もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第206話 英雄の帰還

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 イーアはグランドールのお城のような、実際、昔はお城だった、重厚な校舎を見上げて、しみじみとつぶやいた。

「久しぶりだね。グランドール」

 奨学生試験で最初にここに来た時のことを思い出す。

「早く行こう。イーア」

 ユウリが感慨かんがいにふけっていたイーアをせかした。

「うん。そうだね。早くしないと、卒業式が始まっちゃうもんね。わたしはまだ卒業できないけど。ユウリだけでも卒業すればよかったのに」

 アグラシアの騒乱は終わり、<白光>に狙われることもなくなり、イーアはついに堂々と学校に戻ることになった。
 ユウリはもうとっくに卒業できる状態だけど、イーアが卒業するまではグランドールに残るといっている。
 ユウリはうんざりした表情で言った。

「卒業して、ホーヘンハインと<白光>だけの生活なんて、最悪だよ」

「それは、たしかに」

 イーアがそうユウリに言った時、校舎の方からものすごい歓声の声が響いた。

「イーアだ!」
「ユウリ=エルツだ!」
「ダークエルフの英雄だ!」
「世界を救った英雄達がいるぞ!」

 イーアには見覚えのないたくさんの生徒たちが、こっちを指さし、叫んでいる。
 イーア達が不死者の王を倒した話は、急速にアグラシア中に広まっていた。
 うわさは少し尾ひれがついていて、不死者の王はギルフレイ侯爵領だけでなく世界を滅ぼす寸前だった、みたいな話になっていた。
 あのまま不死者の王を野放しにしていたら、そうなっていた可能性はあるけれど、なんだか世界を救ったとか言われると、イーアは、おおげさな気がする。

 帝国政府と王家が倒されてから、まだそんなに時間がたっていない。だけど、革命主義者やダークエルフの評判は180度変わった。
 数年前は、帝国政府の主張に反する者は悪者だ、みたいに言っていた人が大半だったはずなのに、今は人々は帝国に反旗をひるがした人々をほめたたえるようになっている。
 帝国が犯してきた罪業が盛んに報道されるようになったせいもあるけど、ティトは『人間っていいかげんだな』って言っていて、イーアもそう感じずにはいられない。
 人の考えがこんなに簡単に変わるとは思わなかった。

 帝国に滅亡をもたらしたダークエルフは、ちょっと前までは大犯罪者あつかいだったのに、今や大英雄あつかいだ。
 やったことは同じなのに。
(なんだか変だよね)とイーアは思う。

 イーアは自分がダークエルフの正体だとは今でもいちおう明かしてはいない。
 だけど、グランドールではすっかりバレているようだ。

「イーア! こっち、こっち!」

 キャシーが呼ぶ声が聞こえた。

「早くしないと、みんなにつかまって、もみくちゃにされるわよ! 今や大人気の大英雄様なんだから!」

「キャシー! 卒業おめでとう!」

 イーアはキャシーとアイシャが待っている、寮の陰の方へ走りながら、叫んだ。

「ありがとう! みんな学校に残るから、わたしだけ卒業するのはすごくさびしいけどね」

 キャシーはイーアと軽くハグを交わしながら、そう言った。

「えへへへー」

 と、そばで笑っているアイシャは、ずっと学校に通っていたはずなのに、実はまだ卒業できないらしい。

 しばらく行方不明で休学中だったケイニスとローレイン、それからマーカスも、少し前にグランドール魔術学校に戻った。
 ただ、ケイニスとローレインは、それぞれ新政府の仕事や治療院のボランティアで忙しいから、復学してもなかなか学校には通えなさそうだ。

 マーカスは、魔動人形は普通は入学できないけど、そもそもマーカスがこうなってしまったのはグランドールの責任だということで、校長が特別に復学を認めた。

 オッペンは、どうするのかわからない。「みんなが戻るんなら、おれもグランドール行こーかな。でも、世界にゃ困ってる奴らがいっぱいいて、ヒーローはいつも忙しいからな。どうすっかな」と言っていた。
 今日も、オッペンとマーカスは来ていない。たぶん、どこかで人助けをしているんだろう。

「じゃ、卒業式に行こ……」

 イーアは言いかけたけど、その時にはイーア達の周囲をたくさんの生徒が囲んでいて、生徒の一人がさけんだ。

「大召喚士イーア!」

 ものすごい歓声があがった。これは簡単には卒業式に行けそうにない。
 そう思った時、マジーラ先生とシャヒーン先生が、イーア達を囲み歓声を上げる生徒たちを、かきわけてやってきた。

「道をあけるんだ! お前達の英雄が卒業式を見に行けないじゃないか!」

 マジーラ先生が生徒たちをむりやり、移動魔法を使ってほおりなげるように移動させていき、そのすきに近づいてきたシャヒーン先生はすごくうれしそうにイーアにささやいた。

「よくやってくれたね。あんたたちがこんな大物になるなんて、あたしゃ、ぜんっぜん、占えなかったよ!」

 シャヒーン先生は片目をとじてウィンクすると、「ほいほい、どいた、どいた」と、生徒をどかして歩いていった。
 イーア達は、シャヒーン先生のうしろをついて行って、先生たちがあけてくれた生徒たちのすき間を通って、いそいで卒業式の会場に向かった。

 キャシーは先にいそいで卒業生たちの席にむかい、あとからイーア達が会場の中に入ると、それに気づいた生徒たちが拍手と歓声でむかえた。卒業生の中にはイーアが知っている子もたくさんいるから、イーアは今度は照れくささとうれしさがいっしょになったような気分になった。
 あまりに拍手が長いので、式をはじめたい校長先生が壇上だんじょうで困って、「静かに」と言ったけど、その声もかき消されちゃって、先生が10回「静かに」と言うまで拍手と歓声は鳴りやまなかった。
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