もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第197話 イーラン召喚

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 激しい光が不死者の王の胴体へと集中し、あまりに眩しかったため、攻撃が当たった瞬間はよく見えなかった。
 不死者の王の胴体から、破壊されたパーツがぱらぱらと地表に落ちていった。
 兵士達がどっと歓声をあげた。

 だけど、イーアは不死者の王の姿を睨んでいた。

(だめ。急所は破壊できてない)

 闇のローブが不死者の王の体を包んでいく。

『もう一度……』 

 イーアが指示を出そうとした時、不死者の王の動きが変わった。
 不死者の王は王杓を振り上げ地面に叩きつけ、とたんに、立っていられないくらいに地面が大きく揺れた。

「げっ! あいつ、脳みそが復活したみたいだぞ!」

 オッペンの声を聞くまでもなく、見ている者は皆、感じとっていた。
 不死者の王は、まるで意志を持つかのような動きに戻ってしまった。きっと、ふたたび色んな術を使いだすだろう。
 不死者の王が立ち止まり、叫びだそうとしていた。ここで霊力吸収と魔法無効攻撃がきたら、もう打つ手がない。

 その時、『友契の書』からルヴィの声が聞こえた。

『新たな精霊と一時的な限定契約が成立しています』

 イーアは気が付いた。いつの間にか『友契の書』のページが勝手にめくれて、見たことのないページが光っていた。

『イーラン……?』

 そこには、イーランの姿が描かれていた。

『イーラン! お願い。不死者の王を倒して!』

 イーアが『友契の書』にむかってそう叫び終える前に、イーランはすでに姿を現していた。
 重傷者が地面に横たわり死せる兵士が呻きながら歩き回る絶望的な戦場の上空に、五色に輝く美しい毛並みと白い炎のような翼をもつ荘厳な霊獣があらわれた。

『仁愛の神獣イーランか。並外れた仁愛の心を持つ者しか会うことはできないという。敵をも助ける己の慈悲深さに救われたな。ガネンの子よ。もう我の出番はあるまい』

 オーロラ色のドラゴン、エラスシオがそう言って姿を消した。

『フンッ。まさか本当に仁愛の条件を満たしてイーランを呼ぶとはな。よくやった。ガネンの生き残り』

 鼻を鳴らしてそう言って、ドライヒルトのバーラインは、ワイヒルト達とともに帰還していった。

 五色の光を放ちながらおごそかに空中にたたずむイーランの足下の地表で、血を流し倒れていた兵士たちが体を起こした。
 重傷だったはずの兵士達の傷がみるみるとふさがっていく。
 イーランを中心に白い光が広がっていき、その光に包まれた重傷者たちは回復していき、死せる兵士達は自分がすでに死んでいることを思い出したかのように次々と崩れ落ち倒れていった。

 叫びだそうとしていた不死者の王に向かい、イーランはゆっくりと歩いて行った。
 おごそかに、まるで攻撃する意志なんてないように、五色の光をまといイーランは四本の足で兵士達の頭上を渡っていく。

 イーランが近づくにつれ、不死者の王が纏っていた闇の衣が、まるで太陽が姿をあらわす夜明けの時のように、薄まり消えていった。 
 不死者の王の前にやってきたイーランは、鼻先をそっと不死者の王の胴に触れた。

 ガラガラと不死者の王の体を構成していた部品が崩れ落ちていった。
 まるでさっきまで恐怖をふりまいていた巨大な怪物がすべて幻だったかのように、不死者の王だったものは崩れ落ち、地面には魔道具の山だけが残った。

「倒した……?」
「ばけものを倒したぞ!」

 兵士達が驚きと歓びの声を上げる中、イーアは驚きすぎて何も言えず、ただその光景を見ていた。
 ティトも『イーランって、本当にすごかったんだな』と、驚いたようにつぶやいていた。

 不死者の王を倒したイーランは、イーアの方にふりかえり、今度はイーアの方に向かってゆっくりと歩いてきた。
 枯れはてていた荒れ地の草がイーランが一歩歩みを進めるごとに足元で生き生きとした緑に戻っていく。
 イーアの前に来ると、イーランは大きな顔を近づけてイーアの顔をのぞきこみながら言った。

『ふむ。仁愛ある者よ。お前はよき王になろう』

 イーアはイーランに言った。

『ありがとう。イーラン。でも、わたしは王様にはならないよ。わたしたちは王様のいない国をつくるから』

『好きにするがよい。では、またな』

 五色の光を一瞬だけ残し、イーランの姿は消えた。

 兵士達が歓声を上げる中、「よっしゃー! 完全勝利だ!」というオッペンの叫び声が響き、バルゴが叫んだ。

「たまげたな。死人が生き返ってるぞ!」

 すでに一度死に、死せる兵士に身を変えていた者たちが起き上がり、ふしぎそうにあたりを見渡していた。すべての人ではないけれど、イーランの力で生き返った人達がいた。

 喜び抱き合う兵士達の間を、アラムがほおを紅潮させて駆けてきた。

「イーア姉さん! さすがです! 不死者の王を倒しちゃうなんて! 信じられません!」

「アラム、避難してなかったの?」

 アラムの後ろに、すごく不機嫌そうな顔の執事姿の護衛の人と、表情には出さないけれど多分心の中でアラムに怒っていそうなベレタが立っていた。

「ぼくだけ避難するのは、耐えられなくて」

 バルゴが大声で笑った。

「そりゃ、逃げやしねぇよな。アラムもイーアも同じ豪傑の血を引いてんだ」

 そう言うバルゴをベレタがとがめるようにギロリと睨んだ。

「あ、姉さん、紹介します。あの人が帝国軍の指揮官のトートフさんです」

 アラムは向こうから歩いてくる軍人を手で示して言った。イーアはとまどった。

「帝国軍のえらい人? わたしが会っちゃまずいんじゃ……。まだ正体はバレてないかもしれないけど……」

「いえ、トートフ連隊長は……」

 アラムが全て言う前に、兵士達が声を合わせて叫びだした。

「ダークエルフ万歳!」

 何度も何度も、兵士達は嬉しそうに「ダークエルフ!」と叫んでいる。

「バレちゃってたんだね……」

 イーアは、今日は銀髪のかつらはつけていないし、帝国軍が協力してくれたということは正体に気が付いていないのかと思っていたけれど。
 アラムは力強くうなずいた。

「はい。もちろん。トートフ連隊長は帝国政府への裏切りとなるのは覚悟の上で協力してくれました。たぶん、この後も協力してくれると思います」

 この場にいるトートフ指揮下の兵士達が味方になってくれる。
 それは、反帝国同盟にとっては大きな援軍になる。
 アラムは言った。

「同盟勢力に、反転攻勢の連絡をします。これから一気に帝都を落とします」
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