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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第200話 迎撃
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イーアが帝都に着いた時には、すでに帝都は革命軍が占領していた。
イーアが不死者の王と戦っていた頃、実はザヒが率いるギアラド人部隊とケイニスを含む革命軍の一部の戦力はギルフレイ侯爵領とは別方面からの帝都奇襲を計画していた。
その奇襲作戦決行の直前にイーアが不死者の王を倒し、トートフ率いる旧帝国軍の部隊が寝返ったため、結局、ギアラド侯爵領側を含む二方面からの大規模な帝都攻略作戦に変わった。
帝都にはそれを迎撃する十分な戦力がなかった。
それでも、<白光>の魔導士達が帝都防衛に全力を注げば話は違ったかもしれない。だが、実際には<白光>は帝都の防衛に一切関与しなかった。
その理由を、イーアは帝都に入ってすぐ知った。
帝都に入ってすぐ、イーアのもとをユウリとともにバルトルという魔導師が訪れた。
ユウリとバルトルの話によれば、<白光>は分裂し、スタグヌス派と呼ばれるウラジナルが率いる派閥以外は革命同盟軍側に味方することを決定したらしい。
その方が犠牲者は減るし、アグラシアの未来のためにいいから、イーアは協力の申し出をあっさり受け入れた。むしろ、ユウリの方が不満そうな顔をしていた。
バルトルは言った。
「実は一刻を争う状態でね。国王は今、離宮にいるが、離宮にはこうした時のために長距離魔導砲がある。離れた地にも高威力の魔法弾を撃ち込むことができる兵器で、帝都は射程範囲内だ。王党派が帝都を早々に明け渡したのは、革命勢力を帝都に集めた後、長距離魔導砲で帝都ごと壊滅させるためだろう」
帝都にはたくさんの市民が住んでいる。
その人達をいっしょに犠牲にするなんて、イーアには信じられなかったけれど、そういうことをする人達だということは、もう十分すぎるほどに知っていた。
バルトルは話をつづけた。
「だが、実は帝都には長距離魔導砲に対応できる防衛魔導兵器がある。新政府側と協力して、できるかぎり防衛兵器を起動したい。王宮にあるはずの古代魔術を使った旧型は、私がどうにかできるだろう。最新型は開発にボンペール商会が関わっているため、今、ボンペール商会にも使者を送っているところだ。彼らがどちらに着くかはわからないが」
状況は理解できた。バルトルが嘘を言っているようには見えない。イーアはユウリを見て言った。
「わかった。王宮に行こう」
ユウリはうなずいた。
バルトルは移動魔法で宙に浮かびながら、ついでに、というように言った。
「それから、君が探している、あの石板だが」
不死者の王の残骸の中からは、『支配者の石板』は見つからなかった。
不死者の王が倒されたら自動的に『支配者の石板』が転送されるように、ウラジナルが術をかけていたみたいだった。
「あれはウラジナルが持ち去ったよ。ウラジナルの行き先はおそらく<氷の砦>だろう。帝都防衛の手筈が整ったら、君たちはウラジナルを追うといい」
バルトルはそう言うと、王宮に向かって飛んでいった。
ユウリの風魔法でイーアも空を飛んで、王宮に向かった。
王宮はすでに群衆と革命軍が占拠していた。
喜びにわく群衆の頭上を飛んでいき、イーア達は2階のバルコニーから王宮の建物内に入った。
すぐに顔なじみの革命軍の人に会ったから、イーアはケイニスがいる一室に案内してもらった。
そこには意外な光景が広がっていた。
「ケイニス! ……あれ? アイシャ? なんでアイシャがここ……お茶?」
室内の豪華なソファで、ローレインとアイシャが優雅にお茶を飲んでいた。
傍にはアイシャの家のメイドと執事らしき人達がいて、テーブルの上には高級そうな茶器とお菓子が並んでいる。
「イーアもどお?」
イーアがお茶にさそわれて、クエスチョンマークが浮かびそうな顔になったら、壁ぎわに立っていたケイニスが、「実はアイシャは以前からこっそりローレインに医療物資を流してくれていたんだ」とイーアに説明した。
アイシャは第三王子と婚約したのに、その前からずっと反体制勢力ともこっそりつながっていたらしい。
「商人の基本は全方位外交だよぉ」
アイシャはいつもののんびりした様子でそう言った。
イーアはついついその調子につられてティーカップを受け取りそうになったところで、用事を思い出した。
