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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第196話 イーアVS不死者の王
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戦場は常に悲惨だった。だが、この戦場の悲惨さは類を見なかった。
「助けてくれ! 助けてくれ! 俺はまだ死ねない!」
「あぁ、神様……。どうか……」
「痛い……痛い……早く殺してくれ……」
兵士たちは叫びながら、不気味な死せる兵に、噛みつかれ、叩き切られ、恐怖と苦痛にもがきながら死んでいく。
その中を、まだ死者に捕らえられていない兵士達が必死に逃げていた。
(もうだめだ。兵士になんてなるんじゃなかった。母ちゃん!)
地面に横たわる死体がのばした手に足をとらえられて転び、死せる兵にボロボロの剣で襲われようとしていた若い兵士が心の中そう叫んだ時。
死せる兵士は巨大な狼に咥えられ、氷漬けになった。
「早く逃げて!」
褐色の肌の少女が近くでそう叫んでいた。
「君は……?」
「早く!」
「君も逃げなきゃ……」と兵士が言いかけたが、少女は手に持つ本に、聞こえない言葉で何かを言っていた。
少女の周囲には、青い岩のようなものが絶えず動きながら壁をつくっていた。
だが、その傍にいる大男が大剣で死せる兵をことごとく吹き飛ばしているため、少女の傍に近づける者はいなかった。
大男と反対側には、全身を光に包まれた見たことのない大きな獣がいて、不死者の兵に体当たりをしていた。
斬っても痛みを感じる様を見せない不死者の兵が、光り輝く獣にぶつかられると、もだえ苦しみ、そして倒れていった。
「あの獣は光の精霊……あの子は、精霊を使う……ダークエルフ? いや、むしろ、光の女神……」
生と死の狭間にいる若い兵士の目からは、とめどおりなく涙が流れていった。
・・・
(よかった。どうにかなりそう)
イーアは思った。
不死者の王が連れ歩いている兵士は不死身だけど、一体ごとの戦闘力は低かった。
今は不死者の王はほとんど何もしないから、死せる兵士達さえ倒せば、殺されかけている帝国軍兵士たちを救える。
ティトは全身に光をまとい、死せる兵士に体当たりをして攻撃していた。
ラシュトが太陽の霊獣と呼ばれる理由のひとつは、全身から光を放ち体当たりするときの姿だ。だけど、今のティトの攻撃はラシュトの全力の体当たりではない。
ティトは『ちょっとだけ力をいれてぶつかってみる』と言っていたけど、不死者の王の兵をしばらく眠りにつかせるにはそれで十分だった。
それに、双頭の狼オルゾロを召喚した時に、生ける屍となった兵士は凍結で動きをとめられそうなことに気がついた。
イーアはエルブロンの雪山で仲良くなった精霊達を呼んだ。
『氷雪妃ピリラレルカ、雪霊獣王ドフラック! 死んでいる兵士を氷漬けにして!』
美しい女の人のような雪の精霊ピリラレルカと、けむくじゃらの巨人みたいな精霊ドフラックが、それぞれ雪の精霊ピリラルやヒューラック達を連れてあらわれた。
姿をあらわしたドフラックはすぐに吠え声をあげ、すると周囲は突然、雪の嵐の中のようになった。
ドフラックは毛むくじゃらの全身に雪をまとわりつかせて、死せる兵士に抱きついて雪まみれにして凍らせた。
ピリラレルカがふっと顔の近くに息を吹きかけると、死せる兵士はとたんに凍り付く。
死せる兵士達の無力化はうまくいっている。
これで不死者の王の軍勢を少しは足止めできるだろう。
「さっむ!」と、向こうの方でオッペンが叫んでいて、(わたしも凍えそう……)と思いながら、イーアは、さらに召喚した。
『ワイヒルトのみんな! 不死者の王の闇のローブを吹き飛ばして!』
ワイヒルトは闇と風を操る。
あの不死者の王が纏っている闇のローブのように見えるものが何かはよくわからないからワイヒルトに吹き飛ばせるかはわからなかったけれど、イーアはとにかく試してみることにした。
周囲に強い風が巻き起こり、ドライヒルトのバーラインがワイヒルト達を引き連れてあらわれた。
『面妖なものと戦っているな。ガネンのこわっぱども。まぁ、いい。行くぞ! 闇を払え!』
バーラインがワイヒルト達とともに不死者の王にむかって竜巻を起こした。
不死者の王がまとっていた闇のローブが、その特殊な風でかき消された。
そして、闇に隠されていた不死者の王の胴体、その胴体を形作るたくさんの呪文や魔法陣が刻まれた金属パーツが見えた。
『あれが本体……』
ついに、不死者の王の正体をつかんだ。
