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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第183話 イーランの休み処
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『イーランが来ないって、どうしてわかるの?』
イーアがたずねると、ドライヒルトはきっぱりと言った。
『イーランが来る時には、わかる。それに、ガネンの民、お前は霊獣ではない。イーランは霊獣の願いなら聞いてくれるが、霊獣以外の者は、資格を得なければイーランに会うことすらできない。お前がいくら待ってもイーランはやってこない』
重々しく言うドライヒルトにむかって、イーアとティトは口々に言った。
『でも、わたし、昔、ガネンの森でティトといっしょにイーランに会ったよ?』
『イーランは気がいい霊獣だぞ。おっさんと違って気難しくないぞ』
ドライヒルトは雷のように唸って、頭を振った。
『うるさい! これだから、ガキどもは。イーランは子ども好きだから、幼い者がちょろちょろしていても気にしない。だが、ガネンの民。お前はもう一人前のおとなとしてイーランに頼み事があるのだろう。ならばイーランは、お前の資格を見定める』
たしかに、ガネンの森でイーランと会った時、イーアはとても幼かった。
それに、『イーランの来訪所』にはガネンの民は立ち入り禁止というルールがあった。それはガネンの民がいるとイーランが来てくれないからだったのかもしれない。
グランドールの奨学生試験でイーアがイーランを呼び出せたのは、ティトがたまたまガネンの森に来ていたイーランに代わりに行くようお願いしてくれたからだ。
たしかにイーランは霊獣の願いなら簡単に聞いてくれるのだろう。
だけど、ドライヒルトがいうように、もう子どもではない今のイーアの前には、イーランは現れないかもしれない。
『イーランに会うための資格って何?』
イーアがたずねると、ドライヒルトは言った。
『イーランの五色の毛を手に入れて持ち歩け。その状態で条件を満たせば、イーランに伝わるかもしれない』
『わかった。ありがとう! ドライヒルト』
『俺の名はバーラインだ』
『風雷の魔豹王ドライヒルト』バーラインはそう名乗ると、イーア達に背をむけ、嵐の中へと戻って行った。
『ありがとう、バーライン!』
『あんがとな。おっさん!』
『礼はいらんから静かにしろ! ガネンの生き残りどもめ。これだからガキは嫌いなんだ。うるさくてたまらん』
バーラインが唸るようにぶつぶつ言う声が嵐の轟音の中に消えていった。
『イーランの休み処に行こう!』
イーア達はさっそくバーラインが教えてくれた方角へ進んでいった。『イーランの休み処』までの道では、もうワイヒルトに襲われることはなかった。
『ドライヒルトはワイヒルトの親玉だからな。あのおっさんに話をつければもうこの辺のワイヒルトは襲ってこないだろ』
ティトはそう言った。
イーアは歩きながらふと『友契の書』を開いてみて、気が付いた。
『ドライヒルトとワイヒルトが召喚可能になってる! バーライン、うるさいって、あんなに文句言ってたのに、契約してくれたんだね』
『昔、父ちゃんが言ってたな。トイネリアのドライヒルトは、ぶっきらぼうだけど困ってる奴は見捨てない良い奴だって』
やがて『イーランの休み処』に着いた。
『イーランの休み処』は、静かで穏やかな場所だった。
大きなホムホムがたくさん浮いていて、ガネンの森の『イーランの来訪所』にも似ていたけれど、ここの方が広くて日差しがやさしく降り注いでいる。
『イーランの毛って、どんなのだろ』
イーランは赤青黄白黒5色の毛並みで翼をもつ一角獣だ。毛の色や特徴は部位によって様々なはずで、イーアには毛を見てイーランのものかどうか見分ける自信がなかった。
『とりあえず、いっぱい毛を集めとけばいいかな。他の霊獣のが混ざってても困らないもんね……あ!』
穏やかに日差しが降り注ぐ平べったい岩の上で、美しい色彩の何かが輝いていた。
イーアは近寄ってベッドのような岩の上をよく見た。様々な色の輝く毛が落ちている。