「そうだ! 大変だよ。離宮に逃げた国王たちが、長距離魔導砲で帝都に攻撃してくるかもしれないんだって。それで、王宮の防衛装置をバルトルさんに起動してもらうために……」
「実はその件で、アイシャが来てくれているんだ」
とケイニスは言った。高級そうな茶器が並んだテーブルの上に、通信用の水晶がおかれていた。
「パパ。準備はできたぁ?」
水晶から声が聞こえた。
「ああ。試作段階のものもあるから、すべてうまくいくとは限らないが、防衛システム起動の準備はできたよ」
どうやら、すでにボンペール商会と反帝国同盟は迎撃の準備を進めていたらしい。
「もう準備してるんだね」
イーアはほっとした。
アイシャはイーアの方を振り返って言った。
「帝都を火の海になんてさせられないよぉ。わたしたちも困っちゃうでしょぉ? だから、魔導誘導弾を跳ね返す最新防衛システムを使ってみるのぉ」
そこで、バルトルが「それは頼もしい。だが、念のため旧型も起動していいかい?」と言い、ケイニスとユウリは、バルトルとともに王宮にある古代魔術を使った防衛装置の起動に向かった。
旧型は、古代魔術の魔導師しか動かせないから、準備できないでいたらしい。
イーアはやることがないので、とりあえず、アイシャ達とお茶を楽しむことにした。
「このお菓子、おいしー!」
「でしょお。みんなと食べようと思って家から持ってきたんだぁ」
のんびり会話をしながらお茶を飲んでいたら、やがて、水晶から声が聞こえてきた。
「長距離魔導弾、帝都に向かって接近中」
それからしばらくして、再び声が聞こえた。
「迎撃! 迎撃成功! ターゲットAを跳ね返しました」
どうやら、最新防衛システムがうまく働いているようだ。
「最新型はねぇ、長距離魔導弾を破壊するんじゃなくて、相手の方に跳ね返しちゃうのぉ」
アイシャはのんびりそう言ったけど、イーアはそこでちょっと気になった。
「それって、相手の方に攻撃が行くってこと?」
「うん。狙ったところには落とせないから、試作段階で止まってたんだぁ。でも、離宮の方向にあるのは山ばかりだからたぶん問題ないって、パパは言ってたよぉ」
水晶からは報告の声が聞こえ続けていた。
「ターゲット接近、迎撃成功、ターゲットBを跳ね返しました。ターゲットC、試作型システム迎撃失敗、旧型防衛装置により迎撃成功、ターゲットCを破壊しました。ターゲットA、推定落下地点はボスフォルスの森。ターゲットB推定落下地点は……推定落下地点には離宮および<星読みの塔>が入っています……」
イーアはおもわずつぶやいた。
「<星読みの塔>……?」
イーアが不死者の王と戦っていた頃、実はザヒが率いるギアラド人部隊とケイニスを含む革命軍の一部の戦力はギルフレイ侯爵領とは別方面からの帝都奇襲を計画していた。
その奇襲作戦決行の直前にイーアが不死者の王を倒し、トートフ率いる旧帝国軍の部隊が寝返ったため、結局、ギアラド侯爵領側を含む二方面からの大規模な帝都攻略作戦に変わった。
帝都にはそれを迎撃する十分な戦力がなかった。
それでも、<白光>の魔導士達が帝都防衛に全力を注げば話は違ったかもしれない。だが、実際には<白光>は帝都の防衛に一切関与しなかった。
その理由を、イーアは帝都に入ってすぐ知った。
帝都に入ってすぐ、イーアのもとをユウリとともにバルトルという魔導師が訪れた。
ユウリとバルトルの話によれば、<白光>は分裂し、スタグヌス派と呼ばれるウラジナルが率いる派閥以外は革命同盟軍側に味方することを決定したらしい。
その方が犠牲者は減るし、アグラシアの未来のためにいいから、イーアは協力の申し出をあっさり受け入れた。むしろ、ユウリの方が不満そうな顔をしていた。
バルトルは言った。
「実は一刻を争う状態でね。国王は今、離宮にいるが、離宮にはこうした時のために長距離魔導砲がある。離れた地にも高威力の魔法弾を撃ち込むことができる兵器で、帝都は射程範囲内だ。王党派が帝都を早々に明け渡したのは、革命勢力を帝都に集めた後、長距離魔導砲で帝都ごと壊滅させるためだろう」
帝都にはたくさんの市民が住んでいる。
その人達をいっしょに犠牲にするなんて、イーアには信じられなかったけれど、そういうことをする人達だということは、もう十分すぎるほどに知っていた。
バルトルは話をつづけた。
「だが、実は帝都には長距離魔導砲に対応できる防衛魔導兵器がある。新政府側と協力して、できるかぎり防衛兵器を起動したい。王宮にあるはずの古代魔術を使った旧型は、私がどうにかできるだろう。最新型は開発にボンペール商会が関わっているため、今、ボンペール商会にも使者を送っているところだ。彼らがどちらに着くかはわからないが」