不死者の王の魔道具でできた部分は胴体全体に広がっていて、鎧のように見える部分もあった。
ティトがうなるようにイーアにたずねた。
『イーア、どこを攻撃すればいい?』
『人間だと心臓がある辺りとおへその辺りの防御が特に強そう。たぶん、急所はあの二か所だと思う。壊せると思う?』
ティトは自信なさそうに言った。
『わからん。全力でやれば、一か所なら……』
エラスシオにもう一か所を頼めば、どうにかなるかもしれない。
エラスシオは、光魔法は防御の方が得意で、攻撃はあまり得意ではないらしいけれど、それでもさっき不死者の王の腕を切り落とすことができたから、たぶん、ある程度は効く。
イーアがエラスシオを呼ぼうとした時、突然、背後で声が聞こえた。
「魔導銃隊、狙いを定めろ!」
はっとして、イーアが振り返ると、たくさんの帝国軍の兵士達が列をなして銃を構えていた。
イーアは不死者の王とその兵士に集中していたため、帝国軍の動きを見ていなかった。
「撃て!」
たくさんの魔導銃から一斉に光属性の魔法が放たれた。不死者の王へ向かって。
すでに不死者の王の胴体は再び闇のローブで包まれていたから、魔導銃から放たれた大量の光魔法はそこでかき消されてしまったが。
遠くから、声が聞こえた。
「姉さん! 援護します!」
「アラム?」
なぜか敵であるはずの帝国軍がアラムに従いイーアに協力している。
でも、なぜかなんて理由を考えている暇は今はない。イーアはエラスシオを召喚して、精霊達に指示を出した。
『ティト、力を貯めて。ティトの準備が終わったら、バーラインとワイヒルト達が闇のローブを消して、闇のローブが消えたらみんなで攻撃。エラスシオが心臓の位置、ティトはおへそ』
ティトは尻尾に強い光を貯めはじめた。
戦場にオーロラ色の美しい首長水竜がふたたび現れた。
精霊語はわからないはずなのに、雰囲気で察したらしく、オッペンがマーカスにむかって叫んでいた。
「俺達は攻撃の準備ができるまでイーアと黄色い霊獣を守るぞ!」
「言われなくても、わかっている!」
「お前らの出る幕はねぇぜ」と、バルゴが言ったけど、すでにバルゴの出番もないくらいに、周囲の死せる兵士は氷漬けになっていて、ドフラックが任せろと言うように胸を叩いて、ヒューラック達がヒューヒュー言いながらしっぽをふっていた。
ティトの準備が終わり、イーアは叫んだ。
『バーライン、お願い!』
バーラインとワイヒルト達が再び竜巻を起こし、不死者の王の闇のローブを吹き消した。
ほとんど同時に、エラスシオの光魔法、ティトの光線攻撃、そして帝国軍の魔導銃の攻撃が不死者の王を一斉に襲った。
「助けてくれ! 助けてくれ! 俺はまだ死ねない!」
「あぁ、神様……。どうか……」
「痛い……痛い……早く殺してくれ……」
兵士たちは叫びながら、不気味な死せる兵に、噛みつかれ、叩き切られ、恐怖と苦痛にもがきながら死んでいく。
その中を、まだ死者に捕らえられていない兵士達が必死に逃げていた。
(もうだめだ。兵士になんてなるんじゃなかった。母ちゃん!)
地面に横たわる死体がのばした手に足をとらえられて転び、死せる兵にボロボロの剣で襲われようとしていた若い兵士が心の中そう叫んだ時。
死せる兵士は巨大な狼に咥えられ、氷漬けになった。
「早く逃げて!」
褐色の肌の少女が近くでそう叫んでいた。
「君は……?」
「早く!」
「君も逃げなきゃ……」と兵士が言いかけたが、少女は手に持つ本に、聞こえない言葉で何かを言っていた。
少女の周囲には、青い岩のようなものが絶えず動きながら壁をつくっていた。
だが、その傍にいる大男が大剣で死せる兵をことごとく吹き飛ばしているため、少女の傍に近づける者はいなかった。
大男と反対側には、全身を光に包まれた見たことのない大きな獣がいて、不死者の兵に体当たりをしていた。
斬っても痛みを感じる様を見せない不死者の兵が、光り輝く獣にぶつかられると、もだえ苦しみ、そして倒れていった。
「あの獣は光の精霊……あの子は、精霊を使う……ダークエルフ? いや、むしろ、光の女神……」
生と死の狭間にいる若い兵士の目からは、とめどおりなく涙が流れていった。
・・・
(よかった。どうにかなりそう)
イーアは思った。
不死者の王が連れ歩いている兵士は不死身だけど、一体ごとの戦闘力は低かった。
今は不死者の王はほとんど何もしないから、死せる兵士達さえ倒せば、殺されかけている帝国軍兵士たちを救える。
ティトは全身に光をまとい、死せる兵士に体当たりをして攻撃していた。
ラシュトが太陽の霊獣と呼ばれる理由のひとつは、全身から光を放ち体当たりするときの姿だ。だけど、今のティトの攻撃はラシュトの全力の体当たりではない。
