もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
184 / 207
第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第184話 幽閉されたアラム

しおりを挟む
 ギルフレイ侯爵領ヨルヴァ城内。

「ぼくは帝都にでもどこにでも連行されますから、領民を避難ひなんさせてください。このままでは、子どもや老人まで皆、あの怪物、不死者の王の軍勢に殺されてしまいます」

 アラムは必死に訴えたが、帝国軍の将校は「不死者の王」と死せる兵士達のことを信じてくれなかった。
 帝国軍の指揮官はむしろ優しい声でアラムをさとすように言った。

「怪物? 不死者の王? そんなものはおりませんよ。落ち着いてください、ギルフレイ卿。我々は、侯爵領内の反乱軍を掃討そうとうするまで、ギルフレイ卿をこの城で保護するように命じられているだけです。何も心配することはありません。ここでゆっくりお休みください」

 部屋から帝国軍将校が出て行くと、アラムは絶望的な表情でため息をついた。

「だめだ。あの人達は何も知らされていない。ぼくが精神を病んでいると思ってる」

 アラムの傍にひかえているメイドが無表情なまま落ち着いた声で言った。

「お気をたしかに。いざとなれば我々がアラム様を脱出させます」

「それじゃだめだよ。ベレタ。帝国軍の包囲をかなければ、領内にいる人達が不死者の王に殺されてしまう。このままじゃ、フレイヤ人だってみんな殺されてしまう」

「我々の最優先さいゆうせん事項じこうはアラム様の安全です」

 この城の中には、ここでメイドのふりをしているベレタをふくめ、かつてのアンドルの部下が何人もいる。
 アンドルには<白光>の部下のほかに、戦地に連れていく子飼いの精鋭せいえいがいた。
 元々庶民として育ったアンドルは、普通の大貴族と異なり、部下に実力と忠誠以外を求めず、どんな出自であっても平等に扱った。
 そのため子飼いの部下は皆、平民であり、少数民族の者も多かった。

 その中には、ギルフレイ侯爵領内の先住民族フレイヤ人が幾人いくにんもいた。
 アンドルの前の侯爵とその息子はフレイヤ人の虐殺や拷問を行っていたため、アンドルが父と兄を殺した時に、フレイヤ人の一部はアンドルに協力するようになった。

 ベレタはその一人だった。一見、線の細い女性だが、実は凄腕すごうでの戦士だ。

 アンドル配下のフレイヤ人達はもともと帝国ではなくアンドル個人に忠誠をちかっており、帝国にはむしろ敵意をいだいていた。
 アンドルの死後、彼らの一部は反帝国をかかげるフレイヤ人組織に加わり、残った者はバルゴとともにアラムの身辺警護に当たった。
 
 警護の者達は普段はアラムのメイドや執事、召使いのふりをしている。
 だから、帝国軍がこの城にやってきた時、暴れたバルゴは監禁されてしまったが、冷静に事態を見ていた他の者は皆、今も城内で何食わぬ顔で働いている。
 彼らはその気になればすぐに城内の帝国軍兵を制圧できるだろう。

 だけど、そんなことをしても今は意味がない。
 帝国軍を城から追い払っても、侯爵領を包囲している帝国軍はいなくなるどころか、むしろ、増援が送られてしまう。

 今はおとなしく何の力もない無能な領主の演技を続けるのが最善の一手、とアラムは判断した。
 そして幸か不幸か、演技の必要すらなかった。
 帝国軍の指揮官は、アラムのことを、反乱軍の脅威きょういの前に精神を病んでしまったかわいそうな少年領主だと思いこんでいる。
 
 ベレタは冷静な声で言った。

「領内の者達は自ら身を守りましょう。できなければ、それまでです。それに、あの化け物は、召喚士の方々が対応してくれるのでは?」

 アラムはよわよわしくうなずいた。

「うん。そうだね。不死者の王のことは、姉さん達を信じよう」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...