『イーランのっぽいかも。どう思う? ティト』
『イーランくさいな。まちがいないぞ。ここで昼寝してたんだろ。ここは日当たりいいから』
イーアはイーランの美しい毛を集めて、毛を糸みたいにより合わせて結んだ。ただ毛をまとめただけだけど、様々な色がキラキラ光って美しい。
『青、赤、白、黄色、黒、ちゃんと五色あるね。これでオーケー。これを持って、イーランが会ってくれる条件っていうのを満たそう。……どこで何すればいいのかわからないけど』
『おれもまったく知らん』
『うーん。いったん帰ろうか。ゲオ先生……でも知らなさそうだけど、聞いてみようかな。じゃあ、ティト、またね。ルヴィ、ウェルグァンダルの塔に帰還させて』
イーアは、ウェルグァンダルの塔に戻った。
穏やかで美しい『イーランの休み処』から一転、一瞬で周囲の光景は荒涼として寒々しい、霧に包まれた暗いウェルグァンダルの塔の傍に変わった。
(せっかく塔を引っ越すんなら、もっといい場所に引っ越せばよかったのに)
と、イーアは思ったけれど、そうもいかなかったのだろう。
以前は塔の周りにあった黒々とした林もほとんどなくなり、塔の周辺は前よりも寂しい状態だ。
だけど、塔が移転した時にいっしょに引っ越してきた精霊達が徐々に荒れ地に林を作りだしていて、空にはヤララの友達の霊鳥たちが警戒するように飛び交っている。
『ぶきみだけど、ここに帰ってくるとほっとするんだよね』
つぶやきながらイーアが塔の入り口で呼び鈴を鳴らそうとした時、イーアのカバンの中でケイニス特製の通信機が鳴り響いた。
通信機をとると、ケイニスの、焦りを必死に隠そうとしている声が聞こえた。
「不死者の王がギルフレイ侯爵領に入った。帝国軍がギルフレイ侯爵領を包囲していて、反帝国勢力は脱出できない。このままでは領内にいる仲間と領民が皆、不死者の王の軍勢に殺される」
帝国軍は、ギルフレイ侯爵領を封鎖、不死者の王の力を利用して侯爵領内の反帝国勢力を一掃するつもりのようだ。領内の人々をみんな犠牲にして。
ケイニスは暗い声でさらにつけ加えた。
「それから、ヨルヴァ城にいたギルフレイ侯爵が帝国軍に捕らえられた」
「アラムが? わかった。すぐに行く!」
イーアはすぐにギルフレイ侯爵領に向かうことにした。
イーアがたずねると、ドライヒルトはきっぱりと言った。
『イーランが来る時には、わかる。それに、ガネンの民、お前は霊獣ではない。イーランは霊獣の願いなら聞いてくれるが、霊獣以外の者は、資格を得なければイーランに会うことすらできない。お前がいくら待ってもイーランはやってこない』
重々しく言うドライヒルトにむかって、イーアとティトは口々に言った。
『でも、わたし、昔、ガネンの森でティトといっしょにイーランに会ったよ?』
『イーランは気がいい霊獣だぞ。おっさんと違って気難しくないぞ』
ドライヒルトは雷のように唸って、頭を振った。
『うるさい! これだから、ガキどもは。イーランは子ども好きだから、幼い者がちょろちょろしていても気にしない。だが、ガネンの民。お前はもう一人前のおとなとしてイーランに頼み事があるのだろう。ならばイーランは、お前の資格を見定める』
たしかに、ガネンの森でイーランと会った時、イーアはとても幼かった。
それに、『イーランの来訪所』にはガネンの民は立ち入り禁止というルールがあった。それはガネンの民がいるとイーランが来てくれないからだったのかもしれない。
グランドールの奨学生試験でイーアがイーランを呼び出せたのは、ティトがたまたまガネンの森に来ていたイーランに代わりに行くようお願いしてくれたからだ。
たしかにイーランは霊獣の願いなら簡単に聞いてくれるのだろう。
だけど、ドライヒルトがいうように、もう子どもではない今のイーアの前には、イーランは現れないかもしれない。
『イーランに会うための資格って何?』
イーアがたずねると、ドライヒルトは言った。
『イーランの五色の毛を手に入れて持ち歩け。その状態で条件を満たせば、イーランに伝わるかもしれない』
『わかった。ありがとう! ドライヒルト』
『俺の名はバーラインだ』