ティトは『ちょっとだけ力をいれてぶつかってみる』と言っていたけど、不死者の王の兵をしばらく眠りにつかせるにはそれで十分だった。
それに、双頭の狼オルゾロを召喚した時に、生ける屍となった兵士は凍結で動きをとめられそうなことに気がついた。
イーアはエルブロンの雪山で仲良くなった精霊達を呼んだ。
『氷雪妃ピリラレルカ、雪霊獣王ドフラック! 死んでいる兵士を氷漬けにして!』
美しい女の人のような雪の精霊ピリラレルカと、けむくじゃらの巨人みたいな精霊ドフラックが、それぞれ雪の精霊ピリラルやヒューラック達を連れてあらわれた。
姿をあらわしたドフラックはすぐに吠え声をあげ、すると周囲は突然、雪の嵐の中のようになった。
ドフラックは毛むくじゃらの全身に雪をまとわりつかせて、死せる兵士に抱きついて雪まみれにして凍らせた。
ピリラレルカがふっと顔の近くに息を吹きかけると、死せる兵士はとたんに凍り付く。
死せる兵士達の無力化はうまくいっている。
これで不死者の王の軍勢を少しは足止めできるだろう。
「さっむ!」と、向こうの方でオッペンが叫んでいて、(わたしも凍えそう……)と思いながら、イーアは、さらに召喚した。
『ワイヒルトのみんな! 不死者の王の闇のローブを吹き飛ばして!』
ワイヒルトは闇と風を操る。
あの不死者の王が纏っている闇のローブのように見えるものが何かはよくわからないからワイヒルトに吹き飛ばせるかはわからなかったけれど、イーアはとにかく試してみることにした。
周囲に強い風が巻き起こり、ドライヒルトのバーラインがワイヒルト達を引き連れてあらわれた。
『面妖なものと戦っているな。ガネンのこわっぱども。まぁ、いい。行くぞ! 闇を払え!』
バーラインがワイヒルト達とともに不死者の王にむかって竜巻を起こした。
不死者の王がまとっていた闇のローブが、その特殊な風でかき消された。
そして、闇に隠されていた不死者の王の胴体、その胴体を形作るたくさんの呪文や魔法陣が刻まれた金属パーツが見えた。
『あれが本体……』
ついに、不死者の王の正体をつかんだ。
不死者の王の魔道具でできた部分は胴体全体に広がっていて、鎧のように見える部分もあった。
ティトがうなるようにイーアにたずねた。
『イーア、どこを攻撃すればいい?』
『人間だと心臓がある辺りとおへその辺りの防御が特に強そう。たぶん、急所はあの二か所だと思う。壊せると思う?』
ティトは自信なさそうに言った。
『わからん。全力でやれば、一か所なら……』
エラスシオにもう一か所を頼めば、どうにかなるかもしれない。
エラスシオは、光魔法は防御の方が得意で、攻撃はあまり得意ではないらしいけれど、それでもさっき不死者の王の腕を切り落とすことができたから、たぶん、ある程度は効く。
イーアがエラスシオを呼ぼうとした時、突然、背後で声が聞こえた。
「魔導銃隊、狙いを定めろ!」
はっとして、イーアが振り返ると、たくさんの帝国軍の兵士達が列をなして銃を構えていた。
イーアは不死者の王とその兵士に集中していたため、帝国軍の動きを見ていなかった。
「撃て!」
たくさんの魔導銃から一斉に光属性の魔法が放たれた。不死者の王へ向かって。
すでに不死者の王の胴体は再び闇のローブで包まれていたから、魔導銃から放たれた大量の光魔法はそこでかき消されてしまったが。
遠くから、声が聞こえた。
「姉さん! 援護します!」
「アラム?」
なぜか敵であるはずの帝国軍がアラムに従いイーアに協力している。
でも、なぜかなんて理由を考えている暇は今はない。イーアはエラスシオを召喚して、精霊達に指示を出した。
『ティト、力を貯めて。ティトの準備が終わったら、バーラインとワイヒルト達が闇のローブを消して、闇のローブが消えたらみんなで攻撃。エラスシオが心臓の位置、ティトはおへそ』
ティトは尻尾に強い光を貯めはじめた。
戦場にオーロラ色の美しい首長水竜がふたたび現れた。
精霊語はわからないはずなのに、雰囲気で察したらしく、オッペンがマーカスにむかって叫んでいた。
「俺達は攻撃の準備ができるまでイーアと黄色い霊獣を守るぞ!」
「言われなくても、わかっている!」
「お前らの出る幕はねぇぜ」と、バルゴが言ったけど、すでにバルゴの出番もないくらいに、周囲の死せる兵士は氷漬けになっていて、ドフラックが任せろと言うように胸を叩いて、ヒューラック達がヒューヒュー言いながらしっぽをふっていた。
ティトの準備が終わり、イーアは叫んだ。
『バーライン、お願い!』
バーラインとワイヒルト達が再び竜巻を起こし、不死者の王の闇のローブを吹き消した。
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