もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第181話 トイネリア

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 トイネリアには雪は一切積もっていなかった。
 さっきまでの真っ白な雪山の光景から一変、周囲には緑が青々と茂っている。

 カンラビの密林やガネンの森よりは涼しいけれど、温かい。
 ティトによると、トイネリアは暑すぎることも寒すぎることもない一年中過ごしやすい気候の場所らしい。
 すぐに汗だくになりそうだったから、イーアは冬山用の装備を脱いで魔法のカバンの中にしまいながらティトに言った。

『なんだか、ちょっとだけガネンの森に似ているね。植物や気候は違うけど』

『ああ。でも、トイネリアはガネンの森よりずっとずっと広いぞ』

 そんな広い森でただ探し回ってもイーランが来る場所なんて見つけられそうにない。
 だから、イーアはこの森の精霊にイーランが来る場所についてたずねることにした。

 トイネリアの森には、ガネンの森と同じように、いたるところに精霊がいた。
 その辺にはえている木や草が精霊だったりする。
 だけど、トイネリアの森には、イーア達を食べてしまおうとする花も、しきりに話しかけてくるおしゃべりな花もいない。
 この森の植物の精霊はガネンの森やカンラビの密林の精霊達よりずっとおとなしそうだ。

 だから、イーアはこちらから積極的に話しかけることにした。
 だけど……。

『こんにちは!』

『……』

『イーランが来る場所、知らない?』

 霊花は答えるものかと言うように、ぷいっと花を横に向けた。
 しかも、この反応は、ましな方だった。
 動ける植物系精霊は、大抵、イーアとティトが近づくだけで大あわてで逃げていくのだ。

 一方、霊獣はガネンの森よりずっと好戦的で攻撃的だった。
 まずなにより、この森には、ワイヒルトが沢山住んでいて、ワイヒルトは次から次へと陰から奇襲をかけてくる。
 それから、群で狩りをする黄色い狼みたいな霊獣『雷閃狼ギオルロ』にも遭遇した。
 ギオルロは群で囲んで攻撃してくる。ものすごく素早くて、しかも持久力があるから、撃退するのは大変だった。

 巨大な獣も多い。大きな猪みたいな『巨大牙猪スイケーン』や、鎧のような皮膚と巨大な三本角を持つ巨獣『突撃鎧獣ノーラーン』は、気が付くとすぐに全力で突進攻撃をしてくる。その突進攻撃はモンペルの壁すら破壊してしまう。

 どの霊獣も、話しかける前に攻撃してくるし、負けを悟ればすぐに逃走するので、会話なんてしている暇がなかった。
 何度目かわからないくらいにワイヒルトを撃退した後、ティトはフンッと鼻を鳴らして言った。

『ああいう小物じゃしかたない。この辺のボスを見つけよう』

『ボス? どこにいるかわかる?』

『わからん。弱い奴を呼んでみろよ。臆病おくびょうで鼻のきく奴は気配でわかるはずだ』

 状況によっては戦闘力が低い精霊の方が役に立つケースもある。
 探し物をするときにはたいてい、コプタンやロロロみたいな弱い精霊の方が頼りになる。
 だけど、イーアは気が進まなかった。

『この森は危なすぎて、コプタンもロロロも呼べないよ』

 たぶん、こんな強い霊獣が沢山いる場所じゃ、コプタン達は召喚しても震えあがってすぐに帰ってしまうだろう。
 カンラビの村で神の使いとして大切にされているロロロは、今は村にひとりしかいない精霊だ。村を守る役目があるロロロを、こんな危険な場所に呼ぶわけにはいかない。

 だけど、『おれが守るからだいじょうぶだ』とティトがいうので、イーアはロロロを呼んだ。
 でてくるとすぐにロロロはきょろきょろ辺りをみわたして、予想通り、震えあがってしまった。

『おいおい。おれっちをどこに呼んでくれちゃってるんだい。ここは今にもおれっちをペロッと食いそうなやつの気配でいっぱいだぞ』

『ごめん。ロロロ。ここはトイネリアっていう、霊獣が多い森。わたしたちはここにイーランを探しに来たの。イーランが来る場所を聞きたいから、ボスっぽい霊獣の居場所を探して。イーランが見つかれば、それが一番いいけど』

『おまえら、無茶するなー。この森、オーロガロンより恐ろしいやつらがうろうろしてるぞ』

 ロロロは大きな目をきょろきょろさせながら言った。
 ロロロは目の前にないものも見えるらしい。
 ロロロはふいに鼻先の向きを変えた。

『ボスっぽいの……いたぞ。あっちだ。でも、途中に獣がいっぱいいる』

『種類はわかる?』

 ロロロは大きな目をぱちぱちしながら言った。

『ティトっちを黒くして毛並みを滑らかにした感じだな』

『たぶん、ワイヒルトだね。ワイヒルトの攻撃は爪と牙と風魔法だから、風に強い精霊を呼ぼう。モンペル、パラオーチ、いっしょに来て』

 イーアはロロロを肩の上に乗せ、精霊達といっしょに森の中の獣道を進んでいった。
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