『風雷の魔豹王ドライヒルト』バーラインはそう名乗ると、イーア達に背をむけ、嵐の中へと戻って行った。
『ありがとう、バーライン!』
『あんがとな。おっさん!』
『礼はいらんから静かにしろ! ガネンの生き残りどもめ。これだからガキは嫌いなんだ。うるさくてたまらん』
バーラインが唸るようにぶつぶつ言う声が嵐の轟音の中に消えていった。
『イーランの休み処に行こう!』
イーア達はさっそくバーラインが教えてくれた方角へ進んでいった。『イーランの休み処』までの道では、もうワイヒルトに襲われることはなかった。
『ドライヒルトはワイヒルトの親玉だからな。あのおっさんに話をつければもうこの辺のワイヒルトは襲ってこないだろ』
ティトはそう言った。
イーアは歩きながらふと『友契の書』を開いてみて、気が付いた。
『ドライヒルトとワイヒルトが召喚可能になってる! バーライン、うるさいって、あんなに文句言ってたのに、契約してくれたんだね』
『昔、父ちゃんが言ってたな。トイネリアのドライヒルトは、ぶっきらぼうだけど困ってる奴は見捨てない良い奴だって』
やがて『イーランの休み処』に着いた。
『イーランの休み処』は、静かで穏やかな場所だった。
大きなホムホムがたくさん浮いていて、ガネンの森の『イーランの来訪所』にも似ていたけれど、ここの方が広くて日差しがやさしく降り注いでいる。
『イーランの毛って、どんなのだろ』
イーランは赤青黄白黒5色の毛並みで翼をもつ一角獣だ。毛の色や特徴は部位によって様々なはずで、イーアには毛を見てイーランのものかどうか見分ける自信がなかった。
『とりあえず、いっぱい毛を集めとけばいいかな。他の霊獣のが混ざってても困らないもんね……あ!』
穏やかに日差しが降り注ぐ平べったい岩の上で、美しい色彩の何かが輝いていた。
イーアは近寄ってベッドのような岩の上をよく見た。様々な色の輝く毛が落ちている。
『イーランのっぽいかも。どう思う? ティト』
『イーランくさいな。まちがいないぞ。ここで昼寝してたんだろ。ここは日当たりいいから』
イーアはイーランの美しい毛を集めて、毛を糸みたいにより合わせて結んだ。ただ毛をまとめただけだけど、様々な色がキラキラ光って美しい。
『青、赤、白、黄色、黒、ちゃんと五色あるね。これでオーケー。これを持って、イーランが会ってくれる条件っていうのを満たそう。……どこで何すればいいのかわからないけど』
『おれもまったく知らん』
『うーん。いったん帰ろうか。ゲオ先生……でも知らなさそうだけど、聞いてみようかな。じゃあ、ティト、またね。ルヴィ、ウェルグァンダルの塔に帰還させて』
イーアは、ウェルグァンダルの塔に戻った。
穏やかで美しい『イーランの休み処』から一転、一瞬で周囲の光景は荒涼として寒々しい、霧に包まれた暗いウェルグァンダルの塔の傍に変わった。
(せっかく塔を引っ越すんなら、もっといい場所に引っ越せばよかったのに)
と、イーアは思ったけれど、そうもいかなかったのだろう。
以前は塔の周りにあった黒々とした林もほとんどなくなり、塔の周辺は前よりも寂しい状態だ。
だけど、塔が移転した時にいっしょに引っ越してきた精霊達が徐々に荒れ地に林を作りだしていて、空にはヤララの友達の霊鳥たちが警戒するように飛び交っている。
『ぶきみだけど、ここに帰ってくるとほっとするんだよね』
つぶやきながらイーアが塔の入り口で呼び鈴を鳴らそうとした時、イーアのカバンの中でケイニス特製の通信機が鳴り響いた。
通信機をとると、ケイニスの、焦りを必死に隠そうとしている声が聞こえた。
「不死者の王がギルフレイ侯爵領に入った。帝国軍がギルフレイ侯爵領を包囲していて、反帝国勢力は脱出できない。このままでは領内にいる仲間と領民が皆、不死者の王の軍勢に殺される」
帝国軍は、ギルフレイ侯爵領を封鎖、不死者の王の力を利用して侯爵領内の反帝国勢力を一掃するつもりのようだ。領内の人々をみんな犠牲にして。
ケイニスは暗い声でさらにつけ加えた。
「それから、ヨルヴァ城にいたギルフレイ侯爵が帝国軍に捕らえられた」
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