状況は理解できた。バルトルが嘘を言っているようには見えない。イーアはユウリを見て言った。
「わかった。王宮に行こう」
ユウリはうなずいた。
バルトルは移動魔法で宙に浮かびながら、ついでに、というように言った。
「それから、君が探している、あの石板だが」
不死者の王の残骸の中からは、『支配者の石板』は見つからなかった。
不死者の王が倒されたら自動的に『支配者の石板』が転送されるように、ウラジナルが術をかけていたみたいだった。
「あれはウラジナルが持ち去ったよ。ウラジナルの行き先はおそらく<氷の砦>だろう。帝都防衛の手筈が整ったら、君たちはウラジナルを追うといい」
バルトルはそう言うと、王宮に向かって飛んでいった。
ユウリの風魔法でイーアも空を飛んで、王宮に向かった。
王宮はすでに群衆と革命軍が占拠していた。
喜びにわく群衆の頭上を飛んでいき、イーア達は2階のバルコニーから王宮の建物内に入った。
すぐに顔なじみの革命軍の人に会ったから、イーアはケイニスがいる一室に案内してもらった。
そこには意外な光景が広がっていた。
「ケイニス! ……あれ? アイシャ? なんでアイシャがここ……お茶?」
室内の豪華なソファで、ローレインとアイシャが優雅にお茶を飲んでいた。
傍にはアイシャの家のメイドと執事らしき人達がいて、テーブルの上には高級そうな茶器とお菓子が並んでいる。
「イーアもどお?」
イーアがお茶にさそわれて、クエスチョンマークが浮かびそうな顔になったら、壁ぎわに立っていたケイニスが、「実はアイシャは以前からこっそりローレインに医療物資を流してくれていたんだ」とイーアに説明した。
アイシャは第三王子と婚約したのに、その前からずっと反体制勢力ともこっそりつながっていたらしい。
「商人の基本は全方位外交だよぉ」
アイシャはいつもののんびりした様子でそう言った。
イーアはついついその調子につられてティーカップを受け取りそうになったところで、用事を思い出した。
「そうだ! 大変だよ。離宮に逃げた国王たちが、長距離魔導砲で帝都に攻撃してくるかもしれないんだって。それで、王宮の防衛装置をバルトルさんに起動してもらうために……」
「実はその件で、アイシャが来てくれているんだ」
とケイニスは言った。高級そうな茶器が並んだテーブルの上に、通信用の水晶がおかれていた。
「パパ。準備はできたぁ?」
水晶から声が聞こえた。
「ああ。試作段階のものもあるから、すべてうまくいくとは限らないが、防衛システム起動の準備はできたよ」
どうやら、すでにボンペール商会と反帝国同盟は迎撃の準備を進めていたらしい。
「もう準備してるんだね」
イーアはほっとした。
アイシャはイーアの方を振り返って言った。
「帝都を火の海になんてさせられないよぉ。わたしたちも困っちゃうでしょぉ? だから、魔導誘導弾を跳ね返す最新防衛システムを使ってみるのぉ」
そこで、バルトルが「それは頼もしい。だが、念のため旧型も起動していいかい?」と言い、ケイニスとユウリは、バルトルとともに王宮にある古代魔術を使った防衛装置の起動に向かった。
旧型は、古代魔術の魔導師しか動かせないから、準備できないでいたらしい。
イーアはやることがないので、とりあえず、アイシャ達とお茶を楽しむことにした。
「このお菓子、おいしー!」
「でしょお。みんなと食べようと思って家から持ってきたんだぁ」
のんびり会話をしながらお茶を飲んでいたら、やがて、水晶から声が聞こえてきた。
「長距離魔導弾、帝都に向かって接近中」
それからしばらくして、再び声が聞こえた。
「迎撃! 迎撃成功! ターゲットAを跳ね返しました」
どうやら、最新防衛システムがうまく働いているようだ。
「最新型はねぇ、長距離魔導弾を破壊するんじゃなくて、相手の方に跳ね返しちゃうのぉ」
アイシャはのんびりそう言ったけど、イーアはそこでちょっと気になった。
「それって、相手の方に攻撃が行くってこと?」
「うん。狙ったところには落とせないから、試作段階で止まってたんだぁ。でも、離宮の方向にあるのは山ばかりだからたぶん問題ないって、パパは言ってたよぉ」
水晶からは報告の声が聞こえ続けていた。
「ターゲット接近、迎撃成功、ターゲットBを跳ね返しました。ターゲットC、試作型システム迎撃失敗、旧型防衛装置により迎撃成功、ターゲットCを破壊しました。ターゲットA、推定落下地点はボスフォルスの森。ターゲットB推定落下地点は……推定落下地点には離宮および<星読みの塔>が入っています……」
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