もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第185話  不死者の王の進路

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 ギルフレイ侯爵領内の森の中、イーアはゲオを見つけた。

「ゲオ先生! 状況はどうなっていますか? アラムが、ギルフレイ侯爵が帝国軍につかまったって聞きました」

 ゲオは落ち着いた声で言った。

「侯爵殿の心配はいらないだろう。たしかにヨルヴァ城は帝国軍に占拠されたが、侯爵殿の身に何かあったというしらせはない。城内には手練てだれの者が幾人もいると聞く。おそらく、あえて抵抗せずに帝国軍に協力する振りをしているのだろう」

 だとすれば、下手へたにイーアが駆け付けた方が、面倒なことになるかもしれない。
 アラムは表向きは「がんばって反乱軍を制圧しようとしているけれど、うまくいかずに好き放題やられている領主」のはずなのだ。

「わかりました。そう言う状態なら、バルゴもいるし、きっとアラムはだいじょうぶだと、わたしも思います。不死者の王は?」

 不死者の王はすでに侯爵領内に入り、今イーア達がいる場所のすぐ近くまで来ている。
 ゲオは今度は険しい表情で言った。

「いかんともしがたい。なんとか手持ちの精霊で不死者の軍勢の侵攻を遅らせるように手をつくし、その間に避難を進めさせているが」

「侯爵領の外へ行く道は全部封鎖ふうさされているらしいです」

「ああ。そうらしい。だが、それについては、まぁ、いざとなれば、どうとでもなるだろう」

 侯爵領を包囲している帝国軍は、いざとなれば、倒してしまえばいい。
 イーアなら、ゲオなら、ウェルグァンダルの召喚士達なら、道路を封鎖している帝国軍くらい簡単に倒せる。
 
 問題は人々をそこまで避難させることだった。ゲオの表情を見る限り、うまくいっていないようだ。

「不死者の王は死者をその軍勢に加えていく。一度追いつかれ、死者が大量に増えれば、手のほどこしようがなくなる。とにかく今は避難を早く進めることだが……」

 ゲオは、お願いした言葉を大声で叫び続けてくれる『大声鸚鵡タオーバン』の群を召喚して、各地に避難を呼びかけるアナウンスをしている。
 だけど、領内では帝国軍の反乱軍掃討も行われていて、避難は簡単にはできない状態だ。

 アナウンスを信じず避難しない人もいるだろうし、避難したくても体が不自由な人は簡単には避難できない。
 しかも、どこへ逃げるのか、どれだけの期間かかるのか、誰もたしかなことはわからないのだ。
 数人の召喚士が領内で避難誘導ひなんゆうどうをしてくれているけれど、避難はなかなか進んでいない。

 その状況を聞いて、イーアは言った。

「ゲオ先生。みんなの避難を助けてください。不死者の王の足止めは、わたしがします」

 ・・・

 不死者の王は戦場で従えた沢山たくさんの死せる兵士を引き連れ、すでに無人となった村に足を踏みいれていた。
 あの兵士達には、普通の攻撃はきかない。
 斬っても撃っても歩き続け、周囲にあるものを破壊し続ける。
 すでに死んでいる者は殺せない。
 だけど、倒せなくても動けなくすればいい。
 被害者がいなくなればそれでいいのだ。

 そう考えたイーアは村の裏山に隠れながら、グモーチに指示をだした。

『グモーチ、村の周囲に沿って長い落とし穴を掘って。死者の兵士たちが村の外に出られないように。掘り終わったらなるべく遠くに避難してね』

 グモーチの仕事は早い。グモーチ達は不死者の王の軍勢がやってくる前にしっかり穴を掘り終え、人が踏めば落ちてしまう程度に、ほんの少しだけ表層に土を残した落とし穴ができあがっていた。
 村の端にやってきたところで死せる兵士達は次々にグモーチが掘った穴に落ちていった。
 死せる兵士も不死者の王も、足もとをよく見るだけの知能はないようだった。
 遅れて進んできた不死者の王も穴の中へと落ちた。
 だけど、巨大な不死者の王は腰のあたりまでしか穴の中に入っていない。

 『グモーチ、不死者の王の足元の穴をさらに深く掘って』と、イーアが指示を出そうとした時。
 突然、不死者の王はその手にもつ王杓を高く掲げた。
 その姿勢のまま、不死者の王の全身がゆっくりと上昇し穴からでてくる。
 不死者の王は浮遊していた。
 そして、不死者の王の周囲にいた死せる兵達もいっしょになって空中へ浮かび上がっていく。

『だめか!』 

 悔しそうに唸るティトに、イーアは特に悔しさは感じずうなずいた。

『だね。グモーチのみんな、ありがとう。いったん帰って』

 どうせダメ元だった。この程度でずっと足止めできるなら、ゲオがとっくにやっているだろう。
 空中に浮かぶ不死者の王と死せる兵士達を見ながらイーアはつぶやいた。

『浮遊魔法まで使えるんだね。しかも、あんなにたくさんの兵士を浮かべるなんて』

 不死者の王はまるで優秀な魔導士のようだ。
 そう思った時、イーアは何かひっかかるものを感じた。

『不死者の王は古代魔術で作った巨大な魔動人形みたいなものだって、ゲオ先生は言っていたけど。本当かな。不死者の王はまるで意志があるみたいだよね。平原から侯爵領へも一直線に来たし』

『でも、魔導士達が造る人形は、色々自分で判断して動くぞ。マーカスだってそうだろ?』

 ティトはそう言い、イーアは自信なく答えた。

『マーカスは人形の体なだけで、マーカスだから』

 人形に魂をいれたマーカスは、ちゃんと以前と同じ記憶を持ち、自分のことをマーカスだと思っている。体は人形になったけれど人間の頃と特に変わらない、はずだ。
 本当に以前のマーカスと同じなのかは、誰にもわからないけれど。

 実はマーカスがどういう仕組みになっているのか、くわしいことはイーアもわからない。イーアはフーシャヘカが消える前に残してくれた指示に従っただけだから。

 イーアは思い出して言った。

『ボンペール商会と帝国軍が造った魔動人形も、実は人間の魂を自分の意志をもたない人工魂魄に変えて使ってるんだって。だから、自分で考えて動いている魔動人形は実は本当は人間なんだよ』

 ティトはうなった。

『人を意志をもたない人形に変えるなんて。人間は本当にひどいことをするな』

『うん。でも、不死者の王って人工魂魄が使われている魔動人形とは違う感じがするよね……』

 それに、あれだけ強大な力を持つものに、<白光>は人工魂魄を使うだろうか? 
 人工魂魄が暴走してしまえばコントロールが効かなくなる。
 <白光>と帝国軍が使う魔動人形はしょせん下級兵士と同レベルの使い捨ての駒だった。
 あの不死者の王に同じ人口魂魄を使うとは思えない。
 ということは、ひょっとして、「不死者の王」は……。

 不死者の王は大勢の死者の軍勢を引き連れて、再び進みはじめた。一直線にどこかに向かっているように見える。
 ティトがつぶやいた。

『あのばけものは、どこに向かって進んでるんだ?』

『この先は……』

 イーアは不死者の王が進むその先を地図で確認した。
 その先には、今は帝国軍に占拠されているヨルヴァ城があった。

『アラムがいるお城だ……』
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