり!』と言って、サラダののった大皿を出していた。

『おいしそう!』

 ドフラックとヒューラックも加わり、みんなでご飯を食べた。
 クーちゃんのサラダはいつも通りとてもおいしくて、クックググの鍋料理はとても体が温まっておいしかった。

 クックググは発酵食品を沢山つかっているみたいで、クーちゃんの料理ともククディの料理とも違った種類の、体によさそうな料理だった。

『おいしー。あたたまるー』

『ここのククックーもやるな』

 イーアとティトがそう言っている横で、クックググはクーちゃんが持ってきた食材の残りを喜んでもらっていた。

『こりゃいい。この辺りじゃ手に入らないもんだらけだ』

『食材がほしけりゃ塔に取りにくりゃいい。ほら、あいつが持ってる本とひょひょいと契約すると一瞬で移動できるようになるんだ』

 そうクーちゃんが言って、クックググが勝手に召喚契約している気配がしていたけれど、イーアはそんなことより料理に夢中だった。

 その夜は、ドフラックの家に泊めてもらった。
 イーアがトイネリアの入り口を知らないかたずねると、ドフラックは何か知っている様子だったので、案内を頼み、翌朝、出発した。


 朝日が降り注ぐ中、ドフラックはイーアを肩にのせて雪山の中を進んでいった。
 やがて、ドフラックは腕をあげた。
 大きな毛むくじゃらなドフラックの手の指し示す先に、獣のような形の岩があった。

『ありがとう!』

 イーアは礼を言い、ドフラックから降り、雪に半分うずもれた岩に近づいた。
 ザヒにもらった骨と牙でできた獣の形の魔道具を近づけると、岩から深く低い吠え声が聞こえた。
 イーアは明るい雪山が突如とつじょ、闇に包まれたように感じた。
 トイネリアへの入り口が開いたのだ。
 イーアはその闇の中へと足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...