もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
182 / 207
第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第182話 風雷の魔豹王 ドライヒルト

しおりを挟む
 闇討ちしてくるワイヒルトを返り討ちにしながら、獣道をひたすらロロロが言う方向にむかって進んでいくと、やがて草木のほとんど生えていない場所に出た。
 崖の間に広い空間がひろがっていて、そこだけ嵐の真っただ中のような強い風が吹き荒れていた。

 激しい風が砂や小石を吹き上げながら竜巻のように吹き続けている。
 その砂埃すなぼこりのせいで視界が悪く、その先がどうなっているのかはよく見えない。
 しかも、巻き上げられた砂や小石がぶつかってくるのでその場にいるだけで、痛い。

『強い精霊がいるのは、この先だぞ。とっても強い獣だ。正直、おれっちは会いたくない』

 ロロロは強風を避けるため顔をイーアの肩にうずめながらそう言った。
 この、壁のように行く手を阻んでいる暴風の先に、とても強い霊獣がいるらしい。

『わかった。ありがとう、ロロロ。カンラビのみんなによろしくね。パラオーチもありがとう。またね』

 ロロロとパラオーチを帰して、イーアとティトはとりあえず、モンペル達が風をさえぎるために造ってくれたモンペルの壁の影に入って身を低くしながら考えた。

『この先、どうやって進めばいいんだろ? ものすごい風で歩くのも大変だよね』

 モンペルの壁がなければ、立っているのも難しいだろう。
 しかも、奥に行くにつれて風は強くなり、小石だけじゃなく、もっと大きな石まで吹き飛ばされている。
 ティトは暴風にうんざりした顔で言った。

『ここを進むのは、あきらめよう』

『うん、そうだね』

 イーアはあっさり決めた。
 進むのが無理なら、進まなければいい。
 このすぐ先に目的の霊獣がいるなら。
 イーアは大声で呼びかけてみた。

『こんにちはー! イーランのことを知ってるー?』

 吹き荒れる風の轟音ごうおんの他には、何も聞こえない。

(こんな風じゃ、向こうまで聞こえないかな)とイーアは思って、さらに大声をだした。

『イーランのこと、知ってるー?』

 やはり、返事はない。
 ティトはげんなりした顔で前足の間に顔を入れて耳を押さえていたけれど、イーアはもっとがんばって大声を出した。

『イーランのこと、教えてー!』

 ティトは低いうめき声をあげながら『うるさすぎる』とつぶやいていたけれど、イーアはさらに何度も叫んだ。

『イーランの来る場所、教えてー!』

『イーランに、会いたいのー!』

 イーアが全力で叫び続けていると、突然、雷のような怒声が響いた。

『うるさい!』

 『イーアの大声は本当にうるさいからな』と横でティトがつぶやいた。

(そういえば、精霊語って霊的な言葉だから物理的な声の大きさとは違うんだっけ)と、イーアは昔受けた召喚術の授業を思い出した。
 けれど、自分が精霊的にどれくらいの大声を出していたのか、イーアにはよくわからなかった。
 たしかなのは、あの嵐の轟音を超えて、向こう側までちゃんと届いていたってことだ。大声のまま。

『うるさい! うるさい! うるさいぞ! どこのどいつだ!』

 雷鳴のような声で怒鳴りながら、吹き荒れる竜巻の中から黒い影が出てきた。
 ワイヒルトに似ているけれど、もっと大きくて、毛が逆立っていて、黒い毛並みには緑の他に、黄色い模様が入っている。
 見るからに、ワイヒルトよりずっと強そうな霊獣だ。

『こんにちは! わたしはウェルグァンダルの召喚士でガネンの民のイーア。あなたは?』

『お前なんぞに答えるものか! 大声エルフめ!』

 激しく吠えるように怒鳴られてしまったけれど、代わりにティトがイーアに教えた。

『あいつは、風雷の魔豹王ドライヒルトだ。トイネリアのドライヒルトは話のわかるやつだって、昔、父ちゃんが言ってたけど、話のわからなさそうな、おっさんだな。イーアに昼寝を邪魔されて怒ってるんじゃないか?』

 ドライヒルトはティトをギロリと睨み、低く唸るように言った。

『ラシュトのこわっぱが俺の縄張りになんのようだ。嚙み殺されたくなかったら、とっとと失せろ』

『ティトは、わたしといっしょにイーランを探してるの。イーランが来る場所を知らない?』

『なぜイーランを探す?』

『悪い人間達が、支配者の石板の力を使って、攻撃が効かない、死なないバケモノをつくりだしたから。そのバケモノを倒すには、すごく強力な治癒魔法が必要で、誰も倒せないけど、イーランなら倒せるかもしれないから』

『攻撃しても倒せない死なないバケモノ? 珍妙な怪物だな。だが、そういう存在なら、たしかにイーランなら倒せるかもしれない』

『本当!?』

 ドライヒルトはしかめっ面でイーア達にたずねた。

『だが、支配者の石板はガネンの森で守っていたのではないのか? お前達の他のガネンの民とラシュト達はどうした?』

 ドライヒルトは、『支配者の石板』のことやガネンの民のことは知っているみたいだけど、ガネンの森で起きたことは何も知らないようだ。

『ガネンの民とラシュトは、ずっと前に、わたしたち以外、みんな殺されちゃったよ。アグラシア帝国の人間に』

 イーアがそう教えると、ドライヒルトは面食らったような表情になった。

『なんだと……。お前達のようなガキ一匹ずつを残して……』

 ティトがいらいらしたようにドライヒルトをせかした。

『おっさん。いいから、早くイーランの居場所を教えてくれ』

『イーランの休みどこなら、その先の小山の上だ。だが、今はイーランはいないぞ』

 ドライヒルトは鼻で崖の向こうの霊樹の茂った丘をさした。

『ありがとう! 行ってみる!』

 だけど、すぐに向かおうとするイーアに、ドライヒルトは言った。

『行っても無駄だ。イーランは来ない』